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酒池肉林 (3)

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「…私が身を引いたとして、それで柊ちゃんにとって何かメリットがあるの?」
 あやのはかがみの問いには答えずに、質問で返した。
質問に質問で返す事には、三つの意図がある。
一つ目は、思考する為の時間を稼ぐ事。二つ目が、判断する為の材料を増やす事。
そして三つ目が、相手を非難する為の発言を引き出す事だ。
 あやのがどの意図で質問を放ったのか、
そこに構う事無くかがみは怯まずに真っ向から答えてきた。
「メリット?彼と私が恋仲になる。付き合えるのよ、私たち」
「ちょっとっ。彼の意思は無視なの?」
 みさ兄が口を挟むまでもなく、彼の言いたかった事は恋人によって代弁された。
「無視して無いわ。さっき私が交際をお願いした時、彼は言った。
”峰岸と付き合ってるから”無理だってね。その障害物さえ無ければ、
彼は私と付き合うって意味でしょ?」
 あやのが色をなしたのは、
障害物という単語に殊更強いアクセントが加えられていたからだけではないだろう。
あまりにもかがみにとって有利なルール、それに対する不公平感も多分にあった。
「認められないわ、そんなの。大体柊ちゃんは満足なの?
それで付き合えたとしても、仕方なく付き合ってるってだけの話じゃない。
それで、満足なの?」
「今は、ね」
 かがみは軽く受け流すと、その表情に強い自信を漲らせて続ける。
「でも、いつかは心まで支配してみせる。今はまだ、形式だけの交際でもいい。
でも絶対に、私の事好きにさせてやるんだから」
 見た目どおりに攻撃的で、自己に対する自信に溢れた少女だった。
相当な自信がなければ、必ず惚れさせるなどと宣言はできない。
「もし私が彼と別れるという選択をしたとしても、柊ちゃんにだけは絶対に渡さない。
監獄免れたところで、今度は柊ちゃんが彼の自由を奪うだけじゃない」
 こちらはかがみとは対照的に、
淑やかな気品と穏やかな気性を身に纏っている少女であるが、
今はその見目にそぐわない攻撃的な声音を発している。
「自由を奪う?前科はつかないし、移動も制限されないわ。
私と付き合うのと牢屋いくの、どっちが彼にとって不自由かしらね?」
「どちらもっ。私と付き合ったままが一番──」
「いい加減にしてくれよっ」
 かがみとあやのの舌戦は、劈くようなみさおの咆哮によって中断した。
「二人とも、どうしちゃったんだよぉ。あんなに仲良かったじゃんかよぉ。
また、仲良くやろうぜー」
 怒声から一転、みさおは穏やかな声音で笑いかけた。
だが、その笑顔が無理に作られたものである事は、誰が目にも一目瞭然だった。
悲しみで作られた雫が一筋の流れとなり、頬を伝っていたのだから。
「日下部…」
「みさちゃん…」
 みさおの健気な仲介に心打たれたのか、
二人の少女は戸惑ったようにお互いの視線を交差させる。
「でも…やっぱりこの話に決着付けてからじゃないと、
柊ちゃんとは友達には戻れないよ…」
「ゴメンね、日下部。私も、この問題有耶無耶なままじゃ、
以前の関係には戻れない」
 二人とも穏やかさこそ取り戻したものの、
話を有耶無耶なままに終わらせるつもりはないらしい。
「分かってる。私だって仲直りして欲しいってお願いする以上、
ちゃんと考えがあるからな」
(この場を上手く収める方法なんて、存在するのか?)
 訝しげな瞳で、みさ兄は妹に視線を向けた。
「その考えって、何よ?」
「簡単さ。二人ともコイツと付き合えばいい」
 コイツ、その言葉と共にみさおの軽蔑に満ちた眼差しがみさ兄に注がれる。

「つっても、今まであやのに注がれてた愛が半減するワケじゃない。
コイツは二人とも平等に愛する、っていう条件でな。
駄目かー?」
「お前、何言って」
 みさ兄の声は
「黙ってろ、糞兄貴」
みさおの低い声によって抑えられる。
「大体、お前が全部悪いんじゃねーか。勘違いして柊襲わなけりゃ、
こんな事にはならなかったんだ。責任持って、二人とも愛してやれよ」
 全部悪い、その言葉がみさ兄の胸を貫く。
身内からこのように責められると、”お前なんて初めから居なければ良かった”
と言われているような気分にさえなる。
「日下部、その提案は有難いけど…。現実問題、
二人を平等に愛するなんて難しいと思うぞ?
