新年も開けて数時間、日も未だに出ていない頃、Tさんたち一行は北区の神社へと向かっていた。
「さみぃー……」
「まあ冬だからな」
うー、と唸りながら少女は隣を歩く青年にカイロでもねだるように言う。
「Tさーん、簡易結界ー」
「我慢だ。頼るようになったら情緒もなにもないだろう」
「お兄ちゃんのいうとおりなの」
青年の言に賛同するようなリカちゃんが少女のコートの中で、周囲にまだらにいる人間に聞こえないよう抑えた声音で言った。
少女は自らのコートの中、(挟まれる程大きさのない)胸のあたりに腰かけ、コートの裏地を掴んでいる(掴まなければずり落ちる)リカちゃんをコートの上からむんずと握り、心持ち低い声で、
「……リカちゃん、俺の頭に移動するか?」
「いやなの」
リカちゃんはコートの中でコートを必死に掴んで抗っている。中はさぞや居心地が良い温度であることだろう。
「くそう、……リカちゃんってそういや感覚あるんだよな。……人形なのに」
「まあよくあることだな」
「なの」
「そう……なのか?」
ため息交じりの少女と苦笑の青年はややあって神社にたどり着く。
少女はコートのポケットをまさぐりいくつか小銭を取り出すと、
「ほら、リカちゃんもお金、後で一緒に賽銭放り投げような」
コートの胸元からリカちゃんへと小銭を渡す。
「このおかねをなげるの?」
「そうだ。そして神様にお願いをする」
リカちゃんの質問に答える青年に少女が茶化すように笑いながら言う。
「煩悩を祓った後に間髪いれずに神様に要求を叩きつける辺りなかなかいい根性してる国だよな。日本」
「煩悩を祓った清浄な頭で願うからいいんだろう」
青年が答えるとリカちゃんが問いかける。
「ぼんのー、はらったの?」
「どこかの誰かがな」
「そこら辺も適当だよなー」
確かに。と笑いながら歩を進め、境内を入った正面。賽銭箱の前に立つ。
「これにおかねをいれるの?」
「そうそう」
少女はそう言いながらコートの前を少し開ける。後ろに居る人間に動く人形、リカちゃんを見られるわけにはいかないためリカちゃんはコートの隙間から賽銭を投げるのだ。
賽銭を放り投げ、鈴を鳴らし、三人共無言で祈る。
しばらくそうして――
「さ、行くか」
青年が告げ、
「おーう、帰って寝るかー」
そう答えた少女の声で彼女らの初詣の祈りは終わった。
「さみぃー……」
「まあ冬だからな」
うー、と唸りながら少女は隣を歩く青年にカイロでもねだるように言う。
「Tさーん、簡易結界ー」
「我慢だ。頼るようになったら情緒もなにもないだろう」
「お兄ちゃんのいうとおりなの」
青年の言に賛同するようなリカちゃんが少女のコートの中で、周囲にまだらにいる人間に聞こえないよう抑えた声音で言った。
少女は自らのコートの中、(挟まれる程大きさのない)胸のあたりに腰かけ、コートの裏地を掴んでいる(掴まなければずり落ちる)リカちゃんをコートの上からむんずと握り、心持ち低い声で、
「……リカちゃん、俺の頭に移動するか?」
「いやなの」
リカちゃんはコートの中でコートを必死に掴んで抗っている。中はさぞや居心地が良い温度であることだろう。
「くそう、……リカちゃんってそういや感覚あるんだよな。……人形なのに」
「まあよくあることだな」
「なの」
「そう……なのか?」
ため息交じりの少女と苦笑の青年はややあって神社にたどり着く。
少女はコートのポケットをまさぐりいくつか小銭を取り出すと、
「ほら、リカちゃんもお金、後で一緒に賽銭放り投げような」
コートの胸元からリカちゃんへと小銭を渡す。
「このおかねをなげるの?」
「そうだ。そして神様にお願いをする」
リカちゃんの質問に答える青年に少女が茶化すように笑いながら言う。
「煩悩を祓った後に間髪いれずに神様に要求を叩きつける辺りなかなかいい根性してる国だよな。日本」
「煩悩を祓った清浄な頭で願うからいいんだろう」
青年が答えるとリカちゃんが問いかける。
「ぼんのー、はらったの?」
「どこかの誰かがな」
「そこら辺も適当だよなー」
確かに。と笑いながら歩を進め、境内を入った正面。賽銭箱の前に立つ。
「これにおかねをいれるの?」
「そうそう」
少女はそう言いながらコートの前を少し開ける。後ろに居る人間に動く人形、リカちゃんを見られるわけにはいかないためリカちゃんはコートの隙間から賽銭を投げるのだ。
賽銭を放り投げ、鈴を鳴らし、三人共無言で祈る。
しばらくそうして――
「さ、行くか」
青年が告げ、
「おーう、帰って寝るかー」
そう答えた少女の声で彼女らの初詣の祈りは終わった。
帰り道、境内を見回すと巫女がおみくじを売っていたり、
「あ、甘酒だぜ!」
甘酒や神酒が配られていた。青年も振舞われているそれらを見て、
「寒いし、頂こうか」
「おう」
