○月×日 21:50 一年生教室
そこに、「爆発する携帯電話」が入り込んだ時
マリ・ヴェリテの姿は、どこにもなかった
残されていたのは血の痕と、開いた窓
マリ・ヴェリテの姿は、どこにもなかった
残されていたのは血の痕と、開いた窓
『…はにー、まりノヤツ、サッキノヒメイヲキイテ、オクジョウニアガッタミテェダ』
「……そう、か」
「……そう、か」
心配そうな…泣き出しそうな表情をしている、「爆発する携帯電話」
マリが、負傷したと…そう、報告を受けた
だから、ジャッカロープの乳で、また傷を治療しようと駆けつけたのだが…その直前、聞こえてきたスパニッシュフライの契約者の、悲鳴
マリは、それを聞いて彼女の元へ向かったのだろう
彼女の事を、マリはとても気にかけていたから
マリが、負傷したと…そう、報告を受けた
だから、ジャッカロープの乳で、また傷を治療しようと駆けつけたのだが…その直前、聞こえてきたスパニッシュフライの契約者の、悲鳴
マリは、それを聞いて彼女の元へ向かったのだろう
彼女の事を、マリはとても気にかけていたから
「これは…屋上に向かった方が、良さそうですね」
「……あぁ」
「……あぁ」
オーナーの言葉に、「爆発する携帯電話」はこくりと頷いた
…どちらにせよ、屋上には向かわなければならないのだ
ジャッカロープを抱いたまま、すぐに廊下へと飛び出す
…どちらにせよ、屋上には向かわなければならないのだ
ジャッカロープを抱いたまま、すぐに廊下へと飛び出す
「屋上への階段の道、開いてるぜ!」
「じゃが、急いだ方がいいじゃろうな」
「じゃが、急いだ方がいいじゃろうな」
屋上への、唯一の階段
そこへの廊下に、黒い悪魔の姿はない
あの、髪の伸びる黒服がどうにかしてくれたらしい
だが、いつまた、黒い悪魔がここまで侵攻してくるか、わからない
急いで、屋上に向かわなければ
四人で、屋上への階段に向かって走る
廊下の突き当たりにある、その階段へと視線をやって…
そこへの廊下に、黒い悪魔の姿はない
あの、髪の伸びる黒服がどうにかしてくれたらしい
だが、いつまた、黒い悪魔がここまで侵攻してくるか、わからない
急いで、屋上に向かわなければ
四人で、屋上への階段に向かって走る
廊下の突き当たりにある、その階段へと視線をやって…
一同は、思わず凍りついた
かさかさ
かさかさかさかさ
かさかさかさかさ
そこには、黒い悪魔がいた
みっしりと、黒い悪魔が巣くっていた
それらは、もぞもぞとその数を増やしていっていて
それらが、屋上へと登っていこうとして…しかし、13段目に、引っ張り込まれていっている
しかし、増える
しかし、引きずり込まれる
みっしりと、黒い悪魔が巣くっていた
それらは、もぞもぞとその数を増やしていっていて
それらが、屋上へと登っていこうとして…しかし、13段目に、引っ張り込まれていっている
しかし、増える
しかし、引きずり込まれる
……この世で一番嫌なエンドレスが、そこで繰り返されていた
G嫌いならば、確実にトラウマものである
そうじゃなくとも、一瞬、気が遠くなりそうだ
そうじゃなくとも、一瞬、気が遠くなりそうだ
……かさりっ
……黒い、悪魔達が
自分達を見ている存在に……気づいた
……黒い、悪魔達が
自分達を見ている存在に……気づいた
「やばっ!?」
「に、2階へ!」
「に、2階へ!」
屋上からは、遠ざかってしまうが
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさ
黒い悪魔の一部が、一同を追いかけた来た
……が、それらは、一同に追いつく事なく、13段目に飲み込まれていく
かさかさかさかさかさかさかさかさかさ………
………あぁ…ここでも、嫌なエンドレスが開始されてしまった……
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさ
黒い悪魔の一部が、一同を追いかけた来た