っていうか、無理じゃない?」
「私も、柊ちゃんに同意かな。それに、何か浮気されてるみたいで…」
 二人の少女は、異口同音に難色を示した。
「まー難しいかもな。だからさ、もしどちらかが贔屓されてるような向きがあったら、
私に教えてくれよ。この馬鹿兄貴、指導すっから。
それと、浮気にはならないんじゃね?
ほら、浮気って普通隠れてするもんだろ?双方の許可があれば、浮気とは言わねーって」
 みさ兄の意思を無視し、勝手にみさおは話を進めていた。
「ちょっと待ってくれ、みさお。俺には…二人平等に愛するなんて器用な真似、
多分無理だ。それに、背徳感も強く」
「んな事言える立場なのかよっ」
 言い切る前に、みさおの鋭い叫喚がみさ兄の言葉を遮っていた。
「じゃあ他の解決策提案してみせろよっ。お前が全部悪ぃんだろーが。
無理じゃねー、やれ。糞兄貴が馬鹿な事やる前までは…」
 みさおの声に、嗚咽が混じった。
「二人とも、仲良かったんだ。三人で仲良くやってたんだ。
あの頃の関係に私たちを返せよ…また仲良くやりたいんだよ。
私たちの仲切り裂いたのは、お前の身勝手な性欲満たす行為のせいじゃねーか。
拒否権なんてあると思うな」
 嗚咽と共に紡がれるみさおの言葉を、みさ兄は黙って聞いていた。
裂かれるような痛みと共に胸を過ぎるのは、一つの疑問だった。
果たして、この二人は元々仲が良かったのだろうか。
確かに仲違いのトリガーを引いたのは、自分だったかもしれない。
だが、心の底では二人とも、お互いを憎みあっていたのではないだろうか。
それが漸く、今回の件で表面化しただけなのかもしれない。
それが、あやのの『私からみさちゃん盗っただけじゃ飽き足らず』という
発言にも表れているように感じられた。
みさおは二人の対立の原因を全てみさ兄に帰責させていたが、
みさ兄が悪いのは全てではなくトリガーを引いた一点だけなのかもしれない。
 だがみさ兄は、その疑念を口にする事は無かった。
全て自分が悪い。それを受け止める覚悟を固めたからだ。
──みさおの、為に。
(全て俺が悪い事にしておけば、少なくとも表面上は三人の仲復活するかもな。
そうだな。俺が、二人とも愛してやれば…いいんだ。
それで二人とも、いいのなら)
「そう、だな。みさおの言うとおりだ。
二人が良ければ、俺は二人を愛するよ」
「二人を愛するって言われても…。ホントにそんな事、できるの?」
「うーん。元々彼のカノジョは私一人のはずなんだけど…。
でも、このままだと柊ちゃんが通報しちゃうからね。
私も譲歩するよ。別れはしないけど、柊ちゃんも一緒に彼のカノジョになる事、
認めてあげる。彼の事好きだから、別れる事も告訴させる事もできないし。
勿論、本当に貴方が二人とも愛せるのなら、っていう事が前提だけど」
 二人の訝しげな視線が、みさ兄に注がれる。
みさ兄は瞳に力を込めて二人を見返すと、言った。

「努力する」
「証明する、の間違いだろ?」
 みさおの声が、被せるように続いた。
「証明?」
 今度はみさ兄の口から、訝しげな声が漏れ出る。
「今からさ、糞兄貴とヤってみりゃいーじゃん。3Pってヤツをさ。
それでホントに兄貴が二人を平等に愛せるのか、試してみりゃいい」
 みさおはみさ兄には直接答えずに、あやのとかがみに向けて説明するという形を取って、
みさ兄の疑問に答えていた。
その内容のあまりのおぞましさに声を上げかけたが、
「うーん。それもアリかもね」
「そうだね。論より証拠、だよね」
二人が応諾したのを見て、喉元までせり上げていた声を押し留める。
「ああそうだ。一応言っとくけどな、兄貴。
二人を愛するって言っても、今までの愛情を半分ずつ分けりゃいいって事じゃねーぞ。
あやのに注いでいた愛情を減らす事無く、同じくらいの愛情を柊にも向けろ、
