この町ゴッツ・サムイシティで生きていくには三つの才能のうち、
そのどれか一つでもあれば十分らしいが持っていない人間にとっては地獄そのものだ。
残念ながら俺もそのファッキンな持たざる生き物でしかない以上は
仕方ははなしに金にモノを言わせてどうにかせざるを得ないのが悲しいところだ。
ちなみに三つの才能というものはとどのつまり単純なもので、
やりたいことを強引に成し遂げる腕力か言いたい放題言ってのける度胸、
そして料理や裁縫掃除に洗濯といった主婦的技能をマスターできる根気だ。
腕力だとか度胸だっていうのは俺でも理解できるし外の世界でももちろん有効だが、
なぜまたよりにもよって炊事選択エトセトラがそうなのかといえば、
ここではそれらをやる人間が全くいないからというのがその理由。
金はあってもメイドは雇えないんだからしょうがない。
だからメイド・オブ・マスターはこの町では絶対的な権力をもっているらしい。
まじで。
ま、この話は関係あるといえばあるんだが正直どうでもいいからとパスとして、
俺は件のルーキー・レスラーを調べるために単身ゴッツ・サムイシティに乗り込んだわけだが
当然当てもなくさまよい続けたわけじゃない。
要はレスラーなんだからレスリング会場に乗り出せばそれっぽいやつにあえるだろう
というまあ至極当然なアテはあったわけだが実際のところこのアテは外れに外れ
どうにもこうにもここ数日は暗黒バトル伝説な会場に奴らは現れなかった。
となれば第二の手段、今度はそいつらに負けてしまったレスラーに向けて
インタビュー・ウィズ・マチョズムをすればいいんだが
負けた奴が自分をボッコボッコにした相手のことを詳しく語るわけがない。
とすればどうやってアプローチすればいいのか・・・・そこでメイド・オブ・マスターだ。
わざわざ戦士控室だとかリングだとかを清掃するレスラーなんていないし
そういった雑用を好んでやりたがる人種はここにはいない。
とすれば金を持ったやつが金を使ってその手のプロに任せるのが筋ってやつだ。
この時の俺の勘は冴えに冴えまくっていたようで、
あるレスリング会場にいた身長二百一センチ体重百二十七キロのメイド・ガイから
詳しい情報を手に入れることに成功していた。
ただしそのことを聞き出すまでに大分時間がかかりまくったが
まあ大したことではないので俺は気にしないし俺の連絡を待っているマッスル編集長もキニシナイ。
せいぜい、そのメイド・ガイが元レスラーで二十二年間のレスリング生活の上で
突然清掃と料理と愛に目覚めてメイドへの道に転向したその軌跡を
とくとくと丸一日話しかけられて睡眠不足に陥ったくらいのものだ。
まあそのくらいは安いものだから問題はないしそもそもライターなんて人種は
睡眠時間が非常に安定しないことで有名なブラック企業なんだから仕方ない。
とはいえ今度の相手は名だたる競合を血祭りにあげている凶悪レスラーだから
しっかりと睡眠をとって万全の態勢で挑むに限るはずだといいわけをしながら
俺はこの街有数のホテルに泊まって惰眠をむさぼることにする。
完全なお昼寝だ、それでは皆様おやすみなさい。
そのどれか一つでもあれば十分らしいが持っていない人間にとっては地獄そのものだ。
残念ながら俺もそのファッキンな持たざる生き物でしかない以上は
仕方ははなしに金にモノを言わせてどうにかせざるを得ないのが悲しいところだ。
ちなみに三つの才能というものはとどのつまり単純なもので、
やりたいことを強引に成し遂げる腕力か言いたい放題言ってのける度胸、
そして料理や裁縫掃除に洗濯といった主婦的技能をマスターできる根気だ。
腕力だとか度胸だっていうのは俺でも理解できるし外の世界でももちろん有効だが、
なぜまたよりにもよって炊事選択エトセトラがそうなのかといえば、
ここではそれらをやる人間が全くいないからというのがその理由。
