~ フランス某所・アムステラ軍基地 食堂 ~
この日は非番だったザイード。朝食を摂った後「さて何をしようか」と思案しかけた瞬間。背筋に悪寒が走った。
その悪寒の原因はたった今、視界の隅に入って来たカエデの姿。満面の笑みを浮かべてこちらへ向かって来ている。
その悪寒の原因はたった今、視界の隅に入って来たカエデの姿。満面の笑みを浮かべてこちらへ向かって来ている。
「おぉ、居た居た。ザイードお主、確か今日は非番じゃろ? つまり暇じゃろ? 暇じゃろ?」
「ンな繰り返し言わんでも暇ですぜ。・・・んで、格納庫と店長のトコ、どっちが先ですかい?」
「心得ておるのぉ! まずは格納庫じゃ。ささっ、早よ早よ」
「ンな繰り返し言わんでも暇ですぜ。・・・んで、格納庫と店長のトコ、どっちが先ですかい?」
「心得ておるのぉ! まずは格納庫じゃ。ささっ、早よ早よ」
微苦笑を浮かべたザイードは、カエデに促されるまま徐(おもむろ)に腰を上げた。
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~ フランス某所・アムステラ軍基地 格納庫 ~
格納庫には先客が居た。黒毛の犬獣人・ライゴウ。ザイード専用機の脇で何やら首を捻っている。
その乗機の名は『ウルトラ・スクラッチ 斬空一式改・恐沙(きょうしゃ) カエデ・エディション』
くっそ長い名前なので以降は『恐沙』と呼ぶが、作成時点では斬空一式をベースに三式を混ぜて改造した混成試作機であった。
その乗機の名は『ウルトラ・スクラッチ 斬空一式改・恐沙(きょうしゃ) カエデ・エディション』
くっそ長い名前なので以降は『恐沙』と呼ぶが、作成時点では斬空一式をベースに三式を混ぜて改造した混成試作機であった。
「おー、遅いでござるよ」「いや済まんの。ザイードを見つけるのにチト手間取ったのじゃ」
「ライゴウ? お前さんも呼ばれてたのか?」
「ライゴウ? お前さんも呼ばれてたのか?」
何故、ここにライゴウが居るのかと首を傾げたザイードに、その答えを返すライゴウ。
「いや、拙者の『荒光』が入荷したそうだから、後で店長の所へ同道する予定でござるよ」
「それと斥力機動や所作連動式操作の基礎を軽く教える件もあるし」
「それと斥力機動や所作連動式操作の基礎を軽く教える件もあるし」
「・・・はいっ? 何でそんな操作…あ"ーっ。何となく、分ったぜ」
恐沙の腕辺りを眺めてるライゴウと、ニコニコしてるカエデを見てザイードは全てを悟った。
「先の闘いでガラクタになった荒光を廃棄処分にするのも忍びなくてのぉ。恐沙の改良素材に使わせて貰ったのじゃ」
「あの斥力機動と所作連動式操作を用いれば、恐沙の回避性能も格段に向上する事、請け合いじゃからな」
「この恐沙の新機能を使いこなしたら、遠慮なく我に感謝を捧げるが良いぞ。現物、例えばお菓子でもうぇるかむじゃ」
「あの斥力機動と所作連動式操作を用いれば、恐沙の回避性能も格段に向上する事、請け合いじゃからな」
「この恐沙の新機能を使いこなしたら、遠慮なく我に感謝を捧げるが良いぞ。現物、例えばお菓子でもうぇるかむじゃ」
「我が愛機がこういう形で延命するとは想像もしてなかったでござるよ。後はザイード殿に操作法を伝えれば良いでござるな!」
「所作連動は腕だけだから、全身連動よりは楽でござろう。斥力操作には少々コツが要るでござるがな」
「所作連動は腕だけだから、全身連動よりは楽でござろう。斥力操作には少々コツが要るでござるがな」
「ハ、ハハ・・・お手柔らかに頼むぜオイ」
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~ 衛星軌道上・アムステラ軍宇宙基地 補給物資倉庫 ~
「・・・見ての通り。犬の兄ちゃんの機体を始め、注文の品は一通り揃ったから確認して貰おうかな」
巨躯の蜥蜴男がブフォッと鼻嵐を吹き出しつつ、得意げな口調で三人に語り掛ける。
「それから丁度、カエデ様が目を付けそうな装備が入荷したのでね。幾らかは取り置いてますぞ」
