≪赤マント≫のおっさんの能力で運ばれてきたどっかの小学校の屋上。そこで俺たちは≪マッドガッサー≫と変態軍団をどうするか? という話をしていたのだが、
「さて」
Tさんがおもむろに携帯を取り出した。
「……どうしたんだ? Tさん」
屋上の隅っこから声をかけると、
「ん、一人この状態の彼等を治す心あたりがある」
そう言ってアドレス帳を確認していくTさんを見て皆様一斉に声を張り上げた。
「本当かね?」
「マジなのですか?」
「確かなの!?」
「マジか?」
それにリカちゃんが声をかける。
「みんなおちつくの」
その一言でシン、っと静まり返る皆様を見てTさんは一つうなずき、
「まあ、おそらくは」
そう言って携帯を耳に当てた。
「もしもし、ああ、黒服さん。……いや、少し問題が発生してな、…………そちらも? せっかく≪夢の国≫の件が無くなったと言うのに、なかなか物騒だな……今どちらに? …………ええ、では今すぐそっちに行きます。……ん? ああ、いや、少し便利な足があって。……あぁ、では」
時間にして一分強、携帯をしまってTさんは言う。
「連絡が取れた。≪赤マント≫よ、転移を頼めるか?」
「元に戻るためならば任せたまえ!」
「あぅ! 気張るのですよ!」
張り切る≪赤マント≫の元おっさん(現姉ちゃん)。
「ん、では頼む」
Tさんの返事。転移か……ああ確かにこれは、いい足かもしれない。
そして俺たちは転移した。その先では――
「黒服さんか」
「おひさしぶりなの」
「あぅ! お前なのですか?」
「≪夢の国の地下トンネル≫とは、世間は狭いな」
どうも最初の転移で跳んだ奴らは皆黒服さんの知り合いらしかった。≪赤い靴≫コンビも黒服さんと面識があることを考えると、黒服さんかなり顔が広い。
「知り合いか?」
Tさんが≪赤マント≫の元おっさんに声をかけると元おっさんは苦笑して、
「ああ、例の、都市伝説と一体化してしまった友人だよ」
言った。
「それは……また」
世間は狭い。若干渋い顔でTさんもそう呟いた。
「話が見えないんだけど」
「ん、あぁ、――黒服さんと、この≪赤いはんてん≫と≪赤マント≫は古い知り合いということだ」
Tさんが言う。はあ、こりゃ確かに世間は狭いや。
「≪赤い靴≫たちを頼む」
「分かった」
Tさんにうなずいて、また転移する元おっさん。
「まさかこんな所で繋がるとは」
「ええ、まったくです」
そんな感じで会話しているTさんと黒服さん。その背後に隠れるように――
「っと……、その子、誰?」
金髪のかわいい嬢ちゃんがいた。
あ……れ? いや、……まさか?
「そいつ、もしかして」
どこかで見たことがある顔。……そう、そっくりなのだ。
「チャラい兄ちゃん!?」
あの地下カジノのお姫様たちに着せかえられたあのチャラい兄ちゃんに、だ。
「…………」
うつむいているが、多分間違い無い。チャラチャラしたあのシルバーアクセサリーがその証拠だ。……ってことは――
「そちらも≪マッドガッサー≫関連、か?」
≪赤い靴≫たちを≪赤マント≫のおっさんが運んできたのを確認してTさん。黒服さんも「そちらもですか」とうなずく。
「っぷ……っくく……ははははははははっ!」
俺はなんか衝動のままに笑っていた。
「お前には見られたくなかったっ!」
叫ぶチャラい元兄ちゃん(現姉ちゃん)。
「いやいやいやいや、似合ってるって!」
写真を撮りつつ言う。
「お前という奴は……っ」
恨みがましく睨んでくるチャラい元兄ちゃんに尚もカメラを向けていると、
「…………Tさんの契約者さん」
低い、低い黒服さんの声が聞こえた。
「へ? 何?」
思わず手を止めて黒服さんを見る。
「面白いですか?」
「え?」
なにか、おかしかった。
「嫌がっている彼を写真に収めるのは、楽しいですか?」
その声は低く低く、怒りを含んでいるかのような声で、
な、なんだ? 黒服さんがいつもと、ちが……う?
