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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-17c

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 抜き身の刀を持ち、弓を背負った将門が青年に近づいてくる。
 青年は目の前に刺さっている刀を床から引き抜き、
「アレの攻撃を防げるように固くなってくれれば幸せだな」
 言葉と共に刀を抜き、右手に刀、左手にその鞘を構えた。刀と鞘はそれぞれ光り輝いており、
「かかか、なんと面妖な」
「どの口が言うんだ」
 数歩の間合いで将門は止まった。
 二人は無言でにらみ合い、それぞれ得物を構える。
 シン、と空気が澄み渡る――
「っ!」
 将門が力強く床を踏み、一直線に飛び込む。
 一足飛びで青年に近づき、刀を振り下ろした。
 青年は鞘で受け止める。が、
 重いっ!
 左手をへし折られそうな感覚が一気に襲ってくる。すぐさまそれが遠のき、
 次の一撃が首を狙ってきた。
 右手の刀で受け止め、踏ん張りこらえると、次の一撃が足を斬り払いに来た。
 そして速いか!
 飛び、かわすとそこを狙って蹴りが来た。
 鞘でとっさに受けるがそのまま遠くへと蹴り飛ばされる。
「っの!」
 着地し、鞘で制動をかけて止まる、視線を前方に向けると、
 矢を番えた将門がいた。
「くく、喰らえぃ!」
 ヒョウ、と放たれる弓、青年はその時には既に立ちあがり刀を振り上げており、
「――っ!」
 息を吸い、
「破ぁ!!」
 吐くと共に刀を振り下ろした。
 刀からそれを覆っているものと同種の光が迸り、矢を巻き込み、そのまま矢を放ったモノへと光刃は向かう。
「フンッ!」
 将門は迫る光刃を前に弓を放り捨て、横に突き刺してあった刀を構え、気合いと共に一刀の下に斬り捨てる。
 光が将門に届かず散ったその一瞬、光で視界を焼かれた将門めがけて青年が己の能力で強化した脚力で跳んでいた。
「――くらえっ!」
 地を這うように体を傾け、足を切り払う一撃。しかし将門は刀で止め、
「甘いっ!」
 踏みつけにしようと足を振り上げ、降りおろ――
「まだだ!」
 鞘を地面に突き立て反動で飛びのき先端を向け、
「破ぁ!!」
 撃ちだされた光弾が将門を襲った。
「くっかかかかかかかかか!!」
 しかし将門は至近の一撃を、その体で突き破る。
「!?」
 青年は鎧を半ば砕きつつ光弾を抜けてきた将門に構えを整えようとし、
「っ!」
 それよりも先に大ぶりの、胴を払う一撃がきた。
「ちっ、」
 地に青年は深く沈みこみ、頭上を剛速で通り抜ける刃を見る。一度退こうとしたところでそのまま将門の体が回転を続けているのに気付く。
 なにを?
 思ううちに武者の体は回転を続け、速度に乗った足がその踵で青年を蹴り払おうとする。
 骨を持ってかれる――
 思い、とっさに鞘で受ける。しかし光弾を放ったばかりの鞘には既に何の加護もなく、あまりの蹴りの威力にへし折れかかる。
 もう少し保ってくれれば俺は幸せだ!
 祈りに光を取り戻した鞘は半ばまで折れたまま将門の蹴りをこらえきり、受け流す。
 青年の視界の先で将門は両の足を着き、一瞬武者の動きが止まる。
 そこへ、
「ああぁっ!」
 右手の刀を突き込み、同時に光が爆ぜる。
 しかし、
「この体には、効かんなァ」
 青年の持つ刀は半ばから折れていた。その向こう、胸部から腹部にかけての鎧が砕け散った将門が、それでも愉快そうにニヤァ、と嗤い。
 健在かっ、
 青年がそう思う間もなく、ズブリ、と。
 刀が青年の腹部を貫いた。


            ●


 Tさんが目の前で刀で刺された。
 それは、俺にはとても意外なことで。Tさんは……もっとこう、いつだって、綽々としているように思えていたから。≪夢の国≫とだって戦って勝ったTさんにはもう、敵はないようにさえ感じていたから。少なくとも、俺がいつも見るTさんは、そう見えていたから。
 しかし、そのTさんが腹を刺されているのを見て、俺は今頃、「ああ、やべぇんだ」と気付かされてしまった。
 ああ、そうか。なるほど。理解した。

