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連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち-21

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マッドガッサーと愉快な仲間たち 21


「…お、仕入れ終わったのか?」
「……終わった………けけっ」

 路地裏のその更に奥から、「爆発する携帯電話」の契約者が姿を現す
 「13階段」の契約者は「爆発する携帯電話」の契約者を引き連れて、路地裏を進んだ
 …「爆発する携帯電話」の契約者は、女性の姿になった事で顔が割れていないかもしれないが…自分は、「組織」に顔がしれている
 あまり、表立った行動はできない
 買い足した酒やらなにやらの荷物を抱え、教会への帰路に着く

(…に、してもなぁ)

 ちらり、「13階段」は「爆発する携帯電話」に視線をやる
 その視線に気付いたのか、「爆発する携帯電話」は小さく首をかしげた
 ……うん
 まさか、女体化によってストライクゾーンど真ん中になるとは思わなかった
 男の頃は、そんな事は意識もしなかったと言うのに
 なんと言う女体化マジック
 これだから、マッドガッサーに協力するのはやめられないのだ

「…どうかした、か…?」
「いや、別に……にしても、お前も俺を怖がらねぇな」

 「13階段」の言葉に、「爆発する携帯電話」はまた、小さく首をかしげた
 …うん、その仕草がまたストライクゾーンっていやそうじゃなくてだな

「元々、俺はお前を討伐対象として追いかけてたんだぜ?覚えてない訳じゃないだろ?」
「……けけけっ……覚えてる………でも、今は、仲間……だ」

 信じている、とでも言ってくれるのだろうか
 男の姿の時に言われても嬉しくなかったかもしれないが、女の姿で言われるとうれしいと言う女体化マジック
 我ながら現金な事だ、と思う
 まぁ、確かに「組織」に所属していた頃、こいつを討伐対象として追ってはいたが…自分は不真面目な態度で仕事に臨んでいたから真面目に戦っていなかったし、自分の担当黒服は感情がない人形のようなタイプの黒服だったから、その型にはまったような行動の目を盗むのも楽だった
 …そう言えば、あの黒服はどうなったのだろう?
 「夢の国」相手に結構な数の黒服と契約者で攻撃を仕掛ける時、そっちに加わっていたような…って事は、死んだか?
 思えば、自分もあれに参加するよう言われていたが、高確立で死ねそうな予感がしたから、あれを機会に「組織」を裏切って隣町に逃げたのだ
 我ながら、ナイス判断だったと思う

 お陰で、こうやって今も生き延びている
 死ぬなんざぁ、御免である
 「組織」にいた頃に顔を合わせた事がある、髪が伸びる黒服も言っていたではないか
 死んだら、どうにもならないのだ
 だから、死ぬまでにその生をどこまでも楽しみ尽くす
 そのためには、どこまでも生き続けなければならない

「………けけっ」
「あ?どうした?」

 …ふと、「爆発する携帯電話」が、立ち止まった
 釣られて立ち止まり…かすかに、耳に入ってきた音に、気づく
 …何かが、こちらに近づいてきている
 それも、あまり友好的ではない雰囲気で

 小さく、舌打ち一つ
 この辺りに階段は……くそ、ない

「こっちだ」
「けけっ」

 「爆発する携帯電話」の手を掴み、走り出す

 -----ひゅんっ!と
 直後、頭上を何かが掠めていった


「ひょっひょっひょっひょっひょっ!!」
「…ッブーメランババアか!?」

 体を「く」の字に曲げて、笑いながら飛び回る老婆
 怖がりな人物ならば、目の当たりにしたらトラウマレベルの不気味さである
 ひゅんひゅん、とそいつはその名の通りブーメランのように飛び回り、二人に襲い掛かってくる

「っち、「組織」かよ…」
「くけっ?……知ってる相手、か?」
「知ってるよ。多分、この辺りに契約者もいやがる!」

 とにかく、階段!
 階段はどこだっ!?
 辺りを見回すと、すぐ傍にビルの勝手口のような物が見えた
 ドアノブを回せば……鍵は掛かってない!
 体当たりするように扉を開け、中に飛び込む

「ひょっひょっひょっひょっひょっ!!」

 その体勢では、扉から即座に入ってくる事などできまい
 傍にあった階段を駆け上がっていく
 ………よし、これで勝てる!!

「それで、こっちに勝てるつもりか?「13階段」」
「よぉ、ババ専男。久しぶりだな」

 階段の上から、そいつを……ブーメランババアの契約者を、見下ろす
 多分、自分たちと同じくらいの年齢であろう、20代の男性
 手には、鉈のような物を持っている

「始末しに来てやったよ、裏切り者」

「…裏切り者、なぁ?」

 っは、と
 「13階段」は、嘲笑ってやる
 …いつ何時、こちらを裏切ってくるかわからない「組織」などに忠誠を誓う意味など、あるのだろうか?
 いつ、使い潰されるかもわからない
 いつ、捨石にされるかもわからない
 利用価値がないと知られれば、危険因子であると知られれば、消されるかもしれない
 そんな「組織」に忠誠を誓う意味など、少なくとも彼にはない

