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連載 - 占い師と少女-a14

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占い師と少女 マッドガッサー決戦編 14


○月×日 22:21

 パンッと、唐突に響いた銃声。
 その音に真っ先に反応したのは弟さんだった。

ゴポポポポポポポポポポポポポポ………

 弟さんのペットボトルから急速に立ち上がるコーラ。
 銃音が鳴り終えるとほぼ同時に、それは教室の半分を覆う壁へと成長した。

じゅう……

 コーラのい壁に阻まれ、私たちの誰かを狙っていた銃弾は溶け、消える。
 焼けたゴムのような匂いが、私の鼻をついた。
 その後も銃声は何度か響いたけれど、コーラの壁を通り抜け、私たちの元まで辿り着いた銃弾はなかった。

「いきなり銃撃ったぁ、穏やかじゃねえな」

 初撃を逃れた大将が、壁の裏で呟いた。
 Gの襲来とは比べ物にならない緊迫した空気。断続的な銃声と、銃弾が溶ける音が交互に響いている。
 ……そんな中、私と一緒に壁の向こうを「覗いて」いた占い師さんが、ふと言葉を漏らした。

「また『組織』の黒服か……おい、『骨を溶かすコーラ」の契約者、ハンドガンを使う黒服に見覚えは?」
「銃を使う黒服さんに知り合いはいるけど……多分違うんじゃないかな。女の人だったでしょ? 今の」
「いや、『視て』分かったが、あの黒服はマッドガッサーに女体化させられている。性別は男だ」

 占い師さんの言葉に、弟さんはかぶりを振った。

「ちらっとしか見てないけどさ、今撃ってきてる人、何だかやる気なさそうだったでしょ? あの黒服さんなら、もっと気迫一杯で迫ってくると思うよ」
「…………そうか」

 弟さんの返答に、占い師さんは少し残念そうな顔をする。
 私たちの能力でも、相手の性格や癖までは分からない。戦う以上、少しでも相手の情報を持っておきたかったのかもしれない。

『……今の黒服の方も、スパニッシュフライに操られているんでしょうか』
「そのようだ。……全く、今まで出会った『組織』の人間が全員スパニッシュフライに操られてるんだが、一体どういう事だ?」
「そんなの、僕が知りたいよ」

 肩をすくめる弟さんに、占い師さんはため息をつく。
 ……その間も、私は壁の向こうを「覗いて」いた。
 透視をしている私の目に、立て続けに発砲をしているゴスロリ姿の少女が映る。
 流れるような動作でリロード、発砲を繰り返している所を見ると、相当銃の扱いには手慣れているのだろう。
 それでも、片手に握った拳銃とゴスロリ姿が完全にミスマッチなのだけれど。

 (……いや、一応ゴスロリはあの女の子に似合ってますよ、もちろん。でも、出来れば片手の拳銃はない方が嬉しかったなあ、なんて思ってしまうのはいけない事なんでしょうか)

 少女の姿をけなしてしまった事に、誰にともなく心の中で言い訳をして……ふと、少女が発砲を止めている事に気付いた。
 続けていた連射を止め、彼女は拳銃を下げて何かを考えているようなそぶりを見せている。

 (……今って、もしかしてチャンス?)

 もし今、彼女に対して全員で攻撃を仕掛ければ、何とかなるかもしれない。
 そんな事を考え、それを占い師さん達に伝えようとした、その時
 少女が、再び拳銃を構えた。
 ……しかし、その銃口は壁ではなく、コーラの壁の途切れた先の、教室の壁との隙間へと向いていた。

(どういう事……?)

 戸惑う私をよそに、彼女は銃口を少し下げ、隙間の先のタイル張りの床を狙い、
 ……その瞬間、私は少女の狙いに気付いた。

「弟さんっ、壁を教室ギリギリにまで広げて下さい!」

 私の言葉に、弟さんは一瞬戸惑い、しかしそれでも壁の範囲を広げてくれる。
 しかし、コーラの壁が教室の横一杯に広がるより早く、銃口から立て続けに6発、銃弾が射出された。

     その中の一つが、広がって行く壁を嘲笑うかのようにすり抜け、
     タイル張りの床へと着弾し、
     跳ね、向きを変え、
     私達へと、迫ってきた。

「跳弾っ!?」
「ちっ…………」

 金さんが驚いたように叫び、占い師さんは軽く舌打ちをして、

ガツッ!

