「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 占い師と少女-03

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uranaishi

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占い師と少女 日常編 03


「占いの館」の閉店後。
私たちは西区の一角を歩いていた。
いつもなら、既に東区にあるマンションへの帰路についているはずの時間。
南区にある「占いの館」ビルから、なぜこんな所にまで来ているのか……?
答えは、私たちの前数メートル先を歩いている人物にある。

「ったく、早くアジトになり何なりに帰ってくれねぇかなぁ。マッドガッサーの野郎」
「結構歩きましたよね」
「今で大体2、3キロって所か」
「測ってないから分かりませんけど、多分……」

「占いの館」ビルから帰ろうとした途中にマッドガッサーを見つけてから、既に1時間ほどが経過していた。
普通に歩けば数十分の距離も、尾行となると結構な時間がかかるのだと、私は体感していた。
「マッドガッサー」最近巷を騒がせている都市伝説らしい。
既に何人もの都市伝説や人間が彼のガスによって女体化させられたという。
だから私たちはマッドガッサー達のアジトでも見つけて、それ以上の被害拡大を防ごうと、こうして尾行をしているのだが……。

「……珍しいですよね。占い師さんがこういう事に首を突っ込むのって」
「そうか?」
「そうですよ。今までなら『面倒』の一言で見逃してたじゃないですか」
「あー……いや、なんつーかな……」

そこまで言った時、私たちの前にいたマッドガッサーが路地へと入っていった。
路地裏……何となく怪しい。ついにアジトの入り口付近にまで辿り着いたのだろうか。
マッドガッサー一味のアジト……やっと見つけたことに、強い高揚感が芽生える。
その高揚感のまま、私も路地へと入ろうとして

「……待て、未来」

占い師さんに止められた。
やけに真剣な目でマッドガッサーの入って行った路地の方を見ている。

「どうしたんですか、占い師さん。尾行、続けないんですか?」
「いや……失敗してたみたいだ」
「え?」

その言葉に、体に緊張が走る。
尾行に失敗していた……それはつまり、マッドガッサーにこちらの存在が気付かれていたということだ。
そして、それなのに彼は私たちを振り切ろうとはしなかった……。

「罠、ですか?」
「だろうな……」

そういう占い師さんの目は、路地を挟んでいるビルの一角、その三階付近に向いている。

「『爆発する携帯電話』があそこにいるからな」
「あそこ? ……何も見えませんけど」
「……お前、一応俺の契約者だろ」

そう言われて、気づく。

「そういえば、リーディングの中に透視なんて能力があったような……」
「自分の能力に関しては把握しておけって、いつも言ってるだろうが」
「ごめんなさい……」
「そこまで気にすんな。二回以上間違わなきゃいいんだよ」
「……気をつけます」

素直にうなずく私に、占い師さんは満足そうに眼を細めた。

「よっし、じゃあ行くか。マッドガッサーに会いに」
「うん……って、え? 罠があるんじゃないんですか?」

私の問いに、占い師さんは軽く笑って

「罠ってのは相手に気づかれたらその時点でお終いなんだよ、これもよく覚えとけ」

そう言って、路地へと入って行ってしまう。

「ちょっと、私を置いていかないで下さいよ~」



慌てて追いかけた先の路地は、特に罠らしい気配のない、普通の路地だった。
……いや、雑草の中、ごみの後ろなどそこかしこに携帯電話が無造作に置いてある。
先程の占い師さんの言葉が本当ならこれが『爆発する携帯電話』のものなのだろう。
(いつ、爆発するのかな……。やっぱり横を通った時?)
警戒して歩みを遅れさせる私。
……が、占い師さんは無警戒でずんずん歩いて行ってしまう。

