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連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-27

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匿名ユーザー

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新年あけましておめでとう~同居人達の初夢


 ―――暖かい。

 なんだかとろけてしまいそうな暖かさを感じながら、クイは目をさました。
 真っ暗な中。
 誰かに抱き締められている感覚だけがはっきりとしている。
 徐々に目が慣れてきて、クイを抱き締めているのが誰なのか知ることができた。

「………お兄、さん……?」

 呟くと、にこりと微笑む気配が伝わってきて、

「あ、クイちゃん……起きちゃった?」

 ぎゅ、と抱き締められ、頭を撫でられる。
 ………落ち着く。
 落ち着くし、気持ちもいいんだけど、問題なのはそこじゃなくて………、

「・・・なんで、裸?」

 そう。
 クイとお兄さんは今、裸で抱き合っている。
 いつもいっしょにお風呂に入ってるから、恥ずかしくないといえば恥ずかしくないんだけど…….

「なんでってクイちゃん、クイちゃんの方から誘ってきたんじゃない」
「・・・え……!?」

 た、確かにお兄さんのことは好きだけど、そんなことはしない………!
 そう心の中で反論するけど、

「―――むぐっ!?」

 柔らかいもので、口を塞がれた。
 目の前にはドアップのお兄さんの顔。
 …………え、これって………キス、してる!?

 置かれている状況を理解し、一気に顔が熱くなる。
 混乱する頭。
 思わず身体を離そうとするけれど、またもや抱き締められ、動きを封じられた。
 同時に唇をこじ開けてお兄さんの舌が入り込んでくる。

「~~~~~~っ!?」

 あげた叫びも声にならず、逆にクイ自身の舌を絡めとられただけだった。
 ぴちゃり、くちゃり、ぺちゃり。
 二人の舌と唾がエッチな音をたてる。
 好きな人に口内を貪られる、その感触。
 あまりに気持ちいいそれに、抵抗の意思は全部剥ぎ取られ―――、

「―――ぷはっ、はあ、はあ………」

 お兄さんの唇が離れると、二人の唇の間につつつ、と糸がひいた。

「クイちゃん、好きだよ………」

 耳元で囁かれ、なんともいえない快感に身体中がぞくりと震える。
 お兄さんはそのままクイの耳たぶを口に含み、少しずつ身体を下りてきた。
 首筋をなぞり、鎖骨に沿って舌を這わせ、そしてほんの少しだけ膨らんだ胸へ。
 そして―――



 ―――至福。

 今私が置かれている状況は、そうとしか形容できないものでした。
 日頃私たちが暮らしているリビングの中に、卑猥な雰囲気のぺちゃぺちゃという音が響いています。
 私は何も履いていない足を組み、企業の社長が座るようなクッションの効いた椅子に座っていました。
 部屋の中にいるのは私と少年の二人だけです。
 クイちゃんとメルヘンちゃんは出掛けているようで、姿が見えません。
 ………まあその方が都合がいいんですけどね、あの二人には少々刺激が強すぎますし。
 そう考えを巡らせながら、私は右の足を突き出します。

「むぐっ!? ……っ、げほ………」

 耐えきれないように咳き込む少年を、私は見下ろしていました。
 その女の子のような顔が歪むのを見るだけで頬が緩むのを自覚します。
 しかし、ここで止めたら面白くありません。

「あら、少年・・…・誰が口を離してもいいと言いましたか?」
「けほ………で、でもトバさん……」
「でももストもありません。私は"口を離してもいいと言ったか"と訊いたんですよ? それに、"トバさん"じゃあないでしょう。私のことは、"ご主人様"と呼びなさい」
「……は、はい………ご主人様」
「わかったのならいいんです。ほら、早く嘗めなさい」

 少年の目の前に足を差し出し、一言。
 う、と少年は躊躇いますが、足を揺らして催促すると、諦めたように私の足の指を口に含みました。
 暖かい感触が私の指を包み込みます。

「そうです、そう……ほらもっと舌を絡ませて・・・」
「んっ……んむ、はむ、むぐ……」

 教え込んだ通り、隅々まで舌を絡めながら順番に指を嘗めていく少年。
 その奥底に眠るM心を刺激されでもしたのか、少年の瞳は潤んだ上にとろんとしていて、頬は上気しています。
 ………私も、そろそろ我慢が辛いです、ね―――。

