「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-06

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 バラバラにされたお人形
 頭、胴体、手足
 バラバラ、バラバラ、バラバラに?

 ボクの頭はどこにいったの?
 ボクのおててはどこにいったの?
 ボクの足はどこにいったの?

 ねぇ、見つからないの
 どうしても、どうしても
 ボクの足が一本だけ、見つからないの



 ……だから、ねぇ
 お兄ちゃんのその足を、一本

 ボクに、ちょうだい?



「兄貴~?どこ~?」

 …暗くて、不気味
 誰もいない夜の校舎って言うのは、どうしてこんなに不気味なだろう?
 あたしはそんな事を考えながら一人、歩く
 …あの、馬鹿兄貴
 夜に家を抜け出して、どうして学校になんか来てるんだろう
 ここは、妹として、何をしているのか監視せねばなるまい
 もし、いや、万が一でも有り得ないが、女と会ってるとかだったら

 …その女、ぶち殺す

 うっかり物騒な考えが思いついたが、気にしない事にして
 あたしは、兄貴の姿を探していた

「兄貴、どこにいるのさ~?」

 兄貴が通っている高校
 ここに入り込んだとこまでは見たのだが…見失ってしまった
 先ほどから呼びかけ続けているのだが、返事はない
 かつん、かつん
 ただ、あたしの靴の足音だけが響いている
 …それにしても、本当に不気味だ
 こんな時、理科室の前だけは通りたくない
 うっかり中を覗いて、人体模型とかと目があったりしたら、泣ける
 「夜、理科室で人体模型が動く」とかって、よくある都市伝説だし

「……「都市伝説」……」

 …ぴたり
 あたしは、足を止めた
 都市伝説
 そう言えば、何年前だったろうか
 それを、耳にした事があった
 あれは、いつだったろうか?
 兄貴に、背負われていた時
 …あれ、そう言えば
 あの時…どうして、背負われていたんだっけ?
 思い出そうとして…ずきり、頭が痛む

「……あれ?」

 …何だっけ?
 思い出せない
 痛い、痛い、痛い、痛い
 思わず、その場にうずくまりそうになって

「……?」

 あたしは、それに気付いた
 学校の廊下に、似つかわしくないものが…そこに、落ちている

「……う、腕?」

 それは、小さな腕に見えた
 多分、人形の腕
 赤ん坊の腕くらいの大きさの、人形の腕だ
 そう、人形の腕
 人形の腕じゃなくてナマだったら泣く、むしろ気絶する
 …どちらにせよ、なんであんな物が、ここに?
 あたしは、ゆっくりとそれに近づく
 キューピー人形か何かの腕だろうか
 何の気なしに、あたしはそれを拾ってみようかと、近づいて…

「………ッ拾っちゃいかん!!」
「え?」

 ぴたり
 突然かけられた制止の声に、思わず止まる
 …誰?
 辺りを見回すけど、誰もいない
 でも、はっきりと、聞こえた
 歳をとった、お婆ちゃんみたいな女性の声
 それが、あたしを止めた

「逃げなさい!それから離れなさい!!」
「……え?」

 何?誰?
 そう、尋ねようとした時
 かたんっ、と音がして
 ……あたしは、自分が見ているその光景が、現実には思えなかった

 ふわり
 浮かんでいる
 何がって?
 …落ちていた、人形の、腕が
 ふわり、ふわり
 重力を無視して、それは浮かび上がり
 わきわきと、そのちっちゃな指先が、動いている

 ぞくり
 背筋を走りぬける、悪寒
 逃げなくちゃ
 逃げなくちゃ、駄目だ
 ピーピーと、警告音のようなものが頭に響き渡る
 …なのに、足が動かない
 目の前の、非現実の光景に、体が麻痺したように、動かない

 ふわり、ふわり
 浮かぶ、それは
 ぎゅん!と、あたしに向かって飛んできて…

「………っきゃあ!?」

 直後
 あたしの体は、ぐい、と横から引っ張られて
 っちょ、そこ、壁!?
 ってか、鏡が…

 ………
 鏡?
 そう、その鏡から
 細い、細い…白い腕が、突き出ていて
 それに捕まれたあたしは、そのまま、鏡の中に引きずり込まれた


「…ん?今、何か聞こえたか?」
「み?……わかんない」

 かくん 
 花子さんが、首をかしげる
 深夜の校舎内
 …誰か、入り込んできたのか?