金はあってもメイドは雇えないんだからしょうがない。
だからメイド・オブ・マスターはこの町では絶対的な権力をもっているらしい。
まじで。
ま、この話は関係あるといえばあるんだが正直どうでもいいからとパスとして、
俺は件のルーキー・レスラーを調べるために単身ゴッツ・サムイシティに乗り込んだわけだが
当然当てもなくさまよい続けたわけじゃない。
要はレスラーなんだからレスリング会場に乗り出せばそれっぽいやつにあえるだろう
というまあ至極当然なアテはあったわけだが実際のところこのアテは外れに外れ
どうにもこうにもここ数日は暗黒バトル伝説な会場に奴らは現れなかった。
となれば第二の手段、今度はそいつらに負けてしまったレスラーに向けて
インタビュー・ウィズ・マチョズムをすればいいんだが
負けた奴が自分をボッコボッコにした相手のことを詳しく語るわけがない。
とすればどうやってアプローチすればいいのか・・・・そこでメイド・オブ・マスターだ。
わざわざ戦士控室だとかリングだとかを清掃するレスラーなんていないし
そういった雑用を好んでやりたがる人種はここにはいない。
とすれば金を持ったやつが金を使ってその手のプロに任せるのが筋ってやつだ。
この時の俺の勘は冴えに冴えまくっていたようで、
あるレスリング会場にいた身長二百一センチ体重百二十七キロのメイド・ガイから
詳しい情報を手に入れることに成功していた。
ただしそのことを聞き出すまでに大分時間がかかりまくったが
まあ大したことではないので俺は気にしないし俺の連絡を待っているマッスル編集長もキニシナイ。
せいぜい、そのメイド・ガイが元レスラーで二十二年間のレスリング生活の上で
突然清掃と料理と愛に目覚めてメイドへの道に転向したその軌跡を
とくとくと丸一日話しかけられて睡眠不足に陥ったくらいのものだ。
まあそのくらいは安いものだから問題はないしそもそもライターなんて人種は
睡眠時間が非常に安定しないことで有名なブラック企業なんだから仕方ない。
とはいえ今度の相手は名だたる競合を血祭りにあげている凶悪レスラーだから
しっかりと睡眠をとって万全の態勢で挑むに限るはずだといいわけをしながら
俺はこの街有数のホテルに泊まって惰眠をむさぼることにする。
完全なお昼寝だ、それでは皆様おやすみなさい。
そうして俺はあふれ出るからだの欲求に身を任せること十二時間の休息をとり
まずいメシを食うよりかはましかと思って持参しておいたクラッカーを
もりもりもりもりもりもりもり噛んでミネラルウォーターで流し込み
ようやく準備が整ったことを確認してから部屋を後にした。
道中は特に何のハプニングもなく進んだが、逆にそれが俺を急き立てているようで
両肩にどんよりとしたプレッシャーがねばりつくように重くのしかかっている。
とはいえ俺の行く先は本来ならそういう雰囲気とはすえ遠い場所なんだが
ここが暗黒街ゴッツ・サムイシティであることを踏まえるとあまり暢気に構えてられやしない。
何せ仮面のレスラー・メイド・ガイに聞いた場所はよりにもよって教会、教会だ!
このような街で教会なんてふざけすぎにもほどがある!実はおちゃめなコメディアンか!
実は神の扉をノックしたら我らの全知全能である父の子がにこやかにサムズアップしながら
イスカリオテのユダにチョークスリーパや十字固めでもしているのかと想像してみたが
あまりのシュールさに笑いも失せてむしろむせる。
せめて悪魔崇拝してる地獄の覆面レスラーが毎夜サバトフェスティバルを開催しているほうが
いくばくか健全に見えてしょうがないしそのほうがこの街にはお似合いだ。
正直ヤギの生贄とか処女の生血なんてものは流石に持ち合わせてないので
今鞄のかなに詰まっているプロテインとか栄養剤で見逃してくれたらうれしい。
脅威のスーパータンパク質、お水にも溶けるイチゴ味!
