2011/06/29 亀山研4年ゼミ輪読
海上知明『環境思想 歴史と体系』NTT出版,2005
担当:小松美由紀
海上知明『環境思想 歴史と体系』NTT出版,2005
担当:小松美由紀
第七章 社会派エコロジー
1 社会的自然 (p142~)
社会派エコロジー:社会のあり方に環境問題の原因をみるもの
セルジュ・モスコヴィッシ(フランスのエコロジスト)
:社会と自然のあり方を軸にして理論を展開。自然と社会は連動するとするブクチンの思想に近い一方、政策面ではマルキシズム(特にゴルツ)との類似性が多分にみられる。
→ モスコヴィッシにみられる、社会と自然の相関関係の思想は、社会派エコロジストの共通認識と言える
→ モスコヴィッシにみられる、社会と自然の相関関係の思想は、社会派エコロジストの共通認識と言える
2 ポリティカル・エコロジー (p143~)
*ポリティカル・エコロジー:バリー・コモナーの立場。政治変革を重視(cf. p119, p128)
*ポリティカル・エコロジー:バリー・コモナーの立場。政治変革を重視(cf. p119, p128)
・コモナーは『地に平和を』の中で、生命圏と技術圏との戦いについて論じている。
→ 技術圏に片寄る:環境問題は自由市場制のパロディで処理される
生命圏に片寄る:社会の価値観は否定され、人間は生態学的な理由によって規定される
→ 民主政治に環境問題解決を期待
→ 技術圏に片寄る:環境問題は自由市場制のパロディで処理される
生命圏に片寄る:社会の価値観は否定され、人間は生態学的な理由によって規定される
→ 民主政治に環境問題解決を期待
・コモナーによれば、生産技術と政治にはそれぞれソフトパスとハードパスがある
→ 技術のハードパス:巨大な集中的科学技術を追求(ex. 原発、農薬・化学肥料による農業)
ソフトパス:人間と環境に適したスケールと設計の技術(=環境保護(調和?))
政治のハードパス:環境破壊の真の原因である、技術選択に立ち向かう
ソフトパス:生産に関する意思決定は企業にゆだね、影響だけを規制
→ 政治にはハードパスが必要 (政治がソフトパス → 技術はハードパスとなる)
→ 技術のハードパス:巨大な集中的科学技術を追求(ex. 原発、農薬・化学肥料による農業)
ソフトパス:人間と環境に適したスケールと設計の技術(=環境保護(調和?))
政治のハードパス:環境破壊の真の原因である、技術選択に立ち向かう
ソフトパス:生産に関する意思決定は企業にゆだね、影響だけを規制
→ 政治にはハードパスが必要 (政治がソフトパス → 技術はハードパスとなる)
・また、『なにが環境危機を招いたか』の中では、生態学の4つの法則を挙げ、それらを根本的に考えなければならないとしている。
→ 一方コモナーは、資源に関してはかなり楽観的(エネルギーを加えれば鉱物資源は再生可能)。エネルギーの使用割合を現在の100倍にすることすら可能だと考えている。
→ 一方コモナーは、資源に関してはかなり楽観的(エネルギーを加えれば鉱物資源は再生可能)。エネルギーの使用割合を現在の100倍にすることすら可能だと考えている。
・コモナーに対しては、「劣悪なマルキシスト」「経済還元主義」といった批判も大きい。
3 エコ・マルクス主義の諸思想 (p145~)
・エコ・マルキシズムの形態は多様で、しかも原点であるマルキシズムを大幅に変容
→ マルキシズムというより、その変形か、概念の枠組みが同じ、あるいはマルキシズムの片鱗が残るといった方が妥当
・エコ・マルキシズムの形態は多様で、しかも原点であるマルキシズムを大幅に変容
→ マルキシズムというより、その変形か、概念の枠組みが同じ、あるいはマルキシズムの片鱗が残るといった方が妥当
■ソーシャリスト・エコロジー■
*ソーシャリスト・エコロジー( ≒エコ社会主義(キーワードp6) )
:マーチャントの用語。マルキシズムとエコロジーを結び付けて考える立場。ブクチンのソーシャル・エコロジーと区別して、主にジェームズ・オコンナーの理論を指す。
→ マルキシズムの伝統的な理論に大きな修正を加えたため、マルクス原理主義とは対立
*ソーシャリスト・エコロジー( ≒エコ社会主義(キーワードp6) )
:マーチャントの用語。マルキシズムとエコロジーを結び付けて考える立場。ブクチンのソーシャル・エコロジーと区別して、主にジェームズ・オコンナーの理論を指す。
→ マルキシズムの伝統的な理論に大きな修正を加えたため、マルクス原理主義とは対立
・オコンナーによると、資本主義には2つの矛盾がある
→ ①生産諸力と生産諸関係が商品の過剰生産を引き起こす→生産物に対する需要の減少
②生産力の拡大が、生産の基盤となる三条件(の基礎にある生態系)を破壊する
← 三条件とは、人的資源、自然資源、作業現場のこと
→ ①生産諸力と生産諸関係が商品の過剰生産を引き起こす→生産物に対する需要の減少
②生産力の拡大が、生産の基盤となる三条件(の基礎にある生態系)を破壊する
