「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-39b

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 彼女は日常を愛する
 非日常を望まない
 日常を侵される事を彼女は拒む
 非日常が近づく事を望まない

 彼女は気づかない
 望む望まざるに関わらず
 非日常は、自分の隣にいつでもある事に



               Red Cape


*



 暗くなった道を、私は二人で歩いていた
 図書館からの帰り道、たまたま、クラスメイトと一緒になって
 途中までは帰り道が一緒だから、二人で帰る事にしたのだ
 最近、なんだか物騒だから…折角なら、一人より二人の方が心強い

「委員長、いつもあの時間まで図書館で勉強してるの?」
「塾がない日はね。家だと、なんだか集中できなくて」

 ほへぇ、と関心したような顔をされる
 …私としては、それが特別な事であると意識した事は、あまりないのだけれども
 他の人から見れば、それは少し変わった事なのだろうか?
 私は、誰よりも普通でありたいと思っているけれど…普通じゃないのだろうか?

「あなたは…勉強以外にも、何か調べ事でもしてたの?」
「え?……あはは、ちょっと」

 誤魔化すように笑われた
 …気を使われているのだろうな、と思った
 彼女が調べていたらしい事は、「都市伝説」だったのだ
 ……私が、その手の都市伝説とかそう言う非現実的な事が苦手であると知っていて、気を使ってくれているのかもしれない

 …どうにも、私は都市伝説が苦手だ
 その非現実的な、非日常的なそれが苦手だ
 そんな物はありえない
 現実に存在するはずがない
 なのに、まるで本当に存在するかのように語られる、それらが

 あるはずがないのだ
 そんなものたちが存在するならば、私たちの日常など、簡単に壊されてしまうから
 私達の日常が存在している限り…そんなものは、あるはずがない

 私はそう信じている
 …そう、信じる事しか、できない

 ほぉ、と吐いた息がほのかに白くなる
 ここ数日、12月並の寒波が押し寄せてくる、とか言っていた
 もしかしたら、雪でも降るのかもしれない

「寒いわね。インフルエンザとか流行ってるし、風邪とか引かないようにね?」
「あ、うん。クラスでも何人か休んでるしね…委員長も気をつけてね?」

 えぇ、と私は頷く
 確かに、クラスでもここ最近、ぽつぽつと休む生徒が出始めている
 ………男子生徒、ばかり
 奇妙な偶然だと思う
 男子ばかり、ぽつぽつと休み始めて…休んだ生徒は、まだみんな、学校に出てきていない
 私達のクラスだけではなく、他のクラスでもそうらしくて…その内、学級閉鎖学年閉鎖どころか、学校閉鎖になりそうな状態だ

 …まだ、彼は休んでいない
 いつも通り、どこか眠たそうだったり、ぼ~っと窓の外を眺めていたりして
 いつも通り、学校に通ってきている

 …彼が、そのままならば
 今の現状も、私にとって、まだ、日常のままだ

 公園の前にさしかかる
 この辺りで、彼女とは帰り道が別々になる

「それじゃあ、またね、委員長」
「えぇ、また…」

 …そう、言いかけた、その時
 ぞくり、背筋を悪寒が走りぬけた

 ざわざわと、背筋を走り抜ける感覚

 -----怖い
 恐ろしい
 脳裏に、思い出したくもない記憶が蘇る


 首だけで浮かんでた黄色い雨合羽
 拘束台で拘束され、向けられたチェーンソー
 迫ってくる、黒い不気味な子供達

 あるはずがない
 ありえるはずがない存在たち
 私が見てしまった、あるはずのない………


「い、委員長、どうしたの?」
「---ぁ」

 彼女が、こちらを気遣うように声をかけてきた
 …駄目
 ここから、逃げないと
 今すぐにでも、彼女の手を引いて逃げないと
 よくわからないけれど、怖くて恐ろしい
 公園に………何か、いる

 駄目
 そっちを見てはいけない

 非現実を、認めてはいけない


「-----そのまま真っ直ぐ走れ!!」

 聞こえてきた、声
 それで、私は正気に戻った
 彼女の手を、掴む

「え、いいんちょ…」

 彼女の声に答える間もなく、走り出す
 …直後、私たちの隣を、誰かが駆け抜けて行って
 すれ違ったのは、ほんの一瞬
 しかし、私は確かに見た

 すれ違ったのは……彼で
 その彼の傍に…小さな、おかっぱ頭の女の子が、いたのを
 私は…確かに、見てしまったのだ

*



「花子さんっ!」
「うんっ!!」

 花子さんが、公園のトイレから、水を呼び寄せる
 呼び寄せられた水は激流となって、そいつに襲い掛かった

「っち!」

 だが、早い

 人狼みたいなそいつは、女者っぽいヴェールをひらひらとたなびかせて、こちらの攻撃を交わしてくる

「ひゃっははははは!!その程度の攻撃、当たるわけねぇだろぉ!?」
「む~……当てるの!」

 水は、花子さんの意思に従って動く
 まるで蛇のように…いや、縦横無尽に飛び回る、龍のように、激しい水の流れは人狼に襲い掛かる
 ガッ、ガッ!!と、そいつは地面を蹴り、時に樹木を足場に飛び回り、攻撃をかわしている