「さて」
Tさんがおもむろに携帯を取り出した。
「……どうしたんだ? Tさん」
屋上の隅っこから声をかけると、
「ん、一人この状態の彼等を治す心あたりがある」
そう言ってアドレス帳を確認していくTさんを見て皆様一斉に声を張り上げた。
「本当かね?」
「マジなのですか?」
「確かなの!?」
「マジか?」
それにリカちゃんが声をかける。
「みんなおちつくの」
その一言でシン、っと静まり返る皆様を見てTさんは一つうなずき、
「まあ、おそらくは」
そう言って携帯を耳に当てた。
「もしもし、ああ、黒服さん。……いや、少し問題が発生してな、…………そちらも? せっかく≪夢の国≫の件が無くなったと言うのに、なかなか物騒だな……今どちらに? …………ええ、では今すぐそっちに行きます。……ん? ああ、いや、少し便利な足があって。……あぁ、では」
時間にして一分強、携帯をしまってTさんは言う。
「連絡が取れた。≪赤マント≫よ、転移を頼めるか?」
「元に戻るためならば任せたまえ!」
「あぅ! 気張るのですよ!」
張り切る≪赤マント≫の元おっさん(現姉ちゃん)。
「ん、では頼む」
Tさんの返事。転移か……ああ確かにこれは、いい足かもしれない。
そして俺たちは転移した。その先では――
「黒服さんか」
「おひさしぶりなの」
「あぅ! お前なのですか?」
「≪夢の国の地下トンネル≫とは、世間は狭いな」
どうも最初の転移で跳んだ奴らは皆黒服さんの知り合いらしかった。≪赤い靴≫コンビも黒服さんと面識があることを考えると、黒服さんかなり顔が広い。
「知り合いか?」
Tさんが≪赤マント≫の元おっさんに声をかけると元おっさんは苦笑して、
「ああ、例の、都市伝説と一体化してしまった友人だよ」
言った。
「それは……また」
世間は狭い。若干渋い顔でTさんもそう呟いた。
「話が見えないんだけど」
「ん、あぁ、――黒服さんと、この≪赤いはんてん≫と≪赤マント≫は古い知り合いということだ」
Tさんが言う。はあ、こりゃ確かに世間は狭いや。
「≪赤い靴≫たちを頼む」
「分かった」
Tさんにうなずいて、また転移する元おっさん。
「まさかこんな所で繋がるとは」
「ええ、まったくです」
そんな感じで会話しているTさんと黒服さん。その背後に隠れるように――
「っと……、その子、誰?」
金髪のかわいい嬢ちゃんがいた。
あ……れ? いや、……まさか?
「そいつ、もしかして」
どこかで見たことがある顔。……そう、そっくりなのだ。
「チャラい兄ちゃん!?」
あの地下カジノのお姫様たちに着せかえられたあのチャラい兄ちゃんに、だ。
「…………」
うつむいているが、多分間違い無い。チャラチャラしたあのシルバーアクセサリーがその証拠だ。……ってことは――
「そちらも≪マッドガッサー≫関連、か?」
≪赤い靴≫たちを≪赤マント≫のおっさんが運んできたのを確認してTさん。黒服さんも「そちらもですか」とうなずく。
「っぷ……っくく……ははははははははっ!」
俺はなんか衝動のままに笑っていた。
「お前には見られたくなかったっ!」
叫ぶチャラい元兄ちゃん(現姉ちゃん)。
「いやいやいやいや、似合ってるって!」
写真を撮りつつ言う。
「お前という奴は……っ」
恨みがましく睨んでくるチャラい元兄ちゃんに尚もカメラを向けていると、
「…………Tさんの契約者さん」
低い、低い黒服さんの声が聞こえた。
「へ? 何?」
思わず手を止めて黒服さんを見る。
「面白いですか?」
「え?」
なにか、おかしかった。
「嫌がっている彼を写真に収めるのは、楽しいですか?」
その声は低く低く、怒りを含んでいるかのような声で、
な、なんだ? 黒服さんがいつもと、ちが……う?