「おっ、気が利くのぉ店長。幸い、未だお小遣い(オーデッド隊の備品購入予算)には余裕があるから心配無用じゃ!」
「おっ、気が利くのぉ店長。幸い、未だお小遣い(オーデッド隊の備品購入予算)には余裕があるから心配無用じゃ!」
コモド店長の案内で、倉庫の一角にあるコンテナに向かう一行。
「装備ってのは初期型の雲殻に搭載されてた『護鬼』だが、お前さん方は知ってるかね?」
「はて? 少なくとも、宇宙軍に居た頃に聞いた覚えは無いでござるな」
「そりゃま、主に大気圏内で使う多機能チャフだからなアレ。お前さんが知らネェのはしゃーないだろ」
「アレかぁ・・・いや、性能は認めるのじゃよ。じゃがアレかぁ・・・心臓に悪いから、予め聞いてて良かったのぉ」
「はて? 少なくとも、宇宙軍に居た頃に聞いた覚えは無いでござるな」
「そりゃま、主に大気圏内で使う多機能チャフだからなアレ。お前さんが知らネェのはしゃーないだろ」
「アレかぁ・・・いや、性能は認めるのじゃよ。じゃがアレかぁ・・・心臓に悪いから、予め聞いてて良かったのぉ」
コンテナの側壁扉を開いて照明を点けると、中には茶色い塊が所狭しと詰められて居た。
赤ん坊の腕ほどの大きさの、甲虫の様な形状をしたその代物が、多用途チャフ『護鬼』である。
妨害電波の発信から、誘導ミサイルの攪乱、対レーザー兵器防御まで多種多様な用途に対応した万能装備。
赤ん坊の腕ほどの大きさの、甲虫の様な形状をしたその代物が、多用途チャフ『護鬼』である。
妨害電波の発信から、誘導ミサイルの攪乱、対レーザー兵器防御まで多種多様な用途に対応した万能装備。
「こいつは多機能の割には使い易い。ただ、使い方の関係で消耗品に近いからな。費用対効果が悪いのが欠点だ」
「それと嵩張るから、収納に余裕がある機体じゃなきゃ組み込めんのも難儀だな」
「それとほぼ使い捨て前提なだけに、カスタム機で使うならともかく量産機の標準装備にするには少々お値段が張り過ぎる」
「だから、ただでさえ雷殻や雲殻は少々の攻撃には素で耐えるのに、護鬼なんぞ要らんだろう?って話もあるんだ」
「それと嵩張るから、収納に余裕がある機体じゃなきゃ組み込めんのも難儀だな」
「それとほぼ使い捨て前提なだけに、カスタム機で使うならともかく量産機の標準装備にするには少々お値段が張り過ぎる」
「だから、ただでさえ雷殻や雲殻は少々の攻撃には素で耐えるのに、護鬼なんぞ要らんだろう?って話もあるんだ」
「うむ。事情は分かるぞよ。しかしコレは・・・ま、良いじゃろ。組み込めるのは恐沙ぐらいじゃけどな」
「あ、カエデ様? 先日のアーマードなんちゃら絢雨なら…」「…組まん! あの仕様は暫くお蔵入りにするのじゃ!」
「いや、別に俺は構わんですが。でもそんなに嫌ですかねぇ? たかがゴキ…」「…その名を呼ぶでないっ!」
「いや、別に俺は構わんですが。でもそんなに嫌ですかねぇ? たかがゴキ…」「…その名を呼ぶでないっ!」
「見た目があんまり良くないのは、まぁ分からんでも無いでござるがな」
「・・・しっかし皆、何でそんなに嫌うのかねぇ? ちょっと旨そうじゃないか?」
「「「・・・ハァッ?」」」
「いや、見た目が揚げコオロギに似てるからな。アンタらだって干し魚も食ってるんだし、似た様なモンだと思うが?」
「いや~。流石にそれは無いでござる・・・」
「そーいやそうか。種族的にはそういう見方もあるのか・・・」
「店長。悪いがその件に関しては理解出来んし、したくも無いのぉ・・・」
「そーいやそうか。種族的にはそういう見方もあるのか・・・」
「店長。悪いがその件に関しては理解出来んし、したくも無いのぉ・・・」
げんなりした顔で護鬼の話題を締め括ったカエデが、フト何かに気付いた顔になって話を変える。
「ところで店長? そういえば他にも雷殻のパーツを結構仕入れておるみたいじゃのぉ?」
「・・・我の見立てでは、あっちのは脚部ユニットじゃな。じゃが、あれはそう多用されておらん筈じゃろ?」
「・・・我の見立てでは、あっちのは脚部ユニットじゃな。じゃが、あれはそう多用されておらん筈じゃろ?」
