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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-42b

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 賑やかな市場を、一人の黒服が歩いている
 市場の中には、人ではない者がたくさんいて、皆一様に、妖しげな物を商っていた
 黒服は店を一つ一つ丁寧に覗いていき、時には店主と何やら交渉しているのだが…
 しかし、目的の物は見つからない

「駄目だねぇ、解毒の類のアイテムは、全部品切れだ」
「そうですか…」

 店主の言葉に、黒服はため息をついた
 …ゴブリンマーケットにすら、ないとは
 これは、完全に解毒アイテムは諦めて、マッドガッサーを倒す事に搾るべきだろうか?

「あんた、「薔薇十字団」とつながりがあるんだろう?あちらの魔女たちに解毒アイテム作成を依頼した方がいいんじゃないのか?」
「…毒物自体がなければ、解毒の薬も作成できないでしょうから」
「まぁ、確かになぁ」

 違いない、と店主は苦笑した
 ごりごり、黒焦げのイモリを潰しつつ続けてくる

「特殊なガスを使うマッドガッサーねぇ。本当、厄介な奴が生まれたもんだ……せめて、「富山の薬売り」が来てくれていればなぁ」
「…?いらしていないのですか?こちらの店舗にも、薬を降ろしているのでしょう?」
「来てないんだよ。あちらさんに連絡したら、こっちに向かって出発したはずだって言うんだが」
「……トラブルにでも、巻き込まれたのでしょうか」

 …本当に、悪い事は重なると言うか、タイミングが悪いと言うか…

「申し訳ありませんが、もし、「ユニコーンの角の粉末」などが入荷されましたら、ご連絡いただけますか?」
「はいよ。「薔薇十字団」から紹介されたあんた相手なら、それくらいいいだろ」

 ありがとうございます、と頭を下げて
 …そして、黒服はゴブリンマーケットを後にした




「…お、来た来た、どうだったんだ?」

 人気のない路地裏に、姿を現した黒服
 彼を待っていたのは「日焼けマシン」の契約者と、Tさん、その契約者、そしてリカちゃんだ
 赤マントたちと別れた後、黒服は「ゴブリンマーケット」で解毒の為のアイテムがないかどうか探す事にして
 …しかし、ゴブリンマーケットに入る事ができるのは、特殊なカードを持っている黒服だけだ
 その間、他の三人と一体は、黒服を待っていたのだ
 ……Tさんたちがいることによって、「日焼けマシン」の契約者はかなりの数のナンパから見逃されていたのだが…それは当人たちが気づいていない事実であるし、とりあえずこの場には特に影響のない事実である

「駄目ですね。完全に品切れ状態。入荷もいつになるかわからないそうです」
「ここも空振りか」
「…やっぱ、マッドガッサーを叩きのめすしかないのか?」

 ため息をつくTさんと、やや物騒な提案をしてきた「日焼けマシン」の契約者
 そうでしょうね、と黒服は小さくため息をついた

「……せめて、マッドガッサーの一味の戦力が、完全にわかればいいのですが…」
「チャラい兄ちゃんがマッドガッサーと遭遇した時、傍にもう一人いたんだよな?そいつも、何かの契約者なのか?」
「…さぁ?何か能力使ったような場面は見なかったからな…」

 Tさんの契約者に尋ねられ、「日焼けマシン」の契約者は首をかしげる
 あの場面でマッドガッサーと一緒にいたのだから、仲間と見るべきだろう
 しかし、契約者だったにしても、何の契約者なのかわからない
 まだ見ぬ「スパニッシュフライ」の契約者なのか…もしかしたら、マッドガッサーの契約者である可能性だってあるのだ
 能力を見ていない以上、彼女がどんな存在だったのか、推察の域を出ない

「まぁ、こちらでも出来る限り調べてみよう。馬鹿馬鹿しい計画ではあるが…実行されてはたまったものではない」
「全くです……こちらでも、「組織」で入手しました情報は、お伝えします」
「…「首塚」でも、わかった事は伝える。ただ、こっちは情報収集あんま得意じゃないから、期待はするなよ」

 当面の方針は固まった
 ひとまず、黒服は「日焼けマシン」の契約者を連れて、Tさんたちと別れようとしたが

「------っが!?」
「ぎゃあっ!?」

 聞こえてきたのは、悲鳴

「…?何だ?」
「喧嘩、のようですが…?」

 ここの、更に奥、その小さな小道で、誰かが喧嘩しているようだった
 打撲音やら怒号やら、悲鳴やらが聞こえてくる

「----ぐぎゃっ!?………っがぁ!!」

 その小道から、吹き飛ばされてきた人影
 しかし、それはすぐに驚異的な身体能力で跳ね上がり、元の道へと戻っていった
 ……先ほどの若者、目つきがおかしかった
 …まさか

「…「コーク・ロア」の影響者ですか」
「え?」
「まさか、「コーラには麻薬成分が含まれている」、か?」
「恐らくは」

 先程の動きは、体の限界を無視してのものだ
 高確率で、麻薬関連の都市伝説の気配がする
 そう言えば、「コーラには麻薬成分が含まれている」の都市伝説と契約した者で暴れている者がいる、と「組織」の連絡網で流されていた
 …マッドガッサーの件とは関係なさそうだが、放っておく訳にもいかない