「………」

 その様子を見ながら、意識を集中する
 この空いた手に、武器が存在するイメージを
 ……不名誉ながらも、俺がもっともうまく扱える、その武器の存在を

「…隙だらけだぜぇ!餓鬼がっ!!」
「み!?け、けーやくしゃっ!」

 人狼が、こちらに飛び掛ってくる
 …それよりも、早く
 俺の手の中に……水で出来た銃が、出現した

「-----っ!?」

 俺の手の中の銃を見て、一瞬、人狼は怯んだようだった
 その隙を逃すものか

 水の弾丸を発射する
 相手の心臓を、頭を狙い、数発続けて発砲した

 ーーーーぐるんっ!!と
 人狼は、空中で無理矢理体勢を入れ替えてきた
 水の弾丸は、ヴェールの端に小さな穴を空けただけで終わる

「っち……くそ、早いな…」
「……ッガキが、銃なんて扱ってんじゃねぇよ!?」

 俺と花子さんの間に着地した狼がぼやいてくる
 知るか
 困った事に、銃の扱い方は大分子供の頃から教えられてきたのだ
 人外の相手と戦う際、使えるならば使うさ

「邪魔しやがってよぉ…」

 風に、ヴェールがたなびく
 狼の頭をしたそいつは、しかしその癖して、その目は酷く人間的だった

「で?俺様の狩りを邪魔しやがって、一体何の用なんだ?」

 …狩り、か
 一歩間違うと、委員長たちが危なかったか
 ………間に合って、良かった

「クラスメイトを助ける事は、当然だと思っているんでね」

 …それと
 もう一つ

「お前、マッドガッサーとか言う都市伝説の、仲間なんだな?」

 …先生から、聞いている
 今、学校町で暴れているマッドガッサーには、何人かの仲間がいるらしい
 その内の一体が、女物のヴェールを纏った人狼の姿をとる事は聞いていた

「あぁ?……だったら、どうだってんだ」

 …気のせいだろうか
 こちらを睨む目が鋭くなった気がした
 当たり、か

「女にした奴を、元に戻す方法、教えてもらおうか?」
「教えてもらうの!」

 ごうごうと、花子さんが水を制御し続けている
 いつでも、目の前の人狼を攻撃できるよう、水の制御を止めようとしない

「んな事、俺が教えるとでも思うかぁ?」
「…教えてもらわないと、困るんだよ」

 銃を、まっすぐに人狼に向ける

「………うちの組のもんが迷惑してるんだ。力付くでも教えてもらうぞ」
「---っは」

 人狼が、こちらを嘲笑ってくる

「やれるものなら、やってみやがれ!!」

 吼えた人狼の姿が…変わる
 ヴェールが消え、その姿が完全な狼となった
 月に向かって一吼えした後、こちらに襲い掛かってくる

「っく!」

 水の弾丸を放つが……スピードが、さらに早くなっている!?
 水の弾丸で、狙いきれない
 狼は、右へ左へ素早く動きながら…こちらに飛び掛る

「み!駄目なの!」

 ごぅっ!と轟音をたてて、激流が狼に狙いをつけた
 横殴りに襲い掛かってきたその激流を、しかし、狼は避けた
 くるり、宙で回転し……次に、狙ったのは

「ッ花子さん、逃げろ!」
「みーーっ!?」

 慌てて移動する花子さん
 一瞬前まで花子さんがいたそこに、狼はずどぉん!!と半ば地面にめり込みながら着地した

 あの体当たりを受けたら、やばい
 死ぬまではいかなくとも、わりと全身の骨がやばい
 そのまま喉笛にでも噛み付かれた日は死ねる!!

 …だが、退く訳にもいかない
 女の体になった状態を、元に戻す方法
 何とか、聞き出さないと
 御手洗さんがあのままだと、気の毒だ

 もう一度、水の弾丸で狙いをつける
 花子さんも、まずは相手の動きを止めようと思ったのか、トイレの方からふよふよとトイレットペーパーを取り寄せていた
 …とにかく取り押さえて、話を聞きだす!

 おぉぉん、狼が吼える
 その巨体が、だん!!と跳び上がった
 月をバックに、こちらに襲い掛かって…


「----だぁめ、悪い事しちゃ駄目だよ?」

 楽しげな声
 俺の目の前に、茶色の液体の壁が出来た
 …茶色で、液体?
 まさかっ!?

「っちょ、どうして!?」
「うん、バイトの帰り」

 にっこりと
 俺の背後に、何時の間にか先生の弟さんが立っていた
 ……気配をまったく感じなかったぞ!?忍者かこの人はっ!?

