バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

詐謀偽計

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kyogokurowa

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映画館内にある、スクリーンルーム。

 上映された映画が終わり、二人の男女が出てくる――といえば、まるでデートか何かのように思えるが、この二人を見てそう思える者はいないだろう。

 白化粧に公家風装束とメイド服というとてもデートに行く外見ではないというのもそうだが、それ以上に二人の顔は仲良く映画鑑賞を楽しんだというそれではない。

「……なるほど。映画とやら、なかなか楽しめたでおじゃるな」

 だが、マロロの口から最初に出て来た言葉がそれだった。

「それは良かったわ。私は、随分と疲れさせられたけど」

 どこか機嫌の良さそうなマロロとは対照的に、咲夜はつい苦言混じりに言う。

 それも無理はない。
 何せ、そもそも映画という存在を知らなかったマロロに映画とはどういったものなのかを教え、さらに上映中にもちょくちょく補足説明を要求され、とんでもない手間をかけさせられた。

 上映中のおしゃべりは禁止――などとは知らぬとばかりの状態であり、これがもし普通の映画館であれば周囲の目がとんでもない事になっていただろう。
 もっとも、映画という存在すら知らなかったマロロにとっては関係のない事だが。

「にょほ、それは申し訳なかったでおじゃるな」

「まあ、言っても仕方がないわ」

 これはマロロの不勉強などではなく、単に文明が違い過ぎただけだ。彼が悪いわけでもないし、変に知ったかぶりでもされた方が困る。
 それに、マロロの自頭が良かったせいか、最低限の説明だけで理解できたのは不幸中の幸いといえた。

「それにしても、さっきのシャクコポル族の言っていた内容とは全然違ったでおじゃるな」

「ええ。もしかしたら、時間によって内容が変わるようになっているのかもしれないわね。あるいは、上映された場所が違っていたとか」

「それでも、興味深い内容だったでおじゃる」

 そして肝心の映画の内容であるが、上映されていた内容は悪役令嬢の転生物語などとはまるで違った。

 咲夜からすれば、カタリナ・クラエスも次の機会があれば始末しておきたい相手である以上、何かしら情報でも手に入ればと思っていたので当てがはずれたわけだが。

「それで、あの『すたんど』とやらは咲夜殿も知らないのでおじゃるか?」

「ええ、少なくとも私の知る限りでは」

 上映されていた内容は、イタリアという国に存在するギャング組織『パッショーネ』に所属するスタンド使い達の抗争の物語。

 国や街を裏から支配する『パッショーネ』に所属し、そこで成り上がる事によって組織を変えようとするジョルノを中心とし、入団試験、そしてボスの娘の護衛任務、暗殺チームとの戦い、そして組織からの離脱とボスへの反逆のストーリーだ。

 だが、残念な事にその結末まで辿り着く事はなく、最終決戦の舞台へと向かうところで映画は終わっていた。

 それでも、収穫は大きい。
 この映画に出て来た登場人物の中での参加者名簿に載っているのは5人。

 ジョルノ・ジョバァーナ。
 ブローノ・ブチャラティ。
 リゾット・ネエロ。
 ディアボロ。
 チョコラータ。

 全員がスタンド使いと呼ばれる存在であり、この映画を見る限りいずれも油断して良い相手ではない。
 派手さでいえば、あのヴライには劣るかもしれないが、スタンドの応用次第ではそれ以上の難敵となりえる。

「でも、あの兎が言うには、呼ばれた時期とやらが違う可能性もあるそうだけど」

「その通りでおじゃるな。特にリゾット・ネエロとチョコラータとやらは既に死んでいるようでおじゃるし、死ぬ前からと考えるべきでおじゃるか」

 死者蘇生を公言している運営であり、時間差による召集の可能性も既に考えていた事もあり、特に驚く事はない。

「そのようね。でも、参加者である人物達の事を色々と知る事ができたのは僥倖ね」

「そうでおじゃるな。特にマロのような采配師にとって、チョコラータのような輩は面倒でおじゃる」

 この映画を見る限りディアボロは、悪辣極まりない人物である事が分かるし、ブチャラティに「吐き気を催す邪悪」と称されるだけの男だ。
 だが、危険度でいえばチョコラータの方が上だ。

 何故なら、彼の行動指針は基本的に保身から来ること。
 娘の抹殺を目論んだ事に関してもそうだし、以後の行動に関しても裏切り者達の粛清だ。
 この殺しあいでどう動くか――おそらく、自身の生存を第一にした慎重な行動だろう。
 そう考えると、ある程度は行動の予測はできる。

 ディアボロはディアボロで油断できない相手ではあるが、完全に己の快楽のみを目的で行動するであろうチョコラータの方が読みにくく、危険だ。自分達と無関係のところで退場して欲しい相手である。

「そうね。私としてはあのディアボロとやらの能力の方が気になったけど」

 何度か披露された、彼のスタンドである『キング・クリムゾン』。
 ブチャラティやジョルノも戦うのではなく、撤退を余儀なくされた無敵のスタンド。
 最も警戒すべき存在だろう。