って意味だからな。
まぁ愛情なんて数値化できるモンでもねーけど、
一人当たりのサービス低下させんじゃねーぞ」
 言われるまでも無いことだ。
言われるまでも無く、そのつもりだった。
だが、血を分け合った実の妹から改めて言葉にされると、
そのあまりの冷たさに背筋が凍った。
家族の負担よりも、友人の満足に重きを置いている発言だからだ。
「分かってるよ」
 それでもみさ兄は自己を奮い立たせると、二人の少女に向き合った。
「始めようか」
「そうね。疼いちゃってるし」
「今まで何回も肌重ねたけど、三人でってのは始めてだよね」
 みさ兄に服を脱ぐ暇すら与えず、二人の少女が身体に抱きついてきた。
重なり合う三つの肌は
「頂きます」
重なり二つの声を合図に、証明に取り掛かった。
一人の男が二人の少女を平等に愛する、という無理難題にQEDを叩きつける為に。

*

「ねぇ、まだ満足しきれてないんだけど」
 不満そうなかがみの声が、みさ兄の耳に届く。
「うん。いつもより早く果てちゃったね」
 かがみに同調するように、あやのも不満そうに呟いた。
(やっぱ、二人同時に相手ってのはキツイか。
もう搾り出そうとしても出やしねー。暫く休ませねーと、そもそもたたねーよ)
 勿論二人同時相手という無茶も祟っているが、
それ以上にかがみとあやのの旺盛な性欲に負うところも大きい。
それぞれが競い合うようにみさ兄を求め、咥えこみ啜り上げ、そして受け入れた。
実際に競い合っていたのかもしれない。平等に愛する事が出来るかを試すと言っておきながら、
その実どちらがよりみさ兄の愛を多く享受できるのか、
それを競い合っていたのかもしれない。
「なに、勃起せずとも…。愛撫なりなんなりしてやるさ」
 体力的にも辛かったが、サービスの質を落とす訳にはいかない。
「そうね。貴方ってそっちのほうが上手だし。
さっきみたいに過激なヤツ、期待してるわ」
「さっき?過激?どういう事?」
「あっいや…」
「柊ちゃんにだけやって、私にはやらないなんて酷いよ…。
全然フェアじゃない、不公平だもん」
 あやのが拗ねたような顔で、みさ兄を軽く睨みつけてくる。
「実は…さっき暗闇下でのプレイの時、陰毛抜いたり、尿道プレイしたり、
したんだ」
 出来れば言いたくは無かったが、不公平とまで言われた以上、
明らかにするしかない。
このまま黙認を続ければ、「平等じゃないよ。柊ちゃんを贔屓してる」などと
言われかねない。
「私は下の毛薄いから、抜く必要は無いね。でも…
尿道は痛そうだからパスかな?あ、代わりにこっちお願いしていい?」
 桃を連想させる綺麗な小振りの尻を向けながら、あやのが言葉を放つ。
これも尿道と同じく性交用の器官ではない。
排泄用の、器官だ。
「今まで恥ずかしくて言えなかったけど…。
日下部君の前では貞淑でいたかったから言えなかったけど、
今日ぐらいは解き放っちゃってもいいよね。
お尻、試してみたかったんだ」
 はにかむような笑みが浮かべられたあやのの頬を、紅葉のような朱色が彩っている。
恥らいを覚えながらなおも要求するその姿勢に、
普段ならば可愛気を覚え燃え上がった事だろう。
だが精を吸い尽くされた今となっては、性交渉そのものに対して飽食気味だった。
酒の池があろうとも許容量を越えて飲む事はできない、
肉の林があろうとも許容量を過ぎて食む事はできない。
己の許容量関係なく、酒の池を飲み干し肉の林を貪り尽くす事を義務付けられたのならば、
そこは天国ではない。
それは地獄だ。
「分かったよ」
 地獄の中から、彼女たちを天国に導く。
(その役目、全うしてやるよ。それが償いになるのなら、それで責任取れるなら…。
いや、こいつ等が仲良くなるのなら?みさおが元の友情取り戻せるのなら?)
