「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 騎士と姫君-21c

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宴会小ネタ(騎士編)


 首なしの騎士は、喧騒から離れて一人静かに壁際にたたずんでいた。
 何やら先程からあちこちで悲鳴やら叫び声が聞こえては来るものの、ひとまずこちらに被害が及ばない以上関わるべきではないだろう。
 己の主は飲み物を取りに行くと言い残したまま未だそばには戻らず、それでも目の届く範囲で他の招かれた者達と語らっているようである。
 今も彼女は先日世話になった大きな黒犬や、そのそばにいる青年(おそらく黒犬の契約者だろうか)と談笑しているようで、依然としてこちらに振り向く気配は見受けられなかった。

 正直、己としては契約者である主をあのいけ好かない男から取り戻した後、すぐにでもここから立ち去るつもりでいた。
 しかしそれを引き止めたのは全ての元凶たる若武者、将門だった。

『何、これよりの宴は我と『首塚』の名の下に行われるもの。であれば、貴様が恐れる事は到底起こりえぬよ』

 つまるところ、せっかくなんだから参加していけと言うらしい。
 いっそその首を跳ね飛ばしてやろうかとも考えたものの、結局は主の制止と頑固な願いに負けて、この宴に参加する事になってしまった。

 今回の事件とこの宴で得た多くの出会いを、主はどうやら喜んでいるらしい。
 しかし己からすれば、それこそが最も恐れてきた事――この宴への出席を反対した一番の理由でもあった。
 こうして都市伝説たる己と契約してしまった以上、多少なりともそれらとの関わりは避けられないのは致し方ない。
 しかしもしこれ以上の領域に踏み込めさせれば、更なる危険に彼女を引き入れかねないのもまた確かだった。

 そういったものから主を守る為なら、例えどんなに憎まれようとも構わないと思っていた――――はずだったのに。
 気づけば彼女は、いつの間にか己の手の内からすり抜けていた。

「………………」

 失われた眼球で見つめる先では、彼の人がまた笑みを浮かべている。

 己のした事は、果たして正しかったのだろうか。
 この町に潜む様々な影、思惑、意志――それらに触れさせまいと、知らさずにいようとした己の選択は、結果として彼女を苦しめてしまったのだろうか。
 それとも――己が居るがゆえに、彼女に選ばせてしまったのか?

 ――――ガチャン!

 ふとガラスの割れる音に我に返れば、瓶の詰まった黄色の籠を抱えた女性(同じく首がない)の姿が視界に入る。
 どうやら空いた瓶を運んでいる際に落としてしまったらしく、慌てて欠片を拾い集めようとかがみこんでいた。

「………………」

 ……こちらに被害が及ばない以上関わるべきではない、と再び腕を組みなおす。
 そもそも己にはもっと大事な事が――

「!」

 欠片を集めていた女性が突如として指を抑える。どうやらガラスの断面で指でも切ってしまったらしい。
 なぜだかその姿が、一瞬とても彼女に似ていた様な気がして。

「…………………………」

 気が付けば、女性のそばに己もまたかがみこんでいたのだった。

「……! ……!?」

 相手は突如現れた騎士に驚いているらしく、わたわたと何やら慌てふためいている。
 ひとまず怪我を見る為に彼女の手を引き寄せれば、びくりとわずかな震えが伝わってくる。
 見たところどうやら浅く切ってしまっただけのようで、出血はあるが特に欠片が傷口に残っているわけでもない。
 そばのテーブルにあったナプキンを取ると細くたたみ、ほっそりとした指に少し強めに巻きつけてやる。
 かつて戦場に居た頃の記憶の名残がこんなところで役に立つとは、人生わからないものである。
 最後にきゅっと結び目を作れば手当ては完了し、彼女はそれをしげしげと眺めている。
 その間に散らばった欠片を拾い集め、これも別のナプキンで包んでおく。こうしておけばこれ以上被害が広がる事もないだろう。
 そうして最後に彼女の持っていた籠を持ち上げれば、女性が慌てた様子でその手を抑えてくる。

 もしかしたらこれは彼女の割り当ての仕事だったのかもしれなかったが、今さっき怪我をした者に重いものを持たせるわけにもいくまい。
 しかし女性はなかなか引こうとせず、今もなおしっかりと己の手を掴んだまま離そうとしない。

 ……困った。
 経験上こういった場合、大抵相手は自分が納得するまで決して引こうとはせず、結果として己が身を引かなければいけない事が多い。
 しかし――と思いあぐねていた時、ふと手元にあったナプキン包みが視界に入る。そうだ、これならば。
 そう思いついたままに彼女にそれを差し出せば、思ったとおり一瞬きょとんとした後、やがておずおずとそれを受け取った。
 その際にガラスの擦れ合う音が漏れ、その中身があの欠片であるという事を明確に物語っている。
 多少気をつけなければならないが、これであれば片手を怪我した彼女でも問題なく任せる事が出来るに違いない。

「…………」

 相手もその意図を汲み取ったらしく、やがてもう一度包みを持ち直すと、こちらを導くように先を歩き出した。

「………………」

 ちらりともう一度主を伺えば、今もまだ楽しげに話している真っ最中であった。
 確かに己の目の届かないところに彼女を置くのはとてつもなく不安ではある。
 しかしそばにはあの黒犬もいるし、彼女には何度も主を助けられた経験もある。
 それならばほんの少しだけ、その守りを任せてもいいかもしれない。

 そう思い直すと騎士は空瓶の詰まった籠を抱えて、同じく首のない女性の後を追って会場を一時後にしたのだった。



<To be...?>



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