「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-a-01

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「つばのない帽子を被った、全身黒尽くめの男、ガスマスクを身につけて背中に妙なタンクを背負っているっと」
 ≪赤マント≫や≪赤い靴≫から聞いた情報から出てくる犯人像を俺は並べ立てていった。
「あとは狼に変身する幼女、ねぇ」
 これはこれでインパクトのある取り合わせだなぁ。と呟く。
「おんなの子ががすをすったらどうなるの?」
「そりゃあ、男体化?」
「なんとも気の抜けることだ」
 Tさんのため息交じりの発言に俺も同意だ。ただ、
「いいじゃん、まだ血生臭くなさそうで」
 Tさんは確かに。とうなずくが、≪赤マント≫のおっさんが、
「そうは言ってもなかなか面倒なものなのだよ? いきなり身体が変化するのは」
 と言う。それに対してTさんが何やら思案顔で答える。
「せめて身体自体が変化してなければ治せたんだがな」
 肉体の構造自体を変えるようなことを治療目的で行うには≪寺生まれで霊感の強いTさん≫も≪ケサランパサラン≫も専門から離れ過ぎている。とTさん。
「とは言っても、一週間このままってのもね。……ってあれ? ≪赤い靴≫はどこ行ったの?」
「え? 今までそこに……」
 ≪赤マント≫のおっちゃんの撮影で忙しくて気がつかなかった。いつの間にかいなくなった変態こと≪赤い靴≫を探して視線を巡らせると、なんかちょっと離れた所にいた。
「あ~、これはこれは素晴らしいロリいやお嬢さん。お姉ちゃんがいいことを教えてあげようか?」
 そしてなにやら路地の小道から顔をのぞかせていた女の子に話しかけていた。
「……性格までは変えられんらしいな」
「すごいの」
 Tさんとリカちゃんが感想を述べると、
「頭が痛いわ」
 拳を握りながら≪赤い靴≫の嬢ちゃんが≪赤い靴≫に近寄っていった。
「≪赤マント≫、同業者なのですよ」
「一緒にしないでくれたまえ」
 ≪赤いはんてん≫の嬢ちゃんと≪赤マント≫のおっさんもなにやら言い合っている。リカちゃんに反応しないあたりまだこっちのおっさんは大丈夫なのかもしれない。と思っていると、
「お~い、だれか何か肉系の食物を持ってない~?」
 ≪赤い靴≫が振り返ってわけのわからん事をほざいてきた。
「なんで肉がいるんだよっ?」
 問いかけると、
「いやぁ、このロリが肉を御所望なのでな!」
 そう言って路地の小道から引っ張り出してきたのはなぜか金髪のヴェールを身に纏っている、明らかに日本産ではない女の子だ。
 どっから見つけてきやがった。と≪赤い靴≫に蔑みの視線を向けていると横手から焦りを含んだ声が聞こえた。
「気を付けろ! 私が観察していた幼女はその子だ!」
 それはどっちかというと危険なのはおっさんの方じゃないのか? そう思う間もなくおっさんの声と同時に女の子が舌うち一つ、≪赤い靴≫に引かれていた手を逆に引っ張り、
 ≪赤い靴≫を組み伏せた。
「ぐっ!?」
 うつ伏せにほぼ無防備に倒されたがあの無駄にでかい胸なら大したダメージをもらってないことだろう。そう思っていると横からTさんの声が聞こえた。
「≪赤い靴≫、避難を!」
 そう言ってTさんは手を女の子に向ける。そして、
「破ぁ!!」
 気合いの声、同時に構えられた手から白く輝く弾が放たれ、不意を突かれた女の子をすっ飛ばした。女の子は壁にガンッ、と硬質な音を立ててぶつかる。
「どこかに仲間、≪マッドガッサー≫がいるはずなのです! 気を付けるのです!」
 注意を促す≪赤いはんてん≫の嬢ちゃんの声に応じるようにリカちゃんの声が聞こえた。
「あ、いたの」
 そう言って、≪一人かくれんぼ≫としてかくれんぼの得意なリカちゃんがある一点を指差す。
 それは路地裏の更に裏道に入る狭い狭い道、そこにつばのない帽子に黒づくめなガスマスク、ガスタンクを背負った、
「≪赤い靴≫の嬢ちゃん! ≪マッドガッサー≫がそこにいるっ!」
「え?」
 そいつはこっちが気付くと同時に路地から出てきた。そしてそいつは運悪く、敵の出現によって≪赤い靴≫のところからこっちに引き返してきていた≪赤い靴≫の嬢ちゃんの背後に現れる形になる。
「このっ!」
 とっさに駆け寄り、嬢ちゃんの腕を引っ張る。同時に≪マッドガッサー≫からピンク色のガスが発射される。嬢ちゃんを抱え込んでガスから庇うようにしていると、Tさんが駆け寄りながら叫んだ。
「結界が張れれば幸せだ!」
 瞬時に光の壁が四方を囲んでくれる。だけど、多少吸い込んだみたいだ、呼吸に違和感を感じる。
 Tさんは≪マッドガッサー≫を強化した脚力でもって思いっきり蹴り飛ばすと、
「大丈夫か!?」
 中にガスを少し含んだかもしれない結界を即解除、手から白光が地面に放たれ、衝撃で周囲の残りのガスが散った。
「あー、大丈、夫?」
 答えようとして立ち上がった足が崩れた。力が入らない。おかしい、みたいだった。

