「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-06

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匿名ユーザー

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 にこにこと、自分の胃痛の元が微笑んでいるのを見て
 彼は、いつも通り、胃が痛むのを自覚した

 …しかし、同時に
 微かに感じる、違和感
 その違和感の正体が何なのか、彼が思い当たるよりも、先に

「それで、何の用でしょうか?」

 と、もう一人の青年が、口を開いた



「あのね、この間、スリーピーホロウと戦ってた人。あの人と、話がしたいんだけど」

 自分の管轄である、「骨を溶かすコーラ」と契約している青年が、「かごめかごめ」と契約している青年と話がしたい、と
 そう、自分に申し出てきた
 彼が突然、そんな事を言ってきたのは、その「かごめかごめ」の契約者がスリーピーホロウとの戦いに苦戦し、彼がそのヘルプとして呼び出されて、一週間もたたない頃だった

 …思えば、もっと早く違和感を感じるべきだったのだ
 何故、それに気付けなかったのか
 他人へのヘルプの要請など、いつも面倒だと渋るくせに…相手が「スリーピーホロウ」であると聞いて、態度を変えた
 しかし、いざ、スリーピーホロウと向き合うと…いつも通りの態度に、戻って

 あれは、一体何だったのか?
 そして、ヘルプに行く直前、彼が呟いた言葉が、脳裏にこびりつく

「ねぇ、その都市伝説、って………首を、切り落としてくるんだよ、ね?」



「………っ」

 ぞくり
 背筋を走りぬける悪寒
 あの時の、青年の表情は、いつもと同じ笑顔のはずだったが……
 だが、その笑顔の裏に、何か底なしに深い、闇のようなものを感じたような気がした
 そして…今、青年が浮かべている笑顔が
 あの時の笑顔と、全く同じように、思えて

「うん、ちょっとね、聞きたい事があって」

 にこにこと笑い、青年は「かごめかごめ」の契約者に、そう言っている
 ……何かあった時に備え、一応、自分も傍で待機はしているが
 が、その「何か」があった時、自分にできる事など、あるのか?
 ………あるはずがない、自分には、それだけの力などないのだから
 だから、自分が危惧する「何か」が起こってしまった時は、自分の命が消える覚悟をするしかないのだ

「あのね、君の能力、首を切り落としちゃうんだよね?」
「そうですけど」
「それじゃあ、さ」

 ざわり
 今度は背筋だけではなく、体中を悪寒が駆け抜けた
 逃げろ、と元人間の本能が告げる
 …それでも、自分はこの場を離れる訳にはいかないのだ

「君は……その能力で、9年前にどこかの夫婦を殺した事は、ある?」

 いつも通りの笑顔で
 いつも通りの口調で、発されたはずの言葉
 だと言うのに、何故、こんなにも

 言葉の裏に、どす黒い闇が広がっている?

「それは、都市伝説の契約者相手の話ですか?それとも、普通の人相手で?」
「ん、どっちでもいいや。とりあえず…殺した覚えは、あるかな?」

 にこにこと
 青年は、いつも通り微笑んでいる
 そう、あまりにも、表向きはいつも通り
 それが逆に、酷く無気味に思えた

「…いえ、ありませんよ。別々の日に倒した相手が、夫婦だったならわかりませんが」
「…………そう」

 -----すぅ、と
 急速に、張り詰めていた空気が、元に戻っていく
 一瞬、青年が、酷く残念そうな表情を浮かべたように見えたのは、気のせいか

「うん、わかった。ありがとう。それが聞きたかっただけなんだ」

 それじゃあね、とにこにこ笑って、青年はこの場を立ち去っていった
 …どぉっ、と疲れが押し寄せてくる
 あぁ、まったく
 キリキリと、胃が痛む

「…突然、お呼びして申し訳ありませんでした」
「いえ、いいんですけど…」

 困惑した様子の「かごめかごめ」の契約者相手に、彼は苦笑してみせた
 彼も、たったこれだけのことを聞かれる為に呼び出されたのでは、いい迷惑だったろうに
 お詫びに、ここの食事代は全て自分が持つとするか
 …あの青年も、代金払わないで出て行ったし

「…彼、昔何かあったんですか?」
「さぁ…私も、あの青年に関わりだしたのは、つい最近からですので」

 …9年前
 彼はそう言った
 そして、「首を切り落とす」能力の都市伝説相手に、こだわりがあるように見えた
 まるで、何か恨みでも抱いているような

(…そう言えば、彼は両親と死別していたな)

 それは、確か…彼と、双子の兄が大学受験に合格した日
 あの双子にとって喜ばしい日になるはずだったその日に、二人は両親を一度に亡くしている
 両親の死亡原因については、そこまでは調べていなかったが…

(…これは、調べておいた方が良さそうだ)

 何か、あの胃痛の種が、また騒ぎを起こす前に、何かしら対策を考えた方がいい
 そうでなければ、また厄介な事が起こる
 そう、彼は確信した

「…とにかく、ご迷惑かけました。ここの食費は私が持ちますので、なんでもご注文ください」
「それはありがたいですけど……ここの料理、頼んだ人が倒れたりとか倒れたりとかした事は」
「ここはそんなデンジャーな店ではありませんので、ご安心を」

 何かトラウマでもある様子の「かごめかごめ」の契約者にそう告げると、良かった、とほっとして
 …が、ハンバーグと言いかけて一瞬顔を青ざめて別の物を注文したのには、やはり何か嫌な思い出でもあったのだろうか
 そんな目の前の光景に少し和みながらも、彼は胃痛がまだ引いていかない事を自覚していたのだった



fin


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