影狼隊徒然記【阿弗利加南部戦線】後編
~ 夜間。レゼルヴェ国・某所軍事基地内 ~
俺の名はケリーオ。軍人になる前は、アムステラ属星の一つ『モケアケア星』でキックボクサーをやっていた。
そして、その身体能力を“闇の軍師”“迷宮の道化師”の異名を持つゲン=ドルベルに見込まれ、“ボギヂオ四天王”となった。
かくして専用機『羅蹴』を駆り、ボギヂオ軍の劣勢を挽回する『切り札』として順風満帆の日々を過ごしていた。
そして、その身体能力を“闇の軍師”“迷宮の道化師”の異名を持つゲン=ドルベルに見込まれ、“ボギヂオ四天王”となった。
かくして専用機『羅蹴』を駆り、ボギヂオ軍の劣勢を挽回する『切り札』として順風満帆の日々を過ごしていた。
しかし今は。返り討ちの憂き目に遭って虜囚の身。自白剤によって自分が知る情報の全てを吐き出した後の搾りカス。
当初、放り込まれた真っ暗闇な部屋とは違い、現在居る場所は通常の牢屋。拘束服は着たままだが、明かりがあるだけでも大分マシだ。
「奴等もそれだけ必死だったのかよ・・・クソッ」
自白剤注入後の放心状態からも醒め、今は少しずつだが頭も働いている。
どれだけ時間が経ったのか。外の状況はどうなっているのか。いくら人手が足りないからって囚人を放置するな。誰か居ないのか?
どれだけ時間が経ったのか。外の状況はどうなっているのか。いくら人手が足りないからって囚人を放置するな。誰か居ないのか?
色々な疑問が巡る。看守でも呼ぼうか? …いや、呼んでどうする? と、考えがどうにもまとまらな・・・んっ、誰か来たのか?
「ケリーオ氏ですね? ボギヂオ司令から依頼されて救出に来ました。危ないので少し下がって貰えますか」
救出! 何て嬉しい響きだ! …が、俺の眼がおかしくなったか? 鉄扉の覗き窓を開けたの、赤茶色のスライムじみた塊に見えたんだが??
ギ ギ ィ ッ !! メ キ メ キ ッ !! ガ シ ャ ン !!
・・・あー。俺の眼は正しかったみたいだ。スライムお化けが鉄扉を破壊してる。これがホラー映画なら絶対、俺が絶叫してるシーンだよな。
まだマトモに頭が回らない思考状態で、俺はその光景を眺めていた。きっとマヌケ面を晒してるんだろな、俺・・・。
まだマトモに頭が回らない思考状態で、俺はその光景を眺めていた。きっとマヌケ面を晒してるんだろな、俺・・・。
「・・・あっ、済みません。驚かせてしまいましたか?」 赤茶色のスライムお化けが、俺の方に赤い眼を向けてそう言った。
「 い や 、 普 通 は 驚 く だ ろ ー っ !! 」 思わずツッコミを入れる俺。まさかこんなアホな問答をする破目になるとは思わなかった。
「では、脱出しましょう。失礼しますね」 そう言うなり、スライムお化けは拘束服ごと俺を抱え込んでズルズルと床を這いずり戻って行く。
行く手を見ると、スライムお化けが来た方向からは赤茶色の流体が、ナメクジの粘液みたいに途切れず連なっている。
色々と聞きたい気もするが、今は理解が追い付かんし、まず何を聞いたら良いのかも判らない。だから一言、こう言った。
色々と聞きたい気もするが、今は理解が追い付かんし、まず何を聞いたら良いのかも判らない。だから一言、こう言った。
「…じゃあ、頼むぞ」「任せて下さい!」
まぁ、返事が元気なのは良い事だよな・・・俺は、細かい事を考えるのは止めた。
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~ 黄昏時。レゼルヴェ国・某所軍事基地の外 ~
ケリーオ脱獄から、時間は若干遡る。この軍事基地の周囲は自然の岩山や潅木の茂みに囲まれた、人里からやや離れた場所である。
その一角。密かに基地へ接近したステルス状態の機体同士で、接触通話を行っている2人の男達が居た。
その一角。密かに基地へ接近したステルス状態の機体同士で、接触通話を行っている2人の男達が居た。
「監禁場所が軍事基地で助かりましたね。郊外だから、一般市民への影響を抑えられますし」
「何にせよ、無用な騒ぎを起こさないのが一番だな。突破口はこれで大丈夫か?」
「大丈夫です。この程度の距離なら後は地中を穿って接近できます」
