ケモノツキ_01_三月の夜と昼のあわいに
茜色に染まる学校町を、ジャージ姿の少年が走る。
そのスピードはジョギングなどという生易しいものではなく、ほぼ全力疾走に近い。
そのスピードはジョギングなどという生易しいものではなく、ほぼ全力疾走に近い。
「20m先、左の路地へ入ってください。その後、10m先の標識を右へ。」
「…はぁ…はぁ…っ、はい!」
「…はぁ…はぁ…っ、はい!」
イヤホンマイクから聞こえる声に従い、少年は路地へと駆け出す。
後ろからは、コーラのボトルを携えた男が追ってきている。
後ろからは、コーラのボトルを携えた男が追ってきている。
「待てやガキィ!!逃げてんじゃねええええ!!」
さきほどから数分は追いかけっこを続けているが、男は一向に疲れた様子を見せない。
「はぁ…はぁ……。そろそろ…っ、しんどいです…っ!」
「分かりました。30m先、左方向に廃工場があります。そこに黒服を向かわせますので、彼らの到着まで隠れていてください。」
「分かりました。30m先、左方向に廃工場があります。そこに黒服を向かわせますので、彼らの到着まで隠れていてください。」
少年は高い塀に囲まれた敷地の中に走りこむ。
しかしそこには工場などは無く、広い空き地が広がっていた。
しかしそこには工場などは無く、広い空き地が広がっていた。
「黒服さん!ここ空き地だよ!?」
「…おかしいですね、こちらの記録ではそこは工場のはずですが…。」
「そんな事言っても、ないものはないんですよ!」
「…おかしいですね、こちらの記録ではそこは工場のはずですが…。」
「そんな事言っても、ないものはないんですよ!」
とにかくこの空き地から出ようと思い振り返ると、入り口にさきほどの男が立っていた。
持っているコーラを一気に飲み干し、ボトルを投げ捨てる男。
そしてポケットからバタフライナイフを取り出すと、その切っ先を少年に向けた。
持っているコーラを一気に飲み干し、ボトルを投げ捨てる男。
そしてポケットからバタフライナイフを取り出すと、その切っ先を少年に向けた。
「あ~あ、てめえに飲ませようと思ってたのに、ついつい飲んじまったぜ。こりゃあ、てめえを拉致って飲ませるしかねえなぁ…。」
「…何を…言ってるんですか?」
「…何を…言ってるんですか?」
右手のナイフを揺らしながら、男は少年に歩み寄る。
少年は肩で息をしながら、じりじりと後ずさりする。
少年は肩で息をしながら、じりじりと後ずさりする。
「橘野悠司、その男は何と?」
「持ってるコーラを飲んじゃったから拉致って飲ませてやるぞ、と…。それより、ここから逃げるルートは?」
「いいえ、逃げずにその場で待機していてください。もしくは、その男を倒してもかまいません。」
「えっ、待機って…どういうことですか!?」
「最近のコーク・ロア騒動にその男が関わっている可能性がありますので、『組織』で回収して関連性を調べます。
あなたが逃げることが、その男を逃がす結果につながりかねません。ご協力を。」
「今まで散々走らせておいて!?」
「最新の情報に基づいた判断です。後は”あなたたち”にお任せしますので、黒服の到着まで男を引き止めてください。」
「持ってるコーラを飲んじゃったから拉致って飲ませてやるぞ、と…。それより、ここから逃げるルートは?」
「いいえ、逃げずにその場で待機していてください。もしくは、その男を倒してもかまいません。」
「えっ、待機って…どういうことですか!?」
「最近のコーク・ロア騒動にその男が関わっている可能性がありますので、『組織』で回収して関連性を調べます。
あなたが逃げることが、その男を逃がす結果につながりかねません。ご協力を。」
「今まで散々走らせておいて!?」
「最新の情報に基づいた判断です。後は”あなたたち”にお任せしますので、黒服の到着まで男を引き止めてください。」
少年は体格がいい方でもなく、持っているものといえば携帯電話と財布、そして耳に取り付けたイヤホンマイク。
対する男は190cmに届くかという大柄な体で、ナイフを持っている。
普通に考えれば、黒服の指示は明らかに無謀である。