「不味いな、早く何とかしないと……って、来たぁ!?」
「け、けーやくしゃ!こっちこっち!」

 ぎゅん!
 迫り来るそれから、俺たちは逃げ出す

 …それは、頭
 キューピー人形の頭部が、ケタケタと不気味に笑いながら、追いかけてくる

 都市伝説「バラバラキューピー」
 バラバラにされてしまったキューピー人形
 足だけが、見つからない
 キューピー人形は探している
 見つからないその片足を捜している
 キューピー人形、どうしてもその足が見つからない
 だから、ある日、閃いてしまった
 …足が見つからないなら、他人の足を奪えばいいじゃないか

 こうして、バラバラキューピーは人を襲うようになった
 話にとって、足りないパーツは違うわけだが…こいつは、よく聞く話通り片足が無い
 その片足求めて、人を襲うのだ
 自分にちょうどぴったりあう足が見付かる、その日まで

「…っつか、人形サイズの脚もってる人間なんているかよっ!?」

 思わず、叫ぶ 
 しかし、その叫びはバラバラキューピーには届かない
 けたけたけたけたけたけた
 壊れたように、笑い続けている

 バラバラキューピーの能力…それは、改めて、自分の体をバラバラにして、相手を攻撃する事
 両腕は怪力を備え、胴体はタックルを繰り出し、片脚は強烈なキックを飛ばし
 そして、頭は、本来キューピー人形に備わっていないはずの鋭い牙で、噛み付いてくる
 今ごろ、不良教師も白骨標本と人体模型をつれて、他のパーツと戦っているだろう
 バラバラキューピーの厄介な所は、全てのパーツを倒しきらないと、そのうち復活してしまうという事
 できれば一箇所に固まってくれていた方がありがたいのだが、相手はそれを許してくれない
 一箇所に固めるべく、誘導しようとしているのだが…

「くそっ、どんどん引き離されてる気が…うぉわ!?」
「っけ、けーやくしゃ!」

 っひゅん!!と
 恐ろしいスピードで、キューピー人形の頭が、一瞬前まで俺の首があった場所を通り過ぎる
 …っあ、危ねぇ
 首の頚動脈噛み切られるところだった!?

「けーやくしゃに何するの!」

 ぷんすか怒った花子さん
 その意思に従うように、すぐ傍の女子トイレから、激流が流れ出してきた
 ごぽごぽごぽごぽごぽ!!
 大量の水が、バラバラキューピーの頭を押し流す!
 その隙に、俺は携帯電話をポケットから取り出した

「先生!そっちはどうなった!?」
『今、理科室だ。片脚と片腕がいる。そっちも、片腕見付かったか?』

 向こうは、自分たちのテリトリーに相手を誘いこめたのか!
 …と、なると、こちらの相手も、そっちに誘導した方がいいだろう

「いや、頭だけだ。片腕がまだ!」
『…わかった。こっちは片腕片脚を押さえ込んどく。死ぬ気でもう一方の腕探しとけ』

 わかってるよ、と答えて、電話を切る
 ごぽぽぽぽ
 水に飲み込まれ、頭部がもがいている
 …後は、片腕だけだ

「花子さん、探すぞ」
「うん!」

 ごぽんっ!
 頭部を飲み込んだ水を移動させながら、花子さんはこっくり、頷いてきた


 ………
 えっと
 ここ、どこ?
 あたしは、この状況を何とか理解しようとした
 白い、真っ白な世界
 そこに、あたしはぺたりと座り込んでいて

「大丈夫だったかい?」

 ちょこん、と
 目の前に、知らないお婆さんが座っている
 白い着物を着たお婆さん
 ……誰?

「お婆さん、誰?」

 何とか、声を絞り出す
 ほっほっほ、とお婆さんは、穏かな笑みを浮かべてきた

「私かい?一応、「鏡の中の四次元ババア」なんて呼ばれてるけどねぇ。長いから、「鏡婆」とでも呼んでおくれ」
「…鏡、婆……「鏡の中の四次元ババア」……?」

 …聞いた事がある
 四時四十四分四十四秒
 その時間に、ある場所の鏡を覗き込んではいけない
 鏡の中に住んでいる四次元ババアに、鏡の中に引きずり込まれてしまうから