 この祟り神、俺達より強ぇんだ。

 でも、なんでだろうな。こんな状態になってすら、俺には、Tさんが負けるとは、思えない。




            ●

 くっかかかかかかかかっ! と、将門は笑っていた。
「この感触よ! やはり扱うのならば刀よなァ! 至近にて命を刈るこの実感! 好いものとは思わんかぁ? 青年!」
 将門の言葉に青年は答えない。うつむき、その身体と口は血を吐きだしているだけだ。
「こんなもの、か」
 多少不満そうに言う将門。彼はそのまま刀を――
 刀を持った手を、掴まれた。
「……く、ふ、……はは」
 彼の目の前でうつむき、力なく刺されていた青年の背が震えている。
「捕まえた」
 顔を上げた青年。その顔には、笑みが、
「結、界とか……っ張れたっ、なら、幸せだなぁ」
「ぬ?」
 青年の言葉と共に光で場が仕切られた。
 危険、と判断。彼はとっさに刀から手を離し――
「逃さんよ」
 発光した手が信じられない握力で将門の刀を持つ手を掴む。青年はそのまま刀で切り裂かれないように、逃げられないように、固定する。
「これでもっ! 予習は、してるんだ」
 鉄身の伝説も知っている。と彼は言う。
「だから、余分なもの……は、取り払って」
 刀に祈る。固く、固くなれ、祟り神をも貫ける程に――
「刀が、鎧で逸……れないよ、っにして」
 息を大きく吸い、こみ上げる吐き気を押し殺し、
「内から、壊してみることにした」
 そう言って青年は将門の腕を引き、刀をさらに己に深く刺す。同時に刀を持った将門が青年の目の前に近づき、
 さぁ、
「その体で飲みこんでくれ。俺のエクスカリバー」
 手に持った半ばで折れた、光輝く刀を、渾身の力で突き刺す。
 ドスリ、という感覚に青年は顔を歪めて、
「至近で命を刈る一瞬かぁ、あんまり好きになれんなぁ」
 苦笑とともに言い、
「破ぁ!!」
 刀を、将門を中心として、光が、青年自身が張った結界内を荒れ狂った。



           ●



 爆音を伴った光が晴れ、それに合わせて結界も消えた。辺りの床を土台の底まで消し飛ばしたせいで舞った砂埃が立ち込める。
 やがてそれも晴れ、その向こう、爆心地に二つの影があった。
 一つは、ふわりと浮かび上がった、異形の首であった。その髪は落ち武者のように乱れており、はっきりとした狂気が染み出していた。もう一つは、半ばで折れた発光する刀を異形の額に突きつけた、腹を刀に貫かれた青年であった。
「……動かんのか? 青年」
 異形の生首――将門は言う。
「撃った瞬間に、ーっ、祟り殺されそうだ」
 青年は苦しそうにしながらも刀の狙いを逸らすことなく答える。
「くくく、我を消せるやもしれんぞ?」
「狙いを……、つけてるのが額じゃなくっ、て、こめかみならまだ試してみてもいいんだが、なっ、」
 青年は笑いを無理やり貼り付けた表情で言う。
「かかかっ、だがこのままではジリ貧であろう?」
 将門の言う通りだった。青年の体からはとめどなく血が流れており、このままにらみ合いが続けば、
 俺の負けか――
 溜息を一つ。
「もう、いいだろう、っ将門公」
「ふむ?」
「過労……の、黒服……さんから連絡っ、もらって、る」
 青年はそう語る。≪組織≫からすら直々に休めと言われた彼から、先程あった連絡だ。
 その内容は一つは、「組織」からのバックアップは、これからほぼないであろうこと。今回、作戦を手伝うさいに使った「フリーメイソン」としての顔は、つかえないだろうこと。
 もう一つは、
「将門公、が≪夢の国≫を討った、……っ、モノに興味を持っていると」
 それを聞いた将門が愉快そうに笑う。
「くっくく、あやつめ、喋りおったか」
「……、ああ」
「せっかく芝居を打ったのだがなぁ」
 将門はふわふわ浮いたまま楽しそうにしている。
「がんばって、ノッてやったんだ。感謝……っ、しろ」
「くくく、我としてはこのまま続きをやっても構わないのだが」
 そう言って青年を見る。青年は実に嫌そうな顔をしているが、光弾を生みだし――
「まあ、我が本拠地で国を相手取って戦おうとは思わんがな」
「?」
 将門の言葉に青年は眉をひそめる。将門の視線は青年の後方に向いており、
 そこには夢子と青年の契約者がいた。
 いつの間にか周囲には楽しげな気配が満ちており、≪夢の国≫の、幾人もの住人が彼女らの周囲を囲んでいる。そして彼等の先頭には、
「っしゃあ! やったるかー!」
「いくの!」
「……!」
 どこの住人から奪ってきたのかそれぞれ両手に鉈を持った青年の契約者とリカちゃん人形がミッ○ーに肩車されていた。
 夢子はナイフを握ってミッ○ーの飼い犬にまたがっている。 
 その光景は当人たちは真剣なのだろうがなによりも滑稽に映り、
「く、ふふ」
「くくく」

 ――はははははははははははははははっ!