対する男は190cmに届くかという大柄な体で、ナイフを持っている。
普通に考えれば、黒服の指示は明らかに無謀である。
「さあて…適当に痛めつけて大人しくしてもらおうかああああああ!!!!」
男は叫びながら駆け出し、右手のナイフで少年に切りかかる。しかしその攻撃は空を薙いだ。
少年は男から数歩離れたところに立ち、うっすらと微笑みを浮かべながら男を見据えていた。
少年は男から数歩離れたところに立ち、うっすらと微笑みを浮かべながら男を見据えていた。
「もう、油断しちゃだめじゃない、主様。」
発せられた声は少年のもの。だが、その口調は明らかに先ほどとは異なっていた。
「主様一人の体じゃないんだから、もっと自分を大切にしてね?」
『いやミズキ、確かにその通りなんだけど、その発言はなんか違う!』
「あら、だって事実じゃない。それはそうと黒服、主様に無茶はさせないでくれる?」
「橘野悠司の能力を総合的に考えた上で、十分可能であると判断しました。」
「ま、あたしたちを当てにしてくれるのはいいんだけどね。主様の体には傷一つ付けさせないわよ?」
『いやミズキ、確かにその通りなんだけど、その発言はなんか違う!』
「あら、だって事実じゃない。それはそうと黒服、主様に無茶はさせないでくれる?」
「橘野悠司の能力を総合的に考えた上で、十分可能であると判断しました。」
「ま、あたしたちを当てにしてくれるのはいいんだけどね。主様の体には傷一つ付けさせないわよ?」
女言葉で話し続ける少年。声質が高いせいか、さほど違和感は無い。
「避けてんじゃねえよガキがぁ!!」
男は再び少年に向けてナイフを振るう。
しかし少年はあわてる様子も無く上体を後ろにそらし、その攻撃をかわす。
続けざまに繰り出される攻撃を、地に伏せ、飛び退き、受け流し、さながら猫のようなしなやかな動きで次々とかわしていく。
しかし少年はあわてる様子も無く上体を後ろにそらし、その攻撃をかわす。
続けざまに繰り出される攻撃を、地に伏せ、飛び退き、受け流し、さながら猫のようなしなやかな動きで次々とかわしていく。
「ねえ黒服。他の黒服が来るまで、あとどれくらい?」
「早く見積もって20分。遅くとも30分後には到着すると思われます。」
「20分かー…。あたしは大丈夫だけど、このあとの主様が心配だなぁ。」
『早いに越したことは無いけど、それくらいなら十分我慢できるし、心配しなくても大丈夫だよ。』
「早く見積もって20分。遅くとも30分後には到着すると思われます。」
「20分かー…。あたしは大丈夫だけど、このあとの主様が心配だなぁ。」
『早いに越したことは無いけど、それくらいなら十分我慢できるし、心配しなくても大丈夫だよ。』
男の攻撃をひらりひらりと避けながら、少年は半ば独り言のようにつぶやく。
『そういうことなら俺に代われ!3分で片付けてやるよ!』
『そうですね、この場合はタイガに任せるのが適当と思われます。』
『タイガはともかくタマモまで!?僕のことなら大丈夫だよ?』
『主の負担もありますが、あの男が主に固執する保障がありません。黒服の到着前に、この場を去る可能性があります。』
『う…それはたしかに…。』
『そうですね、この場合はタイガに任せるのが適当と思われます。』
『タイガはともかくタマモまで!?僕のことなら大丈夫だよ?』
『主の負担もありますが、あの男が主に固執する保障がありません。黒服の到着前に、この場を去る可能性があります。』
『う…それはたしかに…。』
言葉に詰まる”少年”。
『じゃあ決まりだな!おい雌猫、さっさと代わりやがれ!』
「うるさい馬鹿犬!主様、ホントにタイガと代わってもいいの?」
『うん、大丈夫。でもタイガ、あいつに大怪我させるのは駄目だからね!?』
「ちょこまかと逃げんじゃねええええ!!!」
「うるさい馬鹿犬!主様、ホントにタイガと代わってもいいの?」
『うん、大丈夫。でもタイガ、あいつに大怪我させるのは駄目だからね!?』
「ちょこまかと逃げんじゃねええええ!!!」
男は攻撃が当たらないことに苛立ち、少年を捕まえようとナイフを投げ捨てて覆いかぶさってくる。
だが少年は男の股の間をスルリと抜け、そのまま男の尻を思い切り蹴飛ばした。
先の勢いと相まって、そのまま前のめりに倒れる男。
あわてて立ち上がり振り返ると、先ほどとはうってかわってギラギラと目を輝かせながら男を睨む少年がいた。
だが少年は男の股の間をスルリと抜け、そのまま男の尻を思い切り蹴飛ばした。
先の勢いと相まって、そのまま前のめりに倒れる男。
あわてて立ち上がり振り返ると、先ほどとはうってかわってギラギラと目を輝かせながら男を睨む少年がいた。
「さあて、久しぶりの獲物だ…じっくりなぶっていたぶってぶっ殺してやるよおおお!!!」
『殺しはもっと駄目えええええ!!!?』
『殺しはもっと駄目えええええ!!!?』
”少年”の叫びを意に介さず、少年は男へ向かって走り出す。
虚を突かれた男に少年の飛び蹴りが決まり、もんどりうって再び倒れる男。
立ち上がろうと顔を上げたとき、少年の靴が眼前に迫っていた。
虚を突かれた男に少年の飛び蹴りが決まり、もんどりうって再び倒れる男。
立ち上がろうと顔を上げたとき、少年の靴が眼前に迫っていた。
「おせえよボケェ!!」
「ぐガっ!?」
「ぐガっ!?」
サッカーボールキックが顔面に入り、その勢いで男の頭が地面にバウンドする。
少年はすぐさま振り返り、瓦割りの要領で男の顔面に拳を打ち下ろす。
そして男の髪を掴んで引っ張り上げ、無理やり立ち上がらせる。
少年はすぐさま振り返り、瓦割りの要領で男の顔面に拳を打ち下ろす。
そして男の髪を掴んで引っ張り上げ、無理やり立ち上がらせる。
「この程度で倒れてんじゃねえ…ぞッ!」
ぱっと手を離し、体を回転させながら後ろ蹴りを放つ。
その蹴りは腹のど真ん中を捉え、男はコンクリートの壁に背中から叩き付けられる。
げふっ、と咳き込む音と共に口から血を吐く男。
その蹴りは腹のど真ん中を捉え、男はコンクリートの壁に背中から叩き付けられる。
げふっ、と咳き込む音と共に口から血を吐く男。
『ちょっ、タイガ、やりすぎ!本当に死ぬって!』
「ああん?甘いぜ主よぉ…。二度と起き上がれない程度に痛めつけるくらいが丁度良いんだよ。」
「ああん?甘いぜ主よぉ…。二度と起き上がれない程度に痛めつけるくらいが丁度良いんだよ。」
少年は更なる追撃を行うために、壁にもたれかかってぐったりしている男へと歩みを進める。
男の胸倉を掴もうと手を伸ばした瞬間、男は突然カッと目を見開き、少年を殴りつけた。
顔を殴られた少年はよろけ、男との距離をとる。口の中に血の味が広がる。
男の胸倉を掴もうと手を伸ばした瞬間、男は突然カッと目を見開き、少年を殴りつけた。
顔を殴られた少年はよろけ、男との距離をとる。口の中に血の味が広がる。
「…はん、まだまだ元気そうじゃねーか。やり甲斐があるってもんだぜ。」
『ちょっと馬鹿犬!主様の体に傷つけてんじゃないわよ!』
「黙れ雌猫、こんなん効いたうちに入らねーよ。」
『誰もあんたのダメージなんか気遣ってないわよ!主様を傷つけるなって言ってるの!』
「ぎゃーぎゃーうるせえなぁ。こんなんツバ付けとゃそのうち治る。」
「てめぇこの餓鬼…調子に…ッゲフッ、乗ってんじゃねーぞ!!」
『ちょっと馬鹿犬!主様の体に傷つけてんじゃないわよ!』
「黙れ雌猫、こんなん効いたうちに入らねーよ。」
『誰もあんたのダメージなんか気遣ってないわよ!主様を傷つけるなって言ってるの!』
「ぎゃーぎゃーうるせえなぁ。こんなんツバ付けとゃそのうち治る。」
「てめぇこの餓鬼…調子に…ッゲフッ、乗ってんじゃねーぞ!!」
咳き込み、血を吐き、ふらつきつつも、少年に悪態をつく男。
その姿を見て、少年は楽しそうに笑みを浮かべる。
その姿を見て、少年は楽しそうに笑みを浮かべる。
「いいねぇ、かかってこいよ。今度は立ち上がれなくなるまで痛めつけてやるぜ。」
『…あの男はもしかしたら、”痛めつける”では止まらないかもしれませんね。』
『どういうこと、タマモ?』
『あの男にはコーク・ロアの麻薬作用が働いていると思われます。痛みも疲れも恐怖も感じず、体が壊れるまで戦い続ける狂戦士…とでも言いましょうか。』