あ、やべ、地獄レスラーにイチゴ味は壮絶なまでに似あわん。
いや似合わないのはこの際置いとくとして好みじゃなかったらどうしよう。
最悪俺は死ぬかもしれない。
なんて誰に言い聞かせるでもなくお寒いジョークをとばしているうちに
さっさと目的地に着いてしまった。
オーケー・ベイビーここまで来たんだ男は度胸じゃ破れかぶれに突貫じゃと
覚悟を決めてそれでもチキンな俺はまずは外観をじろじろ観察することから始める。
ファッキンな文様だとか呪文めいたものだとかどくろとか生血とかは見当たらない。
強いて挙げればこざっぱりとした、ただし悪く言うなら質素でさびれた教会だ。
なんというか田舎に普通に転がってそうな雰囲気で逆に俺は面食らう。
これならまだもうちょっと生贄小屋とかあるほうがらしくて
俺は安堵することだるきっとそうだろう。
だがここにはそんなものがないから逆に恐ろしいし不自然でしょうがない。
まあ来ちゃったものは仕方ないしここまで来て帰ったんじゃマッスル編集長に
カカトギロチンからの特別お仕置きフル・コースを受けそうなのでそれはそれで怖いから我慢する。
男は度胸なんでもやってみるもんだから教会に入るのもうろたえない!
そう覚悟して扉に近づきえいやと押してみるのだが・・・・開かない。
あれ、じゃあ引くのかと今度はぐいっとやってみるがやはり開かない。
おいちょっとまてまさか留守か留守なのか鍵をかけて出払っているのか
そりゃあないぜファッキン・ベイベと俺はガンガン扉をたたく。
だがもちろん開くはずもなく、俺の拳はむなしく扉を打ち据えるだけで
開けゴマの呪文もなければ魔法の鍵もMI6ばりの潜入技術もない。
おいおいどうすりゃいいんだよと思ったんだがなんてことはない帰ってくるのを
待っていればいいんだが果たしていつまで待ち続ければいいのかがわからないのが不安で
もしかしたら真夜中二時までここでたちっぱかと考えると恐怖心がみなぎってくる。
やっぱかえろうかななんて文句も出かかってくるくらいだ。
だがふとちゃぷん、じゃぷんという水たまりを踏んだようなあるいは風呂に足を入れたような
不自然な音がしたので俺は振り返る。
音源は扉の向こうからだ。そしてどんどん近づいてくる。
おいおい実は正常なのは外見だけで扉の中は血の海かと覚悟を決め
俺はばばばっと扉から飛び退って営業スマイルを浮かべる努力をする。
にこやかトークが通じる相手ならいいんだがあんまり期待できそうもないし
笑顔よりひきつった顔のほうが好みかもなあなんて考えもするけど
その間にもどんどん近づいてきてやがて扉の前に到着して扉が開きそして俺は神を見た。
オウ・ジーザス!おいおい、冗談だろう?嘘だと言ってくれよマイガッ!
ガキの頃親に無理やり連れて行かされた教会にかかっていた
ナザレの子の顔そのものが扉の向こうから現れやがったんだ!
柔和な笑み、整えられたひげ、長くのばされたくしゃくしゃの髪、
何から何までそっくりさんで俺はビビるし足ががくがくと震える。
おいおいいつ地上に復活したんですか今日がハルマゲドンですかあるいは明日が世紀末?
イナゴの大群とかいうのはひょっとしてアムステラ軍のことなんじゃあありませんか、
なんてジョークも出てくるくらいなんだが、ただちょっと残念なことがある。
顔の位置が高いんだ。
具体的には、大体床から百九十センチほど上にある。
うん、そうなんだ、要するに、現代の行ける神の子はどうゆうことか、
ファッキンなマチョズムに目覚めてプロ・レスラーの身体に宿っていやがったんだよぉ!
俺は膝をついた。こんなんアリかよぉと!
そして同時に気づいちまったんだ、ちゃぷちゃぷとした音の理由と扉が開かなかった理由に。
汗だ。大量の足首まで隠れそうなほどのくさいくさい男むっさい汗が溜まって、
扉がうんともすんともいわなくなるまで溜まってせき止めていやがったんだ。
べしゃべしゃと外へと流れ出ていく汗が俺の両膝から下を濡らす。
そんな俺を見ながらファッキン・ジューダス・マチョ・クライストがいう。
「ようこそ迷える子羊よ、神はいつでもあなたをお待ちしております。
懺悔の用意はよろしいでしょうか?お祈り用の十字架はお持ちですか?