●
青年の契約者はいつもと違う様子の黒服に狼狽しているようだった。
「え、いや、あのな?」
そう言って、まるで教師に注意を受けたやんちゃな生徒のような態度の契約者を見て青年はため息をつきつつ思う。
あれは好き勝手に撮っているように見えて何気にその人によって許される範囲をぎりぎりのライン上でわきまえて(いるかのように)撮っているからな。
まあ、あの青年に対しては多少やり過ぎている感はあったが……。
助け船を出そう。そう思い、青年は動いた。
「黒服さん、すまないがそこらへんにしてやってはくれないか?」
近寄って行っても契約者は青年を見ようとしない。口達者な青年に頼れば事態が好転するだろうことは分かっているのに、だ。
自分が悪いことを分かっているからだろうな。
ならばやめればいいものを、と苦笑。そして契約者の前、黒服の眼前に立つ。
「契約者は今、ちょっと問題が発生したせいで若干情緒不安定気味なんだ」
気を紛らわす必要がある。
「……それで、嫌がる彼が撮られるのを黙って見ていろ、と?」
黒服の低い声音に青年は目を思わずそらし、うなずく。
「有り体に言えば」
怒らせたら怖いタイプか。と青年は少し黒服に脅威を感じる。
黒服は青年を見ると、
「彼の疲労や屈辱よりも彼女の安定と趣味を選ぶということですか?」
「仮に人質にでもこの二人がとられたのならば俺は迷わず契約者を選ぶな。
――選んだ上で両方助けるが」
言った言葉を無視するように疑問詞が突き付けられた。
「彼女に甘いのではないのですか?」
話を逸らさせてはもらえんか。手厳しい。
そう青年は思い、返答。
「そんなつもりはないんだが」
「しっかりと手綱は握っておくべきだと、私は思いますが」
「……ほう?」
いかん、少し腹が立ってきた。そう青年は思いながら言う。
「手綱とはまた妙な事を言う、どちらかというと契約者に手綱を握られるのは異物である俺たちの方だと思うのだが?」
「社会的に異常なことを御するという意味であるならばあなたの方が彼女の御者になるべきではないのですか?」
「……契約者はそこまで異常な行動をしているだろうか? ただ物珍しいものを写真に収めているだけだぞ?」
「≪日焼けマシンで人間ステーキ≫の彼を無理やり女装させた、というのは?」
「あれは将門公の名の下で行われた試合による妥当な権利の履行だ。無理やりではあるだろうが正当な権利だろう」
黒服は追及を続ける。
「……宴会の時の件は?」
「夢子ちゃんとの別れが寂しい契約者の宴会のハイな楽しみ方だった。……と、言わせてもらおうか」
流石に酒を飲んだ黒服さんが何をしていたかを引き合いには出せないな。青年は熱くなりつつある頭で思う。
「……やはり甘く聞こえますがね」
黒服は低い声のままだ。青年は嫌な汗をかいているのを自覚する。
「割とスパルタ教育だと思うんだがな」
多少ひきつった苦笑。まあ確かに≪日焼けマシンで人間ステーキ≫の青年には迷惑をかけた。言われても仕方ないこととは思うが、
「そんなことではいつか彼女も≪組織≫に危険視されるかもしれませんよ?」
その言葉は、元≪組織≫所属の彼にとって聞き捨てるには現実感がありすぎた。
――いかん、
「≪組織≫、ねぇ?」
思った時には皮肉が口を切り、口端が笑みの形に歪んでいた。
「その御大層な≪組織≫様は結局≪マッドガッサー≫を取り逃したあげく、そいつは今、こうして仲間を引き連れて町に戻ってきて害を及ぼしているわけだが」
あぁ、と言って手を打ち、
「そう言えばその≪マッドガッサー≫に出会って取り逃した黒服がいたのだったか」
そう言って眼前の黒服を改めて見据える。≪日焼けマシンで人間ステーキ≫の青年をちらりと見て、
