「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-復讐-01

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konta

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 マレー半島のとある場所、昼でも暗く薄汚い、それ故に人目のない路地裏。そこに二人の男がいた。
 一人は縄で縛られ、壁際に座らされているマレー系の若者。もう一人、その若者を見下ろしているのはくたびれたスーツを着たサラリーマン風の日本人だ。年は30代半ばといったところだろうか。頬に古い傷跡、無精に髭を伸ばしておりボサボサの髪、首からは石がついたネックレスが二つ下がっている。
 サラリーマン風の男は頬の古傷に指先で触れながらんー、と唸り、
「――そうかい、≪ウパス≫ねえ」
 口に咥えた煙草から紫煙をくゆらせながら英語で発されたその言葉に、縛られている若者も首を縦に振る。
「一時期大量発生していた余波でいまだ活動が活発なんだ。それでアレは、あの毒の木に近づく奴を道中で取り込んでは追い返すなり近くの村に送っているなりしているらしい」
「まったく、何を今更人助けじみたことなんざ……」
 呆れたように言うサラリーマン風の男に若者は問うた。
「……お前、目的はなんだ? なんでいきなり俺を襲った?」
「ここいらの情報が欲しかったっつーのと、あとはお前さんのお仕事風景を見たからなー」
 そう答えるサラリーマン風の男。若者は尚も続ける。
「俺がどこに所属しているか知っているのか? こんなことをして、いずれ仲間が――」
「興味ねえな」
 サラリーマン風の男の言葉には取りつく島も無い。
「っ! 貴様」
 激昂した若者が何らかの力を発動しようとすると、
「無駄無駄、お前正面からきて俺に手も足も出なかったじゃねえか」
 サラリーマン風の男は若者の腹を蹴りつけた。
「ガッ……!」
 肺の中の空気を吐き出すような苦悶の声を上げる若者の前に中途半端に発動した能力で生み出された手術台が一つ落ち、直後に何事もなかったかのように消滅した。サラリーマン風の男はその光景を見て、
「その都市伝説の能力、≪臓器を奪う病院≫だっけか?」

 ――こういう都市伝説がある。海外に渡ったときの事。風邪で病院にいったはずなのになぜか麻酔を打たれ、手術を行われてしまった。風邪は治ったが、帰国後体の調子が思わしくないため病院に行くとなぜか臓器がいくつかなくなっていた――

「分かってんなら大人しく臓器を差し出せ!」
 睨みつけるようにサラリーマン風の男を見上げる≪臓器を奪う病院≫の契約者の若者。それを見てサラリーマン風の男は苦笑いして、
「そりゃ勘弁だ。それに俺の臓器は汚れまくってるから売れねえぞ~」
 古傷を緩く引っ掻きながら煙を吐き出す。
「あんたが標的さんをバラしているのを見たんで、ああこいつならいいやって思ったんだ。俺、腹ぁ減ってんのよ。――で、俺は今、都市伝説との契約の影響で人肉しか受け付けなくなっててな」
 煙草を地面へと吹き捨て、靴底で踏み消しながら言う。 
「そろそろ餓死の心配をしなきゃならんくらい腹減ってたんだ。いや、これでまたしばらく人を殺さなくて済みそうだわ」
 よかったよかったと人好きのする笑いを浮かべるサラリーマン風の男。その笑顔が敵対する若者には妙な凄みをきかせる。そして思う。こいつは本気だ、喰われる。と。
「おい、や、やめっ」
 若者は後じさろうともがくが、もうそこは壁際である。若者の足は無為に地面を掻き、体は壁面に余計に押し付けられるだけだ。
「あんたが契約している都市伝説、臓器持ってくってのはいけねぇや」
 男は拳を振り上げ、言う。

「俺の娘はな、臓器を奪われて殺されちまったのさ」

 男の首から下げられているネックレスのうちの片方、その先に付いている石が青白く光って――


            ●


「ごちそーさん」
 サラリーマン風の男は食い残った骨を折って爪楊枝のように使っていた。辺りに散らばっているのは人骨と赤黒くぬめる多少の食い残し、いくつかの血だまり、そして若者が着ていた衣服だけである。
「おとーさん?」
 そんな血生臭い臭いが支配する路地裏の空気に合わない、とてもかわいらしい童女の声が響いた。
「おう」
 サラリーマン風の男は骨を地面に捨てると立ち上がり、その声の主に手を振った。
「見つけた?」
 童女の声に男は答える。
「ああ、見つけた」
 何を。とは言わない。二人の間でそれは言うまでもないことだからだ。サラリーマン風の男に近づくと、童女は男を見上げて確認の声をあげる。
「ほんと?」
 そう問いを発する声と同じく、とてもかわいらしい童女だった。おかっぱに、白く整った顔立ちは精巧な日本人形を思わせる。そしてその首にはネックレスが一つかかっていた。青白い石がついたそれは男が身に付けているネックレスの内の一つと同じものだ。
「本当本当」
 そう答えるサラリーマン風の男の言葉を聞いて嬉しそうな顔をする童女。彼女には、男の周囲にある血だまりも人骨も全く気にした様子がない。
「じゃあ、行くか」
 サラリーマン風の男は伸びをして、若者の着ていた服で荒く手を拭うと童女へと手を差し出す。童女は差し出された手を握り、
「うん」
 頷いて歩き出した。路地から出るとそこは人が溢れている市場だ。サラリーマン風の男はそこですれ違った適当な人間の肩を叩き、声をかける。
「よお、兄ちゃん!」
 声に振り向いた相手は不審げな顔を男へと向けた。「なぜこの男は親しげに声をかけてくるのだろう?」そんな疑問が顔に浮かんでいる。
 サラリーマン風の男は人好きのする、友好的な笑みを浮かべている。そしてその男の笑みの下、首に下がったネックレスの片方――先程とは違うもう片方から赤い燐光が発された。
 それを見た途端に不審げな顔をしていた相手の男の顔が虚ろなものになり、次の瞬間にはこちらも友好的な笑みを浮かべていた。それを確認してサラリーマン風の男は依頼する。
「そこにちょっと人骨まき散らしてあるんだよ、悪りいけど片付け頼めるか?」
「オーケーオーケー」
 サラリーマン風の男の異常な要求に相手の男は笑顔で承諾した。
「サンキュ。全部終わったら記憶無くしてもいいからな」
 サラリーマン風の男の言葉に頷き、相手の男は先程男と童女が出てきた路地へと消えていった。
 そちらへと視線を向け、サラリーマン風の男は小さな声で呟いた。
「……これで人食は最後にしたいもんだねぇ」
「おとーさん、何か言った?」
「いんや、何も?」
 男は見上げて来る童女に笑いかけ、口の端を歪めると背中にポン、と手を当て、童女に先を歩くことを促した。
 やがて二人の姿は市場の雑踏に紛れて、消えた。



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