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連載 - 三面鏡の少女-37

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三面鏡の少女 37


寒い
寒い
とても寒い
いくら厚着をしても部屋を暖めても、まるで素肌の上に真冬の冷気が張り付いているかのように
熱い
熱い
とても熱い
いつもはセクハラ被害で恥ずかしいだけなのに、そういう事をしないで抱き締められているだけで心臓の鼓動が激しくなる
「え、ええ、Hさん、大丈夫だだよ、ああああたし、まままだが我慢できるから」
嘘だ、まともに喋る事すら出来ていないじゃないか
そう言うかのように、抱き締める腕に力を込める
「つつ冷たい、でしょ、あたし、えHさんまで冷えちゃうよ」
「心配すんな、身体の鍛え方が違う」
文字通りの意味でな、と内心自嘲し
それでも震えが収まらず虚ろな目をしている佳奈美に、Hは最後の手段を取る事にした
「素肌の上に冷気を纏ってるような状態だとしたら、こうやっていてもダメだ。直接肌を合わせて温める」
「あ、あはは、ダメだよ、Hさん、こんな時……まで、せくはら……だ……っ……てば」
一瞬意識が遠のいたのか、かくんと頭が揺れ声が消え入りかける
「生きるか死ぬかが賭かってる時にセクハラも何もあるか」
髪を手櫛でかき上げられ、その手が触れた首筋がほんの少しだけ温かい
「ふぁ……」
吹雪の雪山で暖かいカイロにでも触れたような
安堵にも似た快感に思わず声が漏れ、身体を預けてしまう
「セクハラは元気になってから改めてする。今は身体を温める以外には絶対何もしないから安心しろ」
「あとででも……するなー……」
真っ青な顔でする精一杯の突っ込みを合意と取り、Hの髪の毛が優しく服の下に潜り込む
抱き締めている状態にも関わらず、丁寧にトレーナーを脱がしブラウスのボタンを外して傍らに置いていく
露わになった素肌に触れてみると、凍てつくほどの冷気に晒されて氷のように冷たかった
「あー、Hさんのて……あったかい……」
「触れ合う面積を少しでも確保したい。全部脱がすぞ」
「い、いちいち確認されると余計恥ずかしいよ!?」
「よし、少し元気が出てきたな」
「うにゅぅ……」
正直なところこれで済めば良いと思っていたが、血流を考えれば首、脇、内股、心臓近くは暖める必要がある
スカート、タイツを脱がせ、そして
「んっ……ぅ……」
出来るだけ敏感な部位には触れないようにしつつ、下着もするりと取り払う
そして直接肌を合わせるために、自分もまた同じように服を脱ぎ
「温めるだけだ。今回ばかりは絶対に嫌がる事はしない」
脇の下をくぐるように両腕を回し、片手は首筋に片手は背中に
胸をぴったりと押し当てて、足を絡めるようにして少女の身体を抱きすくめる
「少しでも寒気は収まってるか?」
「うん……あったかい……でもHさんは大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
嘘だ
少女の身体に触れている場所が冷たさを通り越して痛い程だ
だがそれは少女が感じている冷たさでもある
「……何でHさんはここまでしてあたしを守ってくれるの?」
「担当だからな」
約束だからだ
それは決して口には出さない
「Hさん……いつまでこうしていられるのかな」
「そうだな、この町で敵に回したくない奴のツートップが解決に動いてるらしいから、それほど時間は掛からないとみたが」
少女の言い回しに、Hは気付かなかったのか気付かないふりをしたのか
「体温と意識の確保のために、適当に喋りながら時間でも潰すか」
「んー、そう言われても何を話していいのかなー」

それからしばらくの後
元凶が倒され体温が戻ってもしばらく少女は解放されずに大騒ぎとなったのは言うまでもない


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