「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦編-16a

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○月×日 23:00 視聴覚室横階段前


 ---だんっ!と
 半ばスロープ状になった階段を飛び越える勢いで、一階から何者かが飛び出してきた
 それは、一人の少女と、少女を抱えた少年の計三人を抱えた、見事な爆乳の女性で
 彼女達の後を追うように足音がばたばたと響き、数人の人影が登ってくる
 「日焼けマシン」の契約者、はないちもんめの少女、それに黒服Dと…若干、ギリギリ目の服装をしている、ドクター
 集団の中にドクターの姿を見て、「13階段」は小さく舌打ちした
 目の前に現れられると、自分の「13階段」の能力から脱出されたのだと言う事を改めて実感してしまう
 …しかし、ここまでの人数に集まられるとは…

「………」

 ポケットに突っ込んでいたそれに触れる
 いざとなれば、これを使う必要もあるかもしれない
 できれば、使わないに越したことはないが…

「……や、タツ、ヤ」

 ついつい、と
 「爆発する携帯電話」に服を引かれ、正気に戻る
 心配そうに見詰めてきている「爆発する携帯電話」に、大丈夫、と声をかけてやった

「大丈夫だ…これ以上、お前を危ない目にあわせないから…」
「………辰哉、も……やめ、よう?」

 ぴくり
 名前を呼ばれ、思わず体が跳ねる

「…戦うの、やめよう?……他にも…皆で一緒にいられる手段は、きっと…ある、から…」
「う……」

 じ、と
 真っ直ぐに見詰められ、心がぐらつく
 …だが、駄目だ
 他にも、手段はある
 自分だって、そう思いたい
 だが

「他の手段が見つからないから、今、こうやってるんだろ?」
「くけ………で、でも…」
「なぁ、兄ちゃん。静かに暮らしたいだけだったら、こんな事しなくたって、他に色々と手段があるはずだろ!?」

 人肉料理店の契約者が、「爆発する携帯電話」を援護するようにそう言った
 しかし、「13階段」は被りを振る

「…こそこそ、隠れて暮らせば少しは静かに暮らせるかもしれねぇが。そうしたって、いつかどこかの組織に見付かる。こそこそ隠れて暮らすのも御免だしな」
「ならば、君達が新しい独立した組織にでもなって、他の組織に干渉されたくない、と言う立場を取って見れば同化ね?」

 ドクターが一歩、前に出た
 …そのギリギリな服装のせいか、「爆発する携帯電話」が目のやりどころに困るように視線を落としている

「そうすれば、少なくとも「第三帝国」としては、不干渉の立場を…」
「「第三帝国」なんて、マリを狙ってる組織の筆頭じゃねぇかよ!信じられるか!!」
「……む。南極支部の総統閣下も、余計な事を…」

 何か言っているが…研究者なんざ、信じられない
 自分にあれこれと実験してきたのも、マリを酷い目にあわせたのも、マッドガッサーを狙うのも、みんな研究者連中ばかりではないか
 そんな奴など、信用できない

 ---ポケットの中のそれを、握り緊める
 やはり、ここはこれを使って切り抜けるしか…

「ッ待ってください。広瀬さん」
「----っ」

 黒服Dが、ドクターを押しのけるようにして、前に出た
 その口から発せられた名前に…「13階段」は、はっきりとした動揺を見せた

「広瀬?」
「……『広瀬 辰哉』。それが、あいつの名前だよ」

 首を傾げた女装少年に、黒服Hがそう告げた


 広瀬 辰哉
 それが、「13階段」の本名だ
 いや、厳密には、これもまた本名と言っていいのかどうかわからない
 彼の両親が彼につけたはずの本名は永遠に失われてしまっていて…この名前は、黒服Hが「13階段」につけた名前なのだから
 それを、「13階段」が、ずっと使い続けていた
 …だから、今現在、その「広瀬 辰哉」は「13階段」の本名なのだ


 何故、あのお人好しの黒服がその名前を知っている?
 しっかりと考えれば、「13階段」が「組織」に所属していた頃の記録なり何なりを調べたのだろう、と検討はついたはずだ
 「13階段」は、「広瀬 辰哉」と言う名前を得て以来、任務の時はずっとその名前を使い続けているのだから
 しかし、突然予期しない相手から名前を呼ばれた事で、その考えに到達できなかった

「彼女の言う事も、もっともです。あなた方が独立した組織となれば…他の組織が手を出しにくくなる状態を作り上げる事が可能です」
「っそう簡単に、一個の組織として認められるなんて、できるかよ…!」

