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連載 - 騎士と姫君-21b

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宴会小ネタ(上田との再会後編)


 世間は彼を殺人犯と呼んでいた。
 しかし今の彼はパートナーの少女と笑いあい、共にパーティを楽しむ一人の青年でしかない。

 彼こそが世を騒がす「ハーメルンの笛吹き」と知った時は心底驚いた。
 確かに以前の彼には何か満ち足りない思いを抱えた印象を覚えていたものの、とてもそういった衝動に駆られるような人物には到底思えなかったのだ。
 だから彼が声をかけて来た時、つい聞いてしまった。
 おそらく彼にしてみれば何度も経験したであろう質問だったのに、それでも尋ねずにはいられなかった。

 でもいざ返ってきた答えに、不謹慎ながら私はほっとしてしまったのだ。
 確かに彼がやった事は、どんな理由があったとしても簡単に許されるような事ではない。
 しかしそれでも、あの少女――ハーメルンの笛吹きを助けたかった故にやった事だという、その答えに偽りがあるようにはとても思えなかったのだ。
 何せ今の彼は、自分を偽る事を何より嫌っているようだったのだから。

 今も七輪の前で何やら少女と言い合っている彼らの様子は、とても子供たちを何人も消し去ってきた殺人鬼とは思えない。
 むしろ仲のよい兄妹のようにじゃれあう本来の姿の彼が、そこにはあった。
 その表情は、あの時の印象からは想像もつかないもので、それを許しているのは、おそらくかたわらの少女の存在が大きいのだろう。
 飾らぬ自分、ありのままの自分を受け止めてくれる存在との出会い、それが彼を大きく変えたに違いない。
 そしてだからこそ、彼は名乗らずに去って行ったのだろう。
 なぜなら「ハーメルンの笛吹き」としての彼こそが本物の自分なのだと、そう言いたかったに違いないと私は感じていた。

「うー、おねーちゃん?」

 ふと私の裾を引く感触に我に返ると、そこにはお気に入りのお菓子を抱えた少年がいた。

「うー、どうしたのー?」
「ああ、ちょっと考え事を……すいません、何かありました?」

 そうして彼の目線に合わせるようにかがみこめば、にぱ、と眩いばかりの笑顔が広がる。

「ぼく、将門さまのところ行くー!」
「そ、そうですか……じゃあさっきみたいに走っちゃダメですよ、あと転ばないように気をつけてくださいね」
「うー、だいじょうぶー!」

 そう頷いてみせると、少年は瞬く間に人波の中に消えていってしまった。

 本来ならついて行くべきなのだろうけど……でも、今はあそこにはなるべく近づきたくない。
 と、不意についさっきの出来事を思い出して思わずかあっと顔が熱くなる。
 ああああ、なるべく思い出さないようにしていたのに!

「…………?」

 そんな様子を察してか、「大丈夫か」とでも言いたげに騎士がやって来ようとするのをとどめ、何度か深呼吸を試みる。
 ともかく、そんなに遠い場所ではないから大丈夫だろう。
 いざとなればすぐそばに少年が「おにーちゃん」と慕う青年もいるはずだ。

「と、とにかく! せっかくですから楽しまないと!」

 そう気合も新たに、彼女は次なる飲み物を求めて人波の中へと足を踏み出したのだった。



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