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連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-23c

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中央高校での決戦~vsラ〇ン、そして合流



 Hさんと戦った教室の中で、こっちは緊張に身を固めていた。
 廊下から聞こえてくる騒音から、誰かしらが戦っているのが分かるが……今はそんなことを考えている暇はない。
 その理由は全て、目の前の大男にある。
 教室のカーテンを引きちぎって包帯を作っていたこっちの前に、窓から飛び込んできたその男。
 男にしても非常に高い部類に入るだろう長身に、全身を鎧のように包む分厚い筋肉。
 その浅黒い肌に広がった白髪。もうすぐ冬だというのに薄着で、さらには比較的悪人顔。
 それが誰かを判断するにはそれらの情報は十分すぎた。
 それはある世界においての一つの力の頂点。文字通りの意味で世界最強と呼ばれる存在の一人であり、さらにその世界を救った英雄の一人でもある。
 しかしそれはここには………いや、この世界には存在しないはずの者だった。
 全く意図しないままに、口がその名前を呼ぶ。

「―――千の刃の、ジャック・ラ○ン………?」

 確実に目の前に存在してはいるのだが、頭はそれを否定したがっているらしく、その言葉は疑問形で紡がれた。
 それに対し、

「おお、よく知ってるな? こっちでもここまで有名たぁ、流石は俺様だ」

 そう言ってワハハハハ、と豪快に笑う大男―――ラ○ン。
 ………いや、これはないだろうとこっちは思う。
 都市伝説が常識から外れたものだというのは散々身に染みて分かっていることだったし、だからこそ覚悟もしていたが……いくらなんでもマンガ内のキャラクターが出てくるとかはなしだろう。それも雑魚キャラAとかそんなんじゃなく、チートもチート、超チートキャラだ。
 この人―――ラ○ンが出てくるマンガは友達がしっかりと全巻揃えていて、勧められて読んだことがある。
 感想としては、バトルシーンがとても面白かったのだが………まさかその中でもとびっきりの規格外に、しかも現実で出会うとは思わなかった。ていうか誰も想像できないだろう、そんなこと。想像できてたらむしろ怖い。
 そんなこっちの思いを知ってか知らずか、話し出すラ○ン。

「まぁここでは俺のことがどうとかはどうでもいいんだがな。―――嬢ちゃんがあの娘の敵かどうか以外は、な」
「あの娘………?」
「ああ、黒焦げの蝿を操るあの娘だよ。彼女の敵は俺の敵なもんでな?」
「………その人の敵かどうかはともかく、あなたのことは止めたいです」

 ………しかも止めるべき相手だった。戦いを挑んでみたはいいけど、正直無理だと思う。
 ていうか生身で戦艦沈める上に、でっかい岩を融かすような特大の雷を体内で炸裂させられても立ち上がるような化け物にどう勝てと。

(―――いや、《スパニッシュ・フライ》は確か、気絶したらそれで能力は解けるはず………じゃあ、なんとかなるか?)

 そう考えるこっち。
 ………うん、なんか油断してくれてるし、そこに全力を叩き込んでなんとかなると信じよう。

「俺的には嬢ちゃんみたいのとはあまり戦りたくないんだがな……まぁ、大丈夫だ。痛くはしないから」

 なんかにたー、とした笑みを浮かべながら近づいてくるラ○ン。
 今のこっちとの身長差も相まって威圧感が物凄いが、どうやらこっちのことは舐めきってくれているようだ……幸いなことに。
 ラ○ンの大きな手がこっちの頭に被るその瞬間にさっと身をかわし、足を引っかける。
 あだっ、とラカンが悲鳴をあげるが、それに構わずその胴体を遠慮なしに蹴り上げ、教室の黒板に叩きつけた。
 ゴン! という音とともに黒板にヒビが入る。だが、ここで止めるつもりはない。
 身体を回転させつつ、早口言葉のように「思い込んだら」と呟き、右手に二つ、左手に三つ、総計五トンのローラーを出現させた。
 普通に持ち上げようと思ったら無理な重さではあるが、身体の回転の最中に出現させたことで、その勢いのまま振り回すことだけはできるようになっている。
 それら全てを、まだ黒板に半分埋まったままのラ○ンに叩きつける。
 まず右の二つ。ズドン!! という轟音とともにローラーごとラ○ンの身体が壁の中に埋まった。
 その余波により、黒板のいたるところにヒビが入る。
 そして、右よりも更に勢いがついた左が、ダメ押しに叩きつけられた。
 さっきよりも更に大きな轟音が空気を震わせる。
 その一撃は、壁に突き刺さったままのローラーを、ヒビの入った黒板を、黒板のある壁すらも砕き―――力づくで壁をぶち抜いて、ラ○ンとローラーが隣の教室へと吹っ飛ばされた。

「………っふう。さすがに、これくらいやれば、気絶くらいは……」

 "投げる"のではなく"叩きつける"だったお陰で右手は無事で済んだのだが……元々無理して動かした左手はダメだったようだ。
 痛みが悪化した左肩を擦りながら一人ごちる。
 どうだろうなー、と空いた……というかこっちが空けた穴を覗こうとし―――目と鼻の先、髪の毛をかすってローラーが横切っていった。
 固まるこっち。粉砕される教室の壁。
 そして―――首をコキコキと鳴らしながら、その男は現れる。

「………いやぁ、油断してたぜ。まさかここまでやるとはなあ?」

 頭から一筋の血を垂らしながら。

「流石に今のはそこそこ効いたぜ? そのちっこい身体で、大したもんだ」

 自由を掴んだ最強の奴隷拳闘士、生けるバグキャラ、不死身の男―――ジャック・ラ○ンが。

「―――だがまぁ、俺も男だ。彼女の為に、こんなとこで寝てるわけにもいかないんでな」

 その言葉を最後まで聞くことなく、こっちはその頭へと渾身の力で右の回し蹴りを叩き込む。
 普通の人間に放ったなら、それだけで頭蓋骨を陥没させかねないその蹴りを、ラ○ンは片手で受け止める。

「くっ……!」

 受け止められた右の足を軸に身体を回転させ、ラ○ンのその頭頂部へと左足を降り下ろす―――踵落とし。
 更に右の踵もその鼻先に突き込み、その反動で後ろに飛ぶ。空中でくるりと回り、きれいに着地しようとした、その瞬間。
 ガシリ、と。
 こっちの左手を、ラ○ンの丸太のような右手が掴んでいた。
 その絶対的な力感、圧倒的な力量差………一瞬でわかる。振りほどくことなんて、出来るはずがない。そう思ったのもつかの間。左肩に激痛を、そして全身に浮遊感を感じた。

(………振り、回されてる………っ!)

 自分が置かれている状況は分かっても、それをなんとかすることができない。
 歯を食いしばり、来るべき衝撃に備える。
 そして、その時は来た。
 左手の圧迫感がなくなり、身体が水平に飛んでいく。
 教室と廊下とを隔てる窓を突き破り、廊下の壁に叩きつけられるこっち。
 なんとか頭は守ったものの、全身をまんべんなく貫く衝撃に、一瞬意識が飛びかける。
 が、意地で意識を引っ張り戻し、すぐに横へと飛ぶ。それと同時に、顔からほんの少しのところを唸りを上げながら巨大な拳が通過していった。
 その拳はコンクリート製の壁を砂糖菓子のように易々と砕き、突き刺さる。

「―――っ、はぁ、はぁ……ホントに、化け物だな………!」
「おいおい、化け物とはひでえじゃねえか。かるーく傷つくぜ?」

 その言葉とともにラ○ンの姿がかき消え―――背筋が粟立つのを感じ前へ転がるようにして飛び出すのとほぼ同時に、こっちのいた空間を高速の拳が撃ち抜いていった。

―――このスピードの上にこのパワー……ホンットに規格外だな!
―――でも、ノーリスクでこんなことが出来るはずがない。
―――必ず何かの制約か、弱点があるはずだ。
―――それさえ、見つけられれば………!

 考えを巡らす間にも、凄まじい速度で繰り出されるとんでもなく重い一撃一撃。
 こっちは一瞬の隙も作らないよう、摺り足でそれらを回避していく。

―――まともに喰らえばKO確実、見てから動いてたら間に合わない。

 全神経を集中させ、相手の足運びや視線などから動きを予測し―――最終的には勘を頼りに回避行動に移る。

―――避けきれないものは手足をフルに使って、出来る限り威力を軽減。

 空を切り裂いて繰り出された回し蹴りを、自分から後ろに飛びながら受け止める。蹴りの威力を受け流しつつ、吹き飛んだ勢いをローラーを床に叩きつけて殺し、更に追撃を避けるために牽制代わりにローラーを投げつけた。
 ローラーはすぐさま打ち返されるが……それも予想していたこと。その一瞬で可能な限り体勢を立て直し、次のラ○ンの一撃に備える。

「全く、本当に器用な嬢ちゃんだな。死なれてもアレだから手加減はしてるが、それでも俺様の攻撃をここまでかわせるんだから大したもんだ」
「……はぁっ、はぁっ……それは…はぁっ、どうも………!」

 それにしても、このままじゃあマズい。このままじゃあじわじわ押されて確実に逃げ切れなくなる。
 引き付けるだけでも一応役には立ってるんだろうけれど………ここで捕まったら、こっちも支配されてしまうだろう。恋愛したことなんてないから惚れたあとどうなるかは分からない。
 でも、操られないなんて幸運はないと思う。

―――だったら、ここで負けるわけにはいかない、か。

 そう考えながら、こっちは目の前の強大な敵と対峙した。



―――そうして、10分ほどが経過した。

 いつのまにか廊下に出て戦っていたこっちとラ○ン。
 そうなった理由は簡単だ……単純にこっちが押されて逃げているのだ。
 一応こっちも、精一杯頑張りはした。
 速射砲のように繰り出される拳と蹴りを紙一重でかわし、あるいは残った右腕で受け流し。
 明らかに遊ばれてこそいたものの、それは仕方のないことだと思う。漫画の中のキャラクター、しかもこんな相手に勝てるはずもない。
 そして、その瞬間は訪れた。
 長い戦いの中、一瞬途切れたこっちの集中。
 その刹那の隙をつき―――ラ○ンの拳がこっちのお腹を捉えた。

「―――っ、が……!?」

 肺の空気が全て絞り出され、骨が軋んで悲鳴を上げる。
 ギリギリとその拳はめり込んでいき、耐えきれなくなったところで身体が水平に飛んでいく。
 廊下がとんでもないスピードで視界を流れていき………ぼさっ、とこっちの身体は優しく受け止められた。

「うん、我ながらナイスクッションだ……って女装の嬢ちゃんじゃないか」
「………あれ? Hさんとザクロさんと……誰? あれ?」

 なぜかいたHさんやらザクロさんやらその他宴会で見た覚えがあったりなかったりする人やら、結構な数の人がいた。………いや、ホントになぜに?
 こっちの身体はHさんの髪の毛に包まれていた。これのお陰で衝撃が吸収されたのだろう。

「わたくし、あなたとは初対面だと思うのですが……というか、何で飛んで……?」

 あれHさんって支配されてなかったっけあれー? とハテナが飛び交っていたこっちの脳内だったが、ザクロさんの言葉ではっと我に帰る。
 ばっと素早く身を起こし、

「思い込んだらっ!」

 叫ぶと同時にローラーを降り下ろす。
 ガインッという音とともに受け止められたそれは、しかしラ○ンによる追撃を妨害するという役割を果たした。

「おっ……と。こいつぁ……ここは退かせてもらうぜ!」

 そう言い放つと、文字通り目にも止まらない速度で廊下を戻っていくラ○ン。

(なんだかよくわかんないけど、一応助かったのかな……?)

 そう思うとふっと身体から力が抜け―――倒れかけたところを、銀髪のお姉さんが支えてくれた。

「あ、ありがとうございます……」
「いやいや、可愛らしい女性に奉仕するのはボクの義務のようなものだからね。気にしないでくれたまえ」
「えと、こっちは………渚、です。一応、名前は」

 ……なんという男前。こういうセリフが自然に出てくるような大人になりたいものだ。
 生死と隣り合わせとほぼ言っていいだろう状況にあった緊張感から解放されたせいで、つい変なことを考えてしまう。

「ああ、この子は味方側だ。″お強い嬢ちゃんと戦りあって″《スパニッシュ・フライ》の能力が解けたって言ったろう? この嬢ちゃんがその子だよ」

 Hさんが説明をしてくれているらしい……左腕が痛んでいるうえ、かなり疲れている今はそれがとてもありがたい。
 改めて周りを見回す。周囲の人がどんな人たちかを確認するためだ。
 とても似た顔立ちの青年二人。片方は白衣を着て、もう片方はコーラのペットボトルを携えている。………なんだか見覚えがあるのは、気のせいじゃない。通ってる学校の先生だ。
 彼らのそばには白骨と人体模型が。さらには人形もいた。
 でっかい犬、裸エプロンの人、髪をわさわささせてる黒尽くめエトセトラ。
 そんな人たちを見て、ふと思ってしまった。

―――ここはどこの人外魔境なのか、と。

 そんなこんなでこっちは、目的を同じくする人たちと合流することに成功したのだった。




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