「よし、俺も陽動を開始する。上手くデコイライトに引っ掛かってくれれば良いがな」
「何にせよ、無用な騒ぎを起こさないのが一番だな。突破口はこれで大丈夫か?」
「大丈夫です。この程度の距離なら後は地中を穿って接近できます」
「よし、俺も陽動を開始する。上手くデコイライトに引っ掛かってくれれば良いがな」
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~ 夜間。レゼルヴェ国・某所上空 ~
一方、こちらは『赤飛』改め『ギガントブースター』機内。
この『超ステルス飛行基地』とでも言うべき機体の操縦は、現時点では主にレディ・ミィラが行っていた。
「もう少し余裕が出来たら、コレの操縦辺りはマルナゲして楽したいものよね。秘密保持の関係上、そう簡単には行かないけど」
「…で? ツムウロゴ王国に向かってるのは、何かアテでもあるのかしら? 百文字(ハンドレッド)」
「…で? ツムウロゴ王国に向かってるのは、何かアテでもあるのかしら? 百文字(ハンドレッド)」
彼女の問いに、隣の席で軽く目を瞑って休息していた黒尽くめの男 ―耐撃の百文字― が応える。
「ドクトル・ベイベーとの停戦協定。これまでの経緯で、彼奴らの軍に大打撃を与えたのは事実だ」
「だが、我々も万全とは言い難い。被害の多寡はあろうが、ワシを除いて現時点で即座に動ける特機は『ドラミング・A・GOGO!』位だろう」
「そうなると我々の出鼻を挫く意味でも、『ドラミング・A・GOGO!』に干渉してくる可能性が高い」
「だが、我々も万全とは言い難い。被害の多寡はあろうが、ワシを除いて現時点で即座に動ける特機は『ドラミング・A・GOGO!』位だろう」
「そうなると我々の出鼻を挫く意味でも、『ドラミング・A・GOGO!』に干渉してくる可能性が高い」
レディはその応えに小首を傾げる。
「…あらっ? だったら先に大破した機体の止めを刺しに来るんじゃないの、百文字(ハンドレッド)」
「それも考慮したが、彼奴らの戦闘方針(非戦闘員への被害を避ける)からして、正面から戦闘を仕掛けては来ても、弱った相手を潰す戦は控えると見た」
「それも考慮したが、彼奴らの戦闘方針(非戦闘員への被害を避ける)からして、正面から戦闘を仕掛けては来ても、弱った相手を潰す戦は控えると見た」
百文字はそう言いつつもフン、と軽く鼻を鳴らす。
「だが、『“毒針”アクート』と言ったか。彼奴ならばそういう無抵抗の相手にこそ喜んで止めを刺しに来るだろうがな」
「しかしベイベーの口振りでは、現時点で奴は近くに居ない様だ。今の状況ではそれを当て込むしかあるまい」
「しかしベイベーの口振りでは、現時点で奴は近くに居ない様だ。今の状況ではそれを当て込むしかあるまい」
レディも肩を竦めてその意見に同意する。
「後は特機に乗ってたパイロット(ケリーオ)の救出って線もあるわね・・・まぁアッチは奪還されても別に良いけど。保護しとく手間が省けるし」
「それから、夕方頃から高々度を徘徊してる敵機達が妨害電波を放出しててね。交戦の意図は無さそうだけど、うざったいのよ」
「それから、夕方頃から高々度を徘徊してる敵機達が妨害電波を放出しててね。交戦の意図は無さそうだけど、うざったいのよ」
その時、目を閉じたままの百文字が、静かにレディへと告げる。
「・・・騒がしくなって来たな。どうやらワシの読みが当たった様だ」
「えぇ。今、サーチライトが敵を照らし出したわ。楽しい残業の時間よ、百文字(ハンドレッド)。残業手当は出ないけどね」
「えぇ。今、サーチライトが敵を照らし出したわ。楽しい残業の時間よ、百文字(ハンドレッド)。残業手当は出ないけどね」
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~ 夜間。レゼルヴェ国・某所軍事基地の外 ~
「おーい、エペトット聞こえてっかー。こちらバッドロー。妙な光を発見した」
軍仕様の修斗に搭乗した男が、基地の管制室へ通信を送る。
「ウヒョ? 何が妙なんだー?」
