異郷を選びし果実達
~ 某オレンジ農場経営者邸宅 ~
その邸宅の主は、若くしてオレンジ農場経営の傍ら、創作日本料理レストランをプロデュースした辣腕経営者であった。
しかし極々一部の者は知っている。暗黒非合法な地下プロレス世界において、柑橘類を模したマスクを特徴とした残虐非道な一族の事を。
そして彼が、その一族に名を連ねる者である事を。その彼の裏の名は・・・マスク・ド・サンキスト"ハーモニー"と言った。
しかし極々一部の者は知っている。暗黒非合法な地下プロレス世界において、柑橘類を模したマスクを特徴とした残虐非道な一族の事を。
そして彼が、その一族に名を連ねる者である事を。その彼の裏の名は・・・マスク・ド・サンキスト"ハーモニー"と言った。
表の世界からは判らぬ事であるが、実はハーモニーはアムステラと通じていた。
故に、地球を裏切りアムステラに組する事を選んだサンキスト達をその財を活かして支援していたのである。
故に、地球を裏切りアムステラに組する事を選んだサンキスト達をその財を活かして支援していたのである。
ある日の夜。筋骨隆々とした覆面姿の怪人物が、徒手空拳でハーモニーの邸宅の裏口から堂々と進入した。
詰めていた警備の者に誰何されるも、彼らを難なく退けた怪人物は、悠々と建物の奥の大広間の方へと進んで行く。
その大広間では銃を構えた数名の警備員が怪人物を待ち構えていた。だが、怪人物は暴れる事も無くホールドアップ。誰かを待つ様な感じで小首を傾げる。
詰めていた警備の者に誰何されるも、彼らを難なく退けた怪人物は、悠々と建物の奥の大広間の方へと進んで行く。
その大広間では銃を構えた数名の警備員が怪人物を待ち構えていた。だが、怪人物は暴れる事も無くホールドアップ。誰かを待つ様な感じで小首を傾げる。
怪人物の期待は直ぐに叶えられた。年の頃は50代ほどの男性が奥から現われ、警備員達を下がらせて彼を招いたのだ。
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~ ハーモニーの書斎 ~
「・・・さて、この狼藉は一体何かね? 私に恨みがあるにしては妙な行動だが?」
「キィース! 逆だねぇ。むしろ俺は一代でこれだけの財を成したアンタを尊敬している。だがまぁ、今日の話はそれじゃ無ぇ」
「キィース! 逆だねぇ。むしろ俺は一代でこれだけの財を成したアンタを尊敬している。だがまぁ、今日の話はそれじゃ無ぇ」
そう言うと、怪人物はおもむろに立ち上がって一礼する。その顔を覆う覆面は、黄土色の肉厚な柑橘類を模したもの。
「お初にお目に掛かる。俺の名はマスク・ド・サンキスト"ザボン"。今日はアムステラ帝国に俺を売り込んで欲しくて参上した」
「確かに。我らはアムステラ陣営と接触しているが、それなら今度一族で…」「…キィス! アピールや実力に劣る凡百共と一緒に参加する気は無ぇよ」
「確かに。我らはアムステラ陣営と接触しているが、それなら今度一族で…」「…キィス! アピールや実力に劣る凡百共と一緒に参加する気は無ぇよ」
ハーモニーの発言を遮り、ザボンは太い人差し指をピンと上に伸ばす。
「アンタなら、新参者とは言えアムステラ陣営にそれなりの発言力を発揮できる筈だ。つまり俺が活躍するチャンスが多い場所に回して貰いやすい」
次いで、太い中指もピンと上に伸ばす。
「第二に、こりゃビジネスだ。アンタにも有能な俺を売り込んだってメリットが付く。Win-Winの関係って奴だな」
そのまま2本の指で勝利の証・Vサインを示す。
「キィース! キスキス! だがまぁ、表の警備の連中をノシた程度じゃ信じられんってならテストして貰って構わんぜ」
その発言を受けたか。書斎奥のアルコーブからしめやかに現れたタキシード姿の人影。
サンキスト一族らしくオーレンジな覆面を着用しているが、その右目のスライスオレンジはト音記号を模している。
サンキスト一族らしくオーレンジな覆面を着用しているが、その右目のスライスオレンジはト音記号を模している。
「では父上に代わり、このマスク・ド・サンキスト"コンコード"が、君をテストしてやろう」
そう言って、マスクの下から見える端正な口元を歪ませた。