 え、あれ
 今、そんな時間だったっけ?
 ってか、あたし、鏡の中に引っ張り込まれた?
 ほっほっほ、とお婆さんは、人懐こい笑みを浮かべ続けている

「しかし、危なかったねぇ。よりによって、都市伝説同士が戦ってる現場に巻き込まれるなんて」
「…都市伝説?戦う?」
「そうさね、ほら、見てご覧」

 っぱ、と
 すぐ傍に、鏡が浮かび上がった
 そこに映し出されたのは、あたしたちの姿じゃなくて…さっきまで、あたしがいた場所だ
 そこを、あの人形の腕が、ふわふわ、ふわふわ、浮かんでいて
 …あたしを、探している?
 ふわふわ、ふわふわ
 浮かんでいた、人形の手
 やがて、ふわり、映っていた範囲から、消えてしまった

「バラバラキューピー…困った子さね。そう言う話として生まれてしまったからには、仕方ないのかもしれないけどねぇ…せめて、本当の脚が見付かれば、良い子になってくれるのかもしれないけど」

 どこか、同情したように鏡婆は言う
 え~と
 どう言う事?
 多分、あたしの頭の上に、「?」マークが一杯浮かんでいたんだと思う
 鏡婆は、丁寧に説明してくれた

 …曰く、あたしたち人間が語る都市伝説は、ある一定以上まで広がり、それが「都市伝説」として認識された時、実体を持つ
 曰く、都市伝説たちは、人間と契約する事により、本来活動できるテリトリーから移動する事が可能になったり、新たな能力を手に入れる
 曰く、テリトリーから動けない都市伝説も、契約によってそこを離れることが可能
 曰く…都市伝説は、人間と契約して、他の都市伝説と、戦う

「じゃあ、その…バラバラキューピーも、誰かと契約して?」
「いや、あの子は契約はしとらんよ。あの子にとって、人間は獲物だからねぇ…」

 …曰く
 都市伝説の中には、積極的に人間を襲うものが存在する
 だから、人間と契約する都市伝説は、それらの都市伝説と戦うのだ
 人間が死んでしまったら…自分たちを生み出す源も、なくなってしまうから

「今、ね。契約者が二人、そのバラバラキューピーと戦っとるんじゃ。花子さんと契約した子と、白骨標本と人体模型と契約した人間じゃったか……おや、ちょうど、花子さんの契約者が、来たね」

 廊下の光景を映していた鏡 
 そこに、人影が映りこむ
 その姿に…あたしは、目を疑った

「兄貴!?」

 そうだ 
 あたしが、わざわざ探してやっていた、兄貴
 それが、小さなおかっぱ頭の女の子を連れて、走り去っていったのだ
 背後に、水の球みたいなのが浮かんでいて…その水の球の中に、キューピー人形の頭部が見えた

「おや、お前さんのお兄さんかい?」
「う、うん…」

 なんで?
 なんで、兄貴が?
 混乱するあたしの脳裏に…一つの記憶が、蘇る

 小学生の時
 学校で流行っていた花子さんの噂
 あたしは、好奇心から、それを確認しようとした

 奥から三番目の扉、とんとんとん、と三回ノックして、「花子さん」と呼びかける
 たった、それだけの事
 何も現れず、やっぱり噂は噂、と帰ろうとした…
 …その瞬間に、あたしは意識を失った
 気がついた時には、兄貴の背中に背負われていて
 …兄貴の、横を
 あの、おかっぱ頭の女の子が、歩いていた

 …あぁ、そうか
 あの時、あたしは兄貴に助けられていたんだ
 今更ながらに、自覚する

「あ、兄貴は、バラバラキューピーと戦ってるの?」
「そうさね…しかし、あれは厳しいねぇ。何とか、全部のパーツを一箇所に集めてやらないと。倒すのは難しいよ」

 鏡婆は、同情したように、そう呟いている
 …ひやり
 背筋を、冷たい物が通り抜けていく

「ねぇ…バラバラキューピーって…人の足を奪うん、だっけ?」

 うろ覚えの、聞きかじりの知識を引っ張り出す
 鏡婆は、そうだよ、と頷いてきた
 …それじゃあ
 もし、兄貴が負けたら
 兄貴は、脚を持っていかれる?

 ……冗談じゃない!!
 あたしの兄貴の足を、あんなよくわかんない相手に持っていかれてたまるか!