「つまり、二度と動けないようにぶっ殺せばいいんだろ?」
『殺すのは駄目だってば!タマモ、どうしよう?』
『骨を折るなどして動けなくするというのも一つの方法ですが、私が代わるという手もあります。ただ、そうすると主の負担が甚大になってしまいますが…。』
『僕なら大丈夫。このままじゃあいつが本当に死んじゃうかもしれないし、それよりはましだよ。』
「けっ、甘すぎて反吐が出るぜ…。あ~あ、萎えちまった…後は勝手にしやがれ。」
『…あの男はもしかしたら、”痛めつける”では止まらないかもしれませんね。』
『どういうこと、タマモ?』
『あの男にはコーク・ロアの麻薬作用が働いていると思われます。痛みも疲れも恐怖も感じず、体が壊れるまで戦い続ける狂戦士…とでも言いましょうか。』
「つまり、二度と動けないようにぶっ殺せばいいんだろ?」
『殺すのは駄目だってば!タマモ、どうしよう?』
『骨を折るなどして動けなくするというのも一つの方法ですが、私が代わるという手もあります。ただ、そうすると主の負担が甚大になってしまいますが…。』
『僕なら大丈夫。このままじゃあいつが本当に死んじゃうかもしれないし、それよりはましだよ。』
「けっ、甘すぎて反吐が出るぜ…。あ~あ、萎えちまった…後は勝手にしやがれ。」
そう言うと少年はふっと目を閉じ、ゆっくりと瞼を開く。
そして射抜くような眼差しで、男の目をまっすぐに見据える。
そして射抜くような眼差しで、男の目をまっすぐに見据える。
「主は優しいですね。その優しさは、主の一番の強さだと思いますよ。」
『そこが主様のいいところ~♪』
『盛ってんじゃねーぞ雌猫。耳障りだから黙ってろ。』
『なにさ!主様に怪我させただけの馬鹿犬のくせに!』
『ああん!?あのままやってりゃ、あいつをぶっ殺して終わってんだよ!』
『ミズキもタイガも落ち着いて!?二人とも十分頑張ってくれたから!』
『そこが主様のいいところ~♪』
『盛ってんじゃねーぞ雌猫。耳障りだから黙ってろ。』
『なにさ!主様に怪我させただけの馬鹿犬のくせに!』
『ああん!?あのままやってりゃ、あいつをぶっ殺して終わってんだよ!』
『ミズキもタイガも落ち着いて!?二人とも十分頑張ってくれたから!』
「てめえ、半殺し程度で済むと思うなよおおおおお!!!」
男は少年に襲い掛かろうと走るが、少年の眼前でガクリと地面に膝をついた。
立ち上がろうとするが下半身に力が入らない。足を見ると、両脚が変な方向に曲がっている。
それも骨が折れた様子ではなく、まるで骨がなくなったかのようにぐにゃりと弧を描いていた。
立ち上がろうとするが下半身に力が入らない。足を見ると、両脚が変な方向に曲がっている。
それも骨が折れた様子ではなく、まるで骨がなくなったかのようにぐにゃりと弧を描いていた。
「お、おおお俺の脚があああああ!!!?!?」
「あなた、さっきコーラを飲んでましたよね。【コーラを飲むと骨が解ける】って聞いたことありませんか?」
「あなた、さっきコーラを飲んでましたよね。【コーラを飲むと骨が解ける】って聞いたことありませんか?」
それもコーク・ロアの一つとして語られている内容の一つだ。
しかし、男の契約しているコーク・ロアにそんな能力は無いし、あったとしても自分の意思と無関係に発動するはずが無い。
半ばパニックに陥る男。続いて上体を支えていた両腕までもが、足と同じようにぐにゃりと曲がった。
支えを失った男の体が地面へと倒れる。
しかし、男の契約しているコーク・ロアにそんな能力は無いし、あったとしても自分の意思と無関係に発動するはずが無い。
半ばパニックに陥る男。続いて上体を支えていた両腕までもが、足と同じようにぐにゃりと曲がった。
支えを失った男の体が地面へと倒れる。
「先ほどの威勢も何も無い、無様な姿ですね。」
「ちくしょう!どうなってやがる!?てめえは何なんだ!!?!」
「ちくしょう!どうなってやがる!?てめえは何なんだ!!?!」
顔を横に向けてうつぶせになっている男。その頭部に少年の足がかかる。