「流石、カエデ様。近々、雷殻をベースにした試作機の戦闘テストが数か所で行われる予定でしてね」
「その基本パーツを仕入れる流れで、護鬼も仕入れてたって訳でさぁ」
「そうそう。そちらの近所でも実戦での戦闘テストを行うそうなんで、それに便乗するなら口入れしますがね?」
「その基本パーツを仕入れる流れで、護鬼も仕入れてたって訳でさぁ」
「そうそう。そちらの近所でも実戦での戦闘テストを行うそうなんで、それに便乗するなら口入れしますがね?」
「ふむ! うちの隊はしばらく足場固めじゃし、数日くらいは良いじゃろ。試験運用が出来るなら望む処じゃ!」
「ザイード、お主も構わんじゃろう?」
「ザイード、お主も構わんじゃろう?」
「そりゃま、恐沙の扱いにも慣れとかんと厄介ですからねぇ」
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~ 数日後。東欧方面アムステラ軍基地 会議室 ~
数名ずつの小集団がぞろぞろと会議室に入室し、円卓を囲んで適当な席に座ってゆく。
だが、そこには初対面の集団同士もある様だ。
だが、そこには初対面の集団同士もある様だ。
まずはこの中で最も違和感のある面子。この基地内で最年少であろう少女と、倦怠感を漂わせた中年男のコンビ。
無論、それはオーデッド隊のカエデ・モミジとザイードである。
無論、それはオーデッド隊のカエデ・モミジとザイードである。
「・・・オイ? あそこのちびっ子はどっから紛れ込んだ? クレイオ、まさかお前。ニコニコハウスから連れて来たのか?」
「ンな訳が無かろうなのだ! 第一、彼女は軍服を着とるじゃろうが!」
「あぁ。あちらはオーデッド隊の技術士官、カエデ・モミジ殿ですよ」
「ンな訳が無かろうなのだ! 第一、彼女は軍服を着とるじゃろうが!」
「あぁ。あちらはオーデッド隊の技術士官、カエデ・モミジ殿ですよ」
大柄な若者の囁きに、修道女風な服装の少女が激しくツッコミを入れる。それを取りなす様に解説する柔和な物腰の若者。
彼らはアムステラ国教騎士団・クレイオ隊のシアンとクレイオ。
そして白盾騎士団のアレス・ヘルストロームである。
そして白盾騎士団のアレス・ヘルストロームである。
「テストパイロットがどうとかって話だと聞いたが、どういう取り合わせなんだこりゃあ?」
「その疑問には同感だが、会議室の中にまで食い物を持ち込むな!」
「その疑問には同感だが、会議室の中にまで食い物を持ち込むな!」
持参した唐揚げを頬張りながら辺りを見回してる肥満体の黒人と、苦々し気な顔をしてそれを咎める眼光鋭い男。
「何でも、実験機は雷殻がベースの機体だとか聞きましたが?」
「その様だな。格闘仕様だそうだから、何かの参考になるかもしれない」
「その様だな。格闘仕様だそうだから、何かの参考になるかもしれない」
資料を見ながら生真面目な顔で発言する若者と、同じく生真面目に返答する妙齢の女性。
「皆、揃った様だな。それでは今回のテスト戦闘の概要を説明しよう」
静かに響く声でそう告げた男。彼の名を知る者は誰も居ない。
人はただ『影狼隊隊長』という呼称を知るのみである。
人はただ『影狼隊隊長』という呼称を知るのみである。
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~ 会議室・会議進行中 ~
「要するに、その『雷迅』と『封刃』という大型操兵の稼働・戦闘実験が目的なのだな」
「慣熟訓練の後、地球側の小部隊を対象に実際に戦闘を行って実戦でのデータ収集をする、と」
「それで、我々にその実験機のテストパイロットをやらないか?と持ち掛けた訳か」
「慣熟訓練の後、地球側の小部隊を対象に実際に戦闘を行って実戦でのデータ収集をする、と」
「それで、我々にその実験機のテストパイロットをやらないか?と持ち掛けた訳か」
まずはアミが今回のテスト概要を確認。
「あ。こっちはこのテストに便乗する形で『恐沙』の実戦運用テストをさせて貰うんで、どーぞ宜しく」
と、ザイードが実戦テスト内容に補足を入れる。