「こう、な。向こうの雑木林の中で、修斗の頭より少し高い位置に鈍い光を見掛けたんだ。修斗のセンサーにゃまだ変な反応は無いがね」
「ちぇーっ。それだけじゃ判らないから、ちょっと様子見てこいや修斗乗りさんよ」
「ハッハ。僻むな、僻むな。確かお前さん、試験は後一息だっただろ? じきに採用されると思うぜ」
「こう、な。向こうの雑木林の中で、修斗の頭より少し高い位置に鈍い光を見掛けたんだ。修斗のセンサーにゃまだ変な反応は無いがね」
「ちぇーっ。それだけじゃ判らないから、ちょっと様子見てこいや修斗乗りさんよ」
「ハッハ。僻むな、僻むな。確かお前さん、試験は後一息だっただろ? じきに採用されると思うぜ」
そう軽口を叩きつつ、軽く手を振って「様子を見てくるぜ」と基地から離れ、雑木林へと向かう軍用修斗。
だがその口調とは裏腹に、油断無く修斗用の拳銃を構え、携行ライトが照らす周囲を見据えている。
だがその口調とは裏腹に、油断無く修斗用の拳銃を構え、携行ライトが照らす周囲を見据えている。
「・・・んっ? 妙だな。さっきの場所に来たが、変な光が今度はもうちょい離れた位置に移動してやがる」
「へぇっ? じゃあ、軍隊じゃ無さそうだなぁー」
「だろうなー。だが光の位置から見て、機動マシンの類っぽいが・・・にしても、反応無さ過ぎだろう?」
「へぇっ? じゃあ、軍隊じゃ無さそうだなぁー」
「だろうなー。だが光の位置から見て、機動マシンの類っぽいが・・・にしても、反応無さ過ぎだろう?」
「・・・って、待てよ? おい。そっちの方にゃ異常は無いか? どーもコレ、陽動っぽい気がしてきたぞ」
「今のトコ、お前の以外に機体反応は無いなー。だが何かあったら困るから、直ぐ戻れる様にしてくれよ」
「あぁ。これでリンパーやニョポポンが居てくれれば楽だったんだがなー」
「ヒッヒッ。手が足りてないから仕方ねぇよ。敵さんが何処を狙って来ても対応出来る様にはしてるらしいがねー」
「今のトコ、お前の以外に機体反応は無いなー。だが何かあったら困るから、直ぐ戻れる様にしてくれよ」
「あぁ。これでリンパーやニョポポンが居てくれれば楽だったんだがなー」
「ヒッヒッ。手が足りてないから仕方ねぇよ。敵さんが何処を狙って来ても対応出来る様にはしてるらしいがねー」
その時、エペトットの声音が変わる。
「・・・ウヒョッ! やべぇぞこれ! 脱獄だ!」
「脱獄ゥ? あー、確かアムステラの軍人を捕虜にしてたんだっけ?」
「それそれ。どうも監視カメラを細工されてたぽくてな。遠くにあった別のカメラに映ったんだ・・・何だアリャ??」
「・・・どしたよ?」
「泥人形っぽい変なのが捕虜を抱えて逃げてる。もうちょいで中庭に出るぞ」
「良く判らんが、俺が行く!」
「脱獄ゥ? あー、確かアムステラの軍人を捕虜にしてたんだっけ?」
「それそれ。どうも監視カメラを細工されてたぽくてな。遠くにあった別のカメラに映ったんだ・・・何だアリャ??」
「・・・どしたよ?」
「泥人形っぽい変なのが捕虜を抱えて逃げてる。もうちょいで中庭に出るぞ」
「良く判らんが、俺が行く!」
バッドローの軍用修斗は、慌てて基地へと駆け戻った。
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~ 夜間。レゼルヴェ国・某所軍事基地の中庭 ~
軍用修斗が中庭に着いた時、ケリーオを小脇に抱えた泥人形お化けが庭の半ばまで移動している所だった。
「おい、そこの泥人形! 捕虜を置いて出て行け・・・って。言葉、通じてるか?」
泥人形の動きが瞬時止まり、管制室や軍用修斗の一般通信回線から雑音交じりの声が響く。
「・・・見つかりましたか。ですが、このまま押し通らせて貰います」
その科白を聞いた軍用修斗は、構えていた拳銃を腰に収めた。
「ウヒョッ? おいバッドロー、何で銃を収めてんだ?」
「バッカ、オメー。こんなんで人間撃ったらミンチじゃ済まんぜ?」
「バッカ、オメー。こんなんで人間撃ったらミンチじゃ済まんぜ?」
そう言いつつ、軍用修斗は泥人形の行き先へと素早く先回りする。
「それにコイツの正体が何となく見えた。こいつぁ有線操作だ!」 ズ ダ ン ッ !!