「今こうして彼がガスを食らってしまったのもあの時に貴方が≪マッドガッサー≫を討てなかったから、ともいえるな? それに――」
言ってしまってからしまったと青年は思い、言葉を切った。というのも眼前の黒服から先程まで発されていた怒気が完全に失せており、その黒服は目を丸くして青年を見ていたからだ。
あれか、他人が怒っているのを見ると自分は冷静になるってやつか。
思い、黒服と目を合わせる。そのまま互いに沈黙、
「………………」
妙な緊張感が漂う中、青年と黒服はお互いの顔を見合い、タイミングを計っている。
一応、俺も彼も頭は冷えたな。
この沈黙に一種の安堵を感じつつ青年は思う。
そしてその緊張は、周りの人間のすっかり固まりきった。長期戦を覚悟して恐る恐る様子を窺うような気配を裏切り、意外にも早く解れた。
はじめに起こったのは青年の苦い苦い笑い。それにつられるように黒服も似たり寄ったりな笑みを浮かべる。
青年は照れ隠しのように髪をグシャグシャかき混ぜつつ、
「あー、すまん。先程≪マッドガッサー≫関連でちょっと腹が立つことがあってな。どうにも売り言葉に買い言葉で自制が効かなかった。
目の前で≪マッドガッサー≫を見ておきながら結局とり逃した俺がとやかく言えるわけもないのにな」
「いえ、こちらこそ、先程まで将門公の相手をしていて少し気が立っていたようです」
その二人を見て即座に動いた者たちがいた。
「ほ、ほら、黒服! 俺、そんなに写真撮られるの嫌じゃないから!」
「ああ! もうこれからもいい被写体とカメラマンだぜ!?」
とりなすように写真をポーズをとっては撮影している二人を見て、それぞれの契約する都市伝説たちは顔を見合わせ、また笑うのだった。
今度は、苦味が薄らいだ笑顔で。
「え、いや、あのな?」
そう言って、まるで教師に注意を受けたやんちゃな生徒のような態度の契約者を見て青年はため息をつきつつ思う。
あれは好き勝手に撮っているように見えて何気にその人によって許される範囲をぎりぎりのライン上でわきまえて(いるかのように)撮っているからな。
まあ、あの青年に対しては多少やり過ぎている感はあったが……。
助け船を出そう。そう思い、青年は動いた。
「黒服さん、すまないがそこらへんにしてやってはくれないか?」
近寄って行っても契約者は青年を見ようとしない。口達者な青年に頼れば事態が好転するだろうことは分かっているのに、だ。
自分が悪いことを分かっているからだろうな。
ならばやめればいいものを、と苦笑。そして契約者の前、黒服の眼前に立つ。
「契約者は今、ちょっと問題が発生したせいで若干情緒不安定気味なんだ」
気を紛らわす必要がある。
「……それで、嫌がる彼が撮られるのを黙って見ていろ、と?」
黒服の低い声音に青年は目を思わずそらし、うなずく。
「有り体に言えば」
怒らせたら怖いタイプか。と青年は少し黒服に脅威を感じる。
黒服は青年を見ると、
「彼の疲労や屈辱よりも彼女の安定と趣味を選ぶということですか?」
「仮に人質にでもこの二人がとられたのならば俺は迷わず契約者を選ぶな。
――選んだ上で両方助けるが」
言った言葉を無視するように疑問詞が突き付けられた。
「彼女に甘いのではないのですか?」
話を逸らさせてはもらえんか。手厳しい。
そう青年は思い、返答。
「そんなつもりはないんだが」
「しっかりと手綱は握っておくべきだと、私は思いますが」
「……ほう?」
いかん、少し腹が立ってきた。そう青年は思いながら言う。
「手綱とはまた妙な事を言う、どちらかというと契約者に手綱を握られるのは異物である俺たちの方だと思うのだが?」
「社会的に異常なことを御するという意味であるならばあなたの方が彼女の御者になるべきではないのですか?」