 青年も将門も、もう戦う気はなくなっていた。

 ひとしきり笑うと青年はだんだん身体が言うことをきかなくなってくるのを自覚しながら話す。
「公よ、≪夢の国≫の件だが」
「我は女子供には手を出さん」
 手を出された場合は別だがなァ、と言って青年の契約者をちらりと見る。
 ああ、入口での……まさか恨んでやがったか?
 思い、青年はフォローに走る。
「うちの、契約者のっ、あの発言だが」
 あれは、と言って一度喉に詰まった血を吐きだし、大きく息を一つつく。
「客相手に門を閉ざす公が悪い」
 一瞬場が止まり、盛大に将門が笑う。
「くっくくかはははははははは! 他に言いようはあろうに、言うに事欠いてそれか!!」
「恨み節だ。見逃せ」
「まあよかろう」
 将門の言葉によし、と頷き、あ、と言い、
「……、そう、だ」
 だるそうにしながら、
「今日泊まるぞ、いい部屋、用意しとけ」
「よかろう、そのまま宴会まで留まるがよい」
 鷹揚に告げる将門。しかし、
「宴会?」
 意図のつかめない発言だった。
「≪夢の国≫戦、勝利の祝いよ! 町の者どもも招いて盛大にやるぞ」
 くくくと笑う将門、青年は少し考え、
「……酒はあるんだろうな」
「上物を用意しよう」
 即答が返ってきた。
「乗った」
 笑って青年も答える。
 将門はうむ、と頷くとその身に再び身体を形成する。
「では刀を抜こう、気張れ」
 そう言って青年の腹に刺さったままの刀に触れる。
「りょ、かい」
 青年が答えるか答えないかのタイミングで将門は刀を引いた。
「――ッガ!?」
 くずおれそうになる身体を気力で立たせて青年は祈る。
「傷が治れば、幸せだ」
 とたんに身体が白光に包まれ、青年の血の流出は止まり、青年の意識は断絶した。



            ●


「Tさん!」
 いきなりぶっ倒れたTさんに手に持っていた鉈を放り捨てて駆けよる。
 ざっと調べてみると血まみれだがとりあえず傷は後も残さずに塞がっていた。
「かっかか、そこな女子よ、ソレは大したことはないわ、血が足りなくなっただけよ」
 俺は無言で将門さんを睨みつける。夢の国の住人が周りを護衛してくれる。
「くく、約束は交わされた。我は約束は守るぞ」
 いちおう会話は聞こえていた。約束とは≪夢の国≫に手を出さないということだろう。そしてこの戦いも全部半ばお芝居だったことも何となくわかった。だが、
「もし途中でTさんが死んでたらどうするつもりだった?」
 俺はこいつをあまり好いていない。
「くくく、そなたの契約せし都市伝説はそんなに弱いのか?」
 神経逆なでするようなこと言ってくれるじゃねえかこのやろう。
「……夢子ちゃんには手を出さないんだよな?」
「約束だからな」
「ならいいや」
 そう言って夢子ちゃんに≪夢の国≫を収めさせる。
「夢子ちゃんも、あの野郎あんま好きじゃないがTさんがせっかく話をつけてくれたし、まあ信用してやってくれ」
「は、はい」
 うなずく夢子ちゃん。
「くかかかか! そこの女子は我が≪組織≫の呪いに利用した縁もあるし、消し去ってやろうと思っていたのだがなァ」
 その言葉に身構える夢子ちゃん。将門さんはたぶん軽くいじめてる気分なんだろうが、
「あんまいじめるなよ? 将門さん」
 悪質だ。いじめるならもっとかわいさを引き出すタイプのいじめをしやがれおっさん。
「くく、ああ、ああ、分かっておるよ」
 笑って頷く将門さん。悪い人なのか意地悪なだけなのか俺にはよくわからん。そういえば祟り神でもあり英雄でもあるんだったか。複雑なやつだなぁ。
「では、帰らせていただきます」
 夢子ちゃんが言う。俺も同意見だ。とっとと帰りたい。
「まぁまて」
 まだ何かあるのかよ、勘弁してくれ~、
「数日後、戦勝の宴がある。≪夢の国≫に勝った、なァ?」
「おい、ミッ○ーちょっとあの野郎いっしょに一発殴ってこないか?」
 Tさんを担ぎあげてくれているミッ○ーに話を振る。夢子ちゃんをわざといじめてんのかこいつ?
 かかかっ、笑って将門は言う。
「まあそういきりたつな。青年もあまり動かさない方がよかろう?」
「まあ、確かに」
 傷は塞がっているがまだ何かないとも限らない。実は中身はまだ治って無かったなんて言われたら大参事が起きそうだ。
「部屋を用意させよう。≪ふぃらでるふぃあ計画≫よ」
 やけに拙い発音で黒髪長髪の姉ちゃんを呼ぶ将門さん。……発音を聞いて若干敵意とか薄らいだ自分が結構好きだ。
「あ、はい」
 ≪フィラデルフィア計画≫の姉ちゃんは微妙に自失していたようだ。まあ、確かにすげえ戦いだったしなー。
「客人を案内してやれ」
「わかりました」

 そうして俺たちは首塚のどこかへと連れて行かれることになった。
 そういやTさん、昨日≪夢の国≫と戦ってまた今日も将門さんとの戦いこなして組織連中に夢子ちゃんに手を出させないようにしたんだよなぁ。
 うへぇ、

 ――寺生まれってやっぱりすげぇ、俺はそう思わずにはいられなかった。

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