「―――少年」

 呼び掛けると、少年は顔を上げました。
 ちゅぱ、という音とともに、私の指と少年の唇との間に糸がひきます。
 その淫靡な光景に昂っていく乙女心という名の性欲に身を任せ、組んでいた足を開いて穿いていたスカートの中心を指差しました。

「足は、もう、いいですから。次は、ここを―――」

 言葉を聞いた少年の唇が、少しずつ足の甲、膝、腿へと遡っていき、そして―――





「―――あ、ひゃうぅっ!?」
「―――ん、ああっ!」

 新しい年の始まり、一月一日元旦の朝。
 トバさんとクイちゃんは、嬌声をあげながら同時に飛び起きました。
 もう外は明るくなっており、閉じられたカーテンの隙間から、日の光が差し込んできています。
 未だに幸せそうに寝ている《呪いのメルヘンカルタ》の契約者を挟んで、飛び起きた―――というか、夢のせいで飛び起こされた―――二人は、はあはあと荒げてしまっている呼吸を整えます。
 そして、部屋の中に響くのが、すーすーという静かな寝息だけになった頃。
 トバさんとクイちゃんは、どちらからともなく互いに目を合わせました。
 双方とも顔は上気して赤くなっており、うっすらとかいた汗とそれによって額に張り付いた髪の毛が色っぽい魅力を放っています。
 もしそこに男性が居合わせたなら―――極一部の例外を除いて―――その魅力に本能を掻き立てられたでしょうが、今この部屋にいるのは女性のみ。
 同姓のことは同姓が一番よくわかるということで、トバさんとクイちゃんは、互いに何があったのかを理解します。

「…………クイちゃん」
「・・・わかってる」

 互いに理解しているだけあって意思の疏通もまた素早く、あっという間に今見ていた夢のことには触れないという協定が酌み交わされました。
 トバさんはまだ布団にくるまったままの《呪いのメルヘンカルタの契約者》に目をやりますが、

「……まあ、妙な夢を見ているわけでもないようですし、寝かせておいてあげますか」

 呟くと、クイちゃんと一緒にリビングへと向かいます。
 二人が身を刺すような寒さを覚悟しながらドアを開けると、何故だかリビングは暖まっていました。
 それだけではなく、家の(一応の)主である女装少年こと小鳥遊渚の趣味によって選ばれたちゃぶ台の上にはおせちなどが並んでおり、見事に朝御飯の準備がされています。
 二人は少し悩み、現在この家の中において主婦(正確には主夫ですが、ここではあえてこちらを使わせて頂きます)の役目を負っている渚がやったのだろうとあたりをつけますが、肝心な本人の姿が見当たりません。
 キッチンを探してお雑煮とぜんざいがたっぷりと用意された鍋を発見したりしていると、冷蔵庫を見ていたクイちゃんが突然声をあげました。

「・・・お姉さん、これ……」

 渚の部屋を調べていたトバさんが駆けつけると、冷蔵庫に磁石で貼られたメモをクイちゃんが指差していました。
 そのメモに書かれた小さな文字を、トバさんが読み上げます。

「えっと……『神社にバイトをしに行ってくるので、自由に食べておいてください。PS.初詣に来るのはいいけど、冷やかさないように! 写真とかも撮っちゃダメ!』ですって。バイトというと、アレですか? 巫女さんの」
「・・・たぶん、そう。・・・みんなで説得してやることにさせた、巫女さんのやつ」

 トバさんもクイちゃんも何かを―――十中八九渚の巫女さん姿でしょうが、想像するように目を瞑りました。
 程度の差こそあれど、二人の顔にニヤリとした笑みが浮かびます。
 二人は同時に目を開くと、一瞬だけ目線を合わし―――それぞれ、行動を始めました。
 トバさんは三人分の食事をよそいだし、クイちゃんはといえば未だ寝たままの《呪いのメルヘンカルタの契約者》を起こしに走ります。
 二人が頭の中で思っている………というか企んでいることは、全く一緒でした。
 それ即ち、『少年(お兄さん)の巫女さん姿を永久保存し、イジるための材料とする。あとついでに初夢の内容も吐かせる』というもの。
 二人とも、渚への嗜虐心だけは全く隠そうとはしません。
 むしろ競うようにして急ぐ二人のキビキビとした動きは、渚の受難が新年になっても終わらないのを予感させるのでした。





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