全身の筋肉がガタガタ震えるまでトレーニングする心の準備はできていますか?」
ごめん意味わかんない。
「ようこそ我らが教団へ。さささ、どうぞ中へお入りなさい」
そう言って、天使のようなマチョズムの笑顔を浮かべて
女子供の頭ほどはありそうな手のひらを俺の両脇に差し込み軽々と持ち上げる。
そうして俺の背をそっと押して教会の内部へと進ませようとする。
というかあれだなそんなどでかい両手なのに猫の子供をなでるように
そっと押し出すなんて器用というか手加減上手ですねマチョ神さまなんて
皮肉も出かかるんだが内部を見て俺はぎょっとする。
なぜなら教会中央奥に鎮座しているはずのキリスト像がふつうじゃないからだ。
どう普通じゃないって?おいおい俺に言わせるのかよと思うんだが
ここで冷静に突っ込みを入れれる人間は俺しかいないみたいなんで仕方ないから言ってやる。
どこの教会にウエイトスタック式のトレーニングマシンにまたがったイエス像があるねん!
今俺の真後ろにいるであろうファッキン・ジューダス・マチョ・クライストと違って
こっちの像は普通の細マッチョというか痩せてるのに何気張って踏ん張って
無茶してるんですかねと俺は問い詰めたい、いややっぱよそうそんなこと言ったら後が怖い。
まあどっちにしろここがまともじゃないことはよくわかった。
ついでに言うとその両脇にたたずんでいる二人の男を見てなおさら俺は確信した。
後ろの奴とクリソツだ。
つまりどいつもこいつも同じ顔をしたファック・ファック・ファックで
ついでに言うとカソックも着ずにレスラーパンツを履いてやがる。
ただし色だけは別物で、青系・赤黒系・銀系の三つに分かれている。
だからどうしたよといったところだが、ぶっちゃけどうでもいいんだが気になったんだ済まない。
眩暈を覚えふらふらと、倒れ込むようにチャーチチェアーに座り込むがおい一寸待てとまたもや驚く。
いやんちょっとまってこれ椅子じゃなくてマルチシットアップベンチじゃねーか。
つまりここに来た信者は神に祈りながら腹筋でも鍛えるのだろうか・・・・。
あるいは歌いながらベンチプレスでフンフン、フンフンと上げ下げしてんの?
そのあまりのシュールさに俺はくつくつと笑い声をあげてしまいそうになり、
必死に我慢してどうにか真顔を保とうとする。
そんな俺に三人の同じ顔どもが近づいてくる。
やがて三人はこういった。
「初めまして、迷える小羊よ。私がここの神父のビスカルチェだ」
「同じく次男のビスカルチェ」
「末弟のビスカルチェです、よろしく」
全員同じ名前やないかい!
思わず叫びそうになったが我慢する。
俺は大人だ突然水知らずの人間にどなりかけたりはしない。
そうだここは交渉だまずはインタビューしに来たことを明かさねば。
俺は覚悟を決め顔をあげるがしかしその前に、
「ちなみに三男は宗教性の違いから現在ロックバンドを営んでいる」
俺の腹筋は死んだ。
まずいメシを食うよりかはましかと思って持参しておいたクラッカーを
もりもりもりもりもりもりもり噛んでミネラルウォーターで流し込み
ようやく準備が整ったことを確認してから部屋を後にした。
道中は特に何のハプニングもなく進んだが、逆にそれが俺を急き立てているようで
両肩にどんよりとしたプレッシャーがねばりつくように重くのしかかっている。
とはいえ俺の行く先は本来ならそういう雰囲気とはすえ遠い場所なんだが
ここが暗黒街ゴッツ・サムイシティであることを踏まえるとあまり暢気に構えてられやしない。
何せ仮面のレスラー・メイド・ガイに聞いた場所はよりにもよって教会、教会だ!
このような街で教会なんてふざけすぎにもほどがある!実はおちゃめなコメディアンか!
