「-----っ黒服が!?」
「組織」の黒服だと言う少年から、黒服と望の絶望的な未来を聞かされて以来、ずっと警戒はしてきていた
だと言うのに……まんまと、黒服を、捕えられた
その事実に、翼は己の至らなさを実感する
だと言うのに……まんまと、黒服を、捕えられた
その事実に、翼は己の至らなさを実感する
何故、もっと警戒しなかった
何故、ずっと傍にいなかった
何故、ずっと傍にいなかった
…後悔しても、意味などない
そんな事をする前に、すべき事はある
聞かされているタイムリミットは、黒服の誘拐から、二日の間
今日、黒服が拉致されたのならば……今日中に、決着をつける!
そんな事をする前に、すべき事はある
聞かされているタイムリミットは、黒服の誘拐から、二日の間
今日、黒服が拉致されたのならば……今日中に、決着をつける!
『どうやら、相手は彼を餌に、望ちゃんをおびき出そうとしているようだな』
電話の向こうで、直希が淡々と…だが、どこか焦りを含んだ声で、そう言って来た
黒服が拉致された事を、翼にたった今伝えたのは、この直希だ
彼が、どんな情報網を持ってして、それを知る事が出来たのか…翼は、知らない
だが、翼は友人である直希を信じている
だから、今、この直希の言葉を信じるのだ
黒服が拉致された事を、翼にたった今伝えたのは、この直希だ
彼が、どんな情報網を持ってして、それを知る事が出来たのか…翼は、知らない
だが、翼は友人である直希を信じている
だから、今、この直希の言葉を信じるのだ
「黒服の居場所、わかるか!?」
『西区の廃工場だ、場所は……』
『西区の廃工場だ、場所は……』
直希から場所を聞きながらも、翼はもう、動いている
上着を羽織り、そこに向かおうとしている
上着を羽織り、そこに向かおうとしている
『…翼、まさかだが、君一人で行くつもりか?』
「時間がないんだよ」
「時間がないんだよ」
そうだ、時間がないのだ
早く
早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く
早く、助け出さなければ
早く
早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く
早く、助け出さなければ
脳裏で、最悪の状況がフラッシュバックする
真っ赤な光景が蘇る
真っ赤な光景が蘇る
駄目だ
そんな事は、絶対にさせない
黒服も望も、死なせてなるものか!
そんな事は、絶対にさせない
黒服も望も、死なせてなるものか!
『僕も、行く。頼むから、一人で突っ込むのは………っ』
げほげほと、受話器の向こうで咳き込む声が聞こえてきた
翼は小さく苦笑し、告げる
翼は小さく苦笑し、告げる
「お前、今、風邪拗らせてるんだろ?いいから、ちゃんと休んどけ。栄養あって消化にいいもん食って温かくして寝とけ。汗かいたらちゃんと着替えろよ?」
『っこれくらい、大丈夫、だ、だから』
「………直希」
『っこれくらい、大丈夫、だ、だから』
「………直希」
今は、まだ、辛うじて友人を気遣えるだけの余裕が、ほんの僅か、ある
だが、それももうそろそろ、限界で
だからこそ、最後に翼は直希を気遣い、こう言う
だが、それももうそろそろ、限界で
だからこそ、最後に翼は直希を気遣い、こう言う
「…ありがとうな。俺は、大丈夫だから。あの時みたく………お前には、迷惑かけないから」
『-----ッ翼、待て!!』
『-----ッ翼、待て!!』
珍しく声を荒げた直希の言葉を遮るように、ぶちり、通話を切る
そのまま、携帯の電源も切った
そのまま、携帯の電源も切った
これでいい
これで、いいのだ
これで、いいのだ
ちゅう、と、ケージから勝手に抜け出してきたノロイが、ちょろちょろと翼の足を登ってきて、肩まで乗ってきた
じ、とつぶらな瞳で翼を見つめ、首を傾げてくる
翼は小さく苦笑すると、ノロイを摘んで、テーブルの上に降ろした
じ、とつぶらな瞳で翼を見つめ、首を傾げてくる
翼は小さく苦笑すると、ノロイを摘んで、テーブルの上に降ろした
「…ノロイ、お前は、詩織の傍にでも、いてやってくれよ」
ちゅちゅちゅ、と翼に付いていこうとするノロイ
だが、翼はそれを制する
だが、翼はそれを制する
「……必ず、黒服も、望も、連れて帰ってくるから」
強く
強く、決意を込めて、そう言って
翼は、家を飛び出した
強く、決意を込めて、そう言って
翼は、家を飛び出した
家の中、ノロイだけが残されて
ちゅう……、と心細そうに、鳴いた
ちゅう……、と心細そうに、鳴いた
殺してやる
殺してやる、殺してやる、殺してやる
憎悪が、翼の中に渦巻く
相手の目的など、知った事か
過激派の目論見など、知った事か
そんな事はどうでもいい
ただ、どんな理由があろうとも、黒服と望を傷つけることは許さない
家族に手を出す事など許さない!!
殺してやる、殺してやる、殺してやる
憎悪が、翼の中に渦巻く
相手の目的など、知った事か
過激派の目論見など、知った事か
そんな事はどうでもいい
ただ、どんな理由があろうとも、黒服と望を傷つけることは許さない
家族に手を出す事など許さない!!