 …そんな所よりも、今の居場所の方が居心地が良かった
 気の合う連中と馬鹿やって、面白おかしく楽しく、好き勝手に生きる方が、彼には性にあっている

「消せるもんなら消してみろよ。この状況で勝てると思ってるのか?」

 …既に、契約している都市伝説の能力は発動している
 「13階段」
 階段があるこの場所は、自分にとって絶対的に有利な空間なのだ
 「爆発する携帯電話」の契約者を庇うように立ちながら、「13階段」はブーメランババアの契約者を見下ろして笑う

「相変わらず馬鹿だな、お前は」

 っひゅん!と
 ブーメランババアが、建物の中に入ってきた
 不気味に飛び回る、それに……ブーメランババアの契約者は、軽くジャンプして、その上に乗った
 鉈を構え……「13階段」たちに向かって、飛んでくる

「--お前の能力は13段目を踏まれなければ無力なんだよ!!」

 ぎらり、鉈が不気味な光沢を見せる
 背後にいる「爆発する携帯電話」が、先ほど手に入れたばかりの携帯電話で攻撃しようと、それを鞄から取り出そうとしている気配がしたが…「13階段」は、それを制する

「無力?…………ばぁあっかじゃねぇの?13段目を踏まれなきゃ無力ぅ?……その程度の弱点、俺が克服してないとでも思ったのか?」

 契約者を乗せたまま飛んでくる、ブーメランババア
 その体が…下から数えて13段目の上を、通過しようとした、その瞬間

 13段目から、血塗れた腕が、無数に出現した

 それはまるで、蜘蛛の糸にすがろうとする亡者達の手のように不気味に蠢き
 …本来ならば、13段目を踏んだ者しか捕まえられないはずの、その手は

「------っな!?」
「ひょっ!?」

 13段目の上を飛んで通り抜けようとしていた、ブーメランババアの体を
 そして、その上に乗っていたブーメランババアの契約者の体を……掴んだ

「死の13階段。13段目を踏んだら、死者に連れて行かれる…だから、13段目を踏んではいけない。踏まないように飛び越える連中はごまんと居るさ」

 だから、と「13階段」は笑う
 そんな事はわかりきっている
 …だが、己の能力は、そんな相手も逃さない

「だけどよぉ、死者は寂しがり屋でなぁ?どぉぉ~~っしても、お仲間を増やしたい訳よ。だから、飛び越えようとする連中も引きずり込む」
「なっ……そんな、馬鹿な……っ」

 ぐ、ぐ、ぐぐぐぐ、と
 ブーメランババアの体が、階段に引きずり込まれていこうとしている
 ブーメランババアも、必死に抵抗しているようだが…その体は少しずつ、少しずつ、階段の13段目に、近づいていっている

「階段がある場所じゃあ、俺は無敵だ。上を飛び越えようとしても意味なんざねぇ!中に引きずり込まれて、死人たちと仲良くしてやりな!」
「っひ………!?」

 ずるりっ
 とうとう、ブーメランババアの体は、13段目に引きずり込まれていって
 ……そして、その契約者もまた、中にずるり、ずるり…引きずり込まれた

 カラン、と
 ブーメランババアの契約者が持っていた鉈だけが、引きずり込まれずに取り残されて…乾いた音を、立てたのだった



「あー、終わった終わった。さ、帰ろうぜ」
「…………」
「どうした?」

 その場に固まっている「爆発する携帯電話」
 やや不安そうに、階段を見つめている

「あぁ、安心しろって。もう能力は解除してるから」
「………くけっ」

 ようやく安心して、階段を降り出す
 もう、13段目を踏んでも、何も起きない

 あぁ、やっぱり俺は最強だ
 階段のある場所ならば、俺は誰にだって勝てるのだ!
 ……あ、いや、ちょっと前言撤回
 「組織」にいた頃噂で聞いた事がある、「禿ていて全裸になるとパワーアップする謎の筋肉黒服」にだけは何があっても勝てないかなー?って予感はするが
 それ以外に対しては、勝てる!
 13段目を踏まなくとも、上を通過さえすれば、問答無用で引っ張り込めるのだ
 踏まれない限り発動しないと言う弱点を克服した自分は、強いのだ!!

「…あー、そう言えば。ババアの方はともかく、契約者の方はいっそマッドガッサーのガスで女体化させときゃ良かったか?……っち、勿体なかったな」
「……くけっ?…一度、引っ張り込むと……出せない、のか?」
「出す必要ないからな、普通」

 引っ張りこまれれば、その後どうなるかは知らない
 まぁ、多分死ぬんだろう
 引っ張りこまれた先で平和に暮らしてたら驚くわ

 …過ぎてしまったものは、仕方ないとしよう
 こちらを狙ってきたのだから、始末しても問題はないのだ
 敵ならば、始末するまで

(…あの状況じゃ、こいつも巻き込んだしな)

 ……女になったこいつを、自分と「組織」の因縁に巻き込ませたくはないな
 そう考えながら、「13階段」は「爆発する携帯電話」と二人、改めて教会への帰路についたのだった



終わる



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