「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-05

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 ……この日
 とある喫茶店の、一角にて
 激しく不機嫌オーラを漂わせる二人の男がいた
 片や青年
 にこやかな笑顔を浮かべてはいるが、そのまとう雰囲気…と言うか、どす黒いオーラから、不機嫌な事は明確
 片や、黒服を纏った男
 サングラスのせいで表情があまり感じられないが…やはり、その黒いオーラが、明らかに不機嫌である事を物語っていた
 この二人が座っている席の周りには、他の客も寄り付かず
 はっきり言って、営業妨害一歩手前である

「…駄目だね、全然駄目。君、思った以上に役に立たないね」
「放っておいていただきたい。所詮私は下っ端ですから……に、しても、周りの連中と来たら…!」

 激しく燃え上がる二つのどす黒いオーラ
 このオーラだけでも、人を殺せそうである

「確かに、君たちみたいな黒服じゃないけどさ。兄さんには関わって欲しくないのに」
「…ギリギリ、ということで勘弁してやってください。あの少女の受入先も必要なのですから」

 まぁ、元来体の弱い彼女を、高確率で都市伝説との戦いに巻き込まれかねないあそこに転入させて大丈夫なのか…とも、思うが
 多分、きっと、恐らく、大丈夫なのだろう
 大丈夫じゃなかったら…多分、また自分辺りが何とかするはめになるのではないだろうか
 どうにも、自分は貧乏くじを引きやすい

「…まぁ、その点に関しては、私でもフォローできるレベルとして…確かに、組織は近頃、問題点が増えています。もう少し、危険な都市伝説に関する情報はしっかりと収集し、向かわせる契約者も相性のいい相手を送るべきですよ」

 …そうだ
 せめて、相手の能力だけでも教えるべきだ
 組織は、契約者をなんだと思っているのだろう
 使い捨ての駒
 そうとしか、考えていないのか
 …だとしたら、ふざけるな
 人の命を、なんだと思っている

 自分たちは、危険な都市伝説及び契約者に対し、組織の子飼いの契約者を向かわせる
 それには、一種の責任が生じる、と彼は考えていた
 都市伝説を管理しようとしている組織
 都市伝説と言う存在を管理しようとしているのならば、なおさら、責任が生じるはずだ
 しくじれば、尊い命が失われ、危険な都市伝説が暴走する
 その際に生じる責任を、なんだと思っているのか…!

「一枚岩ではないのですよ、組織は。勝手な行動をとるものが多いのです」
「君も、そうなんじゃないの?」

 コーラを口にしつつ、青年は黒服にそう言う
 その言葉に…黒服は、一瞬、沈黙する

「…そうかも、しれませんね」

 「はないちもんめ」と契約している少女を、庇っている
 自分が、都市伝説との戦いに向かわせる契約者が怪我をした時に備え、「蝦蟇の油」や「河童の妙薬」を持ち出している
 …害がないと判断した都市伝説を、組織に報告する事なく見逃している事もある
 自分は、間違いなく、組織に置いて異端分子であろう
 それでも処分される事がないのは、誰かが見逃してくれているからか
 それとも…たいした害がない、と判断されているのか
 正直、今の段階では、わからない

「しかし、表向きだけでもいいですから、少しは従順なふりだけでもしてください。組織が本気になれば、私たちなど一溜まりもないでしょう」
「まぁ、そうだろうけどね」

 青年は、小さく肩をすくめた
 大きな、大きな
 …大きくなりすぎたのでは、とも感じる組織
 それが、本気になれば
 自分たちなど、所詮…替えの聞く、対して重要でもない、小さな歯車に、過ぎないのだから

「それでは、私はこれで。これから、また会わなければならない相手が居ますので…」
「あぁ、女の子だっけ?誘拐犯と間違われないように気をつけてね」
「……私を、なんだと思っているのですか」

 小さく苦笑し、黒服はアイスコーヒー代とコーラ代を払い、去っていく
 残された青年は、くるり、ストローを弄び…静かに、考え込んでいた

 どうやって、兄を護ろうか
 ただ、それだけを
 それだけが、今の自分の生きがいだから

 …大切な、大切な、大切な、兄を、必ず護りきる為に
 ありとあらゆる不測の事態を、想定し尽くさなければならないのだ

 …そう


「…………………んたちみたいな目に、あわせてたまるか」


 ぽつり、小さく、小さく呟かれた言葉は
 あまりにも、あまりにも、小さすぎて
 誰の耳にも、届く事はないのだった



fin




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