ドクター 20
21:10頃
「ネズミやらゴキブリやら、酷い有様だな」
「ある程度は引いたみたいですし、追跡を再開しましょう」
大量地獄状態だった廊下から教室に避難していた二人は、そっと扉を開けて廊下の様子を伺う
未だあちこちに小さな生き物がうろちょろしているが、大発生直後の惨事ほどではない
「しかし何だ、あの馬鹿者は生きているのだろうかね?」
ネズミやGを爪先でちょいちょいと蹴散らしながら、ぐるりと二階の廊下を見回す
「血のにおいはしてませんので、無事だとは思いますわ。階段には向かっていないようですので『十三階段』に引っ掛かったという事も無いでしょうし」
雑多なにおいが入り混じる中、残されたバイトちゃんのにおいを辿るザクロ
「バイトさんはこの階にいらっしゃいますわ。呼び掛けて応えてもらえればいいのですが」
「敵を呼び寄せる可能性も高いな」
「そんな面倒は掛けさせませんよ」
音も無く開いた調理室の扉
夜闇に沈む調理室を背に立つ、モップを手にしたメイド少女
妙に落ち着いたその様子に、ドクターとザクロは声を掛けるのを僅かに躊躇う
「ボクと出会ったら、悲鳴を上げて逃げるかと思ったのだが。存外落ち着いたものだな」
「逃げるわけにはいかなくなったもので、腹を括ったまでですよ」
バイトちゃんはそう言うと、モップの柄をずいとドクターに向ける
「ふむ、『スパニッシュフライ』の効果かね? 君が奴らに手を貸すとは」
「そうです、だから彼女達を守らなきゃいけない。一人も欠けさせちゃいけない。彼女を悲しませたくない」
あっさりと認めたバイトちゃん
ドクターは思わず苦笑を浮かべる
「話によると、君はその身体にされた事で、元に戻るためと怒りの矛先を向けるために単身乗り込んだはずなのだがね」
「『スパニッシュフライ』の影響か、彼女の感情も多少なりとも伝わってきています。彼女に、大事なものを失って欲しくない……俺みたいにさせたくない」
「ははは、救いようの無い馬鹿者だな君は」
ドクターはずかずかと調理室に踏み込む
「彼女とは『スパニッシュフライ』の契約者かね? 本当に彼女らの安全を望むのならば何故止めてやらない。事が大きくなればなるほど、戦いが続けば続くほど。そしてマッドガッサーの目的が完遂されてしまえば」
ドクターの顔から、笑みが消える
「奴らはこの世界……都市伝説と人間が隣り合わせにいられる黄昏の世界の敵となるのだぞ?」
「それでも、彼女が望むなら」
「望むなら、破滅へ向かうその背を押してやれるというのか。度し難い馬鹿者だな君は」
その言葉に、バイトちゃんは躊躇う事なくモップの柄をドクター目掛けて突き込んだ
間違いなく身体の中心を打ち抜きホルマリンプールへと沈めるはずだったその一撃は、あっさりと空を切る
動きに反応して跳んだザクロが、ドクターの襟首を加えて後方へと引き倒したのだ
「連れて帰ろうというのに挑発してどうするのですか」
呆れた声を漏らすザクロに、ドクターは襟元を正しながら立ち上がる
「馬鹿者に馬鹿者と言って何が悪い」
悪びれた様子もなくバイトちゃんを睨み据えるドクター
「悪いが、あれを叩きのめしてもらえるか? なに、死なせなければボクが手当てをしておく」
「そう言われましても……相手が本気だと手加減は大変ですわ」
息を潜め夜闇の中で向かい合うバイトちゃんとザクロ
ドクターはその拮抗を崩し状況を好転させるべく、何をするべきか考えを巡らせていた
「ある程度は引いたみたいですし、追跡を再開しましょう」
大量地獄状態だった廊下から教室に避難していた二人は、そっと扉を開けて廊下の様子を伺う
未だあちこちに小さな生き物がうろちょろしているが、大発生直後の惨事ほどではない
「しかし何だ、あの馬鹿者は生きているのだろうかね?」
ネズミやGを爪先でちょいちょいと蹴散らしながら、ぐるりと二階の廊下を見回す
「血のにおいはしてませんので、無事だとは思いますわ。階段には向かっていないようですので『十三階段』に引っ掛かったという事も無いでしょうし」
雑多なにおいが入り混じる中、残されたバイトちゃんのにおいを辿るザクロ
「バイトさんはこの階にいらっしゃいますわ。呼び掛けて応えてもらえればいいのですが」
「敵を呼び寄せる可能性も高いな」
「そんな面倒は掛けさせませんよ」
音も無く開いた調理室の扉
夜闇に沈む調理室を背に立つ、モップを手にしたメイド少女
妙に落ち着いたその様子に、ドクターとザクロは声を掛けるのを僅かに躊躇う
「ボクと出会ったら、悲鳴を上げて逃げるかと思ったのだが。存外落ち着いたものだな」
「逃げるわけにはいかなくなったもので、腹を括ったまでですよ」
バイトちゃんはそう言うと、モップの柄をずいとドクターに向ける
「ふむ、『スパニッシュフライ』の効果かね? 君が奴らに手を貸すとは」
「そうです、だから彼女達を守らなきゃいけない。一人も欠けさせちゃいけない。彼女を悲しませたくない」
あっさりと認めたバイトちゃん
ドクターは思わず苦笑を浮かべる
「話によると、君はその身体にされた事で、元に戻るためと怒りの矛先を向けるために単身乗り込んだはずなのだがね」
「『スパニッシュフライ』の影響か、彼女の感情も多少なりとも伝わってきています。彼女に、大事なものを失って欲しくない……俺みたいにさせたくない」
「ははは、救いようの無い馬鹿者だな君は」
ドクターはずかずかと調理室に踏み込む
「彼女とは『スパニッシュフライ』の契約者かね? 本当に彼女らの安全を望むのならば何故止めてやらない。事が大きくなればなるほど、戦いが続けば続くほど。そしてマッドガッサーの目的が完遂されてしまえば」
ドクターの顔から、笑みが消える
「奴らはこの世界……都市伝説と人間が隣り合わせにいられる黄昏の世界の敵となるのだぞ?」
「それでも、彼女が望むなら」
「望むなら、破滅へ向かうその背を押してやれるというのか。度し難い馬鹿者だな君は」
その言葉に、バイトちゃんは躊躇う事なくモップの柄をドクター目掛けて突き込んだ
間違いなく身体の中心を打ち抜きホルマリンプールへと沈めるはずだったその一撃は、あっさりと空を切る
動きに反応して跳んだザクロが、ドクターの襟首を加えて後方へと引き倒したのだ
「連れて帰ろうというのに挑発してどうするのですか」
呆れた声を漏らすザクロに、ドクターは襟元を正しながら立ち上がる
「馬鹿者に馬鹿者と言って何が悪い」
悪びれた様子もなくバイトちゃんを睨み据えるドクター
「悪いが、あれを叩きのめしてもらえるか? なに、死なせなければボクが手当てをしておく」
「そう言われましても……相手が本気だと手加減は大変ですわ」
息を潜め夜闇の中で向かい合うバイトちゃんとザクロ
ドクターはその拮抗を崩し状況を好転させるべく、何をするべきか考えを巡らせていた