kairakunoza @ ウィキ

好き☆嫌い

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 とある休日。かがみはこなたと秋葉原に来ていた。
「今日はここに来たかったんだ」
 こなたがかがみを見上げ、嬉しそうに言う。そのまま足取り軽く、建物の中に入って行った。
「珍しいわね、買い物が目的じゃないなんて」
 そんなこなたの後を追い、かがみも建物に入って行った。
 そのままエスカレーターに乗り、目的の階で降りる。
「到着っと。どう? かがみ」
「うわ、これはスゴいかも」
 目の前には古今東西のシューティングゲームが並んでいる。シューティングゲームがメインのフロアの様だ。
 つまり今回はゲームセンターが目的地であったのだ。
「え? でもあんた、これ系やらないでしょ?」
 これはこなたの目的地と言うより、シューティング好きのかがみの目的地と言えるだろう。
 自分は楽しめても、こなたはつまらないのではないか、そうかがみは思ったのだ。
「いやー、今日はかがみがやってるのを思う存分見ようと思ってさ」
「見てるだけじゃつまんないと思うけど……」
「そんなことないよー」
 こなたは両手をあげ、楽しんでるオーラを発した。
「うーん、そこまで言ってくれるなら。せっかく案内してくれたんだし、やろうかな」
 妙にこなたの押しが強い気がするが、かがみはその言葉に甘え、ゲームをする事にした。
 それでも『わかっている』人が見る分には楽しいだろうが、こなたには多分つまらないだろうな、と思う。
「でもどうして急にこんな所に誘ったの?」
 かがみは先ほどからの疑問をこなたにぶつける。
「ん? いや、かがみに私の趣味に付き合ってもらってばかりだからさ、たまにはお礼をね」
「うーん。まあ、確かに」
 今までかがみがこなたに付き合った事を思えば、それもありかもしれない。
「否定して欲しかったナ……」
 後ろで何か言っているが、かがみは気にしないでおいた。

「お、これ面白そうだな」
 やるゲームを決めると、かがみは席に座り、ざっとインストを確認する。そしてそのままコインを入れスタートした。
「え? それだけでいいの?」
「最近のじゃ無いから、そんなに複雑なのは無いわよ」
 基本はショットとボンバー、後はアイテムぐらいである。覚えるより、やった方が早いだろう。
 かがみは画面に向かい、集中した。

「…………」
 この時、こなたはかがみの背後にいた。真剣なかがみに声を掛ける事は出来ず、
さりとてゲームの内容が解るわけでも無かった。かがみの心配した通りである。
(うー。こなたの奴、つまらなくないかなあ)
 かがみは背後で立っているこなたが気になり、どうしても集中出来ない。
「こなた、ここに座ったら?」
 かがみはキリのよい所で声を掛け、隣に座るよう誘った。
「え、邪魔にならないかな」
「うしろにいる方が気になるわよ。ほら、座りなよ」
 だめ押しとばかりに椅子を引き、座るよう施す。
「んー。じゃ、お言葉に甘えて……っと」
 こなたはちょこんと座り、かがみのプレイを見始めた。

