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貴女色に染め上げて

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だれでも歓迎! 編集



 ここはバイト先であるコスプレ喫茶の事務室。
 今この部屋には私と店長の2人しかいない……と言っても別にやましい事は何も無く、店長が電話し終わるのを待ってるだけなんだけどね。
「そうですか。分かりました。ではうちの者を行かせますのでよろしくお願いします」
 どうやら終わったらしい。こちらを見た店長は握った拳から親指を立てて、
「例の件、OKだってさ。準備しておくから明日取りに来てくれって」
「マジっすか?! やったーー! いやぁまさかとは思ったけど、頼んでみるもんですね」
「ただし条件があるって」
「条件?」
「うん、その時の写真が欲しいんだってさ」
「写真……ですか? 私はいいけど、ゆーちゃんがなぁ……」
「あぁそれは大丈夫。雑誌やネットには絶対載せずに仲間内で見るだけだって。信用出来る奴だから安心していいよ」
「ん~~店長がそう言うなら平気かな。分かりました。じゃあ明日ですね」
「場所は知ってるよね?」
「ええ。同業者ですし、以前チェックした所ですから」
 ふっふっふ……ゆーちゃん、覚悟してるがいい。快心の一時をお見舞いしてやろう!

 そんな事があったのが先週で、ゆーちゃんの誕生日を明日に控えた19日。
 所変わって今度は柊家にお邪魔している私の前にはケーキの材料を並べているつかさがいる。
「相変わらず料理の時は手際がいいねぇ」
「えっ? そうかな?」
「うん、普段のどじっ子振りが嘘のようだよ」
「こなちゃん、それはひどいよー」
「ごめんごめん。でもさ、本当によく動くよね。私も料理やってるから分かるけど、ほとんど無駄がないもん」
「えへへ。そう言われるとなんだか恥ずかしいな……」
「んじゃそろそろ私も手伝うよ。粉篩っておけばいいかな?」
「うん、お願いね。私はクリームの準備してるから」
 とまぁ2人でケーキ作りの真っ最中。
「でもゆたかちゃんもすごいよね。お料理は全部やるなんて」
「だよねー。いつものメンバーがゆーちゃん含めて10人にお父さんでしょ。ゆい姉さんも来るだろうから12人分?」
「それを1人でやるんでしょ? 手伝わなくていいの?」
「まぁその辺は平気だよ。何だかんだ言っても、明日は私とお父さんも手伝うからさ」
 料理はゆーちゃんがやるって言い出して聞かないから、せめてケーキくらいは、って事でこうして柊家の台所を借りて作業をする事になったんだけど。
 なんでも以前みゆきさんから『日本以外では、誰かの誕生日の時にパーティーを開くとその誕生日を迎えた人が料理などを振舞う』と聞いた事があるらしく、いつものお礼を兼ねてどうしてもと言い出したのだ。
「それじゃ目一杯おいしいケーキ作ってあげないとね」
「んふふふ、まだまだ教え子には負けない、ってところですかな? つかさ先生や?」
「そんなんじゃないってば。それにもう私が教えなくてもゆたかちゃんは自分で色々出来るよ」
「ふぅん……つかさが言うなら間違いないかな? 実際、かなり腕前も上がってきてるしね」
「やっぱり料理の一番の味付けは愛情だもんね、こなちゃん?」
 と言う突然のつかさの言葉に思わず手が止まってしまう。多分顔も赤くなってるに違いない。
「つ、つかささん? それは、ちょっと恥ずかしいって」
「でも本当でしょ?」
「ぅ……まぁ否定はしないけどさ」
「こなちゃんも素直じゃないよね。素直に『そうだよ』って言えばいいのに」
「そうなんだけどさ。正面から言われると何となく、ね」
 そんな他愛もないお喋りを交えながら、ケーキ作りを楽しむ私達だった。

