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連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-34c

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 彼、黒服G-No,1は、上層部メンバーであるヘンリエッタ・ホークウッドことH-No,0の腹心の部下である
 彼は、彼女と共に「組織」の一員になる前からずっと、彼女に仕え続けてきていた
 そのせいなのか、彼はヘンリエッタに対して、少々過保護ですら、ある
 …彼女を外に出さない理由は、彼女が「組織」の上層部メンバーであるから、という理由以外に、彼女に危険な目にあってほしくない、という想いもあるのだ
 その、彼にとって…この度のヘンリエッタの願いは、本来ならば承諾する訳にはいかない願いだ
 ヘンリエッタの気持ちとて、わからない訳ではない
 「籠の鳥」
 ヘンリエッタは、己の境遇をそう表現した
 その通りの生活になってしまっている事は、確かに事実だろう
 だが、Gにとって、それはヘンリエッタを護る為の手段なのだ

 ………しかし
 今の状況は、Gにとって非常に分が悪い状況だった
 D-No,962の家族である「はないちもんめ」の契約者の少女が、ヘンリエッタの味方をしてしまっている
 ここから、さらにGにとって分が悪い事に

「……あの」

 と、D-No,962が、遠慮がちに、声をかけてきたのだ

「あの、Gさん…せめて、今日だけでも、この少女に自由を与える事は、できないでしょうか?」

 ……Dは、ヘンリエッタが己の上司であるGの、更に上司であるなどと気づいていない
 彼から見れば、ヘンリエッタもまた、ただの一人の少女にしか過ぎないのだろう…実際には、少女と言う言葉など生温い年齢なのだが、それに気づいているはずもない
 Dは、いつだって子供の味方だ
 こんな少女が、自由を奪われて生活している…それを、憂いているのだろう
 表情に、それがはっきりと表れている
 …過労死候補などと言う不名誉な呼ばれ方すらされているこの部下に、このような表情をさせてしまうのは心苦しい
 それでも、承諾する訳には行かない
 Gは、心を鬼にしようとして

 ………しかし、ここで彼にとって、最悪の援護射撃が来た

「いいんじゃねぇの?正月くらいは」
「………」

 H-No,360
 彼の言葉に、Gは表情を歪める
 余計な口出しをするな
 そんな言葉が、反射的に喉を付きそうになるが

「そうじゃ!今日くらいはゆっくりしたいのじゃ!自由に行動したいのじゃ!!」

 Hの言葉に続くように、ヘンリエッタが要求を続けてくる
 …周囲の視線が、Gに集中する
 どこか、避難するような色の視線
 ………Gは、深々とため息をついた
 日頃、感情を表に出さないようにしている彼としては、これほどの人の前で感情がはっきりと表れるのは珍しい事だ

「…仕方ありませんね。今日だけですよ」

 Gの言葉に、ヘンリエッタがぱぁ、と表情を輝かせた

「ありがとう、G」
「……お嬢様が、そちらの少女に迷惑をかけたようですしね……今日だけ、ですからね」

 ヘンリエッタにそう言いながら、Gははないちもんめの少女に、ヘンリエッタが食べた分だと言う飲食代を払う
 そのまま、ヘンリエッタは少女達と共に、初詣のお参りをすませるつもりのようだ
 D達もまだだったようで、Dは少女の手を引いて歩き出している

「…ねぇ、赤い靴履いたお嬢さん。せめて、そこから降りてくれてば嬉しいんだけど」
「ぜっったい嫌!!」
「俺も、下ろしたくないな」
「何モシナイヨ?愛デルダケダヨ??」
「信用できる訳ないでしょ!!」
「…黒服、ちょっと、友に止めさしてきて、いい?」
「あの……確かに、あの年齢であの手の事に積極的なのはどうかと思いますが…その、止め、までは」
「まぁ、あぁ言うの見てると日本の将来暗いなー、とは思うけど、いつかは正気に戻るかもしれないし、止め刺すまではしなくていいんじゃね?」
「全体的に私を否定する存在しかいない!?酷い!?」

 賑やかな集団
 その中で、ヘンリエッタが楽しそうに笑っている

 …彼女の、あのような笑顔を見たのは数十年ぶりのような気がする
 笑っていても、心から笑っていた事が、はたしてどれだけあっただろうか?

「どうした?娘が嫁にでも行ったような顔して」
「………黙れ、H-No,360」

 茶化すようなHの言葉に、Gは低く、低く返す
 彼にとって、憎しみすら抱いている相手
 その相手のいいように事態が動いているかのような状況が、気に食わない

「…これも、お前の思うがままの状態、か?」
「まさか」

 肩をすくめてくるH
 …Gは、Hの言葉などカケラも信じてはいない
 疑いの眼差しが、サングラスごしに向けられる
 が、Hはそれを気にした様子もなく、くっく、と笑う

「たまたまだよ。お嬢さんが俺と逸れたのも、そのお嬢さんが、Dの大事な大事な家族の、はないちもんめの契約者と会ったのも」
「…………」
「お嬢さんの好きな言葉を使えば、運命、って奴なんじゃねぇの?」

 へらへらと笑っていってくるH
 …真実を語ろうとしない、本心を語ろうとしないその様子が、Gは気に食わない
 己の主が、何故こんな男を重宝するのか、心を許すのか、未だに理解できず…ただ、この男に対する憎しみだけが、募る

「んな顔すんなや。あのお嬢さんだって、もうちょっと現場を知るべきなのは事実だろ?知り合いが増えるのは悪い事じゃない」
「……だが」
「---『上層部の正体が隠されているのは、暗殺を防ぐ為』」

 Hが口にした、それは……事実だ
 「夢の国」の騒動以降、上層部メンバーの…それも、強硬派や過激派のメンバーが暗殺されたのを機に、その方向性が「組織」内では強くなっていた
 そうじゃなくとも、秘密主義の「組織」だ、上層部メンバーの詳細は、上層部メンバーすら全ては知らないのだが…

 くくくっ、とHが笑う
 その顔に浮かんでいるのは………はっきりとした、悪意だった

「あのお嬢さんには、その心配がないんだ。気にしなくていいんじゃないか?何せ、あのお嬢さんは…」
「………口を慎め」

 Gの低い声に、Hは再び肩をすくめてきた
 ……許されるならば、この男の首をこの場でへし折ってやりたい
 だが、それは許されない
 自分は、この男に一矢報いる事すら、できないのだ
 その事実が、Gにとっては歯痒い

「…まぁ、仲良くやろうぜぇ?同じ上司を持つ同僚同士なんだからよぉ?」
「…………」

 Hの言葉に、Gは答えない
 ただ、不機嫌さを隠そうともせず、Hを睨みつけたのだった





「…む、どうしたのじゃ、あやつらは」

 付いてこない部下達の様子に、ヘンリエッタは不思議そうに首を傾げた
 …まぁ、いいか、と結論付ける
 Gは、あの高身長で目立つ
 いざとなれば、きっとすぐに合流できるだろう

「…望よ」
「なぁに?」
「ありがとう」

 手伝ってくれて、と
 ヘンリエッタは、嬉しそうに笑って、はないちもんめの少女にそう伝えたのだった


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