「……契約者はそこまで異常な行動をしているだろうか? ただ物珍しいものを写真に収めているだけだぞ?」
「≪日焼けマシンで人間ステーキ≫の彼を無理やり女装させた、というのは?」
「あれは将門公の名の下で行われた試合による妥当な権利の履行だ。無理やりではあるだろうが正当な権利だろう」
黒服は追及を続ける。
「……宴会の時の件は?」
「夢子ちゃんとの別れが寂しい契約者の宴会のハイな楽しみ方だった。……と、言わせてもらおうか」
流石に酒を飲んだ黒服さんが何をしていたかを引き合いには出せないな。青年は熱くなりつつある頭で思う。
「……やはり甘く聞こえますがね」
黒服は低い声のままだ。青年は嫌な汗をかいているのを自覚する。
「割とスパルタ教育だと思うんだがな」
多少ひきつった苦笑。まあ確かに≪日焼けマシンで人間ステーキ≫の青年には迷惑をかけた。言われても仕方ないこととは思うが、
「そんなことではいつか彼女も≪組織≫に危険視されるかもしれませんよ?」
その言葉は、元≪組織≫所属の彼にとって聞き捨てるには現実感がありすぎた。
――いかん、
「≪組織≫、ねぇ?」
思った時には皮肉が口を切り、口端が笑みの形に歪んでいた。
「その御大層な≪組織≫様は結局≪マッドガッサー≫を取り逃したあげく、そいつは今、こうして仲間を引き連れて町に戻ってきて害を及ぼしているわけだが」
あぁ、と言って手を打ち、
「そう言えばその≪マッドガッサー≫に出会って取り逃した黒服がいたのだったか」
そう言って眼前の黒服を改めて見据える。≪日焼けマシンで人間ステーキ≫の青年をちらりと見て、
「今こうして彼がガスを食らってしまったのもあの時に貴方が≪マッドガッサー≫を討てなかったから、ともいえるな? それに――」
言ってしまってからしまったと青年は思い、言葉を切った。というのも眼前の黒服から先程まで発されていた怒気が完全に失せており、その黒服は目を丸くして青年を見ていたからだ。
あれか、他人が怒っているのを見ると自分は冷静になるってやつか。
思い、黒服と目を合わせる。そのまま互いに沈黙、
「………………」
妙な緊張感が漂う中、青年と黒服はお互いの顔を見合い、タイミングを計っている。
一応、俺も彼も頭は冷えたな。
この沈黙に一種の安堵を感じつつ青年は思う。
そしてその緊張は、周りの人間のすっかり固まりきった。長期戦を覚悟して恐る恐る様子を窺うような気配を裏切り、意外にも早く解れた。
はじめに起こったのは青年の苦い苦い笑い。それにつられるように黒服も似たり寄ったりな笑みを浮かべる。
青年は照れ隠しのように髪をグシャグシャかき混ぜつつ、
「あー、すまん。先程≪マッドガッサー≫関連でちょっと腹が立つことがあってな。どうにも売り言葉に買い言葉で自制が効かなかった。
目の前で≪マッドガッサー≫を見ておきながら結局とり逃した俺がとやかく言えるわけもないのにな」
「いえ、こちらこそ、先程まで将門公の相手をしていて少し気が立っていたようです」
その二人を見て即座に動いた者たちがいた。
「ほ、ほら、黒服! 俺、そんなに写真撮られるの嫌じゃないから!」
「ああ! もうこれからもいい被写体とカメラマンだぜ!?」
とりなすように写真をポーズをとっては撮影している二人を見て、それぞれの契約する都市伝説たちは顔を見合わせ、また笑うのだった。
今度は、苦味が薄らいだ笑顔で。
●
喧嘩したと思ったら本人たちの間でなにか勝手に分かりあってなんか元通りになったTさんと黒服さん。
二人は今は何事もなかったかのように情報交換とかをしていた。
「――ではお互い、どこまで情報を知っているかとりあえず照合しようか」
Tさんの言葉に黒服さんは「はい」とうなずき、