実は神の扉をノックしたら我らの全知全能である父の子がにこやかにサムズアップしながら
イスカリオテのユダにチョークスリーパや十字固めでもしているのかと想像してみたが
あまりのシュールさに笑いも失せてむしろむせる。
せめて悪魔崇拝してる地獄の覆面レスラーが毎夜サバトフェスティバルを開催しているほうが
いくばくか健全に見えてしょうがないしそのほうがこの街にはお似合いだ。
正直ヤギの生贄とか処女の生血なんてものは流石に持ち合わせてないので
今鞄のかなに詰まっているプロテインとか栄養剤で見逃してくれたらうれしい。
脅威のスーパータンパク質、お水にも溶けるイチゴ味!
あ、やべ、地獄レスラーにイチゴ味は壮絶なまでに似あわん。
いや似合わないのはこの際置いとくとして好みじゃなかったらどうしよう。
最悪俺は死ぬかもしれない。
なんて誰に言い聞かせるでもなくお寒いジョークをとばしているうちに
さっさと目的地に着いてしまった。
オーケー・ベイビーここまで来たんだ男は度胸じゃ破れかぶれに突貫じゃと
覚悟を決めてそれでもチキンな俺はまずは外観をじろじろ観察することから始める。
ファッキンな文様だとか呪文めいたものだとかどくろとか生血とかは見当たらない。
強いて挙げればこざっぱりとした、ただし悪く言うなら質素でさびれた教会だ。
なんというか田舎に普通に転がってそうな雰囲気で逆に俺は面食らう。
これならまだもうちょっと生贄小屋とかあるほうがらしくて
俺は安堵することだるきっとそうだろう。
だがここにはそんなものがないから逆に恐ろしいし不自然でしょうがない。
まあ来ちゃったものは仕方ないしここまで来て帰ったんじゃマッスル編集長に
カカトギロチンからの特別お仕置きフル・コースを受けそうなのでそれはそれで怖いから我慢する。
男は度胸なんでもやってみるもんだから教会に入るのもうろたえない!
そう覚悟して扉に近づきえいやと押してみるのだが・・・・開かない。
あれ、じゃあ引くのかと今度はぐいっとやってみるがやはり開かない。
おいちょっとまてまさか留守か留守なのか鍵をかけて出払っているのか
そりゃあないぜファッキン・ベイベと俺はガンガン扉をたたく。
だがもちろん開くはずもなく、俺の拳はむなしく扉を打ち据えるだけで
開けゴマの呪文もなければ魔法の鍵もMI6ばりの潜入技術もない。
おいおいどうすりゃいいんだよと思ったんだがなんてことはない帰ってくるのを
待っていればいいんだが果たしていつまで待ち続ければいいのかがわからないのが不安で
もしかしたら真夜中二時までここでたちっぱかと考えると恐怖心がみなぎってくる。
やっぱかえろうかななんて文句も出かかってくるくらいだ。
だがふとちゃぷん、じゃぷんという水たまりを踏んだようなあるいは風呂に足を入れたような
不自然な音がしたので俺は振り返る。
音源は扉の向こうからだ。そしてどんどん近づいてくる。
おいおい実は正常なのは外見だけで扉の中は血の海かと覚悟を決め
俺はばばばっと扉から飛び退って営業スマイルを浮かべる努力をする。
にこやかトークが通じる相手ならいいんだがあんまり期待できそうもないし
笑顔よりひきつった顔のほうが好みかもなあなんて考えもするけど
その間にもどんどん近づいてきてやがて扉の前に到着して扉が開きそして俺は神を見た。
オウ・ジーザス!おいおい、冗談だろう?嘘だと言ってくれよマイガッ!
ガキの頃親に無理やり連れて行かされた教会にかかっていた
ナザレの子の顔そのものが扉の向こうから現れやがったんだ!
柔和な笑み、整えられたひげ、長くのばされたくしゃくしゃの髪、
何から何までそっくりさんで俺はビビるし足ががくがくと震える。
おいおいいつ地上に復活したんですか今日がハルマゲドンですかあるいは明日が世紀末?
