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反逆のかがみ

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MISAO-SIDE

昼休みも終わりかけの時間、私が漫画を読んでいると
柊の奴はいつものように空の弁当箱を下げて自分のクラスに戻ってきた。
その顔はいつものように少し楽しげで。
私たちはいつものようにその顔から柊の本当の気持ちを感じるんだけど。
この日はいつもどおりでないことが一つ、起きた。

「柊さん、またあのクラスでお昼食べてたの?」

柊に話しかけたのはクラスの男子…えーと…名前なんだっけ?
特に柊と仲が良いわけでもない、単なるクラスメートだ。

「ねぇ、明日は僕と一緒にお昼食べない?きっと楽しいと思うなぁ」

…それにしても下心のよく分かるヤツだな……
あんなの無視すればいいのに、柊は一々律儀に返答している。
やれやれ、優等生だねー、柊は…
一応クラスメートだし、あんまり関係悪くしたくないんだろうけど。
まぁ、あんまり気にすることもないだろうし、私は漫画読んでるか。

「どうしてダメなんだい?僕のほうがあんな子よりずっといいと思うよ?
 こう言っちゃなんだけど、あの子ヘンじゃないかい?
 女の子なのに卑猥なゲームとかしてさ。僕は理解できないな、ああいう子は」

ん?……何か雲行きが怪しいな。
誘いを断られたらしい男が突然ちびっ子の悪口を言い出している。
柊、何か言ってやれよ…まさかこの状況でも人間関係がどーとか言うんじゃねーだろな?

「もしかして…あの噂どおり柊さんってあの子のこと好きなの!?」
「ッ!?」

あ、これヤバくね?
柊にこんなこと聞いたら何言いやがるか分かんねー。
んで…その心配は不幸にも当っちまった。

「べ、別に好きじゃないわよ!アイツのことなんて!
 いつもいつもオタクな話されて、
 ヘンなとこ付き合わされたりして、
 私だって…

 …迷惑してるんだからッ!!」

――おい。
頭に血が上るのを自分でも感じる。
いくらなんでもその言い草はねーだろう。
私は柊を怒鳴りつけてやろうと立ち上がって…


…一気に血の気が引いた。
「お、おい…柊…ッ!!」
その言葉に柊が反応して、私と同じ方向に視線を向ける。
そこには――




「あ…こ、こな…た…?」



  • KAGAMI-SIDE

これは…悪夢なんだろうか。
俯くこなたの表情は見えないけれど…
さっきの言葉を聞いていたのは明らかだ。
よりにもよって、あんな言葉をこなたに聞かれるなんて…
とにかくすぐに…

「……ごめん…」

謝罪…だが、それは私の口から出たものじゃない。
目の前のこなたが俯いたまま、そう呟いたのだ。
なんで?なんでアンタが謝るのよ…?

「ごめん…私…バカだから…気付かなかったよ…
 かがみに…そんなに迷惑かけてたなんて…」

今度は私をまっすぐ見て、また謝る。
その目に映るのは怒りではなく悔恨。
こなたはさっきの私の言葉を本気に取ったらしかった。
だけど、それも無理ないのかもしれない。
面と向かって好きじゃない、と言われたのなら
こなたもいつもみたく「ツンデレだね~」で返すんだろうけど。
自分の知らない所で「迷惑」だなんて言われたら…

「…明日からは…かがみに迷惑かけないって約束するから…
 ホントに…ごめん…」

こなたは最後にそう言うと、背中を向ける。
謝りたい。謝りたいのに…言葉が出ない。
教室中の視線が私に集まっているのを意識してしまっているのか。
そんなことをしている間に、こなたは教室から走り去ってしまう。
そして、追いかけようとする私の足を予鈴のチャイムが止めた。
もう…授業か…


授業が始まる。
でも…私はノートも開かず、さっきのことを考える。
教科書を読む黒井先生の声も耳に入らない。

私は…何してるんだろう。
あの男子にこなたのことを悪く言われた時、
私はクラスメートとの関係を気にして反論しなかった。
クラスメートを軽視しろ、と言うつもりはないけれど。
そのためにこなたを傷つけたら…何の意味もないじゃない…

そしてその後だ。
私はすぐに謝ってしまうこともできたのに。
視線なんか気にしてそのチャンスを逃した。
挙句には今。
私は何はおいてもこなたを追いかけなくてはならなかったはずだ。
それなのに私はこうして授業に出ている。
こなたを放っておいて。

いいの?