            ●


「あ、れ?」
 意識がボーッとする。Tさんがいつの間にか俺の背を抱いて顔を覗き込んでいる。
「ガスを吸い込んだか?」
「…………」
 Tさんが何か言っているのが遠くに聞こえる。これはひどく酔っている感じに似てる。熱くて、考えがまとまらない……。
 俺は無意識のうちに体を起こし、Tさんの腕を掴む。「どうし――」そして、小さいが、ないわけではない胸に押し当てる。
「男体化は、ないみたい」
 緩く口が笑みの形に開いているのが分かる。あぁ、おれはこの人に触れられて、うれしいのか。
 そんな事を思いながら腕を双丘を確認させるように押し付けていると、強引に引き抜かれた。
「契約者、どうした?」
 Tさんが少し鋭い目で心配げに俺を見る。
「んー……」
 答えようとして、不意に思い出すのはこの前の宴会の時のこと。≪はないちもんめ≫の嬢ちゃんが黒服さんにしていた濃厚な、
「ちゅー……?」
「は?」
 ためしてみたい、と思い、目の前の奴にならいいや。と考える。
 体を起こしてTさんに向き直る。そしてあの時の事を思い出しながら、おもむろにTさんの頭に手をまわし、
「ん」
「契約者? どうし――」
 顔を近づける。至近にまでTさんの顔が迫り――



            ●


 背に回した手から光弾が撃ち込まれ、青年の契約者の少女の身体がのけぞった。
「ぁ、」
 と声を発し、肩口に倒れこんでくる少女を受け止めて青年は一息、特にガスを吸い込んだ様子のない≪赤い靴≫の契約者に≪赤い靴≫共々後ろに下がるように言い、人形も預けると、路地の奥に視線を向けた。視線の先では先程青年が蹴り飛ばした≪マッドガッサー≫がむくりと起き上がっているところだった。
「ふ、ふふ。危なかった」
「なるほど、頑丈だ」
 片手で契約者を抱え直しながら青年は呆れた声で言う。
「学校町全体を女体化し、ハーレムを作り上げるまで俺は滅びんよ!」
「そいつはけっこうなことだ」
 青年は先程の契約者の行動を反芻し、一考、
「このガスは、媚薬か?」
「男は女体化、女はエロい気分になる!」
 ≪マッドガッサー≫の言葉にああ、と青年は得心したようにうなずき、
「それで契約者がおかしくなったのか」
「素晴らしいだろう! 男も女になり皆が俺のハーレムに集う!!」
「ガス効果が切れるたびにまた吹きつけて回るのか?」
「しばらくはそうだろうがそのうち効果も長く持続する代物ができる!」
「なるほど」
「エロエロなことについては≪スパニッシュフライ≫の契約者が既にいるしな」
「≪スパニッシュフライ≫、」
 確か歪んだ世界一有名なネズミに憑いてどういうわけか一時的に正気に近い状態に意識を捻じ曲げて夢子ちゃんを助けたのと同じ都市伝説だったか。効果及び外見は確か――
「媚薬の蠅か」
「素晴らしいだろっ!?」
 ああ、厄介だ。と青年はうなずき、
「まぁ、人死にが出るよりははるかにましか」
「じゃあ分かったらおとなしく女体化カモンっ!!」
 そう言ってタンクを背負い直す≪マッドガッサー≫を見ながら青年は言う。
「そもそも、女性は薬や毒でなびかせるものではない。ちがうか?」
「知ったこっちゃねえよっ!!」
 構えられたガス噴出口を見て、それでも青年は言葉を続ける。
「ん、まぁそんなことはどうでもいいと言えばどうでもいいか」
 だが、と言って苦笑。
「≪マッドガッサー≫よ、俺は今割と憤っている。契約者に手を出されるのはやはり業腹でな? お前の計画も男に関しては笑い話だが女にはちときつい」
 だから、
「消えてくれると、俺は幸せだ」
 言葉と共に光弾が放たれた。