「≪組織≫では≪マッドガッサー≫は≪13階段≫と≪爆発する携帯電話≫と組んでいることが、あとは昨日の襲撃で≪魔女の一撃≫も関わっていることが分かりました。」
そう言って≪組織≫の持つ限りの情報、容姿や能力について話す黒服さん。
「こちらの持つ情報ではそれに追加で≪マリ・ヴェリテのベート≫といったところか。――これは複数の姿を持っている。俺たちが見たのは金髪の幼子、四足の獣、狼男の三つの姿だ。獣以外の姿の時にはヴェールを纏っていて、先だって片腕を一応吹き飛ばした。確か、これを普通に倒そうとすると断末魔の悲鳴にマンドラゴラと同種の悲鳴をあげるんだったか?」
そう言って≪赤い靴≫に話を振るTさん。
「あ、ああ」
≪赤い靴≫が半ばあっけにとられながら答える。俺も内心はなんかすげえ状態だ。
とりあえず場を何とかしようととっさにチャラい兄ちゃんに黒服さんの女体化写真を渡して買収して一芝居うったんだが、実際この二人にどんな効果を発揮したのかは分からないままだ。少なくとも、
「悪化だけは、させてねぇよな?」
「ああ、たぶんな」
チャラい元兄ちゃんも半ば呆然と答えていた。
「彼がここまで怒ったのは、初めてみたかもしれん。双方まるで子を守る親の獣みたいだったが」
「あぅ、驚きなのですよ……」
「≪赤マント≫のおっさん、詩的じゃねえか……」
≪赤いはんてん≫も≪赤マント≫のおっさんも心ここに非ずっと言った感じだ。やっぱりあの黒服さんがあそこまで怒るのは珍しいことなんだな。
「おにいちゃん、こわかったの」
「……ああ」
俺たちにしてもTさんのアレには驚いた。あそこまでキレるTさんは、
「……初めて見た」
そんな外野席を無視して二人の話は進んでいた。
現在この女体化にどう対処するのか。という話のようだけど、どうやらドナドナの時にもらった≪ウニコール≫の在庫が≪組織≫にも無いらしい。
っと、言うことは、だ。
「女体化されたモノは自然治癒するまで元には戻らないの?」
≪赤い靴≫の嬢ちゃんが訊く。2人とあまり深い知り合いではないせいか、嬢ちゃんが一番一行の中で見た目の動揺が少なかった。
「!?」
そして何故かチャラい元兄ちゃんが≪赤い靴≫の嬢ちゃんを見て目を合わせないようにそっぽを向いた。
挙動不審な奴め。
そんな事を思っているとTさんがちらりと俺を見た。
なんだ?
「それと、≪マッドガッサー≫のガスだが……」
Tさんはそこで咳払いを一つ、そして若干言いづらそうに、
「どうも、女性には媚薬の効果があるらしい」
言葉と同時に身体が熱くなる。
いや、落ち着け! 犬に噛まれたんだと思うんだ! ああそうさっ!
「ああ、それで……」
黒服さんが温かい視線で見てくる。なんかこう、「じゃあさっきのはしょうがないですね」的な感じの視線が? 何これ!? 慈しみ? いや、ちょ、落ち着け俺! 黒服さんのその慈愛が俺を傷つける!?
Tさんも無言でうなずいている。うわ、なんかやたら恥ずかしいぞっ!?
そう思う間にも話は進んでいく。
「そして、解毒の件だが、俺の能力では媚薬効果はともかく女体化までは治療できん」
そうですか、と残念そうにしている黒服さんを見てTさんは声をかける。
「≪パワーストーン≫の契約者の彼女はどうなんだ?」
Tさんはほら、と言って、
「あの水晶のような効能の石がまだあるんじゃないか? 俺は携帯番号を一方的に押し付けただけで彼女の所在も何も分からなくてな。こっちからは会えないものと思っていたんだが、黒服さんなら彼女の居場所まで知っているんじゃないか? ――もっとも、≪夢の国≫戦で相当石はつぎ込んだからもうないかもしれんが」
「あ」
思い当ったようにうなずく黒服さん。
お、あてがあるのか?