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~ "ハーモニー"邸のトレーニング室 ~
リングの上に立つ覆面姿の2人。とはいえ外観はかなり違う。ザボンは身長180cmを優に超える上、裸になった上半身は大樹を思わせる。
対するコンコードはザボンより十数センチは低いだろうか。均整は取れているが細身の身体で、正装のままなので更に対比が激しい。
対するコンコードはザボンより十数センチは低いだろうか。均整は取れているが細身の身体で、正装のままなので更に対比が激しい。
「キィース! キスキス! ここの設備の充実っぷりは羨ましいねぇ。売込み待ちの間にでも使わせて貰いたいもんだな」
「そういうのはまず、このテストに合格してから考えるべきだろう?」
「キィース! そりゃそうだ・・・が、その格好のまま闘う気か?」
「あぁ。私が闘うべきリングは地下闘技場じゃないからね」
「そういうのはまず、このテストに合格してから考えるべきだろう?」
「キィース! そりゃそうだ・・・が、その格好のまま闘う気か?」
「あぁ。私が闘うべきリングは地下闘技場じゃないからね」
そう言うなり、コンコードは軽快なステップを踏み始める。カポエイラの基本動作、ジンガだ。
ザボンも合わせてジンガでリズムを刻み始める。
ザボンも合わせてジンガでリズムを刻み始める。
ヒ ュ ン ! ぶ ぉ ん ! ヒ ュ ン ! ぶ ぉ ん ! ヒ ュ ン ! ぶ ぉ ん !
互いに激しく蹴り技を繰り出し合う二人。初対面にも関わらず息の合った互いの蹴りが、まるで死の舞踏の様に一瞬前に相手が居た場所を切り裂いていく。
素早く鮮烈なコンコードの蹴りは大気を切り裂き、重厚で苛烈なザボンの蹴りも旋風を生む。
素早く鮮烈なコンコードの蹴りは大気を切り裂き、重厚で苛烈なザボンの蹴りも旋風を生む。
ヒ ュ ヒ ュ ン ! ぶ ぉ ぉ ん ! ヒ ュ ヒ ュ ン ! ぶ ぉ ぉ ん ! ヒ ュ ヒ ュ ン ! ぶ ぉ ぉ ん !
「キィース! どうよ? 俺の腕前は」
「大言壮語するだけあって、基礎はしっかり出来てる様だね・・・ならば、安心して使わせて貰おう!」
「大言壮語するだけあって、基礎はしっかり出来てる様だね・・・ならば、安心して使わせて貰おう!」
「 ア ー ハ ッ ハ ッ ハ ッ ハ ッ ハ ァ !! 」
ヒ ュ オ ッ ! ヒ ュ ン ! ビ シ ッ ! ヒ ュ オ ッ ! ヒ ュ ン ! ヒ ュ ン ! バ シ ッ バ シ ッ !
コンコードの宣言と共に、その蹴りの性質が変わった。鋭い蹴りがザボンの鼻先を掠め、ザボンが思わず怯んだ隙に素早く引き戻した足裏でこめかみを打つ。
足元を狙うローキックでザボンの注意を引き付け、その隙を穿つ様に繰り出される鳩尾と喉元への爪先蹴りの二連撃。
しかもそれらの連撃を出す間にも、先ほどの演舞の如くザボンの攻撃は避け続けている。
足元を狙うローキックでザボンの注意を引き付け、その隙を穿つ様に繰り出される鳩尾と喉元への爪先蹴りの二連撃。
しかもそれらの連撃を出す間にも、先ほどの演舞の如くザボンの攻撃は避け続けている。
・・・ピタッ。
コンコードの連撃が唐突に止まる。瞬時、躊躇ったザボンが動こうとした瞬間、それを嘲る様にコンコードの連撃は再開した。
「 ハ ァ ー ハ ッ ハ ッ ハ !! ア ー ッ ハ ッ ハ ッ ハ ァ !! 」
ヒ ュ オ ッ ! ビ シ ッ ! ビ シ ッ ! ヒ ュ オ ッ ! ヒ ュ ン ! バ シ ッ バ シ ッ ! ヒ ュ ン ! ビ シ ッ ! ・・・ピタッ。
「・・・今度はもっと痛いよ。耐えられるかい?」
「キィィ・・・ッス。素晴らしい。なんて素晴らしいんだ・・・」
「キィィ・・・ッス。素晴らしい。なんて素晴らしいんだ・・・」
薄ら笑いを浮かべたコンコードに対し、反撃すらままならず、恍惚とした口調で呟きを漏らすザボン。
「君に敬意を表して、『とっておき』を見せてあげよう!」
ヒ ュ オ オ ッ ! ヒ ュ ン ! ヒ ュ ン ! ヒ ュ ン ッ ! ヒ ュ ン ! ヒ ュ ン ! ヒ ュ ン ッ !