イナゴの大群とかいうのはひょっとしてアムステラ軍のことなんじゃあありませんか、
なんてジョークも出てくるくらいなんだが、ただちょっと残念なことがある。
顔の位置が高いんだ。
具体的には、大体床から百九十センチほど上にある。
うん、そうなんだ、要するに、現代の行ける神の子はどうゆうことか、
ファッキンなマチョズムに目覚めてプロ・レスラーの身体に宿っていやがったんだよぉ!
俺は膝をついた。こんなんアリかよぉと!
そして同時に気づいちまったんだ、ちゃぷちゃぷとした音の理由と扉が開かなかった理由に。
汗だ。大量の足首まで隠れそうなほどのくさいくさい男むっさい汗が溜まって、
扉がうんともすんともいわなくなるまで溜まってせき止めていやがったんだ。
べしゃべしゃと外へと流れ出ていく汗が俺の両膝から下を濡らす。
そんな俺を見ながらファッキン・ジューダス・マチョ・クライストがいう。
「ようこそ迷える子羊よ、神はいつでもあなたをお待ちしております。
懺悔の用意はよろしいでしょうか?お祈り用の十字架はお持ちですか?
全身の筋肉がガタガタ震えるまでトレーニングする心の準備はできていますか?」
ごめん意味わかんない。
「ようこそ我らが教団へ。さささ、どうぞ中へお入りなさい」
そう言って、天使のようなマチョズムの笑顔を浮かべて
女子供の頭ほどはありそうな手のひらを俺の両脇に差し込み軽々と持ち上げる。
そうして俺の背をそっと押して教会の内部へと進ませようとする。
というかあれだなそんなどでかい両手なのに猫の子供をなでるように
そっと押し出すなんて器用というか手加減上手ですねマチョ神さまなんて
皮肉も出かかるんだが内部を見て俺はぎょっとする。
なぜなら教会中央奥に鎮座しているはずのキリスト像がふつうじゃないからだ。
どう普通じゃないって?おいおい俺に言わせるのかよと思うんだが
ここで冷静に突っ込みを入れれる人間は俺しかいないみたいなんで仕方ないから言ってやる。
どこの教会にウエイトスタック式のトレーニングマシンにまたがったイエス像があるねん!
今俺の真後ろにいるであろうファッキン・ジューダス・マチョ・クライストと違って
こっちの像は普通の細マッチョというか痩せてるのに何気張って踏ん張って
無茶してるんですかねと俺は問い詰めたい、いややっぱよそうそんなこと言ったら後が怖い。
まあどっちにしろここがまともじゃないことはよくわかった。
ついでに言うとその両脇にたたずんでいる二人の男を見てなおさら俺は確信した。
後ろの奴とクリソツだ。
つまりどいつもこいつも同じ顔をしたファック・ファック・ファックで
ついでに言うとカソックも着ずにレスラーパンツを履いてやがる。
ただし色だけは別物で、青系・赤黒系・銀系の三つに分かれている。
だからどうしたよといったところだが、ぶっちゃけどうでもいいんだが気になったんだ済まない。
眩暈を覚えふらふらと、倒れ込むようにチャーチチェアーに座り込むがおい一寸待てとまたもや驚く。
いやんちょっとまってこれ椅子じゃなくてマルチシットアップベンチじゃねーか。
つまりここに来た信者は神に祈りながら腹筋でも鍛えるのだろうか・・・・。
あるいは歌いながらベンチプレスでフンフン、フンフンと上げ下げしてんの?
そのあまりのシュールさに俺はくつくつと笑い声をあげてしまいそうになり、
必死に我慢してどうにか真顔を保とうとする。
そんな俺に三人の同じ顔どもが近づいてくる。
やがて三人はこういった。
「初めまして、迷える小羊よ。私がここの神父のビスカルチェだ」
「同じく次男のビスカルチェ」
「末弟のビスカルチェです、よろしく」
全員同じ名前やないかい!
思わず叫びそうになったが我慢する。
俺は大人だ突然水知らずの人間にどなりかけたりはしない。
そうだここは交渉だまずはインタビューしに来たことを明かさねば。
俺は覚悟を決め顔をあげるがしかしその前に、
「ちなみに三男は宗教性の違いから現在ロックバンドを営んでいる」
俺の腹筋は死んだ。