 自分とよく似た時間停止に近い気もするが、それとも微妙に異なるように見える。

(でも、もしそうならば何かしらの制限がかかっている可能性があるかもしれないけど)

 あの魔法学園での戦いで、自分の能力に枷がある事を確認させられた。
 似たような類の能力であれば、咲夜と同様に制限がかかっている可能性は高い。
 無論、楽観はできないわけだが。

「もう少し、詳しい事が分かれば良かったんだけど……」

 とここでふと、チケットの自動販売機が目に入る。
 それ自体は別におかしくない。自分達は無償で入っているが、本物の映画館は料金を払って入る場所であり当然の事。
 だが、その販売機に書かれてある部分だ。


 完全版チケット投入口:こちらに、完全版チケットを入れれば、完全版の映画を見る事ができます。


「これは何かしら?」

「完全版ちけっと、とやらは何の事でおじゃるか?」

「私に聞かれても……。ただ、完全版なんていう書き方からして、この戦いの決着まで書かれた映画が見れるって事じゃないの?」

 この完全版チケットとやらがあれば、半端なところで終わったものと違い、『ボス』達との決着までの完全版が見れるという事かもしれないが、今の時点では推測止まりだ。

「いずれにせよ、この完全版とやらのチケットがないと無理ね」

 誰かの支給品か。あるいは、宝物のように会場のどこかに隠してあるのか。少なくとも、ここまでにマロロと咲夜は見つけていないし、支給品としても与えられていない。

「まあ、ないものねだりをしても仕方がないでおじゃるよ」

 それよりも、とマロロは続ける。

「この映画とやらからは予想以上に、情報が手に入ったでおじゃる。他の映画をやっているのならもう暫く、この地に留まり他のものも見て情報収集をするべきだと考えているでおじゃる」

 情報戦を制する者が戦を制す――聖賢とうたわれし八柱将ライコウがよく言っていた事だ。

「これを利用すれば、色々とやれる事が増えるでおじゃるよ」

 かつて、ライコウが「エンナカムイの惨劇」を多くの國に広めた事によってオシュトルらエンナカムイが孤立したように、情報をうまく使えば、特定の参加者を窮地に陥らせる事も可能だ。
 ここで得た情報を利用して特定の参加者と知り合いだと騙る事ができるし、自分達のように臨時チームを組んでいるであろう参加者達に都合の良い事を吹き込んで疑心暗鬼にさせる事もできるかもしれない。

「なるほど、ね」

 策としては悪くない。
 ここで手に入れた情報が、思わぬ局面で役立つ可能性はある。

 だが、いくつかの問題もある。

「私達が呑気に映画を見続けてる間に、他の参加者がここに来た場合は?」

「ここは、地図を見る限り、隅の方にあるでおじゃるし、この映画館の価値を知らなければこんな場所にわざわざ来たがる参加者はほとんどいないでおじゃる」

 ヴライがオスカーや鈴仙らとこの近くで交戦したのは、初期位置の関係によるものが大きく、積極的に戦場になるであろう場所でもない。

「でも、私達のように映画の事を知って来る可能性もあると思うけど」

「確かにそうでおじゃるな」

 マロロは、咲夜の言葉を首肯しながらも続けた。

「しかし、その場合はヴライのように暴れまわる類の参加者ではなく、情報収集が目当ての輩。どうにでも交渉のしようはあるでおじゃるよ」

 わざわざ情報目当てで来るタイプの参加者であれば、先ほどのオスカー達のように無駄な戦闘は避けたがるだろう。

「なるほどね」

 咲夜の方も、マロロの考えを認めつつも、最後の問題を口にする。

「それじゃあ、最後に一つ。まだ問題があるわ」

「にょほ? 何でおじゃるか」

「私としては別にいいんだけど、貴方には標的のオシュトルとやらがいるじゃない」

 マロロと違い、咲夜は別に特定の参加者を始末したいという思いはない。
 博麗の巫女の無力化も狙ってはいるが、それもできればの話であり、優先順位はさほど高くなかった。

「その人が、もし私達が呑気に映画を見ている間に殺されたりしたらどうするのかしら」

「……にょほ。そんな事でおじゃるか」

 咲夜の言葉に、マロロはニィと微笑む。
 独特な白化粧がよりいっそう、不気味なものとなり狂気すら感じるものへとなった。

「大丈夫でおじゃるよ。オシュトルは、きっと生き残っているでおじゃる。あの時、ハク殿を犠牲にして薄汚く生き延びた時のように、必ず」

 にょほ、にょほ、とマロロは不気味な笑い声を出し続けている。
 元の頼りなげでありながら優し気だった風貌は面影もなく、かつての仲間達が見れば信じがたいであろう鬼気迫るものだ。

 その狂気に染まった采配師を見ながら、咲夜は冷静にもしもの時の場合を考える。

 マロロはオシュトルへの復讐を最優先にしており、それは咲夜の目的とは相反していない。
 それゆえの、これまでの同盟関係だ。

 もし仮に、マロロがオシュトルが始末した場合であれば、気分良くその後も協力してくれる可能性はあるし、オシュトルの仲間達が残っていれば残党狩りという目的も残る。
 だが、もし死亡者としてオシュトルの名前が呼ばれてしまえば、正直、マロロの行動に予想がつかなくなる。
 行動の予測がつかなくなった味方など、敵よりも厄介だ。
 もし、自分に不利益をもたらすようならば手を下すほかなくなる。