もしかしたら、彼が唯々諾々と彼女たちに滅私奉公する理由は
変わってきているのかもしれない。
 みさ兄はその思考を振り払った。理由がどちらであれ、
やる事に変わりはないのだから。

「ちょっと待ってな」
 みさ兄は机の引き出しから、太い毛筆を取り出した。
かつて年賀状を毛筆で書こうと思って購入したが結局書く事無く、
そのまま眠っていたものだ。買った時の状態のままなので、
ビニール袋に収まっているが、それ故に埃の堆積から免れている。
「お尻、両手で広げて」
「うんっ」
 みさ兄の指示に、あやのは嬉々として従った。
結果、薄紅色の肛門が少しだけ口を開いた形で露出する。
みさ兄はその肛門を、毛筆でなぞった。
「ひゃんっ」
 あやのの口から、擽ったそうな声が漏れ出る。
効果の程を確信したみさ兄は、念入に肛門を撫でる。
「もっと、大きく広げて?そうすれば、穂先が肛門内にまで届くから」
「う、うん」
 拡がった肛門内に筆の穂先を滑り込ませ、小刻みに擽る。
「あっ、す、凄いよ。くすぐったいというか…」
 荒々しく、それでいて蕩けるような呼吸を吐きながら、
あやのが律儀に自分の身体を襲っている感覚の説明を始める。
「なんか…背筋をね、こうゾクゥッって。ゾクゾクするような感覚がね、
背筋を突き抜けて首筋にまで至っているような…。
背中と首がむず痒いよぅ。お尻…痒いよぉ…」
 殆ど意味を為していない発言だが、喘ぐような吐息と垂れ流された涎が、
快楽の渦中にある事を告げていた。
口は言葉により意思を伝達する器官であるが、
今回の場合、言葉よりも口それ自体が意思を伝達している。
 一心不乱にその行為を続けているうちに、
あやのの身体に目に見える形で変化が訪れた。
性器から幾筋も幾筋も垂れていた細い糸が量を増し、
臀部からは汗の粒が噴き出してくる。
やがては、肛門からも腸液が滲み出てきた。
彼女の身体が快楽を敏感に享受している事を示すサインではあるが、弊害もある。
腸液と汗、この二種類の水分は毛筆に沁み込み、散っていた毛の束を纏めさせたのだ。
こうなると、擽るという作用を筆に期待することはできない。
(でも、中途半端に終わらせるワケにいかねーし。頑張るか)
 みさ兄は覚悟を決めると、肛門に口を近づけた。
吐息を肛門に感じたからだろうか、
今からみさ兄が何をしようとしているのか感づいたらしく、あやのが振り向きながら言った。
「えっ。汚いよ…」
 卑怯な言い方だ。そう言ったところで、引き返す人間は居ない。
引き返せば、”汚い”という言葉を肯定する事になる。
まず間違いなく
「あやのの身体に、汚いところなんてないさ」
というこの返答を期待──否、最早確信──しての発言なのだろう。
勿論今までもあやのとの付き合いにおいて、
互いの返答が分かりきっている形式上のやり取りを交わした事は幾度となくある。
だが今回は、彼女の掌の上で踊っている、
というある種不快感にも似た感覚が胸を過ぎった。
その原因についても、みさ兄は自覚していた。
即ち、既に性交渉に倦厭を感じているからだ、と。
そもそもこの性交に、愛も欲もない。
愛や欲ゆえの性交ではなく、みさおに命じられたが故の行為だ。
その上滾る欲情を迸らせる二人が相手という、体力を酷使する状況下では
倦怠に陥るのも当然といえる。
(はは、もしこれが普段通りなら、もっと熱く燃えるセックスが味わえたのにな。
優しさと愛に包まれた、さ)
 もう、あの頃の無邪気な性交はできないのだろうか。
