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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-『接吻』-1

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 今日俺たちは≪夢の国の地下カジノ≫に来ていた。まあ暇だったのもあるけど夢子ちゃんにサンタのじいちゃんがその後元気かどうか聞くのも目的だった。
 話を聞いた限りだと、どうもじいちゃんは元気でいるらしい。本当によかったぜ。またプレゼントもらえるしなっ!
 そしてついでに夢子ちゃんとそのまま話しこんでいた。話の主な内容は前回、クリスマスの時は時間がなくて話せなかったマッドガッサーたちの事で、
「――――で、これがその時に撮った写真だ」
 俺はそう言ってその時に撮った写真を夢子ちゃんに見せた。夢子ちゃんはしきりに感心してくれるから見ていて面白い。そう思っていると、ある写真で夢子ちゃんの動きが止まった。夢子ちゃんが見ているのは金髪の可愛い感じの女の人の写真だ。
「あれ? この方、以前お会いしたような……?」
 お、さすが、お目が高い(話しのネタ的な意味で)。
「ああ、それチャラい兄ちゃんだよ」
「あ、そうなんです……え?」
 夢子ちゃんが写真を凝視し始めた。
 まあ不思議だろうな。どっからどう見ても女にしか見えないと言うか体的には完全に女だったわけだからな。
「女体化ガスにやられてたんだぜ」
「違和感が……ないんですね」
 一種感動したかのような声で夢子ちゃんが言う。……うん、まあ確かに。女装の時とはまた違ったフィット感がある。
「だよなー、それはそうとその騒動の時に花子さんとかもいてさ、これもなかなかかわいいぜ~」
 そんなことを言っているとリカちゃんがどこからか本を持って現れた。
「なんだ? その本」
「わかんないの、そこに置いてあったの」
 そう言ってルーレットの台を指さす。
「フランツ・グリルパルツァーですね」
 夢子ちゃんが本の表紙を見て言った。
 ……グ、グリ?
「……だれ?」
「あまり詳しくは……劇作家などをしていた方です。面白いですよ」
「ふーん……何語で書かれてるんだ?」
 日本語以外の言葉はのーせんきゅーなんだが。
「訳文ですよ」
 夢子ちゃんはおかしそうに笑うと本を開いた。そのページには『接吻』というタイトルと共になにやら格言が添えてあった。
 曰く、

