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輝く季節へ 4話

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朝、台所の私。
色とりどりのおかずを詰めたお弁当が二つ。
私がいなくなっちゃったら、ゆーちゃん一人で大丈夫かな。
そんなことを考えていると、後ろで階段を下りる音。
「おはよーっす、ゆーちゃん」
「え……あ……」
ゆーちゃんの表情は、驚きと恐怖に包まれていた。
朝起きて、台所へ行ったら見知らぬ人が包丁を持って立っていたという恐怖。
そんなことあったら、私だってこういう表情をする。
「あ、ゆーちゃん。"お父さん"起こしてきてくれないかな? もうすぐご飯できるから」
「あ、うん。呼んでくるね。お姉ちゃん」
お父さんのことがきっかけになって思い出してくれたのか、ゆーちゃんは最後に"お姉ちゃん"と呼んでくれた。
まだ、完全に忘れられたわけじゃない。でも、このままだと明日まで私のことを覚えていてくれるかも危うい。
ゆーちゃん、本当に妹ができたみたいで、嬉しかったんだけれどな。
四角い世界に押し込まれたとき卵は、悲しそうな表情を映しだしていた。

学校までの通学路、私に合わせて登校してくれたゆーちゃんは、私に一生懸命話かけてきてくれた。
お父さんのこと、ゆい姉さんのこと、昔の思い出、
そんな共通の思い出を、一生懸命離さないように。
「それでね、この前お姉ちゃんが……」
ゆーちゃんは時々苦しそうな表情をする。消えつつある記憶を必死でかき集める。
ごめんね、ゆーちゃん。気を使わせちゃったね。
ゆーちゃんが悪いんじゃないんだよ。
頑張っても、みんな忘れていってしまう、そういうものだから。

教室に入った私は、その場から動けなかった。
私の席が、ない。
もうすでに、クラス名簿からも、先生の記憶からも消えてしまっている。
「あ、あの……」
聞き覚えのある声。振り返る。
「あの、誰かにご用ですか? 呼んできましょうか?」
ああ、神様ってなんて意地悪。
クラスに見知らぬ人が入ってきたら、たぶん私もそう声をかけるだろう。
でもね、仕方ないって分かってても……
「あ、えと、どうかしました?」
つかさにこんな風に声かけられるなんて、耐えられないよ。
「あ、ちょっと、大丈夫ですか?」
つかさの声を後ろに、私は走り出した。
もうこの学校に居場所なんてない。
制服を着ているからみんな『どこかのクラスの娘』と思っているだけ。
この学校に、私のことを覚えている人なんで誰もいない。
頭の中、ぐるぐるとつかさとの思い出がフラッシュバックする。
初めて会ったときのこと、外人さんに話しかけられて困っていたところを助けてあげた。
一緒に海へも行った、コミケに連れて行ったとき、人ごみに巻き込まれてへろへろになってた。
お正月の巫女服、かわいかった。たわいもない話、日常、大切な日々。
その思い出を、全部忘れてしまった。
ううん、つかさが悪いんじゃない。
悪いのは自分。
自分が願ってしまったから。
『えいえんのせかい』を願ってしまったから。

「はぁ、はぁ……」
壁に手をついて、荒く息を吐く。
息が落ち着くと同時、涙がじわりと出てくる。
つかさの嘘つき。ずっと覚えているって言ったじゃん。
寂しくて、悔しくて、ぽろぽろと涙があふれ出てくる。
何で、自分が望んでいたことなのに。
この世界すべての人に忘れ去られて、えいえんのせかいに行くことを夢見ていたのに。
どうしてこんなに、苦しいの……
「おい、そこのちっこいの」
聞き覚えのある声。
えっ、黒井先生?
そうだ、黒井先生とはよく話していたし、ネトゲでの付き合いもあった。
黒井先生なら、もしかして……
「黒井せ……」
期待をこめて振り向いた先。
そこには憮然とした表情で立つ、先生。
「あんた、どこのクラスの子や。もう授業は始まってんやで。ほら、クラスと名前、言ってみ」
言葉が出なかった。
初めて私のこと、理解してくれた先生だった。
苛めがあるという問題を、なかったことにしようとする中学までの先生とは違った。
授業中に頭を叩かれることもあったけど、それは本音でぶつかってきてくれることの証。
授業と関係のないところでも、やさしくしてくれた。
ネトゲでの二人のコンビプレー、楽しかった。
夏休み、休みを割いて私たちを海まで連れて行ってくれた。
いままでで、一番の先生だと思っていたのに……
「あっ、ちょっと待ちぃ!!」
先生の言葉を後ろに駆け出していた。
もう、この学校に居場所なんてない。
もう、この世界に居場所なんてない。
















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