少女は甘酒を、青年は神酒を飲みながら人が居ないところに移動する。少女は周囲を確認しながらコートのリカちゃんをのぞかせ、三人で喋る。
「去年もいろいろあったよなー」
しみじみとした声に青年もこの一年で起こり、関わった事件のことでも考えているのだろう。幾分感慨深そうに頷いている。
「まったくだ」
「リカちゃん、きょねんうまれたの」
リカちゃんが言うのへ少女と青年が、ああ、と答え。
「そーいやそうだな」
「見る物全てが珍しかっただろう」
「うん!」
楽しそうに頷くリカちゃんに自然と少女の顔がほころぶ。
「リカちゃんはさっき何を祈ったんだ?」
そのまま何気なく問うと、これもまた弾んだ声で返答が来る。
「えっとね、たのしくなりますようにっていのったの!」
「おお、そいつはいいや。俺も楽しく一年過ごしたいな」
「お姉ちゃんはなにをいのったの?」
質問を返された。少女は、んー? と言って言葉を作る間を取り、
「俺は皆で一緒にいられりゃあ飽きなくていいなーって思ったからそいつを神様に祈っといたぜ」
「みんないっしょ、さんせいなの!」
「だよなー。――Tさんは何を祈ったんだ?」
リカちゃんと共に頷いた少女の言葉に二杯目の神酒を飲んでいた青年は振り向き、ん、と頷き、
「皆が健勝であればいいと祈った」
「けん……しょー?」
「けんしょ……?」
「リカちゃんはともかく契約者は知っておこうか」
言葉の意味が分からず首をかしげる二人に、呆れたようなため息を青年が吐く。
「た、たまたま忘れてただけだって」
弁明する少女にどうだか、と言い、青年は言葉の意味を教える。
「健康で、元気であればいいと祈ったんだ」
その言葉に少女は、おー、と理解を示し、
「それなら俺はこのままでいりゃいいんだな!」
はつらつと言ったものだった。
「……ああ」
「へ?」
青年の肯定の声に一瞬少女は疑問を示し、しかし青年はそれらを無視して東の空を指さした。
「見ろ、初日の出だ」
「あ、――おお!」
「きれいなの!」
青年の声につられて見た東の空。そこにある街を照らしだしていく日の光に目を細めながら青年が言う。
「今年もよろしく頼む」
「おう! こっちこそよろしく!」
「おねがいします、なの」
三者がそれぞれ新年のあいさつを告げる中、街を照らしていく陽はだんだんと昇ってゆき、やがて境内に人が溢れ返ろうとしていた。
「あ、甘酒だぜ!」
甘酒や神酒が配られていた。青年も振舞われているそれらを見て、
「寒いし、頂こうか」
「おう」
少女は甘酒を、青年は神酒を飲みながら人が居ないところに移動する。少女は周囲を確認しながらコートのリカちゃんをのぞかせ、三人で喋る。
「去年もいろいろあったよなー」
しみじみとした声に青年もこの一年で起こり、関わった事件のことでも考えているのだろう。幾分感慨深そうに頷いている。
「まったくだ」
「リカちゃん、きょねんうまれたの」
リカちゃんが言うのへ少女と青年が、ああ、と答え。
「そーいやそうだな」
「見る物全てが珍しかっただろう」
「うん!」
楽しそうに頷くリカちゃんに自然と少女の顔がほころぶ。
「リカちゃんはさっき何を祈ったんだ?」
そのまま何気なく問うと、これもまた弾んだ声で返答が来る。
「えっとね、たのしくなりますようにっていのったの!」
「おお、そいつはいいや。俺も楽しく一年過ごしたいな」
「お姉ちゃんはなにをいのったの?」
質問を返された。少女は、んー? と言って言葉を作る間を取り、
「俺は皆で一緒にいられりゃあ飽きなくていいなーって思ったからそいつを神様に祈っといたぜ」
「みんないっしょ、さんせいなの!」
「だよなー。――Tさんは何を祈ったんだ?」
リカちゃんと共に頷いた少女の言葉に二杯目の神酒を飲んでいた青年は振り向き、ん、と頷き、
「皆が健勝であればいいと祈った」
「けん……しょー?」
「けんしょ……?」
「リカちゃんはともかく契約者は知っておこうか」
言葉の意味が分からず首をかしげる二人に、呆れたようなため息を青年が吐く。
「た、たまたま忘れてただけだって」
弁明する少女にどうだか、と言い、青年は言葉の意味を教える。
「健康で、元気であればいいと祈ったんだ」
その言葉に少女は、おー、と理解を示し、
「それなら俺はこのままでいりゃいいんだな!」
はつらつと言ったものだった。
「……ああ」
「へ?」
青年の肯定の声に一瞬少女は疑問を示し、しかし青年はそれらを無視して東の空を指さした。
「見ろ、初日の出だ」
「あ、――おお!」
「きれいなの!」
青年の声につられて見た東の空。そこにある街を照らしだしていく日の光に目を細めながら青年が言う。
「今年もよろしく頼む」
「おう! こっちこそよろしく!」
「おねがいします、なの」
三者がそれぞれ新年のあいさつを告げる中、街を照らしていく陽はだんだんと昇ってゆき、やがて境内に人が溢れ返ろうとしていた。
続・探す者に微妙に続く!