  手なら尊敬 額なら友情
  頬なら厚意 唇なら愛情
  瞼なら憧れ 掌なら懇願
  腕と首は欲望
  それ以外は狂気の沙汰

 どうも口付けする位置によってそういう意味があると言いたいらしい。
「随分とばっさり言うんだな」
「格言ですから」
 本を放りだして言っていると俺の頭の上から本を見下ろしていたリカちゃんがピョンと飛び下りた。
「お姉ちゃん」
「ん?」
 唇に布の感触がした。
「あいじょうなの」
 そう楽しそうに言って夢子ちゃんのところにも飛んでいくリカちゃん。子供は影響受けやすいな~。と思いながらリカちゃんに二人でお礼を言う。
「ありがとうございます」
「ありがとな」
 そうしながらリカちゃんを拾い上げてその口(にあたると思われるけどそういやリカちゃん喋るときも特に口とか動いてねえよなー)に口をつける。リカちゃんは嬉しそうに「んー」と口を合わせると、
「つぎはお姉ちゃんたちなの」
 びしりと手で指してきた。
「あー、じゃあどうしようか?」
 いきなり言われても困るもんなんだぞ、リカちゃんよ。
 そう思いながら少し考え、……閃いた。
「友情のあとに愛情でそのまま欲望になだれ込むか!?」
 ある意味王道かもしれないと思いつつ言ってみると、あはは、と夢子ちゃんに笑われた。夢子ちゃんはゆるーく目を弓なりにして質問してくる。
「本当にそうしたいのは私ですか?」
「へ?」
 どういうことかと一瞬返答に窮しているとさっき俺が放りだした本を持った夢の国のお姫様が笑顔で声をかけてきた。
「王さまー」
 そして、夢子ちゃんの手を掴む。「わ」と驚く夢子ちゃん。
「私たちも」
「王様が大好きでーす」
 どんどん姫さんが集まってくるのを見て俺はおもむろに席を立ち上がる。
「だから」
「みんなで~」
 姫さんたちは嬉しそうに言う。俺、夢子ちゃんに憐みの視線照射中。
 そして、
「かかれー!」
 お姫さんたちが飛びかかった。
「え? わ? きゃ!?」
 夢子ちゃんが飛びかかっていった姫さんたちの衣装に埋もれる。
 助けを求めるような声が聞こえたような気がするけどきっと気のせいだ。そう自分に言い聞かせ、俺は騒ぎから離れるように安全圏もといTさんの所へと移動して……って、
「Tさん飲みすぎだろ」
「ひとつ、ふたつ……むっつめなの」
 酒瓶の壁を築きつつあるTさんに呆れつつ言う。
「たまにはいいだろう。あちらは……すごいな」
 グラスを呷りながらTさん。Tさんに付き合って飲んでた小人が荒らされていく地下カジノを見てため息、やけ酒をはじめた。
 カジノ内には「王様待て~!」とか大声をあげながら楽しげに走り回る音が聞こえる。
「よく慕われてるな」
 Tさんがその光景を眺めつつ言った。
「んー、ま、そうだけどさ」
 なんか着衣の乱れ具合がヤバ気というか、あの貫頭衣っぽい服は大丈夫なのか?
 そんなことを思っていると驚愕の声が聞こえた。

「穿いてない……ですって?」

「……なに?」
 俺は呟くと同時にすくっと立ち上がる。流れる動作でカメラを起動させると俺はTさんに言い放った。
「Tさん、俺、夢の国を探してくる」
「……ほどほどにな」
 頷き、そして俺は戦場へと向かった。


            ●


 よりいっそう騒がしさを増した地下カジノで青年は小人の愚痴を聞いていた。どうも自分のお話の姫のおてんば具合が目に余るらしい。
「――悪いとはいいませんがせめてもう少し我々の王様を見習っておしとやかになっていただきたいと申しますか」
 くどくど言いながら目の前で繰り広げられている騒ぎを見て小人は心配気な顔をする。
「……それにしてもあれは止めなくてもいいんでしょうか?」
「夢子ちゃんが本当に嫌がっているわけでもなし、好きにさせておけ」
 青年は七本目のボトルにとりかかりながら答える。
「嫌がってませんか?」
 小人の言葉に青年は「大丈夫だ」と断言し、
「しかし、『それ以外は狂気の沙汰』か。確かにそうだな」
 そうしみじみと言う。
「?」
 疑問符を頭上に浮かべる小人。
「フランツ・グリルパルツァーの言葉だ」
 そうして青年の口から語られた格言に、はぁ、と感心したように小人。
「その言葉でいくのなら」
 一人にだけするのなら、と前置きし、
「私は王様か、私の話の姫の手になりましょうか……あなたはどうですか?」
 質問を振られた青年は青年は数瞬考え、
「……さて」
 なにかを答えようとしたその時、緑の衣と光る羽根を持つ妖精が貫頭衣の裾を勢いよく捲り上げた。――青年や小人の真正面の位置で。
 簡素な衣服はあっさりと胸元まで捲りあげられ、下着も纏わぬ姿を披露した。
 地下カジノの薄暗い照明の下でなだらかな双の丘陵の間に収まっている首からかかった毛玉と石のお守りや、わずかにくびれた腰が臍を中心にしてさらけ出され、それらの下の、真になにも隠すもののない、いっそ幼ささえ感じる――
「夢の国が……っ」
「おっと」
 青年が鼻から血を噴いて倒れた小人を支える間にそれらは共に捲られた綺麗な長髪と同様、すぐに元の位置に収まった衣によって数瞬だけの御開帳を閉めた。
 あの夢の国の創始者は下着を用意することはしなかったか。
 そう青年は思い、途中参戦の癖にいつの間にか騒ぎの中心にいる少女が楽しそうに笑っているのを視界に収める。
「いい肴だ」
 言葉は喧騒にかき消され、新たに空き瓶が製造された。


