後日譚~共通エピローグ~
現実世界へと帰還した貴方達は、難なく日常に戻る事ができた。
全ての者は、先日まで普通に登校、もしくは
ハンターとして、軍人や騎士団として勤務や各地を動いていた体になっていた。
そしてこの異次元にいた3ヶ月の記憶は、各々の記憶として残ってはいたが、それと同時に現実世界での不自然さを生まないために、現実世界で学園に登校や仕事に就いていた記憶もあった。
――世界は、改編されたのだ。
☆☆☆
まずハンターカード、煌石が無くなっていた。
そのため皆、カードを手に入れた当初よりも弱くなっていたものの、闊歩する魔物もそれに合わせた強さになっていた。
今にして思えば、魔物が急に強くなったのもハンターカードや煌石が出てきたのもアドラメレクの仕業と考えてもよかったのだろう。
さて、肝心の改編部分だが、順を追って説明していこうと思う。
2年前の年末。
漣島に訪れた貴方達は、ランマーと呼ばれる巨大な蛸型の魔物と遭遇した所からだ。
【
碧海の深き遺宮・前編】
魔物ランマーの能力の洗脳により、大城太平と筧利通が裏で動いていた事は変わらなかった。
悪魔ではなく、ただの魔物として分類されていた事が大きな相違点だろう。
【
悠久に聳える雪竜の脈動】
ラウム山脈の調査に向かった貴方達は、ラウム神殿・麓で戦神ラウムと出会う。
グレイシアと言った五大竜は改編された世界では存在せず、ラウムも神として崇められている存在だった。
ラウムを倒した貴方達だったが、白神凪はラウムに憑かれ、寿命と共に戦神としての力を手に入れたという事になっていた。
ラウムの命の源ともいえる神玉(黒耀玉)は、魔物の力を操る尸黄泉と包帯の男によって回収されたという点は変わらず。
そして、調査終了後。
織ヒカルは水鏡流星に呼び出され、洗脳された水鏡の手により重傷を負う事になる。
以後、織ヒカルは意識不明の重体が続き、意識を取り戻したのはつい最近の3月という改編になっていた。
【
深淵のエクスハティオ】
蒼特区、エクスハティオという古神がいたと言われている場所を貴方達は調査した。
戦神ラウムの噂を聞いた小此木剛毅の依頼によるものだ。
調査は無事に終わり、『竜の秘宝』は『神の秘宝』として小此木の手に渡る事になる。
が、それも束の間。
調査終了後に現れた土御門正宗・伍代により、小此木は倒れる事となり、秘宝を奪われてしまう。
そして伍代を撃破した柳茜は、戦神ラウムと共に魔物と戦ったカーネリアの異名である『戦乙女』の名で知れ渡る事となる。
竜が存在しない以上、竜の戦士と呼ぶ者はもういないのだ。
【碧海の深き遺宮・後編】
魔物ランマーを討伐するべく、再度調査を開始した貴方達。
飛鳥軍と連携をしつつ、黒幕であった双海思永を倒した。
正気に戻った双海は、今は蒼
ギルドで大城達と共に捕まっているそうだ。
【
東海に眠る竜】
魔物バルガを討伐するべく、貴方達は飛鳥軍と協力して海底神殿へと向かった。
そこにいたのは、ウロボロスではなくバルガ達の親玉、魔獣バルガランという上位魔物だった。
ウロボロスが存在しないため、未来や過去の予知もなく、貴方達はバルガランを飛鳥軍と協力し撃破した。
【
運命の塔】
洗脳された東十常剣が起こした、此度の事件。
しかし、悪魔ロノウィは既にいないため、ロノウィの力はなくとも化け物レベルの強さを持つ土御門正宗を殺すことは叶わず。
イーストセントラルタワーにて、強襲してきた水鏡流星と互角どころか圧倒し、命を落とすことは最後までなかった。
結局、洗脳された東十常剣も正宗によって捕まった。
優位に傾いていたが、カッツェの爆弾によりタワーが爆破され、さすがの正宗もこれにより避難することになった。
そして、この事件により佐治宗一郎は行方不明として、姿が消えることになる。
佐治が東十常剣を庇い、洗脳された水鏡に貫かれる所は変わらなかったのだ。
違う点は、この時点まで水鏡が洗脳されていた点だ。
ベレトの力を水鏡が手に入れることが無かった世界。
そのため、水鏡が正気に戻ったのは、この事件で貴方達に負けた時にやっと、だったのだ。
【異空の大樹】
戦神ラウムの声を、憑りつかれた凪以外で聞けるという存在の一人、カーネリア大聖堂の大神官でもあるウバルという男に導かれ、貴方達は真実を知る事になる。
包帯の男が全ての事件の黒幕で、気象制御装置を復活させてこの世界を終わらせようとしている事。
水鏡によって刺されたが、突如現れた漆黒の鎧の者が佐治宗一郎を時間の進まない異次元へと転移させたため、彼を救う方法がエストレアという出雲の機械竜が知っている事。
大神官ウバルからその話を聞いた貴方達は、機械竜エストレアが眠る異次元へと向かった。
そこで、包帯の男と協定関係にあった松原クリストフの孫娘のエレナ。
また水鏡流星も人間であったため、ユグドラシルの水を飲んで正気に戻った。
佐治宗一郎も救い、無事に全ての解決へと向けてゆっくりと進み始めた。
【ラストイベント:
気象制御装置ハルフェの停止】
ラウム山脈山頂、ラウム神殿最奥にて包帯の男を追い詰めた貴方達。
神の秘宝によりハルフェを起動させるも、尸黄泉や槐志度といった者達の助けを受け、貴方達は包帯の男の撃破と気象制御装置ハルフェの破壊に成功する。
包帯の男は捕まり、全ては解決したのだ。
そう、滅びの星ハミルトンやアドラメレクが消滅したため、この世界の問題は全て――。
☆☆☆
粥満ギルド地下、特別犯罪者収容所。
災害レベルの犯罪者達を収容するこの場所に、一人の男がやってきていた。
「…随分と久しぶりだな」
「…何しにきた。宮廷の犬が…。それにお前とは会ったこともない」
改編された後の世界では、一切事件にかかわらなかった神崎信の姿が。
そして、彼が会っているのは包帯の男だった。
「そうか。『この世界では』初めてだったな」
「…意味が分からないことを…。組織の話なら話すことは何もない。俺は何も知らない上、組織に切り捨てられた時に、組織に関わる全ての記憶が消されているからな」
「…わかっているさ。私に与えられるはずだった、記憶改ざんの力も既に回収されてしまったのはな」
なぜこいつはそこまで知っているんだ、と言わんばかりに、怪訝な表情の包帯の男に、神崎は笑った。
「結局、犬なのはお互い様という事だ。そこで、犬のお前に一つ提案をしよう」
「なに…?」
大陸歴2016年3月31日。
その日、全ての事件が収束するかのように。
神崎信は過去を清算するために。
改編された世界で、自らの代わりに不幸を全て背負った男のために。
カーネリア大聖堂の鐘が、全てを祝福するかのように。
全ての物語は、ここで終わりを告げた――。
最終更新:2016年03月31日 22:18