「…それでは、Tさん、これで。私は少々、あちらの件を片付けてきます」
「あ……ま、待てよ」

 Tさんにそう言って、黒服は打撃音が響く小道へと向かっていく
 「日焼けマシン」の契約者が、慌ててその後を追いかけた
 Tさんたちは、そんな2人の後ろ姿を見つめて

「…どうするんだ?Tさん」
「どうするのー?」
「…まぁ、放っておく訳にもいかんか」

 黒服は戦闘力がある訳でもないし、彼を護ろうとする「日焼けマシン」の契約者は、女性の体になったせいで戦闘力が落ちている
 コーク・ロアとの契約者がどんな人物かは知らないが…念のため、と言う言葉が世の中には存在する
 危なくなった時に備えて、とTさんも二人の後を追いかけた



「--がはっ!?」

 どさり
 また一人、若者が沈んだ
 っち、と、対峙していた青年が舌打ちする

「…弱いな。これで終わりか?」
「く、くそ……っ!?」

 コーラのペットボトルを持った中年が、狼狽した表情を浮かべていた
 おかしい
 おかしいだろう
 己の能力によって、身体能力を強化した若者たち
 それを操って戦わせていると言うのに…目の前の青年に、ただの一撃も与えられていない
 そして、10人近い数の相手と同時に戦いながらも、その青年は涼しい表情のままだ

「…いい加減、弱い奴と戦うのは嫌なんだよ……とっとと片付けさせてもらうぞ」
「ひっ………い、行けぇ、お前らぁあああ!!!!」

 残った若者たちに、命令を下す
 麻薬によって操られ、身体能力が強化された若者たちが青年に襲い掛かる

「…無駄だっつってんだろ!!」

 怒号と共に、青年は驚異的な瞬発力で、若者の一人に接近した
 大声で威圧されたのか、一瞬怯んだ若者の喉元に一撃が命中し、また一人沈む
 鉄パイプを構えた若者が、青年の背後から一撃を加えようとしたが…

 刹那
 青年の姿が、消えた

「っな、どこに…………------っ!?」

 どさり
 沈む若者
 何時の間にか青年は若者の背後に移動していて…そして、倒れた若者は、背中に無数の打撃を与えられたようだった
 これで、残りは一人

「雑魚じゃ相手にならねぇっつってんだろ!」
「ひ……ひぃっ!?」

 ごっ!と残りの若者も、青年によって叩きのめされた
 …これで、残るは「コーク・ロア」の契約者、一人
 じゃり、と青年は中年に近づいていく

「ひ、ひ…………ひぃいいいいいいいいいいっ!?」
「っと!?」

 火事場のなんとやら、と言うやつか
 中年は、青年を突き飛ばし、必死に逃げ出した
 …追うべきか?
 しかし、あんな弱い奴、別に見逃してもどうでもいいが…
 青年がそう考えながら、逃げる中年に視線をやって
 中年の逃げる先にいた、その2人の人影に…思わず、目を見開く

「どけぇっ!!」

 中年は、目の前に現れた二人の人物を突き飛ばして逃げようと、闇雲に腕を振り回す
 しかし

「………っぎゃ!?」

 ぺし、と
 その片割れの少女に、あっけなく脚払いを決められる
 倒れこんだ中年を、黒服の男が押さえ込んだ

「…コーク・ロアですね……「組織」より、あなたの捕縛命令が出ています」
「ぐ……そ、「組織」だとぉ……!?」

 がちゃり
 手錠のような物をはめられた中年男性

 …まぁ、そいつはいい 
 どうでもいい
 それよりも

「………狂犬?」
「その呼び方やめ……って、え…………あぁっ!?」

 青年に声をかけられた少女は、抗議しようとして…しかし、それは途中で悲鳴に変わった
 慌てて黒服の影に隠れようとするが、もう遅い

「…どうしたんだよ、その姿」

 何も知らないふりをして、そう尋ねる
 うぅぅ、と少女は…あいつは、居心地悪そうな表情を浮かべている

「…あなたは…確か」
「お久しぶりです」

 にこり、黒服に笑いかけてやった
 あぁ、知っている
 お前は、知っているぞ?

 ……こいつを、幸せにしやがった、黒服め



 …コーク・ロアが操っていた若者たちは、どうやら一人の青年によって制圧されたようだった
 その青年の姿に見覚えがあって…黒服は、少々驚く
 そして…間が悪い、とそう思った
 「日焼けマシン」の契約者にしてみれば、今は絶対に、顔を合わせたくない相手だったろうに

「どうしたんだよ、その胸、貧乳だけど………女にモテないのを悲観して、男相手に集中することにしたのか?」
「……今、俺はお前を半殺しにしても許されるよな?」
「よーし、落ち着け。その振り上げた拳を下ろしてくれ」