 そしてゆーちゃんの誕生日当日。
 パーティーは夕方からだけど、朝から料理の仕上げに忙しいゆーちゃんをお父さんと一緒に手伝ってあげる。流石に1人じゃ大変なのか、素直に手伝わせてくれた。
 お昼過ぎになり、大きな荷物を抱えてパティとひよりんが到着した。
「いらっしゃい、2人とも。今日はありがとう!」
「おめでとう、ゆーちゃん。こっちこそ、招待してくれてありがとうだよ」
「Happy birthday ユタカ! 今日は楽しみにしてマスヨ」
「2人とも、いらっしゃー。荷物はこっちで預かるよ」
 そう言って2人を連れて私の部屋へ。ゆーちゃんは台所に戻って作業の続きだ。
「で、2人とも。例のブツは?」
「忘れずに持って来たッスよ!」
「コナタもなかなかやりマスネ? まさかこんな物を用意するトハ」
「ふっふっふ……我が愛しの姫君の為ならばどんな事でもするさ!」
「ああ……今から妄想が止まらないッス……」
「あーひよりんや? とりあえず準備を手伝って欲しいから、旅立つのは今しばらく待ってくれたまへ」
「そーデス。今から全力全開では体が持たないデスヨ?」
「はっ?! そ、それもそうッスね。私とした事が……」
 既にスケブに何かを描き始めたひよりんを連れて食器やら飾りやらの準備を始めると、陵桜OG5人組とみなみちゃんが揃って到着した。
「皆さん、今日はありがとうございます!」
 ゆーちゃんの出迎えに皆口々にお祝いの言葉を返す。
 私は皆を居間に案内しつつ、ホテルマンよろしく上着や荷物を預かる。
「それにしても、皆本当にありがとうね。みなみちゃん達同級生はともかく、かがみ達まで来てくれてさ」
「友達のお祝いなら、皆でやった方が楽しいです。それに、お世話になってるのは私達も一緒だから」
「そうそう。他ならぬゆたかちゃんのお祝いでしょ。水臭い事言わないの」
「そうだぞー。何だかんだ言ってもゆたかとはちょくちょく会っているしな。そりゃ桜藤祭以来の付き合いだけど、友達みたいなもんだ!」
「私も。小早川ちゃんとは妹ちゃんと一緒にお菓子作りとかやってるから、もう先輩後輩って感じはあまりしないのよね」
 そう。ゆーちゃんはみさきちや峰岸さんとも卒業式後も顔を合せている。
 みさきちにはゆーちゃんの体力作りについてあれこれ相談に乗ってもらっているのだ。その甲斐あって以前よりも大分元気になり、みさきち様々だったりする。
 で、峰岸さんとはつかさと一緒にお菓子や料理作りをやっている。割と回数は多いはずだけど、大してスタイルを気にしてないこの3人の体はどうなっているんだろう? かがみは今も色々奮闘中らしいのに……

 既にいる2人と合流してお喋りをしながら準備をしていると、テーブルには色々な料理が並び始め、段々といい匂いが漂い始める。
 いくら私とお父さんが手伝ったとはいえ、とても1人でこなしたとは思えない品々に皆の感嘆の声が上がる。
 そしてテーブルの真ん中につかさ特製(私と峰岸さんも手伝ったけど)のバースデーケーキが鎮座すると、割れんばかりの拍手が巻き起こる。
 計ったようなタイミングでゆい姉さんが到着すると、待ちに待ったパーティーの始まりだ。

「今日は私の誕生日に集まってくれて、皆さん本当にありがとうございます」
 そう言ってお辞儀をするゆーちゃんに皆が拍手で応える。
「いつもお世話になっている皆さんへのお礼に、こうして料理を作らせてもらいました。どうか楽しんでいって下さいね」
「では皆様、グラスをお取り下さい」
 ゆーちゃんの後を引き継いで皆に声を掛け、それぞれにグラスと飲み物が行き渡っている事を確認すると、
「それでは……ハッピーバースデー、ゆーちゃん!」
『ハッピーバースデー!!』

