「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-04

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だれでも歓迎! 編集
 悪い事って何ですか
 私たちにはわかりません

 やってはいけない事ってどう言う事ですか
 私たちにはわかりません


 あなた方が望むがままに生まれた私たちは
 あなた方が望むがままの行動を、ただ行うだけなのです



              Red Cape




 じっと、こちらを不審そうに見つめてくる少女の視線に、彼は小さく苦笑した
 …警戒されている
 当たり前のことだろう
 つい先日、彼が所属している組織は、この少女に刺客を放った
 もっとも、この少女の能力をロクに説明されていなかったその刺客は、あっさりと返り討ちにされた訳だが…

「アイスが溶けてしまいますよ」
「…何を企んでるの?」

 もっともな質問であろう
 刺客を放ってきた組織の人間が、何の考えや企みもなしに、パフェなど奢ってくるか?
 普通に考えれば、答えは「NO」である
 確かに、彼には考えはあった
 だが、それは決して企みではない

「…詫びですよ。あなたを危険な目にあわせた」
「おじさんの組織がした事でしょ?」
「それは、そうですが」

 知っている
 自分が所属している組織は、一枚岩ではない
 自分のように、勝手に行動する黒服が、最近増えているような気がする
 …いや、自分もその一人なのだから、口やかましく言う事はできないが

「…こちらで、あなたに能力を与えておきながら。こちらであなたを御しきれないとわかれば、消そうとする…勝手すぎるでしょう?大人のエゴですよ」

 …それも、こんな幼い少女を
 彼女に刺客を送った組織の構成員が、何を考えていたのかは、知らない
 組織の大多数は、互いに顔も知らない者が多いのだ
 顔も合わせたことのない相手の考えなど、知った事か
 …何よりも、彼は
 こんな小さな少女を殺そうとする者の考えなど、心理など、わかりたくもなかった
 人間であった頃の思考パターンを多く残している彼は、子供に対して非情な行動をとることが苦手だ
 …たとえ、それが命に関るとしても
 少女はまだ多少警戒しながらも、パフェのアイスが溶け始めたのを見て、はむ、と食いつきだした
 精神的に、その年頃の少女にしてはかなり大人びているとしても、やはり甘い物の誘惑には勝てまい
 彼は少しほっとしたように、息を吐く

「でも、命を狙われたお詫びが、こんなパフェだけじゃ、足りないよ?」
「…お望みでしたら、夢の国にでもご招待しますよ。幸い、入り込むくらいならタダでできますから」

 自分が契約している都市伝説の能力を使えば、中に入り込む事くらいは可能だ
 なんなら、夢の国の舞台裏も見せる事もできるが…それは、やめておこう
 子供の夢を奪うべきではない
 もっとも、この少女が同世代の子供たちが夢の国に抱くような夢を持っているかどうかは、微妙だが

「…あぁ。そうだ。夢の国といえば…それに関連した都市伝説で、危険とされている者がいますよ」
「………?」
「その都市伝説は、子供を攫い…都市伝説の一部として、使役できるそうです」
「ふ~ん」
「他人事ではないでしょう。あなたとて、取り込まれかねない対象年齢なのですよ」
「警告のつもり?」
「…一応は?」

 この少女が契約してしまった都市伝説は、強力な力である
 しかし、少女自身が特別強化されている訳ではないし、それ相応の弱点も持ち合わせている
 …絶対的な、最強の都市伝説など、存在しないのだ
 皆、何かしらの弱点なり制約なりを持ち合わせている
 そう、自分が面倒を見るはめになった厄介な青年が契約している都市伝説のように

「子供を獲物とする都市伝説は多いのです。お気をつけください」
「知らない人に付いて行っちゃいけません、って言う先生みたいね」

 放っておけ
 そう、心の中で呟いて
 …そして、ぼそり、口に出す

「…それと。他人からお金を奪い取るくらいなら、私に連絡してください。
 子供一人の生活費くらいなら出せますから」
「その代わりに仕事しろ、って?」
「……子供に、組織の汚い仕事を押し付けるなど…そんな卑怯で卑劣な事、私はやりたくありませんがね」

 じ、と
 こちらを見つめてくる眼差しが、警戒から…妙な物でも観察するようなものに、変わった
 わかっている
 自分が組織内に置いても、変わり者である事はわかっている
 黒服という組織において、ここまで感傷的になる者は多くはない
 機械のように仕事をこなしていく者の方が多いだろう
 …それでも、自分は
 過酷な運命を背負わされたこの少女が生きる手伝いを、ほんの少しでもやりたいと
 そう、望んだのは事実
 せめて、組織のブラックリストから、名前が削除されるくらいまではしてやりたい
 はたして、この少女がそれを望むかどうかは、わからないが
 さらさらと、己の携帯の番号を書いた紙を、少女に手渡そうとする
 …少女は警戒したように、受け取らない

「私には、この紙切れを渡した程度であなたをどうこうできる特殊な力などありませんよ」
「………」

 そっと
 少女の小さな手が、その紙を取った
 そして、少女は鞄からメモ帳を取り出すと…なにやら、さらさらと書き出す
 そして

「…はい、私の携帯の番号」

 と、こちらに手渡してきた
 …あぁ、そうか、今時は小学生でも携帯電話を持っているのが普通だった
 だが

「…見て覚えますので、申し訳ありませんが、その紙は受け取れません」
「………」

 っち、と
 小さく舌打ちしたような音が聞こえてきた
 やはり、メモの裏に金を貼り付けて置いていたな
 この少女からは、何も受け取るべきではないのだ

「…それでは、私はこれで。子供を狙う都市伝説に、お気をつけください」
「は~い」

 気の無い返事を返してきた少女に、彼は苦笑した
 …さて、彼女はこちらの警告を、素直に受け止めてくれるかどうか

 …都市伝説「夢の国」
 組織が倒す手段をいまだ見つけられぬ、強大すぎる都市伝説
 だが、もし
 もし、彼女の協力があれば…

(……いや)

 あの少女に頼るな
 幼子に頼ってはいけない
 これは…大人がやるべき仕事なのだ
 そう自分に言い聞かせながら、パフェ代を払い、彼は店を後にしたのだった



 人を殺してはいけません、とあなた方は言う
 子供を攫ってはいけません、とあなた方は言う

 人殺しは悪い事だと、恐ろしいことだと
 子供が攫われるなんて恐ろしい事だと、子供を攫うのは悪い事だと
 あなた方はそう言います

 恐ろしい事だと、起こって欲しくない事だと
 わかっていながら、何故、あなた方は私たちのことを噂するのでしょう?

 噂さえされなければ、私たちは生まれることもなく
 あなた方が言う所の「悲劇」も起きずにすんだのに



              Red Cape




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