 足元のタイルを、蹴り上げた。
 占い師さんの能力ですぐに剥がれたそれは宙を舞い、銃弾の進路状に落とされる。

「タイルの運命を『銃弾の進路を変える運命』へ」

 タイルを目視して、占い師さんが呟く。
 そして、その言葉通りタイルは銃弾と交錯し、銃弾は進路を全く別の方向へと誘われた。
 ざわりと私たちに走った緊張が、緩んでいく。

「やってくれんなぁ、兄ちゃん」
「いや、かなり焦ったな。跳弾を『使う』奴がいるなんて、『組織』の規格外さもいい所だ、全く」

 バシバシと背中を叩く大将に、占い師さんは苦笑いで答えた。
 そして、その「焦り」に嘘はない。
 本来、運命の改変の能力は、対象を「見て」変えたい運命を「思う」だけでいい。
 焦った時にそれを口にしてしまう……それは、占い師さんの癖だった。
 久しぶりに見たその癖に、少しの驚きと懐かしさを感じる。
 しかし、そんな感慨に耽っている暇などあるはずもなく……少女は次の手立てを用意していた。

カランッ

 私が跳弾に気を取られ、少女から眼を放した一瞬。
 その一瞬の間に、少女はコーラの壁を越えるよう、何かを放っていた。
 床へと跳ね返り、私たちの目の高さまでそれを「視て」、占い師さんが叫ぶ――

「今度は閃光弾かっ!」
「え、ちょっ、どこの武器商なんですか、あの子っ!?」

 それが炸裂する前、占い師さんは懐から球のようなものを取り出し、床へと叩きつけた。

ボウンッ

 その瞬間に広がる黒い煙。
 それは私と占い師さんとが準備をしておいた道具の一つだった。
 あれは確か――――「10分間消えない」運命を与えられた煙玉。
 それが、教室中に蔓延する。
 煙が少し目に痛かったけれど、その煙によって、閃光弾はその光を遮られたようだった。
 ……それはそれとして

(あの女の子、何だか色々と厄介な道具とか持ってそうだなぁ……)

 味方にいれば心強いのだろうが、出来れば敵にしたくないタイプ。
 そして今、そんな少女が私たちの敵になっているわけで。

(ああ、もう……よりにもよってそんなタイプの女の子にスパニッシュフライを飲み込ませるなんて……)

 少女にスパニッシュフライを飲ませた誰かに小さな呪い事を言ってみるが……私の契約したのは「必ず当たる占い師」さんで、呪術使いではない。
 そんな風に一人色々と呟いている私をよそに、占い師さんの落ち着いた声が暗闇の中から聞こえてきた。

「『骨を溶かすコーラ』の契約者、今の内に壁を全域に張ってくれ」
「うん、今やってるよ」

 姿は見えない中、弟さんの声だけが聞こえる。
 多分皆、煙玉が炸裂する前と同じ場所にいるとは思うのだけれど……視界が悪いと距離感があやふやになるらしい、誰がどこにいるのかがよくわからなかった。

「さて、これで暫くはあちらさんの銃撃も入ってこないとは思うが……白衣の青年、黒服のいる扉以外に出口は?」
「ないな。あの扉一つだ」

 不良教師さんの言葉に、占い師さんがため息をついた。

「出口があそこ一つしかない以上……あの黒服を倒すしかない、か」
『わてがまた内蔵ボンバーでふっ飛ばせばいいんとちゃいますか?』
「あれはあの黒服が頑丈だから取れた策だ。あんな華奢な少女相手にお前のあれをぶつけたら、大怪我する事必死だろう」

 不良教師さんの駄目出しに、人体模型さんは『そうやろか……』と残念そうな声を出した。
 占い師さんは再びため息をついて

「……今日二回目の作戦会議と行くか」

 そう、呟いた。






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