「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ-44

最終更新:

rumor

- view
だれでも歓迎! 編集

喫茶ルーモア・隻腕のカシマ


魔法


カシマさんとジャックそしてボクの3人、もう男に勝ち目は無い

「もう終わりにしよう」
「…………いいのか、それで」
「約束して欲しいことがある」
「……なんだ?」
「都市伝説を自分から狩りに行かないで欲しい」
「……無理だ……俺は今でも、都市伝説はこの世界に不要だと考えている」
「危険な都市伝説ばかりじゃない……相手から手を出して来た時だけではダメなの?」
「……お前の様に、意思の強いヤツばかりじゃないんだ」
「ボクは、独りじゃなかったから……そして、貴方が改心してくれたらって願ってる」
「今更だな……改心してどうなる、俺はもう戻れはしない……ヒトを殺しているんだからな」
「……それでもボクは願ってる」
「このゲームには、皆が幸せになる様なハッピーエンドは用意されて無い」
「皆が幸せになる方法なんて無いのかもしれない……」

*



『……生きるんだ、輪』
『……優しい心を、忘れるな』
『……孤独なヒトがいたら、手を繋いで……輪(わ)の中に入れてやれ』

*



「けどッ!……父さんがボクに……残してくれた想いを、ボクは叶えたいんだッ!」

結局、ボクが信じる道とはマスターが指し示してくれた道だった……そういうことだ

「…………ワガママな……ガキだな」

魔術師の言葉に、サチが口を開く

「確かに、我侭なのかも知れない……でも、わたしは……
 周りのヒトを幸せにしてくれる輪くんの我侭は……すごく……すごく素敵だと思うよ」

サチの言葉に、困った様な……恥ずかしい様な表情を浮かべてしまう

「ボクはまだ……親に甘えていたい様な子供だからね……」

*



「……チッ……どいつもこいつも……」

「分かったよ……ゲームの勝利者であるお前の望み……叶えてやるよ」

自分の表情が明るくなるのを感じる
皆に笑顔が戻る

「ただし……」
「?」
「俺が叶えるのは、お前が既に諦めてしまっている方の望みだ」
「ぇ?……ボクが……諦めている?」

「ああ、そうだ……お前の契約者を……生き返らせる」

「?!……そんな……こと……そんな奇跡……みたいなこと」

信じられなかった
そんなことが可能なのか?

「奇跡……それを、人は時としてこう呼ぶ……魔法とな……そして、俺は……魔法使いだ」

魔法……そうか、魔法なら……不可能と思える様な奇跡も……

「じゃあ……本当に?……マスターが生き返る……本当に……」

*



「……しばらく静かにしていてくれよ」
皆が頷く
魔術師は詠唱を開始する
「其は何ぞ……其は魂……其は失われし希望……」
その詠唱は長い
だが、次第に何かがそこに存在する気配を感じ始める
人型が形成されていく
「時は戻る……懐かしきあの季節……」
ボクの……何よりも大切な人の姿が形作られていく
あの時のままの姿
「天より降りしは水……命の水……我が命の水……」
詠唱は続いた
永遠とも思える様な、そんな錯覚

「……ふぅ……今度は巧く組めたな……後は目覚めるまで待っていればいい」

マスターの体が完全に再生されていた
胸が上下し、息をしているのが分かる
生きている

「ぁぁ……マスター……本当に……マスターが……」
涙を溜めるサチ
「……ありがとう……ありが、とう」
ボクはうまく言葉が出てこない
「礼はいらない……敵を倒せばお宝が手に入る……これはルールだからな」

「さて……疲れたな……少し休む……」
男は立ち上がり、山荘へと向かって行った

*



マスターが……父さんが、まぶたをゆっくりと開く
瞳に映るボク

「……り……輪……?」
「ぁぁ……父さん……父さぁぁぁん!」

しがみつく様に、抱きしめる
暖かい
マスターが……父さんが……生きて、ここにいる
何度も願い、願い続け
そして、諦めていたボクの望み
あの日から始まった悪夢が、今
ようやく、終わりを告げる
これからは、全てが……希望に満ちた日々が……
穏やかな日々が……戻ってくる

ボクは声を絞り出す

「……お帰り」

「……ただいま」

父さんは、そう言って微笑んだ

ボクの頬を……熱い雫が滑り落ちていく


長く寒い冬は、その姿を潜め
徐々にだが、春はその暖かい息吹を世界に送り始めていた



*


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー