○月×日 23:00 視聴覚室横階段前
---だんっ!と
半ばスロープ状になった階段を飛び越える勢いで、一階から何者かが飛び出してきた
それは、一人の少女と、少女を抱えた少年の計三人を抱えた、見事な爆乳の女性で
彼女達の後を追うように足音がばたばたと響き、数人の人影が登ってくる
「日焼けマシン」の契約者、はないちもんめの少女、それに黒服Dと…若干、ギリギリ目の服装をしている、ドクター
集団の中にドクターの姿を見て、「13階段」は小さく舌打ちした
目の前に現れられると、自分の「13階段」の能力から脱出されたのだと言う事を改めて実感してしまう
…しかし、ここまでの人数に集まられるとは…
半ばスロープ状になった階段を飛び越える勢いで、一階から何者かが飛び出してきた
それは、一人の少女と、少女を抱えた少年の計三人を抱えた、見事な爆乳の女性で
彼女達の後を追うように足音がばたばたと響き、数人の人影が登ってくる
「日焼けマシン」の契約者、はないちもんめの少女、それに黒服Dと…若干、ギリギリ目の服装をしている、ドクター
集団の中にドクターの姿を見て、「13階段」は小さく舌打ちした
目の前に現れられると、自分の「13階段」の能力から脱出されたのだと言う事を改めて実感してしまう
…しかし、ここまでの人数に集まられるとは…
「………」
ポケットに突っ込んでいたそれに触れる
いざとなれば、これを使う必要もあるかもしれない
できれば、使わないに越したことはないが…
いざとなれば、これを使う必要もあるかもしれない
できれば、使わないに越したことはないが…
「……や、タツ、ヤ」
ついつい、と
「爆発する携帯電話」に服を引かれ、正気に戻る
心配そうに見詰めてきている「爆発する携帯電話」に、大丈夫、と声をかけてやった
「爆発する携帯電話」に服を引かれ、正気に戻る
心配そうに見詰めてきている「爆発する携帯電話」に、大丈夫、と声をかけてやった
「大丈夫だ…これ以上、お前を危ない目にあわせないから…」
「………辰哉、も……やめ、よう?」
「………辰哉、も……やめ、よう?」
ぴくり
名前を呼ばれ、思わず体が跳ねる
名前を呼ばれ、思わず体が跳ねる
「…戦うの、やめよう?……他にも…皆で一緒にいられる手段は、きっと…ある、から…」
「う……」
「う……」
じ、と
真っ直ぐに見詰められ、心がぐらつく
…だが、駄目だ
他にも、手段はある
自分だって、そう思いたい
だが
真っ直ぐに見詰められ、心がぐらつく
…だが、駄目だ
他にも、手段はある
自分だって、そう思いたい
だが
「他の手段が見つからないから、今、こうやってるんだろ?」
「くけ………で、でも…」
「なぁ、兄ちゃん。静かに暮らしたいだけだったら、こんな事しなくたって、他に色々と手段があるはずだろ!?」
「くけ………で、でも…」
「なぁ、兄ちゃん。静かに暮らしたいだけだったら、こんな事しなくたって、他に色々と手段があるはずだろ!?」
人肉料理店の契約者が、「爆発する携帯電話」を援護するようにそう言った
しかし、「13階段」は被りを振る
しかし、「13階段」は被りを振る
「…こそこそ、隠れて暮らせば少しは静かに暮らせるかもしれねぇが。そうしたって、いつかどこかの組織に見付かる。こそこそ隠れて暮らすのも御免だしな」
「ならば、君達が新しい独立した組織にでもなって、他の組織に干渉されたくない、と言う立場を取って見れば同化ね?」
「ならば、君達が新しい独立した組織にでもなって、他の組織に干渉されたくない、と言う立場を取って見れば同化ね?」
ドクターが一歩、前に出た
…そのギリギリな服装のせいか、「爆発する携帯電話」が目のやりどころに困るように視線を落としている
…そのギリギリな服装のせいか、「爆発する携帯電話」が目のやりどころに困るように視線を落としている
「そうすれば、少なくとも「第三帝国」としては、不干渉の立場を…」
「「第三帝国」なんて、マリを狙ってる組織の筆頭じゃねぇかよ!信じられるか!!」
「……む。南極支部の総統閣下も、余計な事を…」
「「第三帝国」なんて、マリを狙ってる組織の筆頭じゃねぇかよ!信じられるか!!」
「……む。南極支部の総統閣下も、余計な事を…」
何か言っているが…研究者なんざ、信じられない
自分にあれこれと実験してきたのも、マリを酷い目にあわせたのも、マッドガッサーを狙うのも、みんな研究者連中ばかりではないか
そんな奴など、信用できない
自分にあれこれと実験してきたのも、マリを酷い目にあわせたのも、マッドガッサーを狙うのも、みんな研究者連中ばかりではないか
そんな奴など、信用できない
---ポケットの中のそれを、握り緊める
やはり、ここはこれを使って切り抜けるしか…
やはり、ここはこれを使って切り抜けるしか…
「ッ待ってください。広瀬さん」
「----っ」
「----っ」
黒服Dが、ドクターを押しのけるようにして、前に出た
その口から発せられた名前に…「13階段」は、はっきりとした動揺を見せた
その口から発せられた名前に…「13階段」は、はっきりとした動揺を見せた
「広瀬?」
「……『広瀬 辰哉』。それが、あいつの名前だよ」
「……『広瀬 辰哉』。それが、あいつの名前だよ」
首を傾げた女装少年に、黒服Hがそう告げた
広瀬 辰哉
それが、「13階段」の本名だ
いや、厳密には、これもまた本名と言っていいのかどうかわからない
彼の両親が彼につけたはずの本名は永遠に失われてしまっていて…この名前は、黒服Hが「13階段」につけた名前なのだから
それを、「13階段」が、ずっと使い続けていた
…だから、今現在、その「広瀬 辰哉」は「13階段」の本名なのだ
それが、「13階段」の本名だ
いや、厳密には、これもまた本名と言っていいのかどうかわからない
彼の両親が彼につけたはずの本名は永遠に失われてしまっていて…この名前は、黒服Hが「13階段」につけた名前なのだから
それを、「13階段」が、ずっと使い続けていた
…だから、今現在、その「広瀬 辰哉」は「13階段」の本名なのだ
何故、あのお人好しの黒服がその名前を知っている?
しっかりと考えれば、「13階段」が「組織」に所属していた頃の記録なり何なりを調べたのだろう、と検討はついたはずだ
「13階段」は、「広瀬 辰哉」と言う名前を得て以来、任務の時はずっとその名前を使い続けているのだから
しかし、突然予期しない相手から名前を呼ばれた事で、その考えに到達できなかった
しっかりと考えれば、「13階段」が「組織」に所属していた頃の記録なり何なりを調べたのだろう、と検討はついたはずだ
「13階段」は、「広瀬 辰哉」と言う名前を得て以来、任務の時はずっとその名前を使い続けているのだから
しかし、突然予期しない相手から名前を呼ばれた事で、その考えに到達できなかった
「彼女の言う事も、もっともです。あなた方が独立した組織となれば…他の組織が手を出しにくくなる状態を作り上げる事が可能です」
「っそう簡単に、一個の組織として認められるなんて、できるかよ…!」
「っそう簡単に、一個の組織として認められるなんて、できるかよ…!」
何分、自分達はそんなに大人数で集まっている訳ではない
八人と二匹で、細々と集まっている集団だ
それが、そう簡単に一個の組織として認められるなんて…
八人と二匹で、細々と集まっている集団だ
それが、そう簡単に一個の組織として認められるなんて…
「…「首塚」は、認めるぞ。「組織」に狙われてる奴がお前達の中にいれば、尚更だ」
ぽつり
そう口にしたのは、「日焼けマシン」の契約者だ
それに、妹ちゃんが続く
そう口にしたのは、「日焼けマシン」の契約者だ
それに、妹ちゃんが続く
「「怪奇同盟」としましても、学校町で騒ぎを起こさないのであれば、その存在を認める事ができると思います……まぁ、今回の騒ぎの被害者の方のアフターケアをしっかりしていただければ、と言う条件も加わるでしょうが」
「「第三帝国」としても、それは同じ考えだよ」
「…………」
「「第三帝国」としても、それは同じ考えだよ」
「…………」
…その言葉を
信じろとでも、言うのか?
信じる事ができる保証など、どこにある?
口先だけの約束なんざ、いくらでもできる
そんなもの、信用できるとでも思っているのか?
信じろとでも、言うのか?
信じる事ができる保証など、どこにある?
口先だけの約束なんざ、いくらでもできる
そんなもの、信用できるとでも思っているのか?