一抹の寂寞感を胸に抱きながら、みさ兄は舌をあやのの肛門に這わせた。

「んっ。筆も良かったけど…。こっちも生暖かさが…良いね」
 筆では伝えられないのは、生暖かさだけではない。
みさ兄は舌を心持丸めると、肛門の中に押し込んだ。
腸液の苦味を舌に感じながら、みさ兄は舌を直腸内で暴れさせる。
「あっ、これっ、凄いっ。ひはっ」
 途切れ途切れに喘ぐあやのは、更なる要求をみさ兄に突きつけてきた。
「もっと…深いトコまで…」
(無理だ…)
 そのみさ兄の心中の声を代弁するように、かがみが言った。
「無理よ。日下部さん、アンタの肛門にがっぷり齧り付いてるから。
それ以上、舌を深く入れるなんて無理でしょうね。指に変えてもらったら?
何より、私が退屈じゃない」
「ひぃらぎちゃん、さっき、私居ない時、愉しんでたくせにぃ…」
 未だみさ兄が舌の動きを止めていないせいか、
あやのの返答は力が抜けていた。
「だから今だけアンタに独占させてやったんじゃない。
これ以上は、駄目。3人で愉しみましょ」
「もぉ、分かったよ」
 あやのの承諾の返事を合図に、みさ兄は舌を引き抜いた。
舌が引き抜かれた後も肛門は閉じられる事無く、
快楽の余韻を主張するかのように小さな拡がりを見せていた。
(顎も舌も、相当疲れんな、コレ)
舌に走る苦味よりも、排泄器官を口に含むという生理的嫌悪よりも、
実際には疲労感の方が辛かった。
「有難うね、日下部君。良かったよ。
次は指でお願いしていい?」
 唾液と腸液を肛門から滴らせながら、あやのが笑いかける。
「分かってる。柊さんは、何をお望みだ?」
「任せるわ。っていうかね、何々をして欲しいって言うの、恥ずかしいのよ。
相手に聞くものじゃない」
「そうだな。失礼」
「でも、さっき峰岸から陰毛が濃いだの汚いだの言われて、
ショックだったかも。だから、ね。まだこの部屋に灯り差し込まなかった時、
此処を手入れして綺麗にしてくれるって言ったでしょ?
その続き、お願いしようかしら。
その他の要求はまぁ…自分の胸に聞いてみなさいよ」
 暗闇の中、胸部を指でなぞられた事をみさ兄は思い出した。
『こわして』と、彼女の指は文字を紡いでいた。
「あー、また私が居なかった時の話してる。
仲間外れにするなんて、酷いよ」
「そうね、仲間外れは良くないわ。
だからまぁ、仲良く、ここは二人そろって彼に気持ちよくしてもらおっか」
 かがみはそう言うと、みさ兄を淫靡な瞳で見つめる。
あやのもかがみに倣うように、上目遣いにみさ兄を見やった。
みさ兄はその挑発的な仕草に、媚びではなく、
早く始めろ、という意味を敏感に感じ取った。 
(分かってるよ。しっかしこの二人、何時になったら満足すんだろ)
「ちょっと待ってて」
 みさ兄はそう言うと、机の抽斗から洗濯バサミを取り出し、二つに割った。
その片割れを右手人差し指に、セロハンテープで幾重にも巻き付けた。
人差し指末節の腹部に、硬い鋭角の突起が山並みを成す形となる。
(これで準備完了。洗濯バサミの挟む部分って、ギザギザが幾つも出てるからなぁ。
即興で陰核責め用の指サックが出来上がる。
硬いし、角度鋭いからちょっと痛いかもしれないけど、
これくらいやんないと柊さん満足してくれないだろうし)
 準備を終えると、まずみさ兄は左手の中指をあやのの肛門に押し当てた。

(これは…このまま挿入しても大丈夫そうだな)
まだ、肛門は拡がったままだった。腸液も未だ肛門から垂れ出ている。
(何も入れてないのに、穴になってるよ。
