彼女は、酷く憂鬱だった
憂鬱の原因が何なのか、彼女はよくわかっていて
だからこそ、余計に憂鬱だった
憂鬱の原因が何なのか、彼女はよくわかっていて
だからこそ、余計に憂鬱だった
「はぁ……」
寒い中、一人歩く
吐き出すため息が、白く染まっていく
吐き出すため息が、白く染まっていく
……何を考えているのだろう、私は
何を勝手に、嫉妬しているのだろう?
何を勝手に、嫉妬しているのだろう?
今日の昼休み、クラスメイトの獄門寺が、同じくクラスメイトである逢瀬に話し掛けていた
何を話していたのかは、よくわからない
ただ、話していた時の逢瀬の様子は、いつもと違って、なんだか頬が赤くて
その内、二人は教室を出て、どこかに行ってしまって…
何を話していたのかは、よくわからない
ただ、話していた時の逢瀬の様子は、いつもと違って、なんだか頬が赤くて
その内、二人は教室を出て、どこかに行ってしまって…
それを追いかける勇気は、彼女にはなかった
追いかけて、何を話しているのか、盗み聞く事はできたはずだ
追いかけて、何を話しているのか、盗み聞く事はできたはずだ
しかし、できなかった
それをする勇気はなかった
それをする勇気はなかった
もし
もし、万が一
二人が話している内容が、恋愛関連の事であったら?
思い出すのは、赤く染まっていた逢瀬の頬
あの時、獄門寺は彼女に背を向けていたから、彼がどんな表情をしていたのかは、彼女にはわからない
もし、万が一
二人が話している内容が、恋愛関連の事であったら?
思い出すのは、赤く染まっていた逢瀬の頬
あの時、獄門寺は彼女に背を向けていたから、彼がどんな表情をしていたのかは、彼女にはわからない
ただ
間違いなく、彼女は逢瀬に嫉妬した
獄門寺に、何やら内密な話をされている彼女が、とても羨ましかった
羨ましくて、羨ましくて
間違いなく、彼女は逢瀬に嫉妬した
獄門寺に、何やら内密な話をされている彼女が、とても羨ましかった
羨ましくて、羨ましくて
-------妬ましくて
ぴし……と
自分の体の、内側で
何かにヒビが入った音が、したような気がして
ふと、彼女は立ち止まった
自分の体の、内側で
何かにヒビが入った音が、したような気がして
ふと、彼女は立ち止まった
「……」
ぴし、ぴし、と
内側から聞こえてくる、音
内側から聞こえてくる、音
羨ましい
妬ましい
どうして、私じゃないのだろう
どうして、逢瀬だったのだろう
妬ましい
羨ましい
妬ましい
どうして、私じゃないのだろう
どうして、逢瀬だったのだろう
妬ましい
羨ましい
ぴし、ぴし、と
内側から聞こえてくる音が、大きくなるにつれて
彼女の心を、真黒な感情が支配しだす
内側から聞こえてくる音が、大きくなるにつれて
彼女の心を、真黒な感情が支配しだす
どうして、私ではないのか?
どうして、彼女だったのか?
羨ましい羨ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい………
どうして、彼女だったのか?
羨ましい羨ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい………
ぴし、ぴし、ぴし、ぴし…………
彼女の内側の、ヒビが入っていく音は、ますます大きくなり
まるで、卵が内側から破られようとしているその音が最高潮に達しようとした、その時
まるで、卵が内側から破られようとしているその音が最高潮に達しようとした、その時
かしゃり
別の音が、彼女の耳に届いた
かしゃり、かしゃり
何かの金属がぶつかり合う音
まるで、甲冑でも動いているかのような…
別の音が、彼女の耳に届いた
かしゃり、かしゃり
何かの金属がぶつかり合う音
まるで、甲冑でも動いているかのような…
「………ぇ」
思わず、音がした方向に振り返って……彼女は、恐怖で固まってしまった
そこにいたのは…甲冑を纏った、武者
端整な顔立ちに笑みを浮かべているが……その笑みは、まるで獲物を求めた獣を連想させて
その手にもった刀を……ぴたり
彼女に向けてきていた
端整な顔立ちに笑みを浮かべているが……その笑みは、まるで獲物を求めた獣を連想させて
その手にもった刀を……ぴたり
彼女に向けてきていた
「っひ………!?」
彼女が、悲鳴をあげるよりも、前に
ひゅんっ………と、横薙ぎに、彼女に向かって振るわれた、刀
それが、己の身に達するよりも前に……彼女は、意識を失ってしまった
ひゅんっ………と、横薙ぎに、彼女に向かって振るわれた、刀
それが、己の身に達するよりも前に……彼女は、意識を失ってしまった