            ●


 そして、
「さて、反省しているか?」
 場を収めたTさんの言葉に俺たちは一同床に正座したまま答えた。
「正直やりすぎた。反省してる」
「してるの」
「でも王様も転移しないからつい……」
 後方で(何故か俺は最前列に座らされてる)誰か姫さんが言った言葉に夢子ちゃんはそこいら中にキスマークを付けていろいろと疲れた、けど緩やかな笑顔で答えた。
「私を好いてくれているんですからこれくらいで拒絶なんてできませんよ」

『う』 

 なんだろう。なにかこう、悪いことを悪いことと認めざるを得ないような、そんな感じの……っ!

『反省してます』

 一同はまた深く深く頭を下げた。
「ん、よし。では小人や給仕一同は諸事情でそこで伏せっているので片付けは自分たちでやるように」
 誰からも否やがあろうはずもなく、粛々とお掃除が始まった。夢子ちゃんが見かねたように言う。
「あ、夢の国の黒服さんを呼びましょうか?」
「やめておけ、そこまでしたら彼女たちが罪悪感に悶えるぞ。――それと契約者」
「なに? Tさん?」
 俺は一仕事の後の一杯の水を堪能しながら返事をする。と、
「片付けをするのにカメラは邪魔だろう?」
 Tさんはそう言って掌を突き出した。
「あ、俺も片付けるんだ」
「当然だ。散らかしたのだから片付けて来い。そもそも何故騒ぎの中心に居た契約者がここで水飲んでくつろいでるんだ」
 うーん、なんでだろう? ……場の流れ?
「おし、じゃあ片付けてくるかー。――でも」
「どうした?」
 俺はカメラを手にしたままTさんに渡したものかどうか少し迷う。というのも、
「いや、ちょっとオトコノコには見せられない写真が映りこんでるかな~……なんて」
「撮ったのか……」
 呆れたようにTさん。俺はフッ、と笑ってみせて、
「夢の国を探しに行くって、言っただろ?」
「何故誇らしげなんだ……」
 そんなやり取りをしていると夢子ちゃんが言った。
「別に見てもかまいませんよ?」
「え?」
「減るものでもないですし」
 いやいやいや夢子ちゃんはもっと自分の価値をわからなきゃだめじゃないかと思「ですけど」……え?
「先程の質問の答えをうかがいたいです」
 そう言って俺に顔を向けた。
「さっきの?」
 はてどれだろうと思いながら訊くと夢子ちゃんは「はい」と答え、
「本当にそうしたいのは私ですか? という質問です」
 ああ、あの格言の時のか。その話を知らないTさんは「?」マークを頭に浮かべてる。とはいっても俺もその質問には、
「えー、んー……特に他にそうしたい奴はいないしな」
 リカちゃんか? いや、リカちゃんは手がちっさ過ぎて腕に当たる部分がないしなー。
「……そうなんですか」
 あ、なんか微妙に呆れたような顔だ。
「じゃあ代わりに脱ぎましょう?」
「なんでそうなるよ!?」
「だってさっき一人で逃げたじゃないですか」
 実は怒ってらっしゃる!?
 俺はダッシュを敢行し――
「……ねぇ、知ってる?」

 ――王様は一人しか居ないけどね、世界中のどこにも居るんだよ?

「あっれええ!?」
 手を掴まれたってかこういう場面で使う能力じゃねえ!
「Tさん!」
 救援を求める。Tさんはふむ、と一つ頷き、
「眼福か」
 言いながらカウンターから勝手に酒を引っ張って来た。
 まだ飲むか! 寺生まれってすげえ! ってか助けろ!
 俺はそう思わずにはいられなかった。
 最終的にやばい所でTさんに止められるまで俺は若干百合の園の住人になりかけたとさ。
 そうそう、夢子ちゃんは俺に友情を感じてくれてるらしいぜ。


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