「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-44

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「契約者、か」
「うん、そうなの」

 学校の帰り道
 俺は、クラスメイトの逢瀬 佳奈美と話しながら歩いていた
 てちてちてち
 そんな俺達の後を、花子さんがてちてちと追いかけている
 てちてち、てちてち、てちてちてち
 俺達の影を踏んだりして遊びながら、てちてち無邪気についてくる
 …その姿は、都市伝説や都市伝説契約者以外には、見えない

「契約者がいないと、引っ張り込まれちゃうみたいで…」
「……不便だな」

 …まいった
 水を司る蛇という存在
 水場にさえ放せば、それで安定するのなら良かったのだが
 それなら、その蛇を一旦自分が預かり、家の庭にある池に放せば解決だったのだが…

(契約者がいないとトイレに引きずられる、となるとそれじゃあ駄目だな)

 どうしたら、いいものか
 俺が、考え込んでいると

「……えと、獄門寺君」
「ん?」

 逢瀬に話し掛けられた
 顔をあげれば、逢瀬はやや、不安そうな顔をしていて

「えっと…その、獄門寺君の、知り合いで……この蛇さんと契約してくれそうな人、いるかな?」
「…そうだな…」
『できれば、女性が良いのだが。体温や質感的な意味などで」

 にゅい
 白蛇が、逢瀬のコートの内側から顔を出した
 「にゃーーー!?」と逢瀬が悲鳴じみた声をあげる

「と、突然顔を出さないで!?く、くすぐったいよ!?」
『しかし、我の意見も尊重して欲しいのでな』
「…あー…」

 …まぁ、蛇の言い分もわからない、でもないが
 逢瀬にしてみれば、この時期にもぞりと胸元から出られたら、寒くて仕方ない事だろう
 ……蛇が顔を出している胸元が、一瞬見えてしまいそうになったので視線をそらしておく

「……とりあえず、探しておく」
「う、うん、ありがとう」

 ほっとしたような表情を浮かべてくる逢瀬
 …期待に、答えられればいいのだが
 と、そうしていると、てちてちてち
 花子さんが、こっちに駆け寄ってきた

「み?お話終わった?」
「あぁ……逢瀬、それじゃあ」
「あ、うん。また明日ね」

 交差点、逢瀬と別れて家路につく
 てちてちてち、花子さんは、無邪気に俺の後をついてきていた
 ここ最近、花子さんは夕食時になるまで、俺の家にいる事が多い
 ぱたぱた走り回っても、妹以外には見えていないし、特に問題はないから俺も止めてはいない

(……いや)

 ………もしかしたら
 見えている人が、いるかもしれない
 その可能性に、俺はいつからか気づいてしまっていて
 だが、今まで、それにふれる勇気はなかったのだが

(いい機会だよな)

 そう考えて、俺は門の前に立っていた竜宮さんにただいまといって、家に入っていった



 俺の部屋に付いて、制服から部屋着に着替える
 花子さんは、ぽすんっ、とベッドに倒れこんで、ごろごろしていて
 ……さて

「蛇城さん」

 天井を見上げて、声をかけると

「何でしょうか、若」

 帰ってきた、返事
 やっぱり、そこにいたか

「ちょっと、降りて来てくれるか?」

 …しばしの、沈黙の後
 天井の板が少し動いて……すたんっ、と人影が降りてきた
 み!?と花子さんがびっくりしている…そりゃあ、びっくりするよな、普通

「どうなさいましたか?」

 そう言ってくる人影…蛇城 水智さん
 親父の組の構成員の一人だ
 まだ若くて、大学を卒業したばかりだったはず
 …いや、大学、と言っても、通信教育なんだけどな
 何せ、この人は親父の組の構成員の中でもトップ3にはいる変わり者で、どこよりも天井裏に居るのが落ち着く、という人なのだ
 世間一般で言うと美人の基準に入る人なのだが、多分、勿体無いのだと思う
 常に天井裏に居るのに、なぜかその長い黒髪は常に艶やかだ