「ねぇっ!鏡婆、あんたも都市伝説なんでしょ!それじゃあ、あたしと契約できる!?」
「できるけど…いいのかい?あんたも、本格的に、戦いに巻き込まれちまうよ?ここにいれば、この戦いが終わったら、出してやるから…」

 嫌だ
 冗談じゃない
 あの、根性なしの馬鹿兄貴でもできる事が、あたしにできない訳がない
 …それに
 あたしは、一度、あの馬鹿兄貴に助けられたのだと、知ってしまった
 借りを作りっぱなしなんて、ますます冗談じゃない!!

「いいよ!それくらい、やってやるわ!兄貴にできる事が、あたしにできないはずがない!」
「…困った子だねぇ」

 鏡婆は、あきれているような…しかし、同時に感心したような笑顔を浮かべた
 すくり、立ち上がってくる

「それじゃあ…私も、戦いに参加しようかねぇ」

 まるで、これから散歩にでも出かける、という感じの口ぶりで、そう言って
 すぅ、と静かに、目を閉じてきた

 っぱ
 ぱっぱっぱっぱっぱ
 あたしたちの周りの、真っ白だった世界に…いくつも、鏡が浮かび上がる
 そして、その鏡全てに…校舎の中の、あちこちの光景が映し出された

「契約してもらったお陰でね。この校舎の鏡全て…私の、テリトリーだよ」

 にこり、と、笑った鏡婆
 なんだか釣られて、あたしも笑みを浮かべた

 …怖くない訳じゃない
 本当は、すごく怖いのだと思う
 でも、それを認めてしまったら、兄貴に負けたようで悔しい

 だから、あたしは怖くないのだ
 これから、多分、色々巻き込まれるだろう戦いだって……怖くない!!

「さぁて…どうたら、理科室にパーツが二つ固まってるね。あなたのお兄さんが引っ張ってるのが頭部……と、なると、残りのパーツは」
「さっき、あたしを襲ってきた…腕」
「そう、それを探そうかねぇ」

 無数に浮かぶ鏡の中
 あたしは必死に目を凝らして、あの腕の姿を探した


「…胴体、捕まえたぁ!!」

 ぎゅるんっ
 花子さんが放ったトイレットペーパーが、こちらにタックルしてこようとしていた胴体を捕獲する
 頭と、胴体
 …あとは、腕だ!!

「け、けーやくしゃ。流石に二つ同時に押さえ込むのは辛いの~」
「わかった。とにかく、理科室に行くぞ。あっちなら、先生たちのテリトリーだからな」

 そこでなら、こいつらを押さえ込む事も可能だろう
 ごぽごぽごぽごぽ
 じたばたじたばた
 花子さんに取り押さえられている頭部と胴体が暴れている
 急いで、理科室に向かわないと
 …この間に、腕に襲われたら、それこそ全速力で逃げるしかない
 廊下を疾走し、俺たちは理科室に向かう
 幸い、途中腕に襲われる事はなく、無事理科室にたどり着いた

「先生っ!」
「…追加、来たか」

 教卓に腰を下ろしてタバコを吸っている不良教師
 くそっ!余裕ぶっこきやがってこの野郎
 人体模型と白骨標本が、片脚と片腕を、がっちりと押さえ込んでいた

『頭と胴体やな!後は腕がもう一本か!』
『すみません、私たち、押さえ込むので精一杯です!もう一本の腕も、探してきてくれますか?』

 わかった、と俺は息を整えながら頷いた
 花子さんの方は、と言うと、息切れひとつしておらず
 胴体と頭部を、人体模型と白骨標本に手渡している
 …こう言う時、自分の体力の無さが本当に情けなくなってくる
 これでも、昔よりはマシになっているのだが

「息切れしてるぞ、青少年。大丈夫か?」
「大丈夫だよ畜生。多分、明日の体育の時間は死んだが」

 だからと言って、休んでいる訳にもいくまい
 今夜中に、決着をつけなければ
 そろそろ棒になりかけていた足を、叱咤しようとした…その時

『っきゃ!?』
「!?」

 …ばしゃんっ!と
 花子さんが制御していた水の球から…キューピー人形の頭部が、飛び出した
 …しまった!?
 やはり、テリトリー外では、完全に押さえ込めなかったか!?
 白骨標本が取り出そうとしていたその頭部は、再び、高速で飛びまわりだし

「……っ!」
「けーやくしゃっ!」

 俺に向かって
 ケタケタ無気味に笑いながら…牙を剥き出し、襲い掛かってきた
 …あ、やべ
 今日こそ、死んだか?
 走馬灯が、いそいそと準備をし始めた

「……っ兄貴!!」

 あぁ、聞こえる妹の声は、幻聴か?

「諦めてんじゃないわよっ!この、馬鹿兄貴ーーーっ!!」

 煩い妹だ
 幻聴でくらい「お兄ちゃま」とか可愛い呼び方しやがれ…
 ……あれ
 幻聴じゃ、ない?
 はっきりと聞こえてきた、妹の声
 その、発信元は

「…え?」

 鏡
 理科室の、鏡から
 妹が…体を半分、突き出していてきて
 え、お前
 どうして、そんなところにいるんだよ
 なんで、ここにいるんだよ?
 俺が、そんな疑問の声を発するよりも、先に

「っほら!!これがあればいいんでしょっ!?」

 と、ぶんっ!!と
 何かを、俺に襲い掛かろうとしていた頭部に向かって、投げつけた

 それは、腕
 俺達が探していた…バラバラキューピーの、最後のパーツ
 妹が全力で投げつけたそれは、バラバラキューピーの頭部に見事直撃し
 頭部がバランスを崩して、床に落下する

 頭部
 胴体
 右手左手
 片脚

 …全てのパーツが、今
 理科室に集結した

「っ花子さん!」
「うん!」

 っしゅん!と
 持ってきていたトイレットペーパーが花子さんの意思どおりに動き、頭部と胴体を締め付ける

「…お前ら、やれ」
『っはい!』
『ほな、いきまっせー』

 じゃきんっ!
 刃物と化した白骨標本の腕が、片脚に突き刺さり
 人体模型の内臓が、両腕を狙い打つ
 深夜の理科室内、一箇所に集められたバラバラキューピーの体のパーツ
 その、全てが
 一斉に、破壊された



 ……さて
 何とか、バラバラキューピーに勝てた訳で
 今、俺がすべき事は、一つ

「なんでお前がここにいるんだよ!?っつか、何深夜に家を出てんだ!?危ないだろ!!」
「兄貴に言われたくないし!!」

 兄妹喧嘩
 じゃない、妹への説教だ
 まったく、この物騒な時期に!
 いくら可愛くない凶暴極まりない妹とはいえ、何かあったらどうするか!!

「まぁまぁ、そう怒らないでやっておくれ」

 鏡の中から、鏡婆が話し掛けてくる

 …あぁ、まったく
 以前、妹が俺が契約しているのとは別の花子さんにとり憑かれた事件
 あの時に危惧していた事が、とうとう現実になってしまった
 妹まで、都市伝説と契約してしまうとは…

「この子のお陰で、あんたは助かっただろう?」
「そうよ!あたしに感謝しなさい!!」

 ない胸を張ってくる妹
 …そう言われても
 確かに、今回は助かったが
 ……が
 俺としては、妹にこんな危険な事に首を突っ込んで欲しくないのだ
 都市伝説の危険度は、個体毎に差がありすぎる
 今回のバラバラキューピーだって、危険性で言えば中の上と言った所
 これより恐ろしい存在の戦いに、首を突っ込んでほしくない
 だと、言うのに

「これからは、あたしが兄貴を手伝うから!ッベ、別に、兄貴の為じゃないんだからね!ただ、兄貴に何かあったら、母さんたちが悲しむからだからねっ!!」
「おぉ、凄いな、生ツンデレ。はじめてみたぞ」
「つんでれってなーに?」

 …何、見学しとるか不良教師!!
 そして、こら、そこの変態人体模型、花子さんにツンデレを解説しようとすんなぁあああ!!
 頼む、白骨標本、そこの変態を止めてくれ!!

「お前こそ、何かあったらおふくろたちが悲しむだろうが!?お前は首を突っ込むな、家で大人しくしとれ!!」
「何よ!あたしの方が兄貴より運動神経いいんだから!」

 ぎゃいぎゃいぎゃいぎゃい
 煩い妹を、何とか説得しようとするのだが、暖簾に腕押し
 あぁ、もう、こいつは!
 どうして昔から、俺の言う事を聞かないのか!?

「ほっほっほ、仲がいい兄妹だねぇ」

 鏡婆の、呑気な声が理科室に響いた


 …こうして
 とうとう、俺の妹までもが、都市伝説に首を突っ込んでしまい
 俺の日常が、ますますヒートアップしてしまうであろう事は、容易に想像がついてしまい
 俺は、おのれの運のなさを、ただ呪うしかないのだった



fin


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