……が、それらは、一同に追いつく事なく、13段目に飲み込まれていく
かさかさかさかさかさかさかさかさかさ………
………あぁ…ここでも、嫌なエンドレスが開始されてしまった……
「しっかし、まいったな。これじゃあ屋上にいけねーぞ」
「くけ……」
「くけ……」
少年(いや、姿は少女だが)の言葉に、「爆発する携帯電話」は困ったような表情を浮かべた
この学校の見取り図は、スーパーハカーが手に入れた物を見て把握している
屋上への階段は、あそこだけなのだ
非常階段は存在するが、屋上までは繋がっていない
階段を使わないで、屋上へ行く手段など、壁を上るか空を飛ぶかしかない
そして、この面子で、それができるかどうか、と言うと…微妙だろう
ひきこさんが、力いっぱいぶん投げてくれれば辛うじて届くかもしれないが、正直投げられる方が危険である
少なくとも、「爆発する携帯電話」はその衝撃に耐えられないだろう
この学校の見取り図は、スーパーハカーが手に入れた物を見て把握している
屋上への階段は、あそこだけなのだ
非常階段は存在するが、屋上までは繋がっていない
階段を使わないで、屋上へ行く手段など、壁を上るか空を飛ぶかしかない
そして、この面子で、それができるかどうか、と言うと…微妙だろう
ひきこさんが、力いっぱいぶん投げてくれれば辛うじて届くかもしれないが、正直投げられる方が危険である
少なくとも、「爆発する携帯電話」はその衝撃に耐えられないだろう
「何か、方法を考えませんと…」
「…どうやら、そうも言ってられんようじゃぞ」
「…どうやら、そうも言ってられんようじゃぞ」
ひきこさんが…真っ先に、それらの気配に気づいた
かさかさかさ
小さな虫が、蠢く音に
かさかさかさ
小さな虫が、蠢く音に
「っちょ…また、Gかよ!?」
『--チガウ!トニカク、スグソバノキョウシツニニゲコメ!!』
『--チガウ!トニカク、スグソバノキョウシツニニゲコメ!!』
「爆発する携帯電話」が握っていた携帯電話から響く、スーパーハカーの声
かさかさかさかさ
かすかな音を立てながら、迫ってきたそれは…
かさかさかさかさ
かすかな音を立てながら、迫ってきたそれは…
蜘蛛だ
小さな、小さな蜘蛛達
それらがかさかさかさ、迫ってきている…!
毒蜘蛛の類は混じっていないようだが、あまり気持ちいい集団ではない
そして、あの黒い悪魔同様、都市伝説絡みかもしれないとなると、そう簡単に払う事もできまい
すぐ傍の教室に駆け込み…そこで、蜘蛛を迎え撃つ
それらがかさかさかさ、迫ってきている…!
毒蜘蛛の類は混じっていないようだが、あまり気持ちいい集団ではない
そして、あの黒い悪魔同様、都市伝説絡みかもしれないとなると、そう簡単に払う事もできまい
すぐ傍の教室に駆け込み…そこで、蜘蛛を迎え撃つ
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさ
それは、統制のとれた動きではない
しかし、故に気まぐれなそれらの動きは、捕えどころがなく攻撃は難しい
しかし、故に気まぐれなそれらの動きは、捕えどころがなく攻撃は難しい
「なぁ、こいつら潰して大丈夫なのか?」
「夜蜘蛛は親でも殺せ、と言うからのう。むしろ、潰した方がいいかもしれんな」
「夜蜘蛛は親でも殺せ、と言うからのう。むしろ、潰した方がいいかもしれんな」
少年の疑問に、ひきこさんが答える
そう言えば、そんな言い伝えもあった様な気がする
かさかさ、かさかさかさ
蜘蛛達は、ゆっくりと一同を包囲してくる
そう言えば、そんな言い伝えもあった様な気がする
かさかさ、かさかさかさ
蜘蛛達は、ゆっくりと一同を包囲してくる
懐から、予備の携帯電話を取り出す
即座にその携帯にアクセスし……ぽ~ん、と蜘蛛達の中心に投げ込んだ
即座にその携帯にアクセスし……ぽ~ん、と蜘蛛達の中心に投げ込んだ
ピピピピピピピピピピピピピピピピ
電子的な音が響き……ぼぅん!!