今まで見せた、薄皮一枚で外す『当てない蹴撃』と、外したと思わせ死角を突く『見えない蹴撃』。それを高速回転蹴りに組み合わせた必殺技。その名も!
『 メ イ ア ・ ル ー ア ・ ジ ・ ト ラ イ ア ン フ ・ コ ン ツ ェ ル ト ・ オ ー レ ン ジ !!! 』
(100%果汁オレンジジュースみたいにフルーティーで勝利の凱歌を歌い上げる兵隊の如き勇ましいミクシーサウンズを奏でるオーレンジなキックッッ!!!)
怒涛の蹴撃がザボンを襲う! その回転蹴りは刃で出来た大渦の如し!!
・・・ バ シ ィ ィ ン ッ !!
だが。おぉ、何と! ザボンは『当てない蹴撃』に強引に顔を突っ込んだのだ! それは刃の羽根を高速回転させた、カバー無しの扇風機に指を突っ込む様な暴挙!
しかし何にせよ、それでコンコードの蹴りが止まったのは事実である。
しかし何にせよ、それでコンコードの蹴りが止まったのは事実である。
「・・・俺の面の皮はブ厚いのさ。じゃ、俺も見せてやろう・・・ キ ィ ー ル ス !(Killss) キ ル 、 キ ル ス !! 」
ぶ お ぉ ん !! ぶ お ぉ ん !! ぶ お ぉ ん !! ぶ お ぉ ん !!
しかしザボンが繰り出したのはカポエイラでは無かった。その太い両腕から繰り出されたのは鉈の如きチョップの嵐!
次いで繰り出すはカポエイラ・・・に、空手やテコンドーなど別系統の蹴りが混じる。
次いで繰り出すはカポエイラ・・・に、空手やテコンドーなど別系統の蹴りが混じる。
「アンタ、マスク・ド・サンキスト"熱情(ヘルファイア)"って知ってるか?(SS作品『Rコロシアム 第四試合~Shake of Fire~』参照)」
「今も多分、どっかで闇プロレスでもやってるとは思うが・・・俺ぁアイツの研鑽振りに一目置いてるんだわ」
「今も多分、どっかで闇プロレスでもやってるとは思うが・・・俺ぁアイツの研鑽振りに一目置いてるんだわ」
ザボンが繰り出す重厚な連撃を、コンコードは避け続ける。それでも平常心ならば反撃は可能だったろう。しかし。
己の必殺技を強引にとはいえ破られた衝撃。サンキストの一族がカポエイラ以外の技を繰り出している衝撃。それらの多重衝撃がコンコードを縛っていた。
ようやく回復して反撃のミドルキックを放つ・・・がッ!
己の必殺技を強引にとはいえ破られた衝撃。サンキストの一族がカポエイラ以外の技を繰り出している衝撃。それらの多重衝撃がコンコードを縛っていた。
ようやく回復して反撃のミドルキックを放つ・・・がッ!
「 キ ル ス !! キ ル ! キ ル ス !! 」
ザボンはブリッジ状態に移行してそのミドルキックを回避。そこから倒立して、メイアルーア・ジ・コンパジッソ(コンパスの如き回転半月蹴り)を繰り出した!
