「平行異世界」(へいこういせかい)は『秘封霖倶楽部』のエピソードの一つ。2017年01月24日公開。
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概要
異世界に迷い込んだ蓮子を中心に、登場人物たちがツイッターで投稿している体の文章を通して物語が進む。ツイッターの形式ゆえ、断片的な情報や不明瞭な情報、無意味な情報の混ざり合った文章が延々と続く。
学校の友人などサブキャラクターが多数発言しているが、霖之助と蓮子以外は相互フォロー関係になっていないのか、互いの様子には一切関知せず、蓮子の状況と全く無関係な発言をひたすら本文中へ紛れ込ませてくる。蓮子と相互フォローになっていて当然と思われるメリーですら、蓮子が危険な目に遭っている間もラーメン次郎での食事を夢中で実況し続けている。今回のメリーは不要を通り越して文章上邪魔な存在でしかない。
また、霖之助と蓮子の会話もこれはこれで異様であり、蓮子が危険に晒されている間も黙々と空リプを飛ばしあっている。通信が可能だから直接通話したほうが話が早そうだが、それはできないということらしい。
メリーはともかく、霖之助も蓮子を助けようとはしたものの紫の都合で帰国そのものを中断しており(どういう都合かは不明)、結局蓮子が大怪我を負ったにもかかわらず、呑気に台湾での観光を最後まで楽しみ尽くしてから帰国する。
霖之助のナレーションから判断するならば、蓮子は異世界で捕獲されかけた間一髪のところで元の世界に生還したと読めるが、コメント欄では全く異なる解釈もあり、曰く現世界の蓮子は異世界の蓮子と入れ替わり、すでに死亡しているのだという。確かに、病院に搬送された後の蓮子は最後まで姿を現さず台詞を発さないが、「異世界の蓮子」やそれを仄めかす描写は一切本文中に登場しない。ちなみにここでの「並行異世界」とは、序文によると現世界から遠く離れた世界線のパラレルワールドのことで、現世界とは全く異なる形で文明が発達しているのだという。
なお、本文中には蓮子が迷い込んだ異世界の世界観を表現するための写真が複数用いられているが、これらは基本的に2chまとめブログなどから転載・流用しただけのもののようだ(*1)。未知の言語で書かれた新聞を描写するために用いられた朝日新聞の写真に至っては、宇宙語のほかに日本語で添えられているキャプションが丸見えの状態になっている。
あらすじ
蓮子は一人で樹海へ調査に入りながらツイッターで実況し、霖之助は遠く離れた台湾で麻耶や紫と観光しながらその投稿を見る。蓮子は廃墟探索の最中に気分が悪くなり引き返すが、未知の言語を用いる文化と遭遇し、霖之助とも正常に連絡が交わせなくなる。霖之助は連れの能力もあって危険を察知するが何の助力にもならず、蓮子は危険から必死に逃げる一方、同じころにSCP-2662が京都の清水寺で集団自殺を引き起こす。そして、蓮子はその現場を目の当たりにするが、警察やレスキュー隊員に捕獲されたとの投稿を最後に、以降は意味不明な文字列しか投稿しなくなる。
蓮子は集団自殺者の一員として病院に搬送され、命に別状はないという報せが霖之助やメリーの元に入る。そして、霖之助が紫の話を聞いたところによると、蓮子がいたのは異世界で、逃げる過程で投稿した写真にあった「青い光」を浴びたことにより、施設に収容され非人道的な実験の材料にされるという危険に伴われていたが、清水寺の集団自殺から生じたエネルギーにより元の世界に戻ることができたのだという。しかし、蓮子のツイッターは依然として意味不明な文字列を投稿し続けており、紫の判断を基に霖之助は蓮子の携帯電話を破棄するようにとメリーに命じ、引き続き台湾観光を満喫してから日本に戻る。蓮子のツイッターは異世界の何者かが現世界の科学文明に干渉しようとしていることを匂わせ、それだけでなく集団自殺事件の生存者の中にも未知の言語を話す人々が紛れ込んでいたことが分かるが、霖之助たちはそれらを特に気にすることもなく、蓮子の見舞いに行くことにし、物語はそこで幕を閉じる。