「あ、危ないですよ、占い師さん!」
「大丈夫だっての」

私の進言は無残にも切り捨てられた。
そのまま歩いて行く占い師さん。
そして、雑草に捨てられた携帯電話の横を横切る直前。

~~~~~~~~~~♪

携帯電話が、鳴り始めた。
(爆発する……!)
頭を手で覆い、できるだけ姿勢を低くして爆風に当たるのを防ごうと……
(……………………あれ?)
以前として携帯電話は鳴っている。だが、爆発による火も、爆風も、何も起こらない。
というか、路地裏中の携帯電話が鳴るだけ鳴っていた。
……何ともうるさい。

「おら、さっさと行くぞ」
「う、うん……」

恐る恐る、ずっと鳴り続けている携帯電話の横を通り過ぎる。
よく見ると、1分程度のインターバルでずっと鳴り続けているようだ。

「占い師さんの仕業、ですか?」
「ん? ああ、ちょっと運命をな」

『運命』……つまりは「運命の改変」を行ったのだろう。

「でも、どうやって……?」

かかってきても爆発しない……つまりは『爆発する携帯電話』の能力を封じ込める事だ。そんな事が可能なのだろうか。

「そりゃー、『爆発する携帯電話』が電話をかけようとしても、ずっと通話中なんだから爆発するわけないだろ」
「え……?」

でも現に、携帯電話は鳴っている。
戸惑う私をからかうように、占い師さんは指を一本立て

「ありゃ全部間違い電話だよ。どっかの誰かさんが『偶然』かけてきたな」
「間違い電話……?」
「そ、ここにある全部の携帯電話の運命をいじって『今から10分間ずっと間違い電話がかかってくる』に改変した」
「つまり、この10分間、『その携帯電話にかけたい』奴はかけられないってわけだ。『間違い電話』じゃないんだからな」

……なるほど。
「運命の改変」にはそんな使い方もあるのか。

「そら、着いたぞ」



ビルとビルの間を抜け終わる。
抜けた先は、廃工場の並ぶ廃れた場所だった。割れた窓ガラスに錆びた体、私のいる所のすぐ近くにある道路標識は傾いていた。
そして、その道路標識の先にある影……。

「やっとまともに対面ってわけだなぁ、マッドガッサー」

それは、恐らく罠にかかった私たちを回収か、女体化させるつもりだっただろうマッドガッサーだった。

「『爆発する携帯電話』に何をしやがった……」

私たちに向けた、マッドガッサーの第一声はそれだった。
仲間の心配を先にする……義理堅いのか、仲間思いなのか、はたまた一味の戦力が減る事恐れているのか……感情を読む能力がない以上、私が知ることは出来ない。

「何にも? 爆発してないからって『爆発する携帯電話』に何かあったって考えは短絡的じゃないか? 俺は好きだけどよ、そういうの」

その言葉に、マッドガッサーは反応しない。
多分私たちの言葉を信じていないのだろう。
奇妙な膠着状態……一応「リーディング」を使って相手の能力と、そのガスの届く範囲は分かっていた。
今はその範囲外だが、もしマッドガッサーが動いたら即座に行動できるよう、マッドガッサーの足の筋肉の動きを能力で常に観察しておく。
そんな膠着状態が数分後……いや、数十秒後だっただろうか。別の路地から一人の女の子が飛び出してきた。
そのままマッドガッサーのもとへと駆け寄り、何かを小声で伝えている。
その後マッドガッサーの緊張が解けたところをみると、『爆発する携帯電話』の安否に関する報告だろう。
女の子は伝え終わった後、マッドガッサーの隣に立ち、こちらに向き直った。
ガスマスクを被り、ガスタンクを背負った成年の隣に少女……なんとも非現実的な光景だ。

「『マリ・ヴェリテのベート』か……一番来て欲しくない野郎が来ちまったな」

能力を使ったのか、占い師さんが彼女を見てぼやく。
私もリーディングを使い、彼女を見て、読む。
(『マリ・ヴェリテのベート』……変身する人狼、今は女の子の姿をしているけど、人狼の場合はこれの2倍以上の大きさになる、か……)
私たちの能力は力でごり押ししてくるタイプには弱い。出来れば戦いたくない相手だ。