その丸太の如き後ろ回し蹴りをかろうじて受けるコンコード。だが流石に体格差もあって、大きく吹き飛ばされて床に転がる。
その丸太の如き後ろ回し蹴りをかろうじて受けるコンコード。だが流石に体格差もあって、大きく吹き飛ばされて床に転がる。
「 そ こ ま で ! 」
ハーモニーの終了宣言を聞いたザボンは倒立から身軽に起き上がり、コンコードもよろめきながら立ち上がる。
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~ ハーモニーの書斎 ~
「・・・宜しい。テストは合格だ、ザボン君。では、可能な限り便宜を図ってあげるとしよう」
「キィース! 有難い。俺も想像以上に良いモノを見せて貰えて満足ですぜ」
「・・・ふむ? 『良いモノ』というと?」
「キィース! 有難い。俺も想像以上に良いモノを見せて貰えて満足ですぜ」
「・・・ふむ? 『良いモノ』というと?」
長椅子に深々と腰掛けたザボンはその問いを受け、太い人差し指を立てる。
「こいつぁ俺の私見だが、大半のサンキスト達は新鮮さ(身体能力)と刺激的果汁(天性の才能と残虐性)に頼り過ぎている」
そこで"チッチッチ"と、立てたままの人差し指を左右に振る。
「だからそのまま腐る(死ぬ)。今までレモン絞り(耐撃の百文字)に当たった連中も大概、新鮮果実(己の才能)ってだけで加工(創意工夫)が足りねぇ」
そこから中指も人差し指に添えて伸ばし、その指でハーモニーを指し示す。次いでコンコードを指し示した。
「だがっ! アンタは萎びた果実(才能不足)を加工で補った! しかもそこからフルーティなジュース(才能と努力の結晶)まで絞り出した!」
2本の指が開き、勝利の証・Vサインを示す。
「つまり! 俺の理論を立証する存在が眼の前に居る訳だ! キィース! キスキスッ!」
「・・・君は相当、変わり者の様だな。まぁ、それを言うと我ら親子もサンキスト一族から見れば変わり者の部類ではあるがね」
「キィース。それで俺も自分で色々調べたが、機会があったらマスク・ド・サンキスト"パラディン"にも会いたいねぇ」
「あの異端者に? ・・・あぁいや、君ならむしろ『先駆者』と呼ぶだろうがね」
「あぁ。うちの一族であそこまで思い切った行動を取る奴は少ないから、その加工っぷりは是非、この目で確かめてみたい」
「キィース。それで俺も自分で色々調べたが、機会があったらマスク・ド・サンキスト"パラディン"にも会いたいねぇ」
「あの異端者に? ・・・あぁいや、君ならむしろ『先駆者』と呼ぶだろうがね」
「あぁ。うちの一族であそこまで思い切った行動を取る奴は少ないから、その加工っぷりは是非、この目で確かめてみたい」
そこでコンコードも口を挟む。
「そう言えば先日、マスク・ド・サンキスト"オメガ"もアムステラの一員として戦線に参加するとか聞いた。先の理論で言うと彼も『加工が足りない』口か?」
「キィーッス・・・彼なら知ってるが、実力に関しては実際一級品だねぇ。そして、いち早くアムステラ陣営に鞍替えした見切りの速さに関しても評価できる」
「キィーッス・・・彼なら知ってるが、実力に関しては実際一級品だねぇ。そして、いち早くアムステラ陣営に鞍替えした見切りの速さに関しても評価できる」
ザボンは腕組みして沈思黙考。その後、オメガに対する己の評価を下す。
「実力は本物だが、それに溺れて加工を忘れたらやはり腐るね。でも見切りの良さはあるから、噂だけじゃなく今の姿を自分の目で確かめたい奴ではあるな」
「方針と優先順は決めたまえよ? でないと斡旋する父上が困る」
「キィス! キスキス! そこはまぁ、じっくり考えさせて貰うさ。だからアンタらも、俺を上手く売り込んでくれよ?」
「方針と優先順は決めたまえよ? でないと斡旋する父上が困る」
「キィス! キスキス! そこはまぁ、じっくり考えさせて貰うさ。だからアンタらも、俺を上手く売り込んでくれよ?」
こうして、新たなるサンキストがアムステラ陣営に組した。だが、彼のその後については今はまだ、詳しく語る時では無い・・・。