「テストパイロットの件は、アミ隊長は隊長だから論外として。フランチェスコ、お前も駄目だ」
「アァッ? いきなりダメ出しかよ!」
「その雷迅や封刃の機体概要を良く読んでみろ。お前ではダイエットしないと無理だ」
「アァッ? いきなりダメ出しかよ!」
「その雷迅や封刃の機体概要を良く読んでみろ。お前ではダイエットしないと無理だ」
「それなら、私にやらせて下さい!」
アキナケスのこの言葉を聞いて、アミはマッシーモを一瞥。
彼が静かに頷き返したのを見て、アミはアキナケスの志願を了承した。
彼が静かに頷き返したのを見て、アミはアキナケスの志願を了承した。
「ふーん。何だか面白そうな操兵じゃないか。おっ、戦闘相手のデータもあるのか・・・んっ?」
「どうしたのじゃ? シアン」
「いや、こいつらの機体には見覚えがあるな・・・って、やっぱりそうだ。以前、こいつらと軽く戦った事があるぜ」
「どうしたのじゃ? シアン」
「いや、こいつらの機体には見覚えがあるな・・・って、やっぱりそうだ。以前、こいつらと軽く戦った事があるぜ」
戦闘対象予定の地球側機体を見ていたシアンが、その機体の肩を指差す。
そこに描かれていたのは『赤い蛇のエンブレム』であり、他の機体にも同様の紋章が入っていた。
主に6型と呼ばれる機動マシンで構成された部隊だが、その武装は多様である。
そこに描かれていたのは『赤い蛇のエンブレム』であり、他の機体にも同様の紋章が入っていた。
主に6型と呼ばれる機動マシンで構成された部隊だが、その武装は多様である。
「彼らは『レッドスネーク隊』という手練れの傭兵部隊だ」
「とはいえ、無理をしなければ交戦から退却までの過程に支障はあるまい。多分、な」
「とはいえ、無理をしなければ交戦から退却までの過程に支障はあるまい。多分、な」
そこに影狼隊隊長の補足説明が入る。
「よし、じゃあ俺…」「私に雷迅を使わせて貰えますか?」
シアンの科白を遮ってアレスが発言する。
それに反駁しようとしたシアンだが、真剣な表情をしたアレスの横顔を見て、肩を竦めて口を閉じる。
それに反駁しようとしたシアンだが、真剣な表情をしたアレスの横顔を見て、肩を竦めて口を閉じる。
「・・・ふむ。アレス君の操縦ならば模範的な戦闘データが取れそうだ」
「シアン君も優秀なのは認めるが、少々癖が強い戦い方だからな」
「シアン君も優秀なのは認めるが、少々癖が強い戦い方だからな」
影狼隊隊長はアレスの発言に賛意を示してから、軽く苦笑いを浮かべて話を続ける。
「いや。他にも数ヶ所の地域でテストを実施してるのだが、中には独自の戦法を使うテストパイロットも居てね」
「彼の戦闘データ自体も参考にはなるが、あの戦法はほぼ彼専用と言わざるを得ないからな・・・」
「彼の戦闘データ自体も参考にはなるが、あの戦法はほぼ彼専用と言わざるを得ないからな・・・」
「ハッ!『ほぼ』か?」「…あぁ。『ほぼ』だ。とはいえアレを汎用化するのには、かなり手間が掛かるだろうな」
間髪入れず放たれたシアンの指摘に、ニヤリと笑って影狼隊隊長は言を返す。
「それではアレス君に雷迅の、アキナケス君には封刃のテストパイロットをお願いしよう」
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~ 機体スペック解説 ~
『雷迅』『封刃』は、いずれも大型砲戦機『雷殻』をベースとした格闘仕様の機体である。
『雷殻』は元から脚部の無い大型の機体なのだが、それに脚部を装備。
(因みに『雷殻』を空戦仕様にしたのが『雲殻』である)
それによって汎用操兵の『羅甲』の1.5倍はあろうかという大型操兵と化す。
(因みに『雷殻』を空戦仕様にしたのが『雲殻』である)
それによって汎用操兵の『羅甲』の1.5倍はあろうかという大型操兵と化す。
また、両肩に装備された轟雷砲を撤廃。その代わり背に2基の大型ブースターを背負って機動力を向上させる。
ここまでの時点では、雷迅と封刃に差異は無い。
だが雷迅は、各種内蔵格闘戦武装が組み込まれた、強襲や拠点防衛に長けた機体に仕上げられている。
