昼下がりの学校町を、ショルダーバッグを下げた青年が歩く。
そしてその青年に忍び寄る三つの影。青年はそれらに気づかない。
そしてその青年に忍び寄る三つの影。青年はそれらに気づかない。
「そこの青年、こちらを見ろ!」
背後からかけられた声に青年は振り返る。そこに居たのは三人の女性。
そのうちの一人はなぜか幼女であり、幼女以外の二人は口に大きなマスクをしている。
一人は膝丈のコート、一人はふんわりとした衣装、そして幼女はかわいらしい子供服。
全員の服が赤を基調としたデザインをしており、それらが横一列に並んでいる様は,
ある意味異様だ。
彼女らは、ビシッ!と青年を指差して問いかける。
そのうちの一人はなぜか幼女であり、幼女以外の二人は口に大きなマスクをしている。
一人は膝丈のコート、一人はふんわりとした衣装、そして幼女はかわいらしい子供服。
全員の服が赤を基調としたデザインをしており、それらが横一列に並んでいる様は,
ある意味異様だ。
彼女らは、ビシッ!と青年を指差して問いかける。
「「「私たち、キレイ?」」」
「…なんですかあなたたちは?」
「…なんですかあなたたちは?」
唐突な出来事に面食らう青年。思わず間の抜けた声を出す。
「よろしい、ならば答えよう!」
「そしてその名を心に刻め!」
「恐れ、慄き、恐怖に震えろ!」
「そしてその名を心に刻め!」
「恐れ、慄き、恐怖に震えろ!」
「「「我ら、口裂け女三姉妹!!!」」」
名乗り口上を上げつつ、どこぞの戦隊物かと突っ込みたくなるような決めポーズをとる三姉妹。
「…はい?」
「貴様、今”はい”と言ったな?ならば、貴様も同じ口にしてくれる!!」
「貴様、今”はい”と言ったな?ならば、貴様も同じ口にしてくれる!!」
そう言うと彼女らはマスクを外し、それぞれ大鎌、大鋏、出刃包丁を取り出す。
ここで青年はようやく気づく。現在、自分がかなり危険な状況にあることに。
ここで青年はようやく気づく。現在、自分がかなり危険な状況にあることに。
青年はきびすを返して全速力で駆け出す。とにかく速く、とにかく遠く、と。
しかし、背後に聞こえる足音に、思わず後ろを振り返る。
そこには1mも離れていないところで、コートを着た口裂け女が大鎌を振りかぶっていた。
しかし、背後に聞こえる足音に、思わず後ろを振り返る。
そこには1mも離れていないところで、コートを着た口裂け女が大鎌を振りかぶっていた。
「口裂け長女は地を駆けるッ!!」
叫び声と共にその大鎌が顔面めがけて水平にふるわれ、青年は咄嗟にしゃがもうとする。
が、走りながら振り返るという無理な体勢であったため、足がもつれて派手に転倒する。
幸い、転んだことで大鎌は空振りとなり、青年の口が裂かれることはなかった。
すぐさま立ち上がろうとする青年。フッと、その頭上に影が差し、上を見上げる。
逆光の中で宙に浮かぶ人影と、それが携える二つの刃がギラリと光るのを見た。
が、走りながら振り返るという無理な体勢であったため、足がもつれて派手に転倒する。
幸い、転んだことで大鎌は空振りとなり、青年の口が裂かれることはなかった。
すぐさま立ち上がろうとする青年。フッと、その頭上に影が差し、上を見上げる。
逆光の中で宙に浮かぶ人影と、それが携える二つの刃がギラリと光るのを見た。
「口裂け次女は宙を舞う!!」
その影は急速に落下しながら、青年に襲い掛かる。
崩れた姿勢でそれをかわすため、青年は地面を転がる。直後、ガギンという鈍い音が響く。
先ほどの位置に首を向けると、ふんわりとした衣装を着た口裂け女が握る大鋏が、地面に突き刺さっていた。
崩れた姿勢でそれをかわすため、青年は地面を転がる。直後、ガギンという鈍い音が響く。
先ほどの位置に首を向けると、ふんわりとした衣装を着た口裂け女が握る大鋏が、地面に突き刺さっていた。
地面に横たわったままの体勢で、視界の端で何かがキラリと光る。
真上を見ると、幼女が出刃包丁を今まさに振り下ろさんとしていた。
あわてて幼女の小さな手を押さえ、その刃を止める。
真上を見ると、幼女が出刃包丁を今まさに振り下ろさんとしていた。
あわてて幼女の小さな手を押さえ、その刃を止める。
「口裂け三女は力持ちっ!!」
しかし、そのあどけない顔や声とは裏腹に、とても幼女とは思えない力で出刃包丁を押し進めてくる。
刃の切っ先ががじりじりと青年の口に近づく。
このままではジリ貧と判断し、青年は抑えていた手をパッと離し、同時に顔を背ける。
