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連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-18

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女装少年の受難?~マッドガッサー襲来



 とても楽しかった宴会が、終わったその後のこと。
 こっちは自宅のあるマンションを目指し、深夜の学校町を歩いていた。

「うぅ、頭痛い………これが噂の二日酔いか……?」

 あの時、恥ずかしさをごまかすために飲んだお酒が想像以上に効いていたらしい。頭がガンガンと痛む。
 明日になったら治ってたらいいなー、と思いつつ、夜の澄んだ空気を吸い込んだ。
 と、その時。
 前方の路地裏から、全身黒づくめの男が現れた。
 顔にガスマスクをはめたその男は、こっちの前に立ち塞がり………そして、いきなりピンク色のガスを発射する。

「あーもう、人が調子悪いときに………っ!」

 どんな効果を持っているかもわからないガスを吸い込むわけにはいかない。
 口を固くつぐみつつ、容赦なしの一撃で相手を粉々にしようと足に力を込め―――。

「ひひひっ、私もいるのよねぇ!」
「―――あうっ!?」

 突然腰に激痛が走り―――思わずでた声とともに、息を吸い込んでしまった。

(しまった、まだいたのか……。ヤバ、マズ……っ! 意識が……!)

 その瞬間、一気に薄れていくこっちの意識。
 目の前の黒い男がケタケタ笑うのも、遠い遠いどこかでの出来事かのように、うっすらとしか聞こえない。

「…っ、こんなとこでっ……」

 あまりの腰の痛みに、地に着けた両手。
 最後の力を振り絞って、そこから能力を発動させる。

「……やられて、たまるかぁっ!」

 こっちが今いるのは、アスファルトで舗装された道路の真ん中。
 そのアスファルトの表面を振動によって粉々に砕き、さらにそれを舞い上がらせる。
 ドバッ! と。
 辺り一面が、灰色の煙幕によって覆われた。

「な、なんだこりゃっ!?」

 ガスマスクの男たちの戸惑いの声が聞こえる。
 本来なら、この煙幕も次の攻撃の布石にすぎないのだけれど……今は、そんな余裕はない。
 ガスマスクたちが戸惑っている隙に、腰の痛みを我慢して全速力で離脱する―――上へ。
 近くのビルへと飛び付きいて、出現させた鎌をスパイク代わりに屋上へと駆け上がり、そのままの勢いで夜空を走る。
 薄れゆく意識の中、時にはビルからビルへと飛び移り、時には出現させた整地用ローラーを足場にして。
 だが。
 北区の自宅があるマンション、もうすこしでそこに着くというところで、こっちは力尽きた。
 ビルのへりに足をかけ、跳ぼうとして………足から力が抜け、そのまま地面へと落ちていく。

「……、がっ…!」

 受け身はとったが、高さが高さ。
 全身に走る衝撃とともに、消えかけていたこっちの意識は、完全にブラックアウトした。



「―――がわかりマセン。でモ、ワタシの《シンデレラ》が間違うなんてありえマセンシ………なんで女になってるんデスカ、コイツ」

 体が揺さぶられる感覚に、こっちは目を覚ました。
 誰かにおぶわれてるみたいだ。
 聞き覚えのある声、だけど…………ダメだ。頭がボーっとして、何も考えられない。

「まったク、なんでワタシがこんな肉体労働しなくちゃならないんデスカ………でモ、この程度に他のカードを使うのも面倒デスシ……ハァ」

 それに、身体が熱い。我慢できないくらいに。
 揺さぶられるたびに、誰かの背中に密着してるところからゾクゾクと、なんともいえない気持ちよさを感じる。
 うっすらと目を開けると、こっちをおぶってくれてる誰かの後頭部が見えた。
 そこにあるのは、まるで金を融かして紡いだかのような、艶やかな金髪。
 そしてその両脇にちょこんと存在する形のいい小ぶりな耳に、こっちの目線は吸い寄せられる。
 ―――かぷり、と。
 よくわからない衝動の赴くままに、それにかぶりついた。

「ひゃッ!? な、なにしてんデスカちょっト!?」

 耳たぶを唇でもむもむと揉みほぐし、耳の形に沿って舌をなぞらせていく。
 外側をなぞり、次は内側へ。そうして、耳全体を味わうように舐めていく。

「ちょッ、んッ…何してやがってんデスカっ!」

 我慢できなくなったかのように、そう叫んで振り向いた顔は、まるで精巧に創られたアンティークドールのように可愛らしくて。
 耳から口を離し、桜のような色合いのその唇へとこっちの唇を重ねた。

「んッ、んん~~~ッ!?」

 声を出そうと口を開けたその隙をつき、舌をその中へと差し入れる。
 二人の身体が絡まりあって地面へと倒れこみ、それでも首に手を回して相手が離れていかないように固定した。
 相手の口内を蹂躙するため、舌を縦横無尽に蠢かせ始める。
 まず、その形に沿って舌を這わせた。歯や、歯茎や……様々な感触を舌の先に感じる。
 そのまま、自分の舌を相手の舌へと絡ませた。
 抵抗の動きすらも逆手にとり、ただ本能のままに唇を貪る。
 口と口の間から熱い吐息が漏れ、歯と歯がぶつかってカチカチと音がなる。
 そうして、息が苦しくなってきたころ……相手の喉がこくり、と動き、二人のそれが入り交じった唾液を嚥下した。
 それを確認すると、今まで口内を蹂躙していた舌を引き抜き、唇を離す。
 たらり、と、二人分の唾液が糸を引くのが見えた。

「はぁ、はぁ………もっとぉ……」

 自分でも驚くほど、甘い声がでた。
 さきほどまでの甘美な悦楽にまた浸るべく、相手の唇へと自分のそれを近づけていく。

「ハァ、ハァ……ケホッ。いイ、加減にしろってんデス! やっちまいナサイ、《シンデレラ》ッ!」

 相手の唇が目と鼻の先、お互いの吐息が感じられるほどの距離になったところで、彼女はそう叫んだ。
 その瞬間。
 とんでもない衝撃が頭を挟み込むように炸裂し―――またもや、こっちの意識はブラックアウトした。



 ―――次の日。

「…………んー。あさー?」

 顔にあたる日差しに目が覚めた。
 昨日、宴会から帰るときに感じていた頭痛は、もう感じない…………って、あれ?

「なぜに、家?」

 そう、今こっちは、自宅で寝ていたのだ。
 たしか昨日、変なガスマスク男に変なガス吸わされて、それで…………。

「………うん。ビルから落っこちて、そっから憶えてないや」

 トバさんあたりが探しにでも来てくれたのかなー、と考えつつ、立ち上がる。
 すると、

「っと、あう」

身体の前の方に、いつもとは違う重さを感じた。
 まったく想定してなかったその重さに引かれ、布団から出られずにコケてしまう。
 それと同時に、胸にむにょん、という圧迫感が。

「うぅ、いたた………って、あれ?」

 むにょん?
 疑問を感じ、また立ち上がって視線を下に。
 そこには、見慣れた床なんかは存在せず―――。

「―――なんぞ、これー…」

 正真正銘男である(はず。最近自信がなくなってきた)のこっちにあるはずのないもの―――女性の胸。
 母性の象徴であるはずのその二つの脂肪の塊が、そこ―――こっちの胸に、あふれんばかりの存在感をもって鎮座していた。



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