「…マッドガッサーやマリがいるんだ。そう簡単に認められるとは、思えねぇがな」
そうだ
あの二人も、そんな事を言っていた
罪を重ねすぎている自分達の存在が、他の組織に…特に、人間に友好的な組織に認められるはずがない、と
あの二人も、そんな事を言っていた
罪を重ねすぎている自分達の存在が、他の組織に…特に、人間に友好的な組織に認められるはずがない、と
…人殺しの罪
それは、自分にだって、ある
自分だって、「組織」に所属していた十数年間、相当な数を殺している
「爆発する携帯電話」のような、自己防衛の為だけではなく、仕事として、何人も何人も何人も何人も
都市伝説と関係の全くない人間すらも、自分は殺してきたのだ
……そんな自分が、認められるはずもない
それは、自分にだって、ある
自分だって、「組織」に所属していた十数年間、相当な数を殺している
「爆発する携帯電話」のような、自己防衛の為だけではなく、仕事として、何人も何人も何人も何人も
都市伝説と関係の全くない人間すらも、自分は殺してきたのだ
……そんな自分が、認められるはずもない
自分達が許されるとは、到底思えないのだ
「俺達を組織として認めるって事は…俺達の存在を認める、って事は、人殺しを野放しにしてるのと、同じような状態になるぜ?」
「--っ、辰哉」
「--っ、辰哉」
ぎゅう、と「爆発する携帯電話」が、強く服を握り緊めてきた
…お前は、そうじゃないけどな、と軽く頭を撫でてやる
そうだ、こいつは違う
こいつや、似非関西弁やスパニッシュフライ契約者、それに魔女の一撃の契約者は違う
でも、自分や、マリやマッドは…
…お前は、そうじゃないけどな、と軽く頭を撫でてやる
そうだ、こいつは違う
こいつや、似非関西弁やスパニッシュフライ契約者、それに魔女の一撃の契約者は違う
でも、自分や、マリやマッドは…
「で、でも!」
声をあげたのは、女装少年
じっと、真っ直ぐに「13階段」達を見詰めて、告げる
じっと、真っ直ぐに「13階段」達を見詰めて、告げる
「あなた達が、組織として認められて…他の組織が、手を出さないなら。あなた達は…もうこれ以上、何の関係のない人達を、殺したりしないでしょう?」
「…まぁ、マリは別に人間食わなきゃ死ぬって訳でもないけど。だが、俺達がそうすると宣言したとして、お前たちは信じるってのかよ?」
「…まぁ、マリは別に人間食わなきゃ死ぬって訳でもないけど。だが、俺達がそうすると宣言したとして、お前たちは信じるってのかよ?」
…信じなど、しない癖に
人食いをやめようとしたマリは、信じてもらえずに「悪」の烙印を押され続けた
人を殺す毒ガスを使えなくなったマッドガッサーは、それを信じてもらえずに危険対象として何度も殺されかけた
どんなに訴えても、誰にも信じてもらえなかった
二人とも、そう言っていた
人食いをやめようとしたマリは、信じてもらえずに「悪」の烙印を押され続けた
人を殺す毒ガスを使えなくなったマッドガッサーは、それを信じてもらえずに危険対象として何度も殺されかけた
どんなに訴えても、誰にも信じてもらえなかった
二人とも、そう言っていた
口先だけの言葉など、やはり信じられないのだ
…あの髪の伸びる黒服の教え通り、というのが若干腹が立つが
…あの髪の伸びる黒服の教え通り、というのが若干腹が立つが
「---信じます」
真っ先に
そう口を開いたのは…腹が立つ事に、あのお人好しの黒服だった
そう口を開いたのは…腹が立つ事に、あのお人好しの黒服だった
「ちょっと、黒服…」
「他の誰もが、あなた方を信じなかったとしても。私は、信じます」
「他の誰もが、あなた方を信じなかったとしても。私は、信じます」
はないちもんめの少女がやや渋い顔をしたが、黒服Dは「13階段」と「爆発する携帯電話」を見詰め、静かにそう告げた
…あぁ、噂通りのお人好しめ
そんなんだから、髪の伸びる黒服に騙され続けてるんだぞ?
…あぁ、噂通りのお人好しめ
そんなんだから、髪の伸びる黒服に騙され続けてるんだぞ?
「俺も、信じる。携帯のにーちゃんが信じた仲間なら、俺も信じる」
人肉料理店の契約者も、そう告げてきた
「僕も、信じます」
女装少年も、続く
---あぁ、畜生
そんな目で、見るな
自分が意地を張っているのが、バカらしくなってくるじゃねぇか
そんな口約束など、信じられないと意地を張っている、この状態が
そんな目で、見るな
自分が意地を張っているのが、バカらしくなってくるじゃねぇか
そんな口約束など、信じられないと意地を張っている、この状態が
…自然と、髪の伸びる黒服に視線がいった
あの野郎、笑ってやがる
こっちがどこまで意地をはれるのか、見ていやがる
相変わらず、腹の立つ
あの野郎、笑ってやがる
こっちがどこまで意地をはれるのか、見ていやがる
相変わらず、腹の立つ
「…辰哉」
「爆発する携帯電話」に、また名前を呼ばれた
ぼそぼそと…だが、ゆっくりと、続けてくる
ぼそぼそと…だが、ゆっくりと、続けてくる
「…信じ、よう?…俺達、も。こちらから、信じないと…信じて、もらえない…」
……あぁ
頼むから、そんな顔をしないでくれ
そんな、泣きそうな顔をしないでくれ
頼むから、そんな顔をしないでくれ
そんな、泣きそうな顔をしないでくれ
「--ったく」
……こいつに、こんな顔されたら
俺は、折れるしかないだろうが
俺は、折れるしかないだろうが
「仕方ねぇ……今だけ、信じてやる」
投げやりに、そう言って
「13階段」は……学校中に張っていた己の能力を、解除した
「13階段」は……学校中に張っていた己の能力を、解除した
○月×日 23:05 「13階段」解除