かちゃん
刀が、鞘に収められる
刀が、鞘に収められる
「……ふむ」
倒れた少女を見下ろす将門
将門に切られたはずの少女の体には、傷一つない
将門に切られたはずの少女の体には、傷一つない
「無茶をしますね」
将門に呆れたように声をかける半透明の女性……盟主
くっく、と将門は笑ってみせる
くっく、と将門は笑ってみせる
「なぁに、この程度、造作ない」
「確かに、あなたならば実体なきものだけを選んで切る事も可能でしょうが…」
「確かに、あなたならば実体なきものだけを選んで切る事も可能でしょうが…」
だとしても、無茶をするものだ
悪魔の囁きの卵が……今、まさに孵ろうとしている気配を感じ取った将門
卵を宿した少女を見つけた将門は…迷う事無く、刀を振るった
彼女の中の、孵ろうとしていた卵だけを目標に……見事に、それだけを切り裂いた
少女の中の切り裂かれた卵は、既に消失している
孵りかけで切り裂かれたその中から、悪魔の囁きが出てくる事はなかった
つまり…卵が孵る前に、何らかの方法で卵を排除する事は、可能なのだろう
それこそ、将門のように、実体なきものだけを切るようにしたりできれば、の話だが
悪魔の囁きの卵が……今、まさに孵ろうとしている気配を感じ取った将門
卵を宿した少女を見つけた将門は…迷う事無く、刀を振るった
彼女の中の、孵ろうとしていた卵だけを目標に……見事に、それだけを切り裂いた
少女の中の切り裂かれた卵は、既に消失している
孵りかけで切り裂かれたその中から、悪魔の囁きが出てくる事はなかった
つまり…卵が孵る前に、何らかの方法で卵を排除する事は、可能なのだろう
それこそ、将門のように、実体なきものだけを切るようにしたりできれば、の話だが
「お前の部下に、結界系能力に長けた者がいたな?そやつの能力でも、卵の状態ならば排斥できるのではないか?」
「……本人に確認をとる必要がありますが、可能かもしれませんね」
「……本人に確認をとる必要がありますが、可能かもしれませんね」
座敷童の能力
卵から孵り、心に深く巣くった状態の悪魔の囁きを排除するのは難しかったが……だが、卵の状態ならば、さほど難しくないかもしれない
問題は、誰に卵が植え付けられているのか?
そこから、探る必要がある事だが
卵から孵り、心に深く巣くった状態の悪魔の囁きを排除するのは難しかったが……だが、卵の状態ならば、さほど難しくないかもしれない
問題は、誰に卵が植え付けられているのか?
そこから、探る必要がある事だが
「卵をばら撒いている者も、見つけなければなりませんね」
「あぁ………見つけたら、斬る」
「あぁ………見つけたら、斬る」
くっくっく、と楽しげに笑う将門
…まったく、この祟り神は
盟主は再び、呆れたようにため息をついた
…まったく、この祟り神は
盟主は再び、呆れたようにため息をついた
「大人しくするように言われているのでしょう?」
「まぁなぁ?だが、目の前に現れたならば、切り捨てて構わぬだろう?」
「……そうですけどね」
「まぁなぁ?だが、目の前に現れたならば、切り捨てて構わぬだろう?」
「……そうですけどね」
かしゃり
楽しげに笑いながら、将門はこの場を後にしようとする
楽しげに笑いながら、将門はこの場を後にしようとする
「…って、ちょっと待ってください。この子、このまま置き去りになさるつもりで?」
「うん?……まぁ、その内、目を覚ますだろう。問題はあるまい」
「うん?……まぁ、その内、目を覚ますだろう。問題はあるまい」
どこに住んでいるのかもわからぬしな、と答える将門
まぁ、確かに、家がわからなければ送ることもできないだろう
ならば、せめて保護でもして……と言いかけて、盟主は止めた
この手の速い祟り神の傍に、年頃の少女を置くのは危険だ、色んな意味で
まぁ、確かに、家がわからなければ送ることもできないだろう
ならば、せめて保護でもして……と言いかけて、盟主は止めた
この手の速い祟り神の傍に、年頃の少女を置くのは危険だ、色んな意味で
「それでは、私がこの少女を保護します………落ち武者は、とっとと首塚に帰りやがりなさい」
「くっかかか!まぁ、そう言うな。機会を見て、また会いに来よう」
「二度と来るんじゃありません」
「くっかかか!まぁ、そう言うな。機会を見て、また会いに来よう」
「二度と来るんじゃありません」
深々と、ため息をついて
盟主は、暗闇の中消えていく祟り神を見送って、少女を保護する事にしたのだった
盟主は、暗闇の中消えていく祟り神を見送って、少女を保護する事にしたのだった
to be … ?