 パーティーが始まるとすぐに賑やかになる。
 普段なかなか会えない人もいるから当然と言えば当然だけど……しかし、学生達の中に混じってもあまり不自然さを感じさせない大人2人には驚くべきか呆れるべきか?
 みさきちはゆーちゃんと体力作りの話をしていたのが、みなみちゃんを捕まえて2人をまとめて陸上部に誘い出した。みなみちゃんはともかく、ゆーちゃんは流石に無理じゃないだろうか? まぁマネージャーと言う道もあるけど。
 ゆい姉さんは峰岸さんに結婚生活のあれこれを語っている。お酒は飲んでないはずなのに妙に絡んでるのは、きー兄さんが関係してるに違いない……そういや峰岸さんはその辺大丈夫なのかな?
 かがみはひよりんと共にラノベ関連の話から始まってちょっとディープな話題にまで踏み込んでいる……何だかんだと言いながらもひよりんと話が合う辺り、やはりオタクの世界に足を踏み入れていると思う。
 パティとつかさは一人暮らしでも出来るお料理講座を開いていたのが、いつの間にかつかさの出張サービスの交渉になってるし。
 意外なのは、みゆきさんとお父さんと言う組み合わせ。何やら小難しい話題で盛り上がっている。やはり物書きが生業だと博識なのだろうか? 普段の姿からは想像出来ない一面が見れた気がする。
 そんな光景を眺めながら給仕役を務め、あちこち首を突っ込んでお喋りをしていると、料理も飲み物も大分減ってきた。

「さてさて皆の衆。一旦話を切り上げてもらっていいかな?」
 皆に声を掛け、視線がこちらに集まるのを確認してから、
「それでは。これより誕生日プレゼントの贈呈の時間とさせてもらうよー」
 それぞれが持ち寄ったプレゼントの数々は、去年同様ゆーちゃんを想っての品々だった。
 かがみとみさきちはジョギング用の靴とジャージ。つかさと峰岸さんはお菓子作りの道具。ひよりんは2年生4人組のイラスト。パティは可愛いアップリケのついたお手製エプロン。みゆきさんはみなみちゃんと一緒に作ったと言うブックカバー。お父さんとゆい姉さんからは手作りの夫婦茶碗。
 皆がそれぞれゆーちゃんと付き合いがあるから、今年は私に聞かなくてもすぐに決まったと言っていたっけ。
 さて……いよいよ私の出番だ。
 指を鳴らすと、事前の打ち合わせ通りにパティとひよりんがゆーちゃんの横に現れる。
「では2人とも。ゆーちゃんを連行したまえ」
『Yes, Ma'am!』
「ふぇっ? お、お姉ちゃん?!」
「まーまー、しばし大人しくしていたまへ~」
 ヒラヒラと手を振って3人を送り出すと、何とも言えない視線が刺さる。
「あー……5分くらいしたら戻って来るからさ。ちょっと待っててね」
 そう言い残して私も居間から逃げるように出ると自室へ向かう。
 タンスを開けて、並ぶ服を掻き分けて、一番奥から紙袋を取り出す。
 中から取り出した『衣装』に着替え、手早く髪をまとめる。
 あらかじめ作っておいたメールをひよりんに送ってから居間へ戻ると、私の姿に呆然とする皆の顔があった……が、すぐに感嘆の声に変わる。
「あー……そんなに変じゃないよね?」
「うん、大丈夫だよ。ただ普段のこなちゃんと全然違って見えたから、ちょっとビックリしちゃった」
「柊ならピッタリだと思ってたけど、ちびっ子もなかなか似合うじゃん!」
「おい、日下部。それはどういう意味だ?」
「ん? 言葉通りだぜ。柊ならタキシードも似合うって。なぁみんな?」
 その言葉に頷く一同を見て、かがみがフルフルと握った拳を振るわせる。
「まぁまぁ、かがみん。落ち着いて。それよりもどうかね、私の晴れ姿は?」
 かがみを宥めながらちょっと気取ってポーズを取る。そう、今の私は純白のタキシードに身を包んでいるのだ。
「んー、まぁ悪くないんじゃないの? ただ何と言うか……」
 と、口篭もるかがみ。いやまぁ言いたい事は分かるよ。
「いやいや。相手も同じくらいだし、バランスはちゃんと取れてるって」
「あー、そういや確かにそうね。しかし、よくそんなの見つけてきたわね」
「まぁ色々と伝手はあるからね。時間は掛かるけど見つからない訳でもないって」
 そこへ私の携帯にメールが届く。どうやら向こうも準備が整ったらしい。
「んじゃちょっと迎えに行ってくるよ。もうちょっと辛抱してね」
 ゆーちゃんの部屋へ向かうと、こちらは淡いピンク色のドレスに包まれたゆーちゃんがオロオロしていた。
 私に気づいたひよりんとパティが、揃ってウィンクと共にサムズアップ。
 こちらも同じように返すと、2人と入れ違いに部屋へ入る。
「どーかな、ゆーちゃん? 私からのプレゼントは?」
「嬉しいけど……いいの? こんな素敵なものもらっちゃって?」
「ゆーちゃんだからこそ、もらって欲しいんだよ」
 そう言って唇を重ねると、瞳を閉じたゆーちゃんが私に体を預けてくる。
 唇を離して、ゆーちゃんをお姫様抱っこすると、腕を首に回してぎゅっと抱き付いてくれた。
 居間の前で待機していたパティ達は私達を見ると、中へ声を掛ける。
「Ladies and Gentlemen!」
「これより我らが愛すべき、小さな恋人達の登場です!」
 そんな2人の声と皆の拍手に迎えられて、ゆーちゃんを抱いたまま部屋に入る。
「わっ! 小早川ちゃん可愛いわよ!」
「本当に綺麗……おめでとう、ゆたか」
「ふぉぉぉっ! ゆたかのドレス姿が見れるなんて! お姉さんビックリだーー!」
 そんな心からのお祝いの言葉を受けて、はにかんだ笑みを浮かべるゆーちゃんをそっと下ろして椅子に座らせてあげる。
「ちょっち時間が掛かっちゃったけど、これが私からのプレゼントだよ。題して『少女の夢』なんてね」
 ほっぺに軽いキスをすると、また拍手が沸き起こる。
 そのままゆーちゃんと私は皆から恋人生活のあれこれを根掘り葉掘り聞かれると言う、半ば羞恥プレイ的な質問攻めに遭う事になった……