            ●


「なんのっ!」
 ≪マッドガッサー≫は懐からなんらかの液体の入った薬瓶を放り投げて楯代わりにすると初撃を回避、
 青年が構えた手から追撃の一撃を放とうとしたところ、頭上から獣が降ってきた。
 契約者を抱えたまま青年は強化した脚力で後方へと下がり、間髪入れずに光弾を叩きこむが獣は先程吹き飛ばした幼子に変化、その縮んだ身長の差で光弾が、金髪を幾本か巻き込むのみで通り過ぎていく。
 青年は左の肩にもたれかけさせるように抱いた契約者と己の左足を重心と軸足にしつつ、脚力強化されたままの威力の蹴りを入れる。
 打音、しかし固い手応え。防がれた。
 幼子が瞬時に狼男になり、蹴りを片手で防いだのだ。
 狼男はそのまま威力を利用するように後ろへと飛び、距離を取った。
「おいおいおい、幼女にためらいなく攻撃するたぁどういうこっちゃ?」
 ニヤけ顔で訊く狼男に青年は自嘲気味な苦笑をもって答える。
「先だって≪夢の国≫戦で内臓を抜かれた幼子を相当相手にしているからな。
 敵確定で獣臭い幼子くらいならためらいなく攻撃できるさ」
「そうかいっ!」
 吐きだすような声と共に狼男が拳を振りかぶって一気に距離を詰めてくる。
 青年も応え、拳を光に包みつつ、白光の壁を狼男と自分の間に展開する。
「無駄ァっ!」
 狼男の声の通り、白光の壁は狼男の膂力に容易く破られ、青年と狼男の拳は鈍い音をたてて激突した。
 そのまま数秒、力が拮抗し、状態が膠着したところで狼男のもう片方の腕が強引に伸びてくる。青年の片手は契約者で塞がっており、出すことができない。
 青年は拳を合わせたまま「――っ」と大きく息を吸い込み、
「破ぁ!!」
 狼男のもう片方の手が届こうとしたところで打ち合わせた拳から光が放たれた。それに狼男が巻き込まれ、片腕を消失させながら吹き飛んでいく。
「マリ・ヴェリテ!」
 ≪マッドガッサー≫の声、吹き飛んだ先で狼男は獣に変化、≪マッドガッサー≫を大きな顎に咥えこみ、路地裏に面しているビルを三本の脚で駆けのぼり始めた。
「逃さん」
 青年が追うが、ビルの中腹まで駆け跳んだところでビルから落下物がいくつかあることに気がついた。
 それは複数の異常な光を灯す携帯電話で――
「まずい……っ!」
 次の瞬間、
 発光、爆発、轟音、そして衝撃が吹き荒れた。

 数秒の後、先程まで何の変哲もなかった路地裏がところどころ焼け焦げ砕け、路地に面していたビルの窓ガラスが全て割れ、壁面も爆心地近くは抉れている。そんな中、
「……無事か?」
「なんとかね」
 爆煙の中から輝く結界が現れ、中には青年たち全員の姿があった。
 青年は辺りの惨状を確認し、
「このままここにいるのはまずいな」
 ため息交じりに呟いた。
「一旦どこかに跳ぶかね?」
 そう訊く≪赤マント≫に青年はうなずく。
「頼む」
 人数が人数だから数回に分けて跳ぶ、という≪赤マント≫に殿を務めることを言うと、青年は抱え込んだ契約者に目を向けた。彼に見えるのはその後頭部だけだが、
「さて、毒を祓っただけで気絶させるような衝撃は与えていないはずだがな」
 言葉の後にも未だ青年にもたれかかったままの少女を見て青年は苦笑。
「リカちゃんに笑われるなぁ?」
 そう言って少女を心配げに見ていた人形に声をかけるが人形は「?」と首をかしげるばかり、青年は愉快そうにく、と笑い、
「まあたまにはいいか」
 言ってずり落ちかけた少女を抱え直した。少女の腕が応えるように少し強く青年をしめた。


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