「……………ダメよ…」

こなたを傷つけて。
こなたに謝らせて。
こなたを放置して。

「……………ダメ…よッ…!」

そこまでしてアンタは守りたいのか、柊かがみ?
「優等生としての自分」などという――クダラナイものを!!



「そんなの…ダメに決まってるッ!!!!」

いきなり大声を出して立ち上がった私に、
さっき以上の視線が突き刺さる。
でも…もうそんなもの、怖くなんてない。

「え?センセの授業、そんなにアカンかったか?」

黒井先生は何やら抜けたことを言っている。
一応、退出理由は言っておこう。

「先生、こなたのところに行ってきます。いいですよね?」
「…いや、今授業中やしそんなん…」

予想通りの答え…でも。

「答えは聞いてません…それじゃ行ってきます」
「………アンタの怖さにウチが泣いたわ…」

……先生も見てたのか、アレ。
まぁそれはともかく私は教室から出ようとすると…
目の前にはさっきの男子が立ちふさがっていた。

「柊さん、あんな子のために授業サボってまで行くことないよぉ。
 ほら、もうすぐ受験だしさ。
 成績にキズつけるようなことはしない方がいいんじゃないかな?」

―あぁ。
さっき人間関係を気にした私が馬鹿みたいだ。
コイツは単にこなたを――
私の怒りに気付かないのか、目の前の男は更に続けた。

「それにさ、あんな子と一緒にいたら柊さんまでオタクになっちゃうよ?
 友達選ぶのは柊さんの自由なんだし、もっとマシな友達を…」
「オタクでいいわよ…オタクらしいやり方で…そこを通してもらうからッ!」

最後まで言わせる必要は――ない。
こなたに見せてもらったアニメの数々。
そこで得られた知識、使わせてもらおう…!

「アンタ…自由の意味…勘違いしてるんじゃないの?
 ギャルゲーやアニメに一喜一憂する女がいてもいい…
 そして…そんな女に惚れた女がいてもいい!
 自由とは…そういうことよ!」

私の剣幕に男が黙り込む。
さて…そろそろ止めといきましょうか。
こなたを侮辱した罪、贖ってもらうとしよう。

「柊かがみが命じる…アンタは…『消えろ』!!!」

無論私に絶対命令権などあるはずもないけれど。
その時の私の顔は多分、今までで一番「凶暴」なもので。
その顔に恐れをなしたか、男は悲鳴と共に逃げ出してしまった。
ふぅ…これでやっとこなたのところに行ける…
私は静まり返っている教室を後にした。



こなたの教室に行ってみたけれど、そこにこなたの姿はない。
靴箱に靴もないし…家に帰ってしまったんだろうか。
今更教室に鞄を取りに行くのもなんだし…このまま行こう。
私は靴を履き替え、こなたの家へと走る。


待っててこなた…今行くわ!


全速力で走り切り、こなたの家に着いたときにはもう汗だくだった。
静かではあるものの、窓越しに青い髪が揺れているのが見える。
間違いない、こなたは自分の部屋にいる。
それを確認すると私は周囲を見渡す。

ご近所の皆さん、予め言っておきます。
『ごめんなさい』
内心で私はそう謝ると、息を大きく吸い込んだ。



  • KONATA-SIDE

「はぁ…」
私は何度目になるか分からないため息を吐く。
授業、さぼっちゃったな…
でもいいよね…どうせ私はかがみみたいな優等生じゃないし。

私はベッドに腰掛けて、ぼぅっと今までのことを思う。
かがみと話したこと。
かがみと遊んだこと。
かがみと…
みんなみんな、楽しかった。
かがみもそうだと思っていた。
でも…そうじゃなかったのかな…

それにしても…笑えるよね。
あんなこと言われたのに私、まだかがみのこと考えてる。
『迷惑してるんだからッ!!』
あんなにハッキリ…否定されたのに。

涙があふれる。
でも、拭く気にもなれない。
きっと…これは罰だから。
オタクの癖に調子に乗って、かがみをからかい続けた自分への。

明日から…どんな顔で登校すればいいのかな…
そんなことを考え始めたころ…


「こなたぁ―――――ッ!!!!!」

窓の外から、地を揺るがすほどの大声が響いた。


驚いて窓の下を見る。
え……かが…み?
時計を見る。
間違いなく、まだ授業をしている時間だ。
何で…何で…ここに!?
窓の外を見下ろしたまま、固まる私。
そんな私を見据えて、かがみが叫ぶ。

「さっき私は…アンタのこと酷く言っちゃった…!
 アンタに怒られるのも!
 アンタに嫌われるのも仕方ないようなことをした…!
 でもッ!アンタに謝られるのだけは絶対に違う!」

真剣な目で。
真剣な表情で。
真剣な言葉を放つかがみ。

「悪いのは、私!
 自分に言い訳して、素直にならなかった私…!
 私が素直じゃないせいで…
 あんなこと言ってアンタを傷つけるんだったら…!
 私はもう迷わない!
 私の本音…アンタにぶつけてやるわ!」

本音…?
かがみ…何、言うつもりなの…?
私の中に、期待と不安が入り混じる。
そして…次にかがみから出た言葉は。

「私は…私はアンタが好き!
 マニアックで、時々イジワルだけど…
 私はアンタを迷惑だなんて思ったこと、一度もないわよ!
 アンタが私をどう思っても構わない…けど!
 この誤解だけは…されたくないから!」

『期待』通りのもの…だった。
考えるより先に、体が動く。
窓を開け、一気に飛び降りる。
そこにいる、『大好きな人』のところに。


  • KAGAMI-SIDE

こなたの身体を受け止め…きつく抱きしめる。
一度は失いかけたそのぬくもり。
もう…放してやるもんか。

「かがみぃ…大好き…だよ…」

腕の中でこなたが幸せそうに囁く。
多分、今の私の顔、もの凄くニヤけてるんだろうなぁ。
だって私…今までで一番幸せな気持ちになってるから。
このままずっと抱き合ってたいなぁ……と思ったけれど。

「ところでかがみん?そろそろ周りを見てみたまへ」
「え?」

こなたに言われ、周囲を見る。
そこには…


いつの間にか集まってきていたご近所の方々が。
ひそひそ話をしている人、
拍手しだした人、
「おめでとー」とか叫んでる人…
まぁ、こんなところで大声で愛の告白なんて始めたら…ねぇ。
と、とにかく。このままじゃマズい。
ここは…

「こ、こなた!アンタの家に避難させて!」
「あー…ごめんかがみん、それ無理っぽい」

私の提案を、申し訳なさそうにボツにするこなた。
な、何で?

「いやほら、さっきドアに鍵かけちゃってさ。
 そんで窓から飛び降りたもんだから…」

…アンタも入れない、ってことかい。
しかも今日はおじさんも出版社に行ってて留守らしい。
八方塞がり、ってわけね…
そうして私が真剣に考えているのにコイツときたら。

「くそぅ、バルジオンさえあれば」

真面目くさった顔でよく分からんことを言っていた。
……何のネタだよ…
私もまだまだ修行が必要らしい。 


そんなことをやっている内に、騒ぎはどんどん大きくなっていた。
もう手段は選んでいられない。
……今更、という気もするけど。

「行くわよ!こなた!」
「ぅおっ!か、かがみ?」

私はこなたの身体をさっと抱き上げると、
ギャラリーを尻目に逃走する。

「おー、速いねぇかがみん。
 いやぁ、お姫様抱っこはやはり萌えですな」
「黙ってなさい!舌噛むぞアンタ!」

いつものようなやりとり。

でも私も、こなたも…
いつもより少しイイ笑顔で。

いつもとは違う関係を楽しむ。

そして、明日からはこの関係が『いつも通り』。
そんな予感をしながら、私たちはこの道を駆ける。






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  • かがみんカコイー!(*゚▽゚*) -- 名無しさん (2012-12-26 14:16:44)
  • もう2人のゴールインが
    目に浮かびます! -- チャムチロ (2012-08-28 17:47:11)
  • かがみとこなた青春してますネ。甘酸っぱすぎて顔がにやけちゃうよ。
    しかし同級生男の小さいことw
    -- アオキ (2012-02-07 23:26:46)
  • 男クソだな -- 名無しさん (2009-10-19 20:23:19)
  • よかった!

    男ウゼーwww -- 名無しさん (2009-10-19 14:52:22)
  • なんか、すごく勢いがあっていい、良作。 -- 伝説の作家 (2009-07-27 18:44:33)
  • そのままhappywedingですね? -- 名無しさん (2009-02-18 02:28:56)

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