爆発の衝撃が、蜘蛛達を殺していく
爆発の衝撃が、蜘蛛達を殺していく
かさかさかさかさかさかさかさかさかさ
爆発から運良く逃れた蜘蛛を、少年やオーナーが次々と潰していく
まずは、迫り来る蜘蛛を何とかしなければ、今後の方針を考える事もできない
蜘蛛達相手に攻撃を繰り返しながらも…「爆発する携帯電話」は、他の仲間たちのことを、気に駆け続けていた
まずは、迫り来る蜘蛛を何とかしなければ、今後の方針を考える事もできない
蜘蛛達相手に攻撃を繰り返しながらも…「爆発する携帯電話」は、他の仲間たちのことを、気に駆け続けていた
○月×日 22:10 二年生教室
「……一段落ついたか?」
「…たぶん」
「…たぶん」
静まり返った教室内
無数の蜘蛛の死体が散乱している
…もう、動く蜘蛛は…少なくとも、ここにはいない
無数の蜘蛛の死体が散乱している
…もう、動く蜘蛛は…少なくとも、ここにはいない
「流石に疲れたな…」
「くけ…だいじょう、か…?」
「くけ…だいじょう、か…?」
じ、と心配そうに少年を見詰める「爆発する携帯電話」
少年は大丈夫、と笑ってきた
少年は大丈夫、と笑ってきた
「俺は平気だよ。それより、携帯の兄ちゃんこそ、大丈夫か?顔色、また悪くなってるぞ?」
「……平気だ」
「しかし、あなたは先ほどから、ずっと都市伝説能力を使い続けています。かなり、負担がかかっているはずですよ?」
「……平気だ」
「しかし、あなたは先ほどから、ずっと都市伝説能力を使い続けています。かなり、負担がかかっているはずですよ?」
オーナーの言葉にも、「爆発する携帯電話」は平気だ、と答える
体力を消耗している自覚はあるが、都市伝説能力を使いすぎた、と言う自覚はあまりない
体力を消耗している自覚はあるが、都市伝説能力を使いすぎた、と言う自覚はあまりない
『はにーハウツワガソウトウでかイカラナ、ノウリョクノツカイスギハシンパイナイトオモウゼ』
「…まぁ、問題は体力なんじゃろうな、お前さんの場合」
「……くけっ」
「…まぁ、問題は体力なんじゃろうな、お前さんの場合」
「……くけっ」
ひきこさんの指摘通りである
一度休んだと言うのに、また少し走っただけで、体力を消耗してしまっている
……自分の貧弱さが、嫌になってくる
一度休んだと言うのに、また少し走っただけで、体力を消耗してしまっている
……自分の貧弱さが、嫌になってくる
「…平気、だ。だから…屋上に行く方法、考えよう…」
「屋上なぁ……これでRPGだったら、隠し通路を使ってー、とかってなるんだけどな…」
「屋上なぁ……これでRPGだったら、隠し通路を使ってー、とかってなるんだけどな…」
ぺたん
すぐ傍にあった椅子を引っ張ってきて、腰掛ける少年
もぞ、と「爆発する携帯電話」も、すぐ傍にあった椅子に腰掛けた
…そうでもしないと、体力がかなり、危うい
すぐ傍にあった椅子を引っ張ってきて、腰掛ける少年
もぞ、と「爆発する携帯電話」も、すぐ傍にあった椅子に腰掛けた
…そうでもしないと、体力がかなり、危うい
「…隠し通路、と言うか…三階へ行く道は、階段以外も、ある」
「マジ!?」
「…ある、が……そこは、確か…マッドが、爆弾を仕掛けていたから…」
「危なっ!?」
「マジ!?」
「…ある、が……そこは、確か…マッドが、爆弾を仕掛けていたから…」
「危なっ!?」
…誰かが先に通って、尊い犠牲になってくれていない限り、あの道を使うのは不可能だ
流石に、あそこには隠しカメラは設置されていないから、確認できない
流石に、あそこには隠しカメラは設置されていないから、確認できない
「では、やはりあのゴ○ブリに占拠されていた階段をどうにかするしかないですね」
「都市伝説能力の発動者が、能力を解除してくれればいいのじゃがのぅ」
「都市伝説能力の発動者が、能力を解除してくれればいいのじゃがのぅ」
数の暴力とは恐ろしい
それを、嫌というほど実感する
増え続けるあれをどうにかしなければ、先には進めない
それを、嫌というほど実感する
増え続けるあれをどうにかしなければ、先には進めない
…マッドガッサーが持っていた火炎放射器で焼き払えば、どうにかなるかもしれない
こちらから連絡して、あの階段の黒い悪魔達を焼き払ってもらおうか?