「少しお待ちください」
そう言って黒服さんは携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。
二人は今は何事もなかったかのように情報交換とかをしていた。
「――ではお互い、どこまで情報を知っているかとりあえず照合しようか」
Tさんの言葉に黒服さんは「はい」とうなずき、
「≪組織≫では≪マッドガッサー≫は≪13階段≫と≪爆発する携帯電話≫と組んでいることが、あとは昨日の襲撃で≪魔女の一撃≫も関わっていることが分かりました。」
そう言って≪組織≫の持つ限りの情報、容姿や能力について話す黒服さん。
「こちらの持つ情報ではそれに追加で≪マリ・ヴェリテのベート≫といったところか。――これは複数の姿を持っている。俺たちが見たのは金髪の幼子、四足の獣、狼男の三つの姿だ。獣以外の姿の時にはヴェールを纏っていて、先だって片腕を一応吹き飛ばした。確か、これを普通に倒そうとすると断末魔の悲鳴にマンドラゴラと同種の悲鳴をあげるんだったか?」
そう言って≪赤い靴≫に話を振るTさん。
「あ、ああ」
≪赤い靴≫が半ばあっけにとられながら答える。俺も内心はなんかすげえ状態だ。
とりあえず場を何とかしようととっさにチャラい兄ちゃんに黒服さんの女体化写真を渡して買収して一芝居うったんだが、実際この二人にどんな効果を発揮したのかは分からないままだ。少なくとも、
「悪化だけは、させてねぇよな?」
「ああ、たぶんな」
チャラい元兄ちゃんも半ば呆然と答えていた。
「彼がここまで怒ったのは、初めてみたかもしれん。双方まるで子を守る親の獣みたいだったが」
「あぅ、驚きなのですよ……」
「≪赤マント≫のおっさん、詩的じゃねえか……」
≪赤いはんてん≫も≪赤マント≫のおっさんも心ここに非ずっと言った感じだ。やっぱりあの黒服さんがあそこまで怒るのは珍しいことなんだな。
「おにいちゃん、こわかったの」
「……ああ」
俺たちにしてもTさんのアレには驚いた。あそこまでキレるTさんは、
「……初めて見た」
そんな外野席を無視して二人の話は進んでいた。
現在この女体化にどう対処するのか。という話のようだけど、どうやらドナドナの時にもらった≪ウニコール≫の在庫が≪組織≫にも無いらしい。
っと、言うことは、だ。
「女体化されたモノは自然治癒するまで元には戻らないの?」
≪赤い靴≫の嬢ちゃんが訊く。2人とあまり深い知り合いではないせいか、嬢ちゃんが一番一行の中で見た目の動揺が少なかった。
「!?」
そして何故かチャラい元兄ちゃんが≪赤い靴≫の嬢ちゃんを見て目を合わせないようにそっぽを向いた。
挙動不審な奴め。
そんな事を思っているとTさんがちらりと俺を見た。
なんだ?
「それと、≪マッドガッサー≫のガスだが……」
Tさんはそこで咳払いを一つ、そして若干言いづらそうに、
「どうも、女性には媚薬の効果があるらしい」
言葉と同時に身体が熱くなる。
いや、落ち着け! 犬に噛まれたんだと思うんだ! ああそうさっ!
「ああ、それで……」
黒服さんが温かい視線で見てくる。なんかこう、「じゃあさっきのはしょうがないですね」的な感じの視線が? 何これ!? 慈しみ? いや、ちょ、落ち着け俺! 黒服さんのその慈愛が俺を傷つける!?
Tさんも無言でうなずいている。うわ、なんかやたら恥ずかしいぞっ!?
そう思う間にも話は進んでいく。
「そして、解毒の件だが、俺の能力では媚薬効果はともかく女体化までは治療できん」
そうですか、と残念そうにしている黒服さんを見てTさんは声をかける。
「≪パワーストーン≫の契約者の彼女はどうなんだ?」
Tさんはほら、と言って、
「あの水晶のような効能の石がまだあるんじゃないか? 俺は携帯番号を一方的に押し付けただけで彼女の所在も何も分からなくてな。こっちからは会えないものと思っていたんだが、黒服さんなら彼女の居場所まで知っているんじゃないか? ――もっとも、≪夢の国≫戦で相当石はつぎ込んだからもうないかもしれんが」
「あ」
思い当ったようにうなずく黒服さん。
お、あてがあるのか?
「少しお待ちください」
そう言って黒服さんは携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。