しかも、穴の円周の皮膚が、ひくついてる。大丈夫、だな)
 安全を確認すると、みさ兄は慎重に中指を挿入する。
思っていたよりも、すんなりと直腸内に中指は迎え入れられた。
第一関節はおろか、第二関節を通り越して基節までもが容易く肛門に飲み込まれる。
先ほど筆や舌で丹念に愛撫したからだけではなく、
湧き水のように溢れ出る腸液が潤滑剤の役割を果たしているせいでもあるだろう。
「あっ。は、入ってきた…ふ、深くまで入ってきた…よぉ。
ね、ねぇ、もっと太く…」
 あやのが何を求めているのか、すぐにみさ兄は察知する。
一旦中指を引き抜くと、人差し指と中指を束ね、もう一度肛門に宛がう。
(二本差し…なんて大丈夫かな)
 先ほどよりも慎重に、徐々に直腸内部へと指を押し進めてゆく。
人差し指のみを挿入した時には感じなかった、
圧してくるような強い抵抗を指に感じる。
「んっ、っ」
 荒々しく吐き連ねられるあやのの吐息も、挿入行為に伴う負担の大きさを示している。
「大丈夫か?」
「ぅ、うん」
 その返事に偽りは無いだろう。実際に、先ほどよりは抵抗を感じつつも、
指は深く深くまで直腸内へと飲み込まれていっているのだから。
例えその返事が、荒々しい呼吸の合間を縫って吐き出されたものであろうとも。
 やがて二本の指は、肛門内へとその姿を隠した。
「ぁっ、さっきより太いし…深いね…」
 太いのは当然として、深いという感想も決して錯覚ではない。
人間の手の構造上、中指のみを挿入するよりも、人差し指と束ねて挿入した方が、
より深くまで侵入させる事ができる。実際に、二本の指はほぼ根本まで肛門に咥え込まれていた。
「ごめん、柊さん。もうちょっと待ってて。
肛門ってデリケートだからさ、ある程度解してからじゃないと。
解さずにそっちの相手まですると、ひょんな拍子に裂けちゃうかもしれないし。
ほんと、ゴメンね」
 小さくゆっくりと肛門の中で指を動かしながら、かがみに声を掛けた。
「いいのよ、放置プレイだと思えば、それもまた燃えるし。
それにね、なーんか面白い仕込みしてるみたいだし。
期待してるわ」
 みさ兄の右手人差し指を流し目で見やりながら、かがみは艶やかな声を響かせた。
「ああ、ちゃんと期待には応えるさ」
 それだけ返すと、みさ兄は再びあやのとの性交に意識を集中させた。
集中して取り組んだ方が安全かつ迅速に肛門を弛緩させる事ができる。
 ゆっくり動かしていた指の動きを一旦止め、円を描くように指で直腸内をかき回す。
あやのの呼吸が荒々しさを増したが、痛みゆえに荒くなったのではなく、
快楽ゆえに荒くなっているのだろう。呼吸に時折混じる喘ぎ声が、
快楽を主張しているのだから。
 腸液が指と絡む度に淫猥な音を奏でるまで、存分にかき回す。
潤滑剤の用意がない以上、代わりとなる腸液を充分に溢れさせるしかない。
「す、凄い。私のお尻から、クチュクチュっていやらしい音がしてる。
身体からこんなネバネバした音出すなんて、なんか、えっちなコだね、私」
 はにかんだ笑みを浮かべるあやのに対し、
みさ兄は正直に言葉を返す。
「そうだな」
「ひどいよ、否定してっ欲しかった…なっ…ぁっ…」
 言葉が千々に途切れたのは、みさ兄が二本の指の関節を小さく曲げて、
ゆっくり伸ばすという行為を行ったせいだろう。

酒池肉林 (4)へ続く












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