 青年の言葉に、わりと本気で殴りかかろうと拳を握り緊めている「日焼けマシン」の契約者
 まぁまぁ、と黒服は「日焼けマシン」の契約者を宥める

「…少々、この子は厄介な事に巻き込まれておりまして」
「またですか?…あなたが、こいつを厄介事に巻き込んでんじゃないでしょうね?」

 青年にそう言われて、黒服は小さく苦笑する
 ……それを、否定できない事実
 確かに、自分と関わった事でも、「日焼けマシン」の契約者は厄介事に巻き込まれてしまっているだろう
 あまり、否定できない

「別に、こいつのせいじゃないっ!」

 苦笑する黒服を庇うように、「日焼けマシン」の契約者が前に出た
 やや面白く無さそうに、青年を睨みつけている

「はいはい、わかってるよ。そいつは、お前の親父代わりだもんな」

 あぁ、それとも母親代わりか?と青年は笑ってくる

 …「日焼けマシン」の契約者の、幼馴染の青年
 「日焼けマシン」の契約者から、学校町に戻ってきているようだ、という話は聞いていたが
 ……本当に、こんな時に顔を合わせてしまうとは

 だが、同時に、黒服は少しほっとしていた
 「日焼けマシン」の契約者にとっての、大切な友人
 彼は、昔とあまり変わりがないようだった
 昔と同じように、友人である「日焼けマシン」の契約者を気遣って、こちらに噛み付くような物言いをしてくる
 …「日焼けマシン」の契約者を気遣っているのは、自分だけではない
 他にも、ちゃんといるのだ

「……まぁ、いいや。何があったか知らないけど、お前なら大丈夫だろ?俺で力になれるようだったら相談に乗ってやるからな?」
「う………悪ぃ」

 青年の言葉に、「日焼けマシン」の契約者はそう返す
 「日焼けマシン」の契約者は、この青年を都市伝説に絡ませるのを嫌っているのだ
 怪異に踏み込んでいない存在を、踏み込ませたくないのだろう

「…先程の、喧嘩ですが」
「あぁ、あっちが挑んできたんだよ。本当、迷惑だ」

 肩をすくめてくる青年
 …一応、気づいていない、か
 ギリギリのラインで、彼は昔から都市伝説に気付かないままだった
 …きっと、「日焼けマシン」の契約者は、そのままでいてくれ、と思っていることだろう
 黒服とて、そう思う
 都市伝説の存在に気づいていないのなら、気づかないままの方が……幸せだ

「いつでも連絡して来いよ?なんだったら、その貧乳デカくして欲しかったら、じっくり揉んでやるから」
「やっぱり、半殺しにしていいよな?」
「おぉ、怖い怖い。それじゃあ」

 ひらひらと手を振って、青年はこの場を後にする
 ……はぁーーー、と「日焼けマシン」の契約者は、深く、深くため息をついた

「…どうして、こうも見られたくない連中に限って……」
「……厄日、と言うものはあるものですね」

 そっと、黒服は慰めるように「日焼けマシン」の契約者の頭を撫でてやる
 うー、と、「日焼けマシン」の契約者は、複雑そうな表情だ

「何?知り合いだったのか?」

 ひょこりっ
 事の成り行きを見守っていたらしいTさんの契約者が、顔を出してきた
 あぁ、と「日焼けマシン」の契約者は頷く

「ダチだよ、俺の」
「おともだちー?」

 首をかしげてくるリカちゃんに、あぁ、と「日焼けマシン」の契約者は応える
 ふーん、とTさんの契約者は返して…
 そして、どこか好奇心を含んだ様子で、続けてくる

「…ところで、「狂犬」って?」
「ぐ…!?な、なんでもねぇよ!!」

 慌てて誤魔化している「日焼けマシン」の契約者
 …まぁ、あの頃については、本人としては忘れたい部分もあるのだろう
 黒服としても、あの時期については、極力触れないようにしてやっている

「…しかしまぁ、見事な物だ」

 道で気絶している10人ほどの若者を見て、Tさんが呟く
 ものの見事に、全員叩きのめされている
 コーク・ロアの方から襲い掛かってきたのだから、正当防衛ではあるが…

(…しかし、彼はそこまで強かったですかね…?)

 ……まぁ、黒服が知っているあの青年の最後の様子は、「日焼けマシン」の契約者が高校を卒業した頃の話だ
 あれから、もう三年は経っている
 元々格闘技を習っていたようだったし、実力があがっていたのかもしれない
 そう考えて…ひとまずは、Tさんの契約者の好奇心から逃れようと必死な「日焼けマシン」の契約者を助ける事に、黒服は意識を傾けたのだった








 ------あぁ、妬ましい
 相変わらず、幸せそうで
 傍に、護ってやる奴なんていて

 あぁ、でも
 あの状態で、はたして護れるのか?
 あんな女の姿にされて
 護りたい奴も護れないんじゃないのか?

 …あぁ、待ち遠しい
 あいつを屈服させてやるのだ
 俺の力で、ねじ伏せてやるのだ
 あの幸せを、俺が叩き壊してやろう
 俺に無断で、幸せになんてなりやがった、罰だ


 いつも通りの、いつからか歪んでしまった思考を抱えて
 彼は一人、路地裏の奥へ奥へと、姿を消していくのだった







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