○月×日 21:45 屋上
気づいた
気づいてしまった
それは、何時の間にか屋上に現れていた
気づいてしまった
それは、何時の間にか屋上に現れていた
「---------ぁ」
かさ
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさ
それは、何時の間にか、すぐ傍までやってきていて
じわり、じわり、近づいてきている
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさ
それは、何時の間にか、すぐ傍までやってきていて
じわり、じわり、近づいてきている
「………い、や」
悪夢がフラッシュバックする
幼い頃、大きな蜘蛛の巣に引っかかってしまった恐怖が
幼い頃、大きな蜘蛛の巣に引っかかってしまった恐怖が
------あの時、中学生の時
まるで、蜘蛛の巣に縫い付けられたかのように、押さえ込まれて
無数に伸びてきた、男たちの手の、恐怖が
まるで、蜘蛛の巣に縫い付けられたかのように、押さえ込まれて
無数に伸びてきた、男たちの手の、恐怖が
「な、何やのん!?この蜘蛛!?」
「あの時の蜘蛛使いか!?……って、やば!?」
「あの時の蜘蛛使いか!?……って、やば!?」
仲間達の声も聞こえない
届かない
ただ、彼女は……恐怖に、支配されて
届かない
ただ、彼女は……恐怖に、支配されて
「----っいやぁあああああああああああああ!!!???」
○月×日 21;47
やぁっ!俺の名前は御手洗便器………って、だからそれどころじゃねぇっつぅのぉおおおおおお!!!???
っちょ、ヤバイマジでやばくないかこれは!?
追いかけてくる黒こげた蝿が、何か物凄い勢いで暴れ出したぞおいぃいいいいい!!??
羽音が激しくなってきたし動きも激しいぞおい!?
そして、なおかつこっちを追いかけてくるという状況は変わらねぇええええ!!!???
何だか、街中でこんな状況のようだし、どうなってんだ!?
っちょ、ヤバイマジでやばくないかこれは!?
追いかけてくる黒こげた蝿が、何か物凄い勢いで暴れ出したぞおいぃいいいいい!!??
羽音が激しくなってきたし動きも激しいぞおい!?
そして、なおかつこっちを追いかけてくるという状況は変わらねぇええええ!!!???
何だか、街中でこんな状況のようだし、どうなってんだ!?
「若ぁああ!!??どこにいらっしゃるんですかぁああ!!??」
こんな状態の街中に若がいたらヤバイだろう!?
黒こげた蝿に追われながらも、俺は若を探し続けた
黒こげた蝿に追われながらも、俺は若を探し続けた
○月×日 21:48 一年生教室
「----っ」
「…くそ、何があったってんだよ…」
よろり、立ち上がる
まだ「爆発する携帯電話」と合流していないが…彼女の安全が、優先だ
窓を出て、そのまま屋上に向かう
そこでは
まだ「爆発する携帯電話」と合流していないが…彼女の安全が、優先だ
窓を出て、そのまま屋上に向かう
そこでは
「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌ぁああああああ!!!!!!!来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないでぇえええええええ!!!!」
「くっそ!どれだけいやがるんだ!?」
「それでも、大分潰したはずやけど……っ」
「それでも、大分潰したはずやけど……っ」
-------泣いている
(……あぁ、畜生、泣くなよ…)
いい女が、台無しじゃねぇか
「マリ!?お前、まだ治療が終わってないだろ!?」
「あ、あかん!そないに動いたら…っ」
「あ、あかん!そないに動いたら…っ」
「……いい、から……落ち着け」
残っていた左腕で、抱き寄せる
ぴくり、と
その体が、腕の中で震えた
ぴくり、と
その体が、腕の中で震えた
「……マ、リ…?」
涙に濡れた両目が、見あげてくる
その顔を無理矢理胸元に押し付けてやった
その顔を無理矢理胸元に押し付けてやった
「見るな…お前の嫌いなもんは、全部…無くして、やるから」
お前を泣かせるものなんざ、全部潰してやる
壊してやる
だから
壊してやる
だから
「……だから、泣くな」
「マリ…………マ、リ?」
「マリ…………マ、リ?」
「マリ…っ、マリ、マリ!?そんな、酷い傷………っ」
「…大した事、ねぇよ…あの狂信者連中に、実験されてた頃に、比べりゃあ…」
「…大した事、ねぇよ…あの狂信者連中に、実験されてた頃に、比べりゃあ…」
そうだ
こんな怪我など、どうでもいい
こんな怪我、どうせ自分は都市伝説だ、どうにかなる
だから……自分は、どうでもいい
こんな怪我など、どうでもいい
こんな怪我、どうせ自分は都市伝説だ、どうにかなる
だから……自分は、どうでもいい
それよりも、泣くな
頼むから、泣かないでくれ
泣いてる顔なんざ、お前に似合わない
頼むから、泣かないでくれ
泣いてる顔なんざ、お前に似合わない
「泣くな……いいから、すぐ、治るから…」
「マリ……ッマリ、やだ、マリ、マリ……!」
「マリ……ッマリ、やだ、マリ、マリ……!」
子供のように、マリ・ヴェリテにすがりつくスパニッシュフライの契約者
蜘蛛を粗方潰し終えたマッドガッサーが、急いで「蝦蟇の油」を取り出した
蜘蛛を粗方潰し終えたマッドガッサーが、急いで「蝦蟇の油」を取り出した
「とにかく、治療だ!少し大人しくしておけよ!」
「「蝦蟇の油」も、体の損失も治癒できるはずやったよな?ありったけ使えばなんとか…!」
「「蝦蟇の油」も、体の損失も治癒できるはずやったよな?ありったけ使えばなんとか…!」
傷だらけのマリの治療を開始する二人
その間も、スパニッシュフライの契約者は、マリにすがり付いて泣き続けていた
その間も、スパニッシュフライの契約者は、マリにすがり付いて泣き続けていた
過去の恐怖からは解放された
しかし、マリの傷ついた姿に、今度は別の恐怖が生まれていた
しかし、マリの傷ついた姿に、今度は別の恐怖が生まれていた
大切な仲間を失うかもしれない恐怖
愛しい相手を失うかもしれない、恐怖が
愛しい相手を失うかもしれない、恐怖が
失いたくない
死んで欲しくない
----もう、傷ついて欲しくない
死んで欲しくない
----もう、傷ついて欲しくない
マリ・ヴェリテに抱きついたまま、スパニッシュフライ契約者は、ただただ、泣き続けるのだった
to be … ?