「爆発する携帯電話」は、そう考える
こちらから連絡して、あの階段の黒い悪魔達を焼き払ってもらおうか?
「爆発する携帯電話」は、そう考える
……だが
じっと、自分の携帯電話を見詰める
じっと、自分の携帯電話を見詰める
先ほどから、何度かマッドガッサー達に、連絡をしているのだ
今回行っている計画を…思いとどまってくれるように
しかし、返事こそ返してくれるが、思いとどまってはくれない
今回行っている計画を…思いとどまってくれるように
しかし、返事こそ返してくれるが、思いとどまってはくれない
『ヤバくなったら…いざという時は、お前らだけでも逃げろ』
マッドガッサーからの返事は、それだった
お前ら、と言うのは、マッドガッサーの傍にいる似非関西弁の女性や、スパニッシュフライ契約者達にも向けた言葉だからだろう
お前ら、と言うのは、マッドガッサーの傍にいる似非関西弁の女性や、スパニッシュフライ契約者達にも向けた言葉だからだろう
『お前らは、どっかの組織なり何なりの保護下に入って、いくらでもやり直せる。俺とマリは、そうも行かないだろうがな』
…そうは、言われても
逃げる事などできない
「爆発する携帯電話」は、そう考える
仲間を置いて逃げるなど、できるものか
皆は、大切な家族同然なのだから
逃げるなど…できない
逃げる事などできない
「爆発する携帯電話」は、そう考える
仲間を置いて逃げるなど、できるものか
皆は、大切な家族同然なのだから
逃げるなど…できない
もし
もし、だ
今回の計画が、失敗して
自分達が、バラバラになってしまったら…
もし、だ
今回の計画が、失敗して
自分達が、バラバラになってしまったら…
「------っ」
嫌だ
それだけは、嫌だ
それだけは、嫌だ
しかし、一度考えてしまうと、その恐怖が思考を支配する
恐怖が、思考をグルグルグルグル、縛り付けて…
恐怖が、思考をグルグルグルグル、縛り付けて…
「…兄ちゃん?お、おいっ!?」
「どうしました!?」
「---っ」
「どうしました!?」
「---っ」
呼吸が、苦しい
抱きしめていたジャッカロープが、慌ててぺちぺち、しっかりしろ!とでも言うように前脚で叩いてくる
恐怖が、本日二度目の発作を引き起こした
呼吸がままならず、視界がかすむ
体力を、消耗していたせいもあったのだろうか
抱きしめていたジャッカロープが、慌ててぺちぺち、しっかりしろ!とでも言うように前脚で叩いてくる
恐怖が、本日二度目の発作を引き起こした
呼吸がままならず、視界がかすむ
体力を、消耗していたせいもあったのだろうか
---「爆発する携帯電話」は、そのまま意識を失った
to be … ?