 じゅうっ、と
 何かが溶けた音がした
 見ると、弟さんが出現させたコーラの壁に半分、体を突っ込んでしまったのか…狼が、毛並みを半分溶かしながら苦しんでいた
 即座にコーラから離れ、ぶるぶるっ!と、体についたコーラを払うように、体を震わせている

「兄さんの教え子が危ないのを黙って見てちゃ駄目だよね?」

 そう言って、小さく首を傾げてくる
 …うん、その、助けてもらったのはありがたいんだけど、若干怖い

「けーやくしゃ、だいじょーぶ!?」
「あぁ、俺は大丈夫だ!……だから、花子さん」
「み!わかったの!!」

 しゅるり
 トイレットペーパーが、闇夜に舞う
 それは、真っ直ぐに苦しむ狼に向かって飛んでいった
 その動きを束縛する為に、巻きつこうとして

 ……っひゅん!と
 どこからか飛んできた、衝撃破が
 そのトイレットペーパーを…ズタズタに、切り裂いた

「み!?」
「…っ、新手か!?」

 辺りを見回すと…一瞬、人影が見えたような気がした
 しかし、それはすぐに夜の闇に紛れ込んでしまって
 狼が、半ば花子さんを突き飛ばすようにしながら走っていく
 大きくジャンプして、公園の柵を乗り越えて……その姿が、消えていく

 追いかけようとした、俺の足元に……ぽ~ん、と
 何かが、投げ込まれた

「…へ?」

 それは、携帯電話
 ピピピピピピピピ、と異様な音をたて、異様な光を放ち…

「危ないっ!」

 ぐい!と弟さんに後ろに引っ張られる
 ぼんっ!!と
 直後、携帯電話は爆発して…地面を、軽く抉った

 ……危なっ!?
 ちょっとした爆弾並の威力があるじゃねぇか
 …これで、相手を完全に見失ってしまった
 とにかく、俺は花子さんに駆け寄る事にした

「花子さん、大丈夫か?」
「み、平気なの。ちょっとびっくりしたけど」

 突き飛ばされて転んでいた花子さんだが…うん、怪我はないようだ
 ほっと、息を吐く

「…すみません、助けていただいて」
「ありがとうなの」
「うん、どういたしまして」

 コーラのペットボトルを弄びながら、笑っている先生の弟さん
 狼が走り去っていった先を、見つめている

「逃げ足早いなぁ。それに、マッドガッサーの一味は、誰かが危なくなれば、傍に仲間がいれば高確立で助けに入るからね」
「…相手が一体でも、油断するなと?」
「うん、そう言う事」

 …どこかで、誰かがこっちの戦いを見ていたと言うことか
 花子さんのトイレットペーパーを引き裂いた衝撃破を放った奴と…さっき、携帯電話を爆発させてきた奴
 同一人物かどうか、わからないけれど
 最低でも、一人は味方が傍にいた、ということか
 俺は、それにまったく気づけなかったのだ

 …その結果
 花子さんも、危険に巻き込んでしまうとは

 ぽんっ、と
 先生の弟さんが、こちらの頭に手を置いてきた
 ぽふぽふ、そのまま撫でてくる

「二人とも、無理は駄目だよ?相手の目的は馬鹿らしいけど、戦闘力は結構洒落にならないらしいから」
「……はい」
「み、気をつけるの」

 それじゃあ、とその夜はそこで弟さんと別れた
 花子さんと一緒に、帰路につく

「…花子さん」
「み?」

 きょとん、と
 花子さんが、こちらを見あげてくる
 いつも通りの、無邪気な視線

「どーしたの?」
「…どうしても、あの連中の被害者を元に戻す方法を見つけたい……協力、してくれるか?」
「うん!だって、けーやくしゃの為だもん!」

 にぱっ、と
 花子さんは、元気に笑ってくる

「危ないんだぞ?」
「み?だって、けーやくしゃが危ないなら、私がけーやくしゃを護らなくちゃ」
「……なんだかなぁ」

 …こっちに、護らせてはくれないのか、花子さんや
 相変わらず、男としては色々な避けなくて仕方ない

 ……まぁ、それは、もしかしたら
 花子さんと契約した時点で、決まっていた運命なのかもしれないが

「…わかった。それじゃあ、付き合ってくれよ?」
「うん!頑張る!!」

 元気に返事した花子さんの頭を撫でる
 …さぁ、忙しくなりそうだ
 必ず、被害者達を元に戻してやらなければ
 俺はそう、強く誓ったのだった

*



 彼は非日常を受け入れる
 日常を望まない訳ではないけれど

 彼は非日常を拒絶しない
 彼は、既に非日常を知ってしまっているから

 だから、彼は誓うのだ
 非日常を知らぬ者を護るのは、自分たちの役目である、と



                       Red Cape



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