「ちょっと、質問していいか?」
「はい」
「……今、この部屋に、何人いる?」

 俺の、その問いかけに
 蛇城さんは、小さく首を傾げた

「…3人、ですが?」
「-----っ!!」

 み?と俺の背後で花子さんが首を傾げている
 三人
 俺と、花子さんと、蛇城さん
 確かに、間違っていない
 だが、それは

「…蛇城さん、花子さんが、見えてるんだな」
「見えるのー??」

 花子さんが、じっと蛇城さんを見詰める
 こくり、蛇城さんは頷いた

「はい。見えています……若がそう仰るという事は、その少女、普通の子供ではないのですね」
「…まぁ、そう言う事だ」

 さぁて
 どっから、話したらいい物か
 困ったように花子さんに視線をやれば、花子さんは「みー?」と首を傾げていて
 ……まぁ、踏み出したからには言うしかない
 俺は、花子さんとの契約の時点から、蛇城さんに話す事にした



 数分後

「なるほど、事情は理解いたしました」

 俺と花子さんの話を、蛇城さんは納得してくれて
 そして、蛇城さんも、花子さんが見える訳を教えてくれた
 とどのつまり…蛇城さんは、昔から霊感じみたものがあったのだそうだ
 お盆の時期とか、じいさんが里帰りしていたのが見えていたとか見えていなかったとか
 なるほど、花子さんも、霊感がある相手だと、自分が見える事があるといっていた
 だから、蛇城さんにはずっと、花子さんが見えていたのか

「…よく、今まで黙っていてくれた」
「はい、その子がトイレに入って消えるのが見えたので……てっきり、若に取り憑いた幽霊の類かと、悩んでいまして。組長たちにもどう相談したらよいものか、と」

 …悩んでたのか
 悩んでたのか、蛇城さん
 良かった、今回聞いておいて!!
 大事になる前に確認して本当に良かった!!

「都市伝説、ですか、そんなものが存在していたのですね」
「いたのー!」

 ぴ!と元気に声を上げる花子さん
 元気で無邪気な花子さんの様子に、蛇城さんは表情を緩めている

「…蛇城さん」
「はい?」
「都市伝説を知った蛇城さんに……相談が、あるんだ」

 乗ってくれれば良いのだが
 いや、本当は巻き込みたくないが…霊感が強いと言う事は、それだけで都市伝説事件に巻き込まれる可能性が出てくる
 ならば、いっそ、契約した方が安全かもしれない
 そう考えて、俺はあの蛇のことを蛇城さんに話し始めた




 ---数日後
 学校町 北区 神社敷地内

「うー…寒いなぁ」

 ぶるっ、と小さく震える少女
 蛇のことを相談したクラスメイトから、契約してくれる人が見付かった、といわれて…その人との待ち合わせ場所に指定されたのが、この場所
 どんな人が来るのだろう?
 期待半分不安半分、辺りを見回していると

「…あ、あの人か……な……」

 …それらしき、人を見て
 いや、違うかな?
 むしろ、あれは都市伝説かな?と不安になる

 長い黒い髪の女の人
 しかし、その顔はサングラスとマスクで覆い隠されており、真っ赤なコートを着ていて、何か大きな細長い筒状の物を布で巻いて隠して持っているようないないような

「…く、口裂け女…?」

 どどどど、どうしよう
 きょろきょろ辺りを見回す、不審人物の姿に、少女は対応に困ってしまうのだった




「花子さん、やっぱ、あれ、口裂け女にしか見えないよな?」
「見えないかも」

 …うん、やっぱり
 蛇城さん……外が苦手なのは、わかるけど、さ
 俺の相談を、承諾してくれたのもありがたいけど、さ
 その不審者全開の格好と、持っていないと落ち着かないからとライフルを隠し持つのはやめてくれ
 少し遠くから蛇城さんの様子を見て、俺は軽く頭痛を覚えたのだった










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