そして封刃にはその手の武装が無い代わり、先に言及された『護鬼』や行動阻害の用途を持つ『鉄砂塵』を内蔵する。
だが雷迅は、各種内蔵格闘戦武装が組み込まれた、強襲や拠点防衛に長けた機体に仕上げられている。
そして封刃にはその手の武装が無い代わり、先に言及された『護鬼』や行動阻害の用途を持つ『鉄砂塵』を内蔵する。
その運用方法は、封刃を囮&攪乱役として、攻撃力が高い雷迅が暴れる仕様となっている。
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~ そして更に数日後。東ヨーロッパ戦線・某所 ~
「こちらアキナケス。配置に着きました」
「アレス。配置に着きました」
「ザイード。こっちも手筈通りですぜ」
「アレス。配置に着きました」
「ザイード。こっちも手筈通りですぜ」
巡回行動を取る機動マシン群を観察しながら、実戦テスト戦闘部隊は襲撃のタイミングを計る。
「6型が三機、四脚戦車が一両、それと少し離れて索敵行動を取ってる偵察機?が一機か」
「その偵察機とやらにも要注意じゃ。充分離れて居るとは思うが、この絢雨が見つかる心配は無いかの?」
「心配無用!この大天才が仕上げたステルス機能を稼働中のこの機体に気付く敵など居ないのじゃ!」
「その偵察機とやらにも要注意じゃ。充分離れて居るとは思うが、この絢雨が見つかる心配は無いかの?」
「心配無用!この大天才が仕上げたステルス機能を稼働中のこの機体に気付く敵など居ないのじゃ!」
一方、ステルス偵察機仕様で、搭乗スペースを拡幅した『超ハイパースペシャル絢雨カスタム改・隠密指令機仕様』の中で
3名の女性達も成り行きを見守る。
3名の女性達も成り行きを見守る。
「それにしても『絢雨』を用途に応じてここまで改造するとは恐れ入ったな」
「全くじゃ。サイズ的にシアンやあのデブチンは無理だったとはいえ、3人も搭乗できるスペースを確保するとはのぉ」
「そこが我の大天才たる由縁よ!今回は大人しくサポートに徹する予定じゃったから、ちゃんと快適性も追求しておるのじゃ!」
(※但し、搭乗人員増加や隠密性、及び快適性の代償に、この仕様では戦闘能力が激減している)
「全くじゃ。サイズ的にシアンやあのデブチンは無理だったとはいえ、3人も搭乗できるスペースを確保するとはのぉ」
「そこが我の大天才たる由縁よ!今回は大人しくサポートに徹する予定じゃったから、ちゃんと快適性も追求しておるのじゃ!」
(※但し、搭乗人員増加や隠密性、及び快適性の代償に、この仕様では戦闘能力が激減している)
「では、まずは私が仕掛けます!」「私もアキナケス殿に連動して攻撃します」「こっちは待機な。ヤバかったら出る」
「よし、行けっ!」
アミの号令と共に、封刃がレッドスネーク隊の右前方から高い軌道のブースター跳躍。一気に間合いを詰めて強襲する。
それと同時に雷迅も、レッドスネーク隊の右後方から低い軌道のブースター跳躍を仕掛けて強襲。
それと同時に雷迅も、レッドスネーク隊の右後方から低い軌道のブースター跳躍を仕掛けて強襲。
「何じゃあっ!偵察機がもう反応しおった!雷迅を狙っておるわい!」
「アレス殿、危ないのじゃ!」
「アレス殿、危ないのじゃ!」
迫る雷迅に向けて即座に狙撃銃を構えた偵察機を見て、カエデとクレイオが慌てて反応する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~ 戦闘開始 ~
「ケッ!ボウズの予感が又、当たったな!右斜前からでかいのが跳んで来やがった!」
「右斜後にも敵だぜっ!」
「右斜後にも敵だぜっ!」
戦車乗りのグエン老人が、強襲を仕掛けたアキナケスの封刃に反応して叫ぶ。
本隊から離れて索敵していたメイズ機は、それと同時に低い軌道で急速に迫るアレスの雷迅に反応。
すかさず狙撃銃で、その巨大な機体の眼を狙う。
本隊から離れて索敵していたメイズ機は、それと同時に低い軌道で急速に迫るアレスの雷迅に反応。
すかさず狙撃銃で、その巨大な機体の眼を狙う。
「…ッ!対応が速いっ!」ガイィンッ!!
