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連載 - 騎士と姫君-23

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匿名ユーザー

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「最悪の目覚め」


 ズキズキと響く頭痛にうなされ、私は目を覚ました。

「う……」

 重い瞼を開けば窓からはすでに日が差し込み、部屋を明るく照らし出している。
 枕もとの時計を引き寄ると、すでに昼前の時刻である。

「あたま……いたい」

 掠れた声が喉からこぼれ、だんだんと身体の節々までもが鈍い痛みを発しているのを感じて思わずため息をついた。
 昨日は確か久々に会った同級生と飲みに行ったはず。思いの外酒と話がはずみ、店を出たのはもう終電という時間だったか。
 どうやらかなりはめを外してしまったらしい、二日酔いなんてここしばらくご無沙汰だったのだから。

「あ、ようやく起きた?」

 子供の声にちらりと視線を上げれば、そこには満面の笑みで金髪の少年がこちらを覗きこんでいる。

「おはよう、気分はどう?」
「最悪……ですね」

 いまだがんがんと痛む頭を押さえ、私は何とか身体を起こした。
 ついでにぐっと身体を伸ばせば、ぱきぽきと派手に骨の鳴る音が響き、それだけでも少しばかり気だるさが抜けた気がする。

「あー……お水持ってきてもらえませんかね」
「うん、ちょっと待ってて」

 少年は素直に頷くと、足音もなくキッチンへと消えていく。
 ああ、本格的に喉がやられてしまったらしい。まるで自分の声とは思えないほどにかすれてしまっている。
 今日がフリーな日で助かった。これで午後から授業などあれば、まともに受けれる気がしない。

「はい、どーぞ」
「ありがとうございます……」

 少年の手から――ではなく、目の前に浮かぶコップに手を伸ばし、冷たい水に口をつけた。
 幽霊である彼は自分の手で物に触れる事は出来ないものの、この力である程度のものを動かしたりできるらしい。
 普段はろくな事に使われないその力も、今日ばかりはありがたい。
 そうしてコップの中身を一気に飲み干せば、またいくらか気分が良くなった気がした。

「どう? 気分良くなった?」
「ええ……だいぶましですね」

 顔を上げれば、じっととこちらを見つめる少年と目が合う。
 その目はきらきらと輝き、まるで面白いものでも見つけたような表情で私は内心首を傾げる。
 そんなに今の自分はこの少年の気を引くような状態なんだろうか?

「ね、ついでにお風呂でも入ってくれば? きっともっと気分が良くなるよ」
「あー……そうですね」

 珍しく気の利いた一言に一瞬引っ掛かりを覚えたものの、素直に頷いてベッドから腰を上げた。
 たぶん少年の眼から見ても、今の私は酷い状態なんだろう。
 なんせ気遣いなど無縁の彼の口から、そんな一言が飛び出すぐらいなのだから。

「あいて」
「頭上注意だよ!」

 立ち上がった瞬間頭に電気の傘がぶつかり、それを見た少年がくすくすと笑い声をあげる。
 ……あれ、でもこの傘は確か、私の身長よりもっと上にあったはずなのだけれど。
 頭をさすりながらも顔を上げれば、確かに目の前にはゆらゆらと揺れる傘がある。
 もしかして、昨日酔った弾みでこんな高さに降ろしてしまったんだろうか。

「ほら、早く入っておいでよ。それは僕が直しておいてあげるから」
「あ、じゃあお願いします」

 笑いを堪えた様子の少年に、やはり疑問を覚えながらも私はバスルームへと足を進め、昨日の記憶を引っ張り出そうとしてみる。

 かつての友人と思い出話に花を咲かせ、店を出た時にはだいぶアルコールが入ってふらついていたのは覚えている。
 駅はどちらかと尋ね、彼女の言うままに道を歩き出したのも覚えている。
 しかしその先……電車に乗り、うちに帰って来るまでの記憶が全くもって思い出せない。

 記憶が飛ぶほど酔ったのか、自分は。
 その事実に、一層頭の痛みが強まった。

 酒は好きでよく飲むが、テンションは上がっても記憶が飛んだことなど一度もない。
 昨日も確かに酒はすすんだが、それ程アルコールの強いものを飲んだ覚えもないのだが……しかし実際こうして記憶がぽっかりと抜け落ちているという事は相当に飲んでしまったのだろう。
 せめてその間に何か恥ずかしい事をやらかしていないのを祈るばかりである。

 とにかく今はシャワーでも浴びてすべてを忘れてしまおう。
 そう思い直し、昨日の服装のままであるYシャツを脱ごうとして……ある一点に目が釘付けになった。








「…………え?」

 洗面台に備え付けられた大きな鏡、そこに映るのは――見た事もない若い男の姿であった。

「………………えええ?」

 何が起きているのか理解できない。
 まさか酔ったはずみで見知らぬ男を部屋に入れてしまった?
 それとも鍵を閉めるのを忘れて寝てしまった後、この男が入り込んだ?
 いや待て落ち着け自分、まずは今の状況を確認する事が大事だからしてとりあえず深呼吸、いやそれよりもその男は今どこに居る?

 即座に辺りを見回すが、そんな男などどこにも見当たらない。
 それにお世辞にも広いとは言えないこのスペース、もし誰かが立っていればその時点で気づいているはずだ。
 恐る恐るもう一度鏡に目を戻せば、やはり一人の男がこちらを見返してくる。
 身長は180程度か、がっちりとした体格の若い青年である。
 明るい茶髪は男にしては長く、顔つきも日本人離れしたいわゆるハーフ。
 そしてその格好は……今まさに自分が手をかけているYシャツを着ているではないか。

「…………………………」

 まさか。一番考えたくない結果が導き出され、へなへなとその場に座り込む。
 すると目の前の男も同じく床に座りこみ、絶望の目でこちらを凝視している。

 つまり、これは、あれだ。

「な、なんで……男に……?」

 静まり返ったバスルームに、掠れたテノールボイスが響き渡ったのだった。



<To be...?>



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