「ねぇ、アイテム取りに行かないの?」
「今取りに行ったら危ないし、色が変わるじゃない」
「その黄色いのはいいの?」
「得点アイテムだからいいわ。稼いでないしね」
「……よく避けられるねー」
「弾には種類があるの。基本は自分を狙う弾と、狙わないバラマキ弾で……うわっ」
 隣のこなたと話しながらやっていた為か、かがみは弾に当たってミスしてしまった。
「あちゃー。やっちゃった」
 かがみはそう言いながらも、アイテムを回収し立て直した。
「かがみ、ごめん」
 こなたは自分のせいだと思ったのか、かがみに謝る。
「気にしないで。これは私のミスなんだからさ」
「……でも」
「ちょっと油断しただけだから平気よ」
 こういうゲームは自分の腕が如実に出るものである。
 かがみとしては、こなたが気にする事はないと思うのだが、
「ごめん……」
 何故かこなたは妙にしょぼくれている。
 こなたがそんな状態で集中出来るわけなど無かった。
 ボスとザコとの混合攻撃に、かがみはあえなく散っていった。
「面白かったー」
 多少ぐだぐだではあったが、久々のシューティングに、かがみは満足していた。
「せっかくだし、あんたも何か一緒にやらない?」
 一人だけ楽しんでるのもなんだし、協力プレイをしようとこなたを誘う。
「え? いいの? 邪魔じゃない?」
「何でそんなにはてなばかりなんだお前は」
「……だって」
 今日のこなたはどこかおかしい。邪魔だなんて思っていないし、
それ以上にこなたの元気が無い方が、かがみには堪えた。
「私が一緒にやりたいの。ねぇ、何かやりたいのある?」
「じゃあ、コレがいい!」
 はしゃぐこなたに手を引かれて、かがみはその匡体に連れて行かれた。
「ちょっと待て」
 そのタイトルを見て、かがみは思わず固まる。
「何で?」
 こなたは不思議そうにかがみを見上げる。そんなこなたに、思わずかがみは頭を抱えた。
「『達人』で『王』よ。どう控えめに見ても、難しそうじゃない」
 かがみが画面に目をやると、火柱の中に『達人王』のロゴが見えた。
「えー。『達人を越えて王になれ』ってカッコイイじゃん」
「初心者なんだから、もう少し簡単そうなのを選べよ」
「かがみとやれば、きっと簡単だよ」
 キラキラと目を輝かせ、こなたはかがみを見ていた。どんな期待をかがみに寄せているのだろうか。
「えっ、あの……わ、わかったわ。やってもいいわよ」
 もちろん、かがみがそれにあらがえる術は無かった。

 コインを入れ、ゲームを始める。軽快なドラムが心地よい。
「アイテム取るよー」
「二個あるから、一個ずつね」
「Sってなーにー」
スピードでしょ。この機体遅いし」
 はじめは敵も少なく、こなたに教えながらも楽に進めた。

「……硬いね」
「うん、硬いわね」
「これがボスかな」
「多分、中型機だと思うけど」
「うわっ、ぶつかった」
「危なくなる前にボンバー使うといいわよ……あれ? 全体に効果は無いのか」
 中型機が増えてくる辺りで、こなたがミスをしてしまう。
「こなた、ちょっとこっちに寄って」
「え? お、あ、撃たれた」
 地上敵をスクロールアウト出来ず、再びこなたが沈む。
「ボスはまだかな」
「確かに長いわね。そろそろじゃないかな」
 長く厳しい道中を抜け、静寂が訪れる。そして音楽が変わった。
「おー、来た来た……おわー」
「うわっ、やっちゃった」
 現れたボスに挟まれ、二人同時にやられてしまう。
 気づけば画面が切り替わり、復活地点に戻されていた。
「え? 何コレ」
「うーん。二人同時にやられると戻されるみたいね」
「うえー」
 こなたは疲れが隠せない様だった。かがみ自身も少なからず疲れてきた。
「せめて一面ぐらいはやってやるぜー」
「あと少しよ」
「……もうだめだー」
 集中力の尽きたこなたが、コンパネに沈んでいった。
「うわっ」
 次いでかがみも攻撃するほど弾が増えていくボスにやられてしまった。