風船を潰さない程度の力で頭を踏む。頭蓋骨すら柔らかくなってるようで、ぷにぷにと弾力がかっている。
男はどうにか抗おうとするが、体はもぞもぞとうごめくだけで、思うように動かない。
風船を潰さない程度の力で頭を踏む。頭蓋骨すら柔らかくなってるようで、ぷにぷにと弾力がかっている。
男はどうにか抗おうとするが、体はもぞもぞとうごめくだけで、思うように動かない。
「このまま力を入れたら…どうなるんでしょうね?」
「おい、待て!止めろ!いや、止めてくれ!!!」
「おい、待て!止めろ!いや、止めてくれ!!!」
徐々に足に力を入れていく少年。頭の形が風船のように歪んでいく。
男の顔が恐怖で歪む。少年の口元がにやりと歪む。
男の顔が恐怖で歪む。少年の口元がにやりと歪む。
「麻薬漬けの脳でも恐怖は感じるんですね。一つ勉強になりました。」
「俺が悪かった!もう他人は襲わない!!コーク・ロアの契約も解除する!!あいつにも関わらない!!頼む、殺さないでくれ!!」
「ふむ…。では、もう二度と他人を傷つけないと誓えますか?」
「ああ誓う!!だからお願いだ、助けてくれ!!!」
「俺が悪かった!もう他人は襲わない!!コーク・ロアの契約も解除する!!あいつにも関わらない!!頼む、殺さないでくれ!!」
「ふむ…。では、もう二度と他人を傷つけないと誓えますか?」
「ああ誓う!!だからお願いだ、助けてくれ!!!」
その言葉を聞いた少年は微笑み、足を持ち上げ
「ダメです。」
踏みおろした。
*
路地裏に立つ少年。その足元には、仰向けで泡を吹いて気絶している男。
『何を見せたの、タマモ?』
「コーク・ロアで骨が溶けた幻覚を少々。」
「コーク・ロアで骨が溶けた幻覚を少々。」
それだけであのような状態になるのかと疑問を抱いたが、結果的にほぼ無傷で無力化できたので気にしないことにした。
「橘野悠司、終わりましたか?」
イヤホンから黒服の声が聞こえる。
「ええ、男は完全に伸びてます。しばらくは目を覚まさないでしょう。」
「分かりました。もうじきその男を回収しに黒服が到着しますが、自宅までお送りしましょうか?」
『…黒服さんに迷惑はかけられないよ。自分で帰れるから大丈夫。』
「主は大丈夫だと言っています。もう帰ってもよろしいですか?」
「はい、問題ありません。お疲れ様でした。」
「分かりました。もうじきその男を回収しに黒服が到着しますが、自宅までお送りしましょうか?」
『…黒服さんに迷惑はかけられないよ。自分で帰れるから大丈夫。』
「主は大丈夫だと言っています。もう帰ってもよろしいですか?」
「はい、問題ありません。お疲れ様でした。」
プツン、と音がして通信が切れる。少年はイヤホンを外し、ポケットにしまいこむ。
「さて主、体をお返ししてよろしいですか?」
『ふぅ…。うん、大丈夫だよ。』
『またぶっ倒れるんじゃねえだろうなぁ?』
『主様はそんなに弱くないってば!』
『ふぅ…。うん、大丈夫だよ。』
『またぶっ倒れるんじゃねえだろうなぁ?』
『主様はそんなに弱くないってば!』
少年は静かに目を閉じる。直後、少年の体がその場に崩れ落ちる。
数キロを全力疾走したような疲労、体中の筋肉が切れたような痛み、内側から割れるような頭痛。
少年の体をさまざまな苦痛が襲い掛かる。
数キロを全力疾走したような疲労、体中の筋肉が切れたような痛み、内側から割れるような頭痛。
少年の体をさまざまな苦痛が襲い掛かる。
『ほらみろ、やっぱりぶっ倒れてんじゃねーか。』
『主様ぁ…大丈夫?』
「久しぶりの…三人同時は…っ、きついや…。」
『主様ぁ…大丈夫?』
「久しぶりの…三人同時は…っ、きついや…。」
それは、複数の能力を連続使用したゆえの重い代償。
少年は歯を食いしばって体に力を込め、ゆっくりと立ち上がる。
少年は歯を食いしばって体に力を込め、ゆっくりと立ち上がる。
「橘野悠司だな?」
かけられた声に視線を上げると、真っ黒なスーツにサングラスをつけた数名の大人が立っていた。
その後ろ、空き地の入り口には、黒塗りの高級車が停まっている。
その後ろ、空き地の入り口には、黒塗りの高級車が停まっている。
「あの男は、