「首塚」は、復讐を肯定する
もし、狙いが復讐ならば、それを否定するつもりはない
だが、だからといって、家族が傷つけられるのを黙ってみているつもりなどないのだ
他人の復讐の対象が護るべきものならば、それを全力を持って阻止する
それが、「首塚」構成員側近組としての考えであると同時に、翼の考えだ
もし、狙いが復讐ならば、それを否定するつもりはない
だが、だからといって、家族が傷つけられるのを黙ってみているつもりなどないのだ
他人の復讐の対象が護るべきものならば、それを全力を持って阻止する
それが、「首塚」構成員側近組としての考えであると同時に、翼の考えだ
大切な相手を護る為ならば、この手がどれだけ血に染まろうが構わない
大切な相手を傷つけようというのなら、殺そうというのなら、そいつは敵だ
敵ならば、殺す
ただそれだけ、非常にシンプルで単純だ
大切な相手を傷つけようというのなら、殺そうというのなら、そいつは敵だ
敵ならば、殺す
ただそれだけ、非常にシンプルで単純だ
翼の心が、憎悪に染まる
護りたい家族を護る為に、その家族を殺そうとする相手への憎悪が膨れていく
護りたい家族を護る為に、その家族を殺そうとする相手への憎悪が膨れていく
翼の中の力が、憎悪に染まり力を増していく
…それは、一歩間違えれば、翼自身をも焼き尽くして、全てを巻き込んで燃え広がり続けそうなほどに
「翼………翼!?くそ、あいつ、携帯の電源まで切ったな………!?」
げほげほと、再び咳き込みだす直希
ベッドにもぐりこんだその状態から、咳き込みながらも起き上がろうとして
ベッドにもぐりこんだその状態から、咳き込みながらも起き上がろうとして
「いけません、我等が主」
しかし、「光輝の書」から勝手に出てきたザフキエルに、止められた
他の天使達もわらわらと出てきて、直希を強引にベッドに寝かせる
他の天使達もわらわらと出てきて、直希を強引にベッドに寝かせる
「っ放せ、ザフキエル、ザドキエル!僕も、翼のところに……!」
「いけません。熱が何度あると思っていらっしゃるのです。この状態で動くなど、自殺行為ですよ」
「-----ッ僕の命など、どうでもいい!」
「いけません。熱が何度あると思っていらっしゃるのです。この状態で動くなど、自殺行為ですよ」
「-----ッ僕の命など、どうでもいい!」
自分を気遣ってくる天使達の言葉に、直希は半ば叫ぶようにそう言った
その拍子に、また咳き込んでしまい…確かに、天使達の言うとおり、この体調で動くなど、自殺行為だ
その拍子に、また咳き込んでしまい…確かに、天使達の言うとおり、この体調で動くなど、自殺行為だ
元々、直希は体が丈夫ではない
「光輝の書」との契約により、辛うじて日常生活が送れるレベルまで回復しているものの……本来ならば、その命、とうの昔に消えていたはずのもの
今でも体は弱く、こうやって風邪を引けばすぐにこじらせ、寝込んでしまう
…そんな自分の体の弱さが、直希は恨めしい
そのせいで、こんな大事な時に、動く事ができないなど…
「光輝の書」との契約により、辛うじて日常生活が送れるレベルまで回復しているものの……本来ならば、その命、とうの昔に消えていたはずのもの
今でも体は弱く、こうやって風邪を引けばすぐにこじらせ、寝込んでしまう
…そんな自分の体の弱さが、直希は恨めしい
そのせいで、こんな大事な時に、動く事ができないなど…
「…どうでもいいなどと、仰らないでください、我等が主」
「本当の、事を言ったまでだよ………あぁ、そうさ。翼の力になるのなら…………僕の命など、どうでも…いい」
「本当の、事を言ったまでだよ………あぁ、そうさ。翼の力になるのなら…………僕の命など、どうでも…いい」
苦しげに咳き込みながら、ぼそぼそと、口惜しげに直希は呟く
「…翼の、心を傷つけてしまった、償いを………僕は、まだ、果たせていない。だから……翼の、力になって……償い、たいのに」
力になりたくて
だから、友人であるモンスの天使契約者 門条 天地から得た情報を、翼に流した
だが、それだけでは足りないのだ
戦いに赴くであろう翼の、力になりたい……!
だから、友人であるモンスの天使契約者 門条 天地から得た情報を、翼に流した
だが、それだけでは足りないのだ
戦いに赴くであろう翼の、力になりたい……!
痛々しいほどに、自分の身など省みず起き上がろうとする直希を…見て、いられなかったのだろう
「……申し訳ありません、我等が主」
そっと、ザドキエルの手が、直希の額に触れた
慈悲の天使の手は、直希の朦朧とし始めていた意識を包み込み、半ば強引に眠りへと付かせた
そうでもしなければ、直希はいつまでも翼の元へ行こうとし続けて、治る風邪も治らなくなってしまう
慈悲の天使の手は、直希の朦朧とし始めていた意識を包み込み、半ば強引に眠りへと付かせた
そうでもしなければ、直希はいつまでも翼の元へ行こうとし続けて、治る風邪も治らなくなってしまう
傷つけてしまった、と後悔し続けている
自分のせいで、と後悔し続けている
だからこそ、その償いをしようと焦り続けて
だが、結局、まだ償えていないと嘆き続ける
自分のせいで、と後悔し続けている
だからこそ、その償いをしようと焦り続けて
だが、結局、まだ償えていないと嘆き続ける
もう、とっくに許されているのに
自分はまだ許されてはいけないのだと、あがき続ける
自分はまだ許されてはいけないのだと、あがき続ける
もう、許されてもいいのだと
ようやく彼自身が認めるまで、あとどれくらい?
ようやく彼自身が認めるまで、あとどれくらい?
to be … ?