焦りを帯びたクレイオの警告と、雷迅が眼前に左腕を掲げるのと、雷迅の左前腕に銃弾が命中して弾けるのがほぼ同時。
そのまま体勢を若干を崩しながらも着地しようとした雷迅の足元に滑り込んで来た塊は、携帯型の吸着地雷っ!
そのまま体勢を若干を崩しながらも着地しようとした雷迅の足元に滑り込んで来た塊は、携帯型の吸着地雷っ!
「上手いっ!ですが!『蛮・タックル』っ!」ボフゥッ! ガガガガガガガッ!!
雷迅は着地寸前、空中で身体を横倒しにする。そのまま背のブースターと脛のホバーブースターを吹かして空中突進!
それと同時に肩から生えた衝角を回転震動させ、手近に居たジーンの6型が構えた盾に目掛けて強烈な痛打を与える!
それと同時に肩から生えた衝角を回転震動させ、手近に居たジーンの6型が構えた盾に目掛けて強烈な痛打を与える!
一方、迎撃を受けているアキナケスの封刃の方も。
襲撃直後、まずはイリヤナとエトゥの6型によるアサルトライフルの迎撃。
しかしそれは、大型で頑丈な封刃の強襲を阻止するには力不足。だが他の武装では斜め上空を攻撃するのは困難。
襲撃直後、まずはイリヤナとエトゥの6型によるアサルトライフルの迎撃。
しかしそれは、大型で頑丈な封刃の強襲を阻止するには力不足。だが他の武装では斜め上空を攻撃するのは困難。
その時、グエンが駆る改造108式戦車・通称『108ターボ』が彼らの横に滑り込む。
「仰角取って右斜前敵に斉射!エトゥ、着地点にミサイル!」
「ジーン、右斜後敵を迎撃!イリはその援護!」
「ジーン、右斜後敵を迎撃!イリはその援護!」
108ターボに同乗する指揮官イブラヒムから、矢継ぎ早に攻撃指令が下される。
それと同時に108ターボは前の二脚を思い切り延伸、後ろ二脚を可動域ギリギリにまで縮める。
これによって仰角を確保。前方上空に向けた砲塔、ミサイルポッドの全てが封刃に照準を合わせた!
これによって仰角を確保。前方上空に向けた砲塔、ミサイルポッドの全てが封刃に照準を合わせた!
「 て ー っ !! 」ガウゥゥンッ! ズドドドドドドッッ!!
「何の!『護鬼』っ!」ぶわぁぁんっっ!
封刃の全身から小さな塊が噴出する。それらは迫るミサイルに取り付き、封刃への有効打となる前にミサイルを誘爆させる。
流石に砲弾の方を止めるには至らず、戦車砲は封刃に命中してその巨体を揺らしたが、それでも致命傷には程遠い!
流石に砲弾の方を止めるには至らず、戦車砲は封刃に命中してその巨体を揺らしたが、それでも致命傷には程遠い!
ズウゥゥンッ! キュドドドドドッッ!!
地響きを立てて着地した封刃に向けてエトゥ機はミサイルの誘爆距離ギリギリまで踏み込んで、有線ミサイルを斉射!
「有線っ…通じるか?『鉄砂塵』っ!」
封刃が両腕を前に突き出すと手甲の上から細身のノズルがせり出し、そこから勢い良く砂塵が噴き出す。
そしてその砂塵がミサイルのワイヤーに触れると、妨害電波等の影響を受けぬ筈の有線誘導にすら狂いが生じたのだ!
そしてその砂塵がミサイルのワイヤーに触れると、妨害電波等の影響を受けぬ筈の有線誘導にすら狂いが生じたのだ!
しかしこの距離が詰まった状態では。多少軌道を逸らしたとはいえ、何発かのミサイルが封刃に命中した!
