「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

単発 - 我ら、口裂け女三姉妹

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
 昼下がりの学校町を、ショルダーバッグを下げた青年が歩く。
 そしてその青年に忍び寄る三つの影。青年はそれらに気づかない。

「そこの青年、こちらを見ろ!」

 背後からかけられた声に青年は振り返る。そこに居たのは三人の女性。
 そのうちの一人はなぜか幼女であり、幼女以外の二人は口に大きなマスクをしている。
 一人は膝丈のコート、一人はふんわりとした衣装、そして幼女はかわいらしい子供服。
 全員の服が赤を基調としたデザインをしており、それらが横一列に並んでいる様は,
ある意味異様だ。
 彼女らは、ビシッ!と青年を指差して問いかける。

「「「私たち、キレイ?」」」
「…なんですかあなたたちは?」

 唐突な出来事に面食らう青年。思わず間の抜けた声を出す。

「よろしい、ならば答えよう!」
「そしてその名を心に刻め!」
「恐れ、慄き、恐怖に震えろ!」

「「「我ら、口裂け女三姉妹!!!」」」

 名乗り口上を上げつつ、どこぞの戦隊物かと突っ込みたくなるような決めポーズをとる三姉妹。

「…はい?」
「貴様、今”はい”と言ったな?ならば、貴様も同じ口にしてくれる!!」

 そう言うと彼女らはマスクを外し、それぞれ大鎌、大鋏、出刃包丁を取り出す。
 ここで青年はようやく気づく。現在、自分がかなり危険な状況にあることに。

 青年はきびすを返して全速力で駆け出す。とにかく速く、とにかく遠く、と。
 しかし、背後に聞こえる足音に、思わず後ろを振り返る。
 そこには1mも離れていないところで、コートを着た口裂け女が大鎌を振りかぶっていた。

「口裂け長女は地を駆けるッ!!」

 叫び声と共にその大鎌が顔面めがけて水平にふるわれ、青年は咄嗟にしゃがもうとする。
 が、走りながら振り返るという無理な体勢であったため、足がもつれて派手に転倒する。
 幸い、転んだことで大鎌は空振りとなり、青年の口が裂かれることはなかった。
 すぐさま立ち上がろうとする青年。フッと、その頭上に影が差し、上を見上げる。
 逆光の中で宙に浮かぶ人影と、それが携える二つの刃がギラリと光るのを見た。

「口裂け次女は宙を舞う!!」

 その影は急速に落下しながら、青年に襲い掛かる。
 崩れた姿勢でそれをかわすため、青年は地面を転がる。直後、ガギンという鈍い音が響く。
 先ほどの位置に首を向けると、ふんわりとした衣装を着た口裂け女が握る大鋏が、地面に突き刺さっていた。

 地面に横たわったままの体勢で、視界の端で何かがキラリと光る。
 真上を見ると、幼女が出刃包丁を今まさに振り下ろさんとしていた。
 あわてて幼女の小さな手を押さえ、その刃を止める。

「口裂け三女は力持ちっ!!」

 しかし、そのあどけない顔や声とは裏腹に、とても幼女とは思えない力で出刃包丁を押し進めてくる。
 刃の切っ先ががじりじりと青年の口に近づく。
 このままではジリ貧と判断し、青年は抑えていた手をパッと離し、同時に顔を背ける。
 急に抵抗を失った幼女の体勢が崩れ、出刃包丁は青年の頬をかすめるにとどまった。
 そしてその隙に幼女の体を掴み、体をひねった勢いで投げ飛ばす。

 青年は飛び起きて次の攻撃に備える。が、口裂け女は襲ってこない。
 長女と次女は、先ほど青年が投げ飛ばし、ペタリと座り込む幼女を見て固まっていた。

「ふ…ふえ……ふえええええええん!!!い゙だい゙よおおおおお!!!!」
「ああ、泣くな三女よ!落ち着け!」
「そうよ、ほら大丈夫!いたくなーい、いたくなーい…。」
「ゔえええええええええええん!!!!!!」

 派手に泣き出した幼女に慌てて駆け寄ってなだめすかす姉たち。
 チクリ、と青年の心に罪悪感が芽生える。
 しかしこれは逃げるチャンスだ、と思い直し、その場を離れようとする。

「…貴様ッ!よくも三女を泣かせたな!!楽に死ねると思うなよ!!!」

 長女が怒気に満ちた声で叫ぶ。目的が口を裂くから殺すに変わってるあたり、逆にピンチである。
 長女は青年に急接近し、その体めがけて横なぎに大鎌を振るう。
 青年はあわててその場を飛びのく。ショルダーバッグが切り裂かれ、青年はその場にしりもちをつく。
 見上げると、怒りに満ちた形相で大鎌を振り上げる長女の姿。自らの死を覚悟をし、青年は目を閉じた。

「……む?」

 その声に、青年は恐る恐る目を開ける。長女は、先ほど切り裂いたショルダーバッグから散乱した荷物に目を向けていた。
 そこに散らばっているものは、真っ二つになったノート、もう使えないであろう筆記用具。
 そして、咽の乾燥対策に常備しているフルーツキャンディー。

 長女はそのキャンディーを一つ拾い上げると、泣き止まない幼女とそれをなだめる次女の下に一瞬で移動する。

「ほら三女!お前の好きな飴だぞ!」
「ふええぇ……飴?」

 その言葉に、ぴたりと泣き止む幼女。

「そうだ!しかもイチゴ味だ!」
「ほら三女ちゃん、あーんして?」

 幼女の口の中に飴玉が転がる。そして、しばしの沈黙。

「……おいしい!」

 幼女は喜びの声と共に、輝かんばかりの笑顔を浮かべる。
 それを見て、長女と次女もほっとしたように笑う。
 青年もそのほほえましい光景に、思わず頬が緩む。
 長女と次女は幼女を立たせ、マスクを着けて青年に向き直る。

「命拾いしたな青年よ!三女に免じて見逃してやろう!」
「しかし決して忘れるな!今日と言う日の出来事を!」
「そしてしかと語り継げ!この恐ろしき存在を!」コロコロ

「「「我ら、口裂け女三姉妹!!!さらばだ青年よ!!!」」」

 ハーッハッハッハという高笑いと共に、長女は地を駆けはるか彼方へ、次女は真っ赤な傘を差し、幼女を背負って空へと消えた。
 あとに残されたものは、切り裂かれたバッグと散乱した荷物、そして呆然と立ち尽くす青年。

「…べっこう飴買って帰るか。」

 青年はそうつぶやき、散乱した荷物を拾って帰路に着くのであった。



続かない。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー