連載 - とある組織の構成員の憂鬱-53i - 「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

　１日の仕事を終えて、帰路に付いていた黒服
　この日は、Ｔさんとの情報交換も行い…また、考えるべき事が増えた
　ユニコーン契約者については「薔薇十字団」に問い合わせて回答待ち
　「リア充爆発しろ」の被害に付いては、まだ「組織」が捜査中だ
　セイレーンの契約者に関しては…家に帰ってから、もう一度翼に確認をとらなければ
　人相がかなり変わっている、との事だが……翼に近しい相手でなければいいのだが
　そのようなことを考えつつ、家路についていた黒服だったが

「……っ！！」

　それを、見つけて…足を止めた
　傷だらけで倒れている少年
　直接の面識はないが、しかし、黒服はこの少年を知っていた

「明日さん！？」

　慌てて、その少年…明日　真に駆け寄る黒服
　同僚が担当している契約者の１人だ
　まだ未成年であるというのに、攻撃的な能力であるが故、戦いの場に駆り出される事が多いと聞いていた

　…酷い、傷だ
　何かの任務で都市伝説と戦って、負傷した？
　……違う、と黒服は考える
　それなら、担当である彼が傍にいるはずだからだ
　彼は担当契約者が仕事をする際は、なるべくその場に居合わせるようにしていたはずだから
　彼の姿がなく、明日だけが負傷して倒れているという事は…明日自身が、何らかのトラブルに巻き込まれた可能性が、高い

　とにかく、治療しなければ
　あらぬ方向に曲がり、血で染まった両腕
　触れてみれば、肋骨もヒビが入ったり折れたりしてしまっている
　黒服はスーツケースを開け、蝦蟇の油を取り出すと、明日の治療を開始した
　蝦蟇の油を傷に塗りつけ、そっと口をあけさせ、飲み込ませる

　明日は完全に意識を失っているようで、呼びかけても返事は帰ってこない
　…だが、呼吸はしている
　弱々しかったそれは、治療が進むとともに落ち付いていった

　……治療を終えて、黒服は小さく息をつく
　傷の治療は終わったが、出血で失われた体力などは戻らない
　あした１日、ゆっくり休めばそれも回復するだろう

「…とにかく、ご自宅にお送りしなければなりませんね」

　少し、遠回りになるが、置き去りにする訳には行かない
　黒服は明日の体を背負うと、彼の家に向かって歩き出したのだった

to be … ?