 何分、自分達はそんなに大人数で集まっている訳ではない
 八人と二匹で、細々と集まっている集団だ
 それが、そう簡単に一個の組織として認められるなんて…

「…「首塚」は、認めるぞ。「組織」に狙われてる奴がお前達の中にいれば、尚更だ」

 ぽつり
 そう口にしたのは、「日焼けマシン」の契約者だ
 それに、妹ちゃんが続く

「「怪奇同盟」としましても、学校町で騒ぎを起こさないのであれば、その存在を認める事ができると思います……まぁ、今回の騒ぎの被害者の方のアフターケアをしっかりしていただければ、と言う条件も加わるでしょうが」
「「第三帝国」としても、それは同じ考えだよ」
「…………」

 …その言葉を
 信じろとでも、言うのか?
 信じる事ができる保証など、どこにある?
 口先だけの約束なんざ、いくらでもできる
 そんなもの、信用できるとでも思っているのか?

「…マッドガッサーやマリがいるんだ。そう簡単に認められるとは、思えねぇがな」

 そうだ
 あの二人も、そんな事を言っていた
 罪を重ねすぎている自分達の存在が、他の組織に…特に、人間に友好的な組織に認められるはずがない、と

 …人殺しの罪
 それは、自分にだって、ある
 自分だって、「組織」に所属していた十数年間、相当な数を殺している
 「爆発する携帯電話」のような、自己防衛の為だけではなく、仕事として、何人も何人も何人も何人も
 都市伝説と関係の全くない人間すらも、自分は殺してきたのだ
 ……そんな自分が、認められるはずもない

 自分達が許されるとは、到底思えないのだ

「俺達を組織として認めるって事は…俺達の存在を認める、って事は、人殺しを野放しにしてるのと、同じような状態になるぜ?」
「--っ、辰哉」

 ぎゅう、と「爆発する携帯電話」が、強く服を握り緊めてきた
 …お前は、そうじゃないけどな、と軽く頭を撫でてやる
 そうだ、こいつは違う
 こいつや、似非関西弁やスパニッシュフライ契約者、それに魔女の一撃の契約者は違う
 でも、自分や、マリやマッドは…

「で、でも!」

 声をあげたのは、女装少年
 じっと、真っ直ぐに「13階段」達を見詰めて、告げる

「あなた達が、組織として認められて…他の組織が、手を出さないなら。あなた達は…もうこれ以上、何の関係のない人達を、殺したりしないでしょう?」
「…まぁ、マリは別に人間食わなきゃ死ぬって訳でもないけど。だが、俺達がそうすると宣言したとして、お前たちは信じるってのかよ?」

 …信じなど、しない癖に
 人食いをやめようとしたマリは、信じてもらえずに「悪」の烙印を押され続けた
 人を殺す毒ガスを使えなくなったマッドガッサーは、それを信じてもらえずに危険対象として何度も殺されかけた
 どんなに訴えても、誰にも信じてもらえなかった
 二人とも、そう言っていた

 口先だけの言葉など、やはり信じられないのだ
 …あの髪の伸びる黒服の教え通り、というのが若干腹が立つが


「---信じます」


 真っ先に
 そう口を開いたのは…腹が立つ事に、あのお人好しの黒服だった

「ちょっと、黒服…」
「他の誰もが、あなた方を信じなかったとしても。私は、信じます」

 はないちもんめの少女がやや渋い顔をしたが、黒服Dは「13階段」と「爆発する携帯電話」を見詰め、静かにそう告げた
 …あぁ、噂通りのお人好しめ
 そんなんだから、髪の伸びる黒服に騙され続けてるんだぞ?

「俺も、信じる。携帯のにーちゃんが信じた仲間なら、俺も信じる」

 人肉料理店の契約者も、そう告げてきた

「僕も、信じます」

 女装少年も、続く

 ---あぁ、畜生
 そんな目で、見るな
 自分が意地を張っているのが、バカらしくなってくるじゃねぇか
 そんな口約束など、信じられないと意地を張っている、この状態が

 …自然と、髪の伸びる黒服に視線がいった
 あの野郎、笑ってやがる
 こっちがどこまで意地をはれるのか、見ていやがる
 相変わらず、腹の立つ

「…辰哉」

 「爆発する携帯電話」に、また名前を呼ばれた
 ぼそぼそと…だが、ゆっくりと、続けてくる

「…信じ、よう?…俺達、も。こちらから、信じないと…信じて、もらえない…」

 ……あぁ
 頼むから、そんな顔をしないでくれ
 そんな、泣きそうな顔をしないでくれ

「--ったく」

 ……こいつに、こんな顔されたら
 俺は、折れるしかないだろうが

「仕方ねぇ……今だけ、信じてやる」

 投げやりに、そう言って
 「13階段」は……学校中に張っていた己の能力を、解除した










○月×日 23:05 「13階段」解除





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