急に抵抗を失った幼女の体勢が崩れ、出刃包丁は青年の頬をかすめるにとどまった。
そしてその隙に幼女の体を掴み、体をひねった勢いで投げ飛ばす。
刃の切っ先ががじりじりと青年の口に近づく。
このままではジリ貧と判断し、青年は抑えていた手をパッと離し、同時に顔を背ける。
急に抵抗を失った幼女の体勢が崩れ、出刃包丁は青年の頬をかすめるにとどまった。
そしてその隙に幼女の体を掴み、体をひねった勢いで投げ飛ばす。
青年は飛び起きて次の攻撃に備える。が、口裂け女は襲ってこない。
長女と次女は、先ほど青年が投げ飛ばし、ペタリと座り込む幼女を見て固まっていた。
長女と次女は、先ほど青年が投げ飛ばし、ペタリと座り込む幼女を見て固まっていた。
「ふ…ふえ……ふえええええええん!!!い゙だい゙よおおおおお!!!!」
「ああ、泣くな三女よ!落ち着け!」
「そうよ、ほら大丈夫!いたくなーい、いたくなーい…。」
「ゔえええええええええええん!!!!!!」
「ああ、泣くな三女よ!落ち着け!」
「そうよ、ほら大丈夫!いたくなーい、いたくなーい…。」
「ゔえええええええええええん!!!!!!」
派手に泣き出した幼女に慌てて駆け寄ってなだめすかす姉たち。
チクリ、と青年の心に罪悪感が芽生える。
しかしこれは逃げるチャンスだ、と思い直し、その場を離れようとする。
チクリ、と青年の心に罪悪感が芽生える。
しかしこれは逃げるチャンスだ、と思い直し、その場を離れようとする。
「…貴様ッ!よくも三女を泣かせたな!!楽に死ねると思うなよ!!!」
長女が怒気に満ちた声で叫ぶ。目的が口を裂くから殺すに変わってるあたり、逆にピンチである。
長女は青年に急接近し、その体めがけて横なぎに大鎌を振るう。
青年はあわててその場を飛びのく。ショルダーバッグが切り裂かれ、青年はその場にしりもちをつく。
見上げると、怒りに満ちた形相で大鎌を振り上げる長女の姿。自らの死を覚悟をし、青年は目を閉じた。
長女は青年に急接近し、その体めがけて横なぎに大鎌を振るう。
青年はあわててその場を飛びのく。ショルダーバッグが切り裂かれ、青年はその場にしりもちをつく。
見上げると、怒りに満ちた形相で大鎌を振り上げる長女の姿。自らの死を覚悟をし、青年は目を閉じた。
「……む?」
その声に、青年は恐る恐る目を開ける。長女は、先ほど切り裂いたショルダーバッグから散乱した荷物に目を向けていた。
そこに散らばっているものは、真っ二つになったノート、もう使えないであろう筆記用具。
そして、咽の乾燥対策に常備しているフルーツキャンディー。
そこに散らばっているものは、真っ二つになったノート、もう使えないであろう筆記用具。
そして、咽の乾燥対策に常備しているフルーツキャンディー。
長女はそのキャンディーを一つ拾い上げると、泣き止まない幼女とそれをなだめる次女の下に一瞬で移動する。
「ほら三女!お前の好きな飴だぞ!」
「ふええぇ……飴?」
「ふええぇ……飴?」
その言葉に、ぴたりと泣き止む幼女。
「そうだ!しかもイチゴ味だ!」
「ほら三女ちゃん、あーんして?」
「ほら三女ちゃん、あーんして?」
幼女の口の中に飴玉が転がる。そして、しばしの沈黙。
「……おいしい!」
幼女は喜びの声と共に、輝かんばかりの笑顔を浮かべる。
それを見て、長女と次女もほっとしたように笑う。
青年もそのほほえましい光景に、思わず頬が緩む。
長女と次女は幼女を立たせ、マスクを着けて青年に向き直る。
それを見て、長女と次女もほっとしたように笑う。
青年もそのほほえましい光景に、思わず頬が緩む。
長女と次女は幼女を立たせ、マスクを着けて青年に向き直る。
「命拾いしたな青年よ!三女に免じて見逃してやろう!」
「しかし決して忘れるな!今日と言う日の出来事を!」
「そしてしかと語り継げ!この恐ろしき存在を!」コロコロ
「しかし決して忘れるな!今日と言う日の出来事を!」
「そしてしかと語り継げ!この恐ろしき存在を!」コロコロ
「「「我ら、口裂け女三姉妹!!!さらばだ青年よ!!!」」」
ハーッハッハッハという高笑いと共に、長女は地を駆けはるか彼方へ、次女は真っ赤な傘を差し、幼女を背負って空へと消えた。
あとに残されたものは、切り裂かれたバッグと散乱した荷物、そして呆然と立ち尽くす青年。
あとに残されたものは、切り裂かれたバッグと散乱した荷物、そして呆然と立ち尽くす青年。
「…べっこう飴買って帰るか。」
青年はそうつぶやき、散乱した荷物を拾って帰路に着くのであった。
続かない。