「うー。難しいね」
「いや、これが難しいのが原因だと思うぞ……こなたにも楽しめる様なのがあるといいんだけど」
 こなた自身の選択とはいえ、もう少しこなたにも楽しんでもらいたかったと思う。
「んー。対戦シューティングとか? まあ無いよねそんなの」
「あ、そっか」
 かがみはこなたの一言で思い出した。確かあの辺りで見かけた筈だ。
 かがみは先ほどとは逆に、こなたの手を引いて行く。
「あったわよ」
 『ティンクルスタースプライツ』SNK/ADKの対戦シューティングである。
「そんなのあるんだ……おお」
「どうしたの?」
 こなたが何かに気づいたようだ。うれしそうに画面を指さす。
「どき魔女の人のだね」
「は?」
「いや、何でもない」
 絵師繋がりであるが、かがみが知る由も無かった。
「よーし、早速やってみよう」
 先ほどのゲームで自身をつけたのか、こなたは試しにやる事にしたようだ。
 モード選択画面で、たいせんモードにカーソルを合わせる。
「え? もう私と対戦するの?」
「『習うより慣れよ』だよねー」
 こなたは気軽に言うが、
「お前は格ゲーでもそれを言えるのか?」
 かがみの突っ込みを受ける。
 初心者同士ならありかもしれないが、普通はやらないだろう。
「それに今日のあんたは、何か変よ」
 そう、初めからおかしかったのだ。
 無理をして自分に合わせようとしている。かがみにはそう思えた。
「あ。決まっちゃったよ」
 かがみがこなたの言葉で画面を見ると、モード選択時間が終わって、
キャラ選択に画面が切り替わっていた。
「うわ……まあいいか。誰にする?」
 かがみは気持ちを切り替え、こなたに聞いた。先ほどの件は、落ち着いてから話そう。
「んー。どんなゲームかわからないから、見た目でいいかなー」
「なんじゃもんじゃは使いやすいわよ」
「もじゃもじゃのはちょっと……主人公っぽい娘にしようかな」
「それじゃあ私はこのキャラを」
 かがみは特殊な操作で隠しキャラを選んだ。
「あー。隠しキャラなんて卑怯だ」
「いやいや、そっちのキャラと性能は同じだから、卑怯ではないわよ」
「むー」
 こなたは不満そうに頬を膨らませている。確かに隠しキャラと言うだけで、
何らかの差があるように思えるのだろう。
「あ、ほらもう始まるよ。説明するね」
 かがみはそんなこなたを強引に画面に向けた。

「うおー……」
「やっぱり初プレイじゃ難しいよ。ほらヘコまない」
 基本を教え対戦に入ったのだが、経験の差が如実に出た。
 こなたは、自分の画面でいっぱいいっぱいで、かがみ側からの攻撃まで
気が回らなかったのだ。
 アイテムを取り間違え、ザコの体当たりとかがみの攻撃に挟まれ、こなたは負けてしまった。
「むー。やっぱ格ゲーとは違うね……そういえば他に対戦シューティングってあるの?」
 アホ毛までしおしおになっていながらもまだ対戦する気なのだろうか、
こなたはそんな事を聞いてきた。
「まだやるのかよ。確か『チェンジエアブレード』っていうのがあるらしいけど、
見た事無いわ」
「そーかー。対戦ならかがみと一緒に出来ると思ったんだけどなあ」
「……ああ、そっか」
 こなたが変な理由。それが今、かがみに見えた気がした。
「あんたも疲れてるでしょ? 喫茶店か何かにいこっか」
「いや、まだいけるよ」
「無理をしない。ほらいくわよ」
 かがみはこなたの手を引き、強引に連れ出した。