 いつもの事ながら、楽しい時間はあっという間に終わりを迎えてしまう。
 明日は休みだから泊っていけば、という私達の言葉はあっさりと却下された。
 課題やらイベントやらで皆忙しくなる……らしい。十中八九、私達に気を遣ったんだろう。
 何より、帰り際のニヤニヤ笑いが全てを物語っていた。
 いつものように皆を送るお父さんとゆい姉さんの車を見送ると、お祭り騒ぎの余韻の残る部屋でゆーちゃんと2人きりになる。
 ちなみに服は既に普段着に戻っている。あの衣装はコスプレ用なので、割と簡単に脱ぎ着出来るようになっているのだ。
「今日はお疲れ様、ゆーちゃん」
「ううん、お姉ちゃんこそお疲れ様。手伝ってくれてありがとうね」
「大した事はやってないよ。今日ちょっと手伝っただけなんだし」
 そんな風にノンビリと今日の事を振り返りながら、ゆーちゃんを抱き寄せて、ほっぺやおでこ、唇にキスの雨を降らせる。
「んん……お、お姉ちゃん。くすぐったいよぅ……」
「ね、ゆーちゃん。今夜はこのまま一緒に寝よっか?」
 抱き締めたまま片手でゆーちゃんの太股を撫で始め、キスだけでなく耳を甘噛みすると、腕の中で小さく体を跳ねさせながら、潤んだ瞳で見つめてくる。
「一緒に、寝る、んん……だけ?」
「それだけじゃ不満?」
 クスクスと笑いながら、ごく軽く弄っていると、ぎゅっと強くしがみ付いてきて、
「ん……私を、お姉ちゃん色に染め、て……くれる?」



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