「いかん!支援を頼む!」「了解っと!」
アミの支援要請を受け、ザイードの恐沙は超低空飛行で戦場へと突っ込んで行った。
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~ 雷迅サイド ~
雷迅の必殺突進を真っ向から受けたジーン機の盾には大穴が空き、その裏にある左前腕も半壊している。
しかしこれが本気の突進だったら、体格及び質量の差でジーンの6型は大きく弾き飛ばされて居た筈。
しかしこれが本気の突進だったら、体格及び質量の差でジーンの6型は大きく弾き飛ばされて居た筈。
肩衝角のギミックを用いた『蛮・タックル』の威力。アレスは驚きつつもモニターで観察してその効果を収めていた。
だがその観察行動による数瞬の間は、ジーンが立ち直るのに充分な間でもあった。
だがその観察行動による数瞬の間は、ジーンが立ち直るのに充分な間でもあった。
「まだまだぁっ!」
ジーン機が右前腕に装備した格闘兵器『シザーズ・アーム』を斜め上、雷迅の首を目掛けて繰り出す。
その巨大鋏に首をマトモに挟まれたら、如何に雷迅とて只では済むまい。
その巨大鋏に首をマトモに挟まれたら、如何に雷迅とて只では済むまい。
「『パワー・断』」
しかしアレスは至極冷静に左手刀を垂直に振り下ろす。
それと同時に手刀を形成した雷迅の小指から前腕部までの手刀の刃に当たる直線部分が白熱化。
さながら炎を纏った鉈の様になり、6型の右拳ごとシザーズ・アームを両断する。
それと同時に手刀を形成した雷迅の小指から前腕部までの手刀の刃に当たる直線部分が白熱化。
さながら炎を纏った鉈の様になり、6型の右拳ごとシザーズ・アームを両断する。
直後、身を沈めながら振り向いた雷迅は、背後からメイスを振り下ろそうとしていたイリヤナ機にアッパーを繰り出す。
その拳は、イリヤナ機のメイスを持った手首を下から殴り抜け、その勢いと背のブースターで垂直に飛び上がる。
その拳は、イリヤナ機のメイスを持った手首を下から殴り抜け、その勢いと背のブースターで垂直に飛び上がる。
「『雷迅… 」
雷迅は振り上げた右拳を空中で引き戻しつつ、帯電した左拳を真下に向けて瓦割パンチを放つ構え。
同時に背のブースターの下部ジョイントが分離、上部ジョイントを軸にブースター本体を半回転させる。
それでブースターの噴射口が上を向き、落下スピードが劇的に高まる!
同時に背のブースターの下部ジョイントが分離、上部ジョイントを軸にブースター本体を半回転させる。
それでブースターの噴射口が上を向き、落下スピードが劇的に高まる!
「 …ナックル』っ!」ギィィンッ! ズガアァァァンッッ!!
大地に叩き付けた左拳から雷撃が迸り、ジーン機、イリヤナ機の電子機器機能を狂わせる。
「…元から直撃は外すつもりでしたが、これは手厳しい。早々に引き上げる理由になりましたね」
ガチッ・・・ガジィン
展開したブースターが畳まれ、下部ジョイントが噛み合う。しかし、片側のブースターが戻る動きはぎこちなかった。
何故なら空中でブースター降下をする瞬間、メイズ機の狙撃が上部ジョイント部に命中していたからである。
展開したブースターが畳まれ、下部ジョイントが噛み合う。しかし、片側のブースターが戻る動きはぎこちなかった。
何故なら空中でブースター降下をする瞬間、メイズ機の狙撃が上部ジョイント部に命中していたからである。
「アキナケス殿は…よし。頃合いですね」
封刃の方を一瞥した雷迅はぐっと身を沈めてから大跳躍。戦場から急速に離脱していった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~ 封刃サイド ~
「くそっ、中々やる!」
アキナケスは悪態を付きながら封刃の状態をチェック。被弾したとはいえ、未だ中破未満で収まるダメージである。
少々骨は折れるが囮としてもう一踏ん張りしようかと思った瞬間、高速接近する機体から通信が入る。
少々骨は折れるが囮としてもう一踏ん張りしようかと思った瞬間、高速接近する機体から通信が入る。
「もうテストは充分だろ、兄ちゃん。今度はこっちのテストも手伝って貰うぜ」
封刃の背後から地を舐める様な軌道で急速に近づいた恐沙が、まるで腕立て伏せをするかの様な体勢で両腕を下に向ける。
その拳から放たれた斥力で、起き上がり小法師の如く上体を跳ね上げた恐沙。
その拳から放たれた斥力で、起き上がり小法師の如く上体を跳ね上げた恐沙。
恐沙の下半身は両側から何対もの機体固定用グラップルクローを生やした、蟹の胴体を前後に引き延ばしたかの様な形状。
身体を跳ね上げた勢いで、有無を言わさずグラップルクローで封刃のブースターを挟み込み、そのまま上空へと飛び上がる。
身体を跳ね上げた勢いで、有無を言わさずグラップルクローで封刃のブースターを挟み込み、そのまま上空へと飛び上がる。
「まー、テスト予算は潤沢なんだし。安全牌は多いに越した事は無いから使っとくかねー。『護鬼』っ!」ぶわぁぁんっっ!