 階段の踊り場にあるベンチでこなたは休んでいた。
「ほら、落ち着いた?」
 かがみはこなたの手に缶コーヒーを渡し、隣に座る。
「うん、確かに疲れてたかな。ごめんね、かがみ」
「ストップ」
 かがみは謝るこなたを遮った。そのまま真っ直ぐこなたの顔を見る。
「あんた今日は謝ってばかりよ。謝られる事なんてないんだから、止めなさい」
 言い方がきつかったのか、こなたの瞳が揺れている。かがみの胸が微かに痛んだ。
「う……ごめん」
「だから謝るなって」
 かがみはこなたの頭を優しく撫でる。
「私がシューティング好きだからって、無理に合わせないでいいよ」
「えっ。無理なんかじゃ」
「ううん。無理してるよ」
 かがみはそのまま優しくこなたの髪を撫で続けた。
「誰にだって好き嫌いがあるんだからさ。勉強だってそうでしょ? 気にしないで」
「……でも」
「それじゃあ何? 私がもずくが大好きで、あんたに勧めたら、好きになれるの?」
「う゛っ……無理」
 味を思い出したのだろう、こなたは口を押さえた。かがみは思わず背中をさすってしまう。
「学校給食じゃあるまいし、無理に勧めないから。ごめんね」
「……うん」
 こなたは素直に頷いた。

「いつもかがみにギャルゲーとか付き合ってもらってたからさ、今度は私が
かがみと一緒に何かやりたかったんだ」
 ようやく落ち着いたのか、こなたは理由を話しはじめた。
「だから、かがみが好きなシューティングを選んだんだけど、見てる分には
簡単そうでも、難しい物だね」
「まあ、人を選ぶからね」
 ギャルゲーとは違い、反射神経が必要な分、敷居は高いだろう。
「あんた、難しいのを選んでたでしょ。進んで嫌いになりたいのかと思ったわ」
「うっ、そんなに難しい奴なのか」
 こなたは思わず呻いた。名前で気づかないのだろうか、とかがみは思う。
「それに私は普段通りのこなたが好きなの。だから無理はしないで」
 いつものように笑っていて欲しかった。今日はまだ、そんな笑顔を見ていない。
 そう思いかがみはこなたを見た。
「うおっ」
 かがみは思わず叫ぶ。
 こなたは、何だか今までになく、キラキラと効果音がつきそうな笑顔を、かがみに向けていた。
「ねぇ、もう一度さっきの言葉を言ってよ」
 こなたはかがみの服の裾を掴み、お願いをした。
「え……無理はしないで?」
「違うよ」
「普段通りのこなた?」
「その後だよ」
 期待に満ちた目でこなたが見ている。かがみはその言葉を思い出し、思わず赤面した。
「え、いや、勘違いしないでよね。『好き』とは言ったけど……」
 けど、何だろう。『友達として』と言うだけなのに。
 かがみは思わず言葉に詰まった。
「私は、かがみが好きだよ」
「え?」
 今度はこなたがかがみを見つめていた。
 その瞳は真剣で、かがみは目が逸らせなかった。何故か顔が熱い。
「……大切な親友だからね」
 間を置いて、こなたが言う。寂しげに見えるのは、気のせいだろうか。
「え、あ、うんそうね。こなたは大切な親友よ」
 ドキドキする胸を押さえながら、かがみはこなたに言葉を返す。
 かがみ自身、気持ちがよくわからなかったのだ。
 こなたとは――友達なのに、これからもずっと……

「それじゃ、次に行きますか」
 こなたは立ち上がるとかがみの手を取り、再びシューティングフロアに向かおうとする。
 すっかりいつものこなたに戻ったようだった。
「待ってよ。今度は私があんたに付き合う番でしょ?」
 かがみがこなたを止める。
「格ゲーで勝負する? それともアニメイトで買い物かな?」
 かがみはあえてこなたを挑発した。
 まだかがみ自身、気持ちはわからないが、今はまだ友達でいたいと思う。
「ふっふっふ。この私に格ゲーで勝てるとでも? さっきの借りは返させてもらうよ」
 こなたは、やはり先ほど負けたのを気にしているようだ。やる気満々である。
「あら。今日の私は冴えてるからわからないわよ」
 こなたがいつも通りに戻ったように、かがみもいつものようにありたかった。
「お、言ったな」
「それじゃ行きましょ」
 気持ちはわからなくても、繋いだ手の温もりは確かだ。
 しっかりと手を繋ぎ、二人は階段を上っていった。














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