軍用修斗は力強く大地を踏み締めて・・・泥人形が来た方向から連綿と続く赤茶色の流体を踏み千切った!
泥人形はぐらりと揺れるが、しかしその姿勢は崩れない! その答えを通信回線からの声が告げる。
「・・・撃たないで貰って感謝します。防げないとは言いませんが、面倒ですからね」
「そして貴方の読みも悪くはなかった。ですが、ココは既に水鋼獣の支配領域下にあります。それでは」 ゴ ボ ボ ボ ッ !!
「そして貴方の読みも悪くはなかった。ですが、ココは既に水鋼獣の支配領域下にあります。それでは」 ゴ ボ ボ ボ ッ !!
蜘蛛の巣状に大地を割って、赤茶色の流体が地上へと噴出した。
その一部は軍用修斗の足首を包み、それを粉砕。修斗はゆっくりと大地に倒れ込み、優しく流体に受け止められたついでに他の関節部も粉砕される。
ケリーオを抱えた泥人形じみた一部も蜘蛛の巣と合流、機敏に動いて大地に開いた穴へと吸い込まれた。
その一部は軍用修斗の足首を包み、それを粉砕。修斗はゆっくりと大地に倒れ込み、優しく流体に受け止められたついでに他の関節部も粉砕される。
ケリーオを抱えた泥人形じみた一部も蜘蛛の巣と合流、機敏に動いて大地に開いた穴へと吸い込まれた。
潮が引く様に大地の穴へと吸い込まれた赤茶色の流体を見つつ、レゼルヴェ国の兵士達は呟く。
「なー、エペトット。こりゃ完敗だわ。追跡は無理だよなー」「無理無理。後始末しながら始末書の事を考えようぜー」
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~ 夜間。レゼルヴェ国・国境付近 ~
雑木林の一角にある空き地。
「少々危なかったですが、何とかケリーオ氏の奪還には成功しましたね」
「案の定、追跡素子もあったがな。妨害電波と簡易手術施設で処理できるレベルで助かった」
「そういえば『羅蹴』はまだ、拿捕されたままでしたね」
「あぁ、出来ればそちらも破壊しておきたかったが・・・手を広げすぎて失敗するよりはマシだからな」 パコッ。
「案の定、追跡素子もあったがな。妨害電波と簡易手術施設で処理できるレベルで助かった」
「そういえば『羅蹴』はまだ、拿捕されたままでしたね」
「あぁ、出来ればそちらも破壊しておきたかったが・・・手を広げすぎて失敗するよりはマシだからな」 パコッ。
夜陰に煙草の香りが漂う。しかし夜陰を射す光は無い。
バイパー・セグは軽く嗅ぎ煙草を喫した後、おもむろに嗅ぎ煙草ケースを懐に仕舞う。
バイパー・セグは軽く嗅ぎ煙草を喫した後、おもむろに嗅ぎ煙草ケースを懐に仕舞う。
「・・・さてと。この中継ポイントの片付けも済んだ事だし、後は帰還するだけだな」
「これにて、任務完了だ」
「これにて、任務完了だ」