(その時は、悪く思わないでね。采配師さん)

 最悪の場合を想像しながらも、咲夜は話を続ける。

「まあ、それならそれでいいけど、いつまで映画を見続けるつもりなの? 今後の方針は?」

「……その事でおじゃるが、この映画とやらをもう暫く見てから『大いなる父の遺跡』に向かってみようと思っているでおじゃるよ」

「理由は?」

 大いなる父という言葉に関しては、マロロと色々と情報のすり合わせをしている時に聞いた。
 どうやら、彼らの世界に存在していた存在であり、大古の世界を支配し、ヒトを創り出したされる者達を示す言葉らしい。

「咲夜殿によると、どうやら大いなる父はマロ達の世界の特有の存在のようでおじゃるし、奴らの一党が集結地にしそうな場所は他にない以上、ここにオシュトル達一味が集っている可能性が高いでおじゃるよ」

 今となっては懐かしい話だが、かつてハクとその仲間達と共に『大いなる父の遺跡』へと赴いて調査した事もあった。
 ここにあるのがまがい物である可能性は高いが、とりあえず知っている単語の場所へと向かおうとオシュトル達が考えてもおかしくはない。

 その推測は正しい。
 この二人が知らぬ事ではあるが、とりあえずの第一目標として自分達の知る名前の施設を目指した参加者は多い。
 ゲッターチームは早乙女研究所を、災禍の顕主御一行はバンエルティア号を、「アイテム」メンバーが「アイテム」のアジトを目指したように。

「なるほど。当てもなく探し回るよりかは可能性があるかもしれないわね」

 咲夜としても、特に反対する理由はない。
 これが空振りに終わったとしても、咲夜からすればデメリットはない。

「待っているでおじゃるよ、オシュトル……」

 呟くように仇敵の名を呼ぶマロロに、咲夜は促す。

「じゃあ、これからの話はこの辺りにして、次の映画を見る事にしましょう」

「そうでおじゃるな」

 一通りの方針を決めたところで、スクリーン内へと戻っていく事にした。
 公家風装束に、メイド服という映画館という場所ではどこかシュールな恰好だが、誰もつっこむものはこの場にはおらず二人も気にしなかった。

 見る映画はどの世界のものでも良いが、警戒対象である間宮あかりや、琵琶坂氷至らのものでもあればなお良いと思いながら。




【B-2/映画館/一日目/午前】
【十六夜咲夜@東方Projectシリーズ】
[状態]:体力消耗(小)、全身火傷及び切り傷(処置済み)、胸部打撲(処置
済み)、腹部打撲(処置済み)
[服装]:いつものメイド服(所々が焦げている)
[装備]:咲夜のナイフ@東方Projectシリーズ(1/3ほど消費)、懐中時計@東方Projectシリーズ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1つ
[思考]
基本:早くお嬢様の元へ帰る、場合によっては邪魔者は殺害
0:映画館で情報収集を続けた後、大いなる父の遺跡に向かう
1:今後のことを見据え、遭遇する参加者については殺せる機会があれば殺
すが、あまり無茶はしない
2:取り逃がした獲物(カタリナ、琵琶坂)は次出会えば必ず仕留める
3:博麗の巫女は今後のことを考えて無力化する
4:マロロに関しては協力する素振りをしながらも探る。最悪約束を反故す
るようであれば殺す
5:鈴仙達については暫く泳がせておき、琵琶坂達やヴライと潰し合っても
らう。
6:余裕があれば完全版チケットとやらも探す。
[備考]
※紅霧異変前からの参戦です
※所持ナイフの最大本数は後続の書き手におまかせします
※オスカー達と情報交換を行いました
※『ジョジョ』世界の情報を把握しました。ドッピオの顔も知りましたが、ディアボロとの関係は完全には分かっておりません。


【マロロ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:オシュトルへの強い憎悪
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品3つ
[思考]
基本:オシュトルとその仲間たちは殺す
0:映画館で情報収集を続けた後、大いなる父の遺跡に向かう
1:ミカヅチ殿とは合流したい
2:ヴライには最大限の警戒を
3:十六夜咲夜はいい具合に利用させてもらう。まあ最低限約束(博麗の巫
女の無力化の手伝い)には付き合う
4:あの姫殿下が本物……?そんなことはあり得ないでおじゃる
5:間宮あかりとその一行を警戒
[備考]
※少なくともオシュトルと敵対した後からの参戦です
※オスカー達と情報交換を行いました
※鈴仙をシャクコポル族のヒトと認識しております
※『ジョジョ』世界の情報を把握しました。ドッピオの顔も知りましたが、ディアボロとの関係は完全に分かっておりません。

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混沌への導火線 十六夜咲夜 旅立ちの刻
混沌への導火線 マロロ 旅立ちの刻
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