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連載 - 騎士と姫君-21f

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宴会小ネタ(姫君編その2)


「はあ……」

 紙コップの梅酒を一口含み、やってしまったな、と彼女は苦い思いをかみ締めていた。
 心配するあまり、事情を何も聞かずにいきなりあの子を叱り付けてしまったのもそうだが、何よりショックだったのは――

「あれ、まるっきりホロウさんと同じ態度だった……」

 思い返すだけでさらに重いため息が口をつく。
 そう、あれではまるであの子が私で、叱り付ける私はあの騎士で……。

「はああああ……」

 よりにもよって、自分が常日頃厭う態度を他人にとってしまったのが、たまらなく嫌だった。
 ペットは飼い主に似ると言うが、いや、彼はペットではないが、だが、しかし。
 自己嫌悪がぐるぐると尾を引きながら彼女の胸をかき乱し、先程までの楽しい気分が一瞬にして吹き飛んでしまったようだった。

 賑やかな宴会の一角、そんな影を背負いずーんと沈み込んだ彼女を狙って、空色の影が潜んでいようとは気づくはずもなく。

「うにゅ、なにやらどよーんな気配はっけーん?」

 少女がかくりと不思議そうに首を傾げたのもつかの間、それも満面の笑みに変わり、そして。

「とりゃー☆」

 瞬く間にそばに忍び寄り、赤い顔の少女は驚くほどすばやく、そして勢いよく彼女の浴衣の裾をめくり上げた。
 それは先程までのふらふらとした足取りからは到底結びつかないような見事な手際であり、一瞬の間を挟んでからようやく彼女は己の状況を理解した。

「なななななな何をするだーー!!!?」

 悲鳴を上げつつも彼女はもう火を吹かんばかりに顔を赤らめ、必死に裾を押さえつける。
 壁際に寄りかかっていたとはいえ、太もも辺りまでめくれていたのだから下手をすると周りにいた誰かに見られていたかもしれないわけで。

「かわいー色でしたにゃー♪」
「見たんですかあああ!!?」

 何とも必死な様子の彼女に、元凶たる少女はけらけらと何ともおかしそうに笑い声をたてた。

「おねーさん、もうどよーんじゃないですにょー?」
「い、一体何を……どよーん?」

 ふと尋ね返せば、にへーとだらしない笑みを浮かべたまま少女はこっくりと頷く。

「せっかくのたのしーパーティなのにー、どよーんじゃもったいないのれすにゃ!」

 そう力説する少女の言葉に、ようやく先程までの沈み込んでいた自分を思い出す。

「あれは……その……」
「ほらー! またそーゆー顔しちゃだめなのれす!」

 彼女に忍び寄る影をふるい落とさんばかりに、少女は「めっ!」と指を立てる。

「こーいう時はおいしーじゅーすでも飲むのれすにゃー♪」

 そうして勢いよく突き出されたボトル――明らかにそれは度数の高い果実酒の瓶だった――に思わず空になった紙コップを差し出せば、危なっかしい手つきながらもなみなみと中身が注がれてゆく。

「さー、わかったにゃらかんぱいするのれす!」
「こ、これ原液じゃ……」
「おんなは度胸なのれすにゃー」

 梅酒などもそうだが、こういった果実酒はもともと梅や杏といったものを氷砂糖と共に焼酎で漬け込んだものであり、本来水や炭酸水で割って飲むのが一般的である。
 その為その原液などといったらもう日本酒なんか目ではないほど度数も高いわけで、下手に一気飲みなどしようものならばたちまちむせるであろう事も明らかで。
 まだ子供の頃に母の自家製梅酒をそのまま飲んだ時の経験を思い出し、せめて水か何かないかと辺りに視線をめぐらしてみたのだが。

「こんなにおいしーじゅーすを割っちゃうにゃんて、とんでもにゃい!」

 その手はがっしりと少女に握られ、もはや逃げ場はない。

「これを飲んだら、どよーんはさよならなのれすにゃ!」

 自信満々に、少女はコップを突きつけてくる。
 こうなればせめて一口ぐらい口をつけなければ、その手を放してくれないであろう事は明らかであった。

「……じゃあ、一口だけ」
「にゃー♪」

 恐る恐る、なるべくゆっくりとコップの中身に口をつける。
 そして続けざまに口の中に広がるであろう強いアルコールの風味に、思わず身構えたのだが。

「……あれ?」
「おいしーれすかにゃー?」

 そのぽわんとした問いかけに、思わず彼女は頷いていた。
 原液独特のねっとりとした濃厚な甘さもなければ、喉にひりつく感覚もない。
 甘みはそれなりにあるものの、むしろとてもおいしい。

「最近のお酒って薄めなんですかねえ……よかった……」
「さささ、ぐーっとぐーっと」

 安堵の息をつく間もなく、少女に勧められるがままに残りを飲み干す。
 うん、これはいい。

「ささささ、もういっぱいどーぞれすにゃー」
「あ、これはどうも」

 いつの間にか先程の一件など忘れ、気づけば二人は笑い合いながら酒を酌み交わしていた。
 こうして少女の「どよーん退治大作戦☆」は見事に成功したのであった。

 もっともその果実酒の度数が高かったのは紛れもない真実であり、それからしばらく後、姿の見えない騎士を探そうと歩き出した彼女の足取りが少々ふらついていたのまた事実であった。


終わり。


                                        ⇒宴会小ネタ編まとめての後書き

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