「どうした。俺を捕まえに来たんじゃないのか?」
「捕まえられるもんならしたいけどよ、お前のガスの届く範囲には入りたくないんだわ、女になる趣味はないからな」
「なら、大人しく逃がして欲しいもんだな」

お互い探り合いの体だ。
マッドガッサーも、こちらの能力が分からない以上下手に手を出せないのだろう。
しばらくまた膠着が続き

「……まどろっこしー」
「おい、マリ!?」

しびれを切らしたのか、マッドガッサーの制止を無視し女の子が姿を変えた。
腕や足が太く、体中に毛が生えていく様は、見ていてあまり気持ちのいいものではない。

「このまま続けてもじり貧じゃねぇか、なぁ?」
「待て、相手が何の都市伝説かも分かってない状況で動くのが危ないって事くらい分かるだろ」
「つってもあっちも動いてねぇぜ?」

そのまま押し問答を続ける2人。正直、あまりいい状況ではない。
今こそマッドガッサーと一定の距離を取ってられるけれど、あの剛腕の「マリ・ヴェリテのベート」が襲ってきたらそれを保つのは難しいだろう。

(……おい、未来)

そんな中、占い師さんが小声で私を呼んだ。

(何ですか……?)
(さすがにマリ・ヴェリテに襲われたら事だ。さっさと方を付けるぞ)
(でも、どうやって……?)
(まぁ、聞け)

それからさらに数秒後……。
まだマッドガッサーとマリ・ヴェリテは押し問答を続けている。
どちらもよかれと思って行動しているのだ。なかなか決まらなくて当然だ。
(でも、相手を思い合っての行動なんだよね……)
悪い集団だとは思えない行動ではある。まぁ、私たちをどうやって捕まえるか、の相談でなければ大歓迎なのだけれど。

(未来、準備はいいか)
(うん)
(よし、3カウントしたら行動開始だからな………3……2……1……)

カウントが0になると同時に、占い師さんがマッドガッサー達と反対方向へ走りだした。

「な!? あいつ、契約者置いて逃げたぞ!」
「だから早く倒しとけっつっただろうが」

その間に占い師さんは道端にある傾いた道路標識の前まで走り終えていた。全て順調だ。
そのまま、占い師さんが道路標識を蹴り上げると、根元からそれは折れた。
都市伝説とはいえ占い師さんの身体能力はそこまで高くはない。きっと「運命の改変」で折れやすくでもしたのだろう。

「そんなもんでどうにかなると思ってんのか?」

標識を持った占い師さんを嘲り、マリ・ヴェリテが動き出す。
(……まだ、私の出番じゃない)

「さーて、どうにかなるからこんな面倒な事をしてる、そうは思わないのか?」

言葉と共に、道路標識を投げる。
くるくると回転して向かうその先は――

「っ!?」

マリ・ヴェリテに戦闘を任せ、隙あらばガスの噴出を狙うマッドガッサーだった。

「ちっ」

舌打ちをして、マッドガッサーと標識を結ぶ直線上に出ようとするマリ・ヴェリテ。
(ここからは、私の仕事……)
先程から何度も頭の中で呟いていた言葉を口にする。

「子羊と羊の首を絞めろ。子牛と子馬と雌ラバの首を絞めろ。我が家でなければどこへでも好きなところへ行け……」

うん、間違えないで言えた。
ベート避けの呪文に当てられて、苦悶の表情を浮かべたマリ・ヴェリテが声もなくその場に片膝をつくのを見て、自分の仕事を果たせたことを確認する。

「てめぇっ、どうしてそれ……ぅをっ!?」

一瞬気を取られたマッドガッサーに、回転する道路標識が突撃する。
占い師さんの能力で『初速のまま飛び続けた』のと同じ速さで衝突したそれは、マッドガッサーのガスマスクに大きくめり込んだ。

「よっし、逃げるぞ、未来」
「うん」

『マッドガッサーと爆発する携帯電話だけならまだしも、マリ・ヴェリテ相手じゃ分が悪い』という考えに基づいた戦略的撤退……らしい。
占い師さんと合流し、携帯電話の散乱していない、入ってきたのとは別の路地を使って逃げ出す。
適当に罠を仕掛けつつ、私たちは自分の家へと急いだ。


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