← 三条件とは、人的資源、自然資源、作業現場のこと
・オコンナー曰く、生産の諸条件を生産し制御するのは国家の役目
→ 現実の国家はそれをしていない。国家の深部の改良が必要
→ 現実の国家はそれをしていない。国家の深部の改良が必要
■エコ・フェミ社会主義■
・メアリー・メラーは男性型社会に環境問題の原因をみている。
・メラーは他のエコロジー批判も激しく、そのほとんどが男性原理と結び付けられている
・メアリー・メラーは男性型社会に環境問題の原因をみている。
・メラーは他のエコロジー批判も激しく、そのほとんどが男性原理と結び付けられている
■自律的労働論■
・アンドレ・ゴルツの思想。
・ゴルツはテクノファシズムではなくエコロジー共同体を志向する
→ オートメーション化により生産時間を短縮。余暇を自律的活動に向けることで、「より少なく働き、より少なく生産し、より少なく消費する」社会を創ることを主張
・アンドレ・ゴルツの思想。
・ゴルツはテクノファシズムではなくエコロジー共同体を志向する
→ オートメーション化により生産時間を短縮。余暇を自律的活動に向けることで、「より少なく働き、より少なく生産し、より少なく消費する」社会を創ることを主張
- ゴルツの思想は、産業社会の疎外への対応を結論的に環境問題へと結びつけている。
→ エコロジカルな社会とは、労働が他律的なもの、共同体レベルの活動、自律的活動の3つに分かれ、相互の労働の期間と移動の自由も大幅に認められるようにした社会
→ 一般的な「労働」を変革し、手作り労働の中に楽しみを見出そうとするモリス、シューマッハ、セルらと異なる
→ 一般的な「労働」を変革し、手作り労働の中に楽しみを見出そうとするモリス、シューマッハ、セルらと異なる
■産業縮小論■
・オコンナー、メラー、ゴルツは、資本主義のもとでエコロジーと社会主義をどう適応させるかを模索
⇔ ルドルフ・バーロは社会主義の新しい役割ではなく、産業縮小を中心に論陣をはっている。→ 科学的社会主義からユートピア社会主義に回帰(内面への回帰思想に類似している)
・オコンナー、メラー、ゴルツは、資本主義のもとでエコロジーと社会主義をどう適応させるかを模索
⇔ ルドルフ・バーロは社会主義の新しい役割ではなく、産業縮小を中心に論陣をはっている。→ 科学的社会主義からユートピア社会主義に回帰(内面への回帰思想に類似している)
・ユートピア社会主義とは基礎的な安全が共同社会によって守られている社会。小さな集団
を理想としている。
→ 実現するために必要なのは産業縮小。これが平和・エコロジー・人間解放を導くとする。
→ 現在の議会制民主主義では産業体制を打破できない → 政治的手段としてコミューン
を理想としている。
→ 実現するために必要なのは産業縮小。これが平和・エコロジー・人間解放を導くとする。
→ 現在の議会制民主主義では産業体制を打破できない → 政治的手段としてコミューン
4 ソーシャル・エコロジー (p154~)
*ソーシャル・エコロジー:ブクチンが提唱。エコ・アナーキズムとほぼ同義。
*ソーシャル・エコロジー:ブクチンが提唱。エコ・アナーキズムとほぼ同義。
・「生命中心主義」は、人間―自然間の「支配」と「従属」の関係が逆転しているだけ、とブクチンは批判する。
→ 人間の存在を疫病の存在とするような危険思想をエコロジーとすることへの深い危惧
→ 人間の存在を疫病の存在とするような危険思想をエコロジーとすることへの深い危惧
・ブクチンによれば、社会は自然と不可分に結びついた存在であり、人間の存在によって生み出された「第二の自然」である。
→ 社会に問題がある時、それは自然にも連動して問題を及ぼす。
→ 「人間による人間支配」が自然に投影されて「人間による自然支配」が開始された
→ 社会に問題がある時、それは自然にも連動して問題を及ぼす。
→ 「人間による人間支配」が自然に投影されて「人間による自然支配」が開始された
・資本主義とヒエラルキーの否定こそが、「人間による自然支配」を終わらせる。
→ リバータリアン(アナーキズム)的自治社会
→ 地域社会を、その地域の自然の収容力に適合させ、地域生態系にマッチした形でコミューンを形成する。生態地域の特定な条件に適した技術、農業方法、コミュニティの大きさが求められる
→ リバータリアン(アナーキズム)的自治社会
→ 地域社会を、その地域の自然の収容力に適合させ、地域生態系にマッチした形でコミューンを形成する。生態地域の特定な条件に適した技術、農業方法、コミュニティの大きさが求められる
- 自治体(コミューン)は足りない物資を供給し供与され相互依存の関係をもつ。
→ 各々自律しているが同時に連合している。(多様性の中の統一)
→ 生命地域主義ほど自給自足を強調しない。バーロの小規模共同体とも異なる。
→ 生命地域主義ほど自給自足を強調しない。バーロの小規模共同体とも異なる。