恐沙の太くなった腕や背中の翼状部分の裏から多数の甲虫めいた塊が噴出し、レッドスネーク隊の追撃を阻害する。
そして恐沙と封刃も、そのまま戦場を離脱していった。
そして恐沙と封刃も、そのまま戦場を離脱していった。
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~ 戦闘後・レッドスネーク隊 ~
「よぉ。何とか皆、無事だった様だな」
「くそったれ!一番ババ引いたの、俺か!」
「あー。俺の機体も右手首が折れてるし、電子機器も調子悪ぃや」
「くそったれ!一番ババ引いたの、俺か!」
「あー。俺の機体も右手首が折れてるし、電子機器も調子悪ぃや」
本隊に合流したメイズと、被害を受けつつも軽口を叩くジーンとイリヤナ。
「・・・どう思う?メイズ」
「ありゃあ多分、新規機体のテストだぜ。しかもあいつらが闘った方は手練れだが、相当の甘ちゃんだと見た」
「ほぉ。何故だ?」
「闘い方が優しかったからな」
「ありゃあ多分、新規機体のテストだぜ。しかもあいつらが闘った方は手練れだが、相当の甘ちゃんだと見た」
「ほぉ。何故だ?」
「闘い方が優しかったからな」
イブラヒムの問い掛けにメイズは応えつつ、色々と想いを馳せていた。
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~ 戦闘後・アムステラ混成部隊 ~
「皆、ご苦労だった。諸君らが収集したデータは有効に活用させて貰うとしよう」
基地に帰還した面々に、影狼隊隊長は労いの言葉を掛けた。
そして女性陣も『超ハイパースペシャル絢雨カスタム改・隠密指令機仕様』からわらわらと降りて、各々の隊の元へと向かう。
「良い対応だったぞ、アキナケス。戻ったらゆっくり英気を養っておくがいい」
「はいっ、隊長!」
「アミ隊長。帰還準備も出来たので、明日には竜騎兵隊の本隊に戻れますよ」
「何ぃ?まだここの名物を食いに行ってないんだぜ!」
「・・・そうか。じゃあ次に来る機会を楽しみにしておくんだな、フランチェスコ」
「はいっ、隊長!」
「アミ隊長。帰還準備も出来たので、明日には竜騎兵隊の本隊に戻れますよ」
「何ぃ?まだここの名物を食いに行ってないんだぜ!」
「・・・そうか。じゃあ次に来る機会を楽しみにしておくんだな、フランチェスコ」
「喜べ、ザイード!護鬼の仕入れ分は今回のテスト協力予算で賄ったから、お小遣いを使わずに済んだのじゃ!」
「ほほー。時に、絢雨の改造費と復旧費、それから恐沙の改造費とかも計算に入れたら?」
「・・・うぅっ。それを言われるとのぉ。実は差引きするとプチ赤字なのじゃあぁ~っ・・・トホホー」
「まぁまぁ。成果が認められたら、その分は還元されるんでしょうが?だから前祝いで銘菓をしこたま仕入れときましたぜ」
「おぉっ!弁えておるのぉ、ザイード!そういう心遣いは嬉しいぞよ。では帰ったら皆で頂くとするかの!」
「んじゃま、まずは片付けとしゃれこみますかね」
「ほほー。時に、絢雨の改造費と復旧費、それから恐沙の改造費とかも計算に入れたら?」
「・・・うぅっ。それを言われるとのぉ。実は差引きするとプチ赤字なのじゃあぁ~っ・・・トホホー」
「まぁまぁ。成果が認められたら、その分は還元されるんでしょうが?だから前祝いで銘菓をしこたま仕入れときましたぜ」
「おぉっ!弁えておるのぉ、ザイード!そういう心遣いは嬉しいぞよ。では帰ったら皆で頂くとするかの!」
「んじゃま、まずは片付けとしゃれこみますかね」
「お疲れ様なのじゃ、アレス殿」
「おい、アレス。中途半端に優しいのは、残酷じゃあ無いか?」
「・・・」
「おい、アレス。中途半端に優しいのは、残酷じゃあ無いか?」
「・・・」
沈黙したアレスに向かってシアンが言を継ぐ。
「まぁしかし、そいつもお前の判断だ。別に俺が口出しする事じゃ無ぇから、好きにしたら良いさ」
「そう・・・ですね。ですので今は、私に出来る事を。出来るだけの事をするとしましょう」
「そう・・・ですね。ですので今は、私に出来る事を。出来るだけの事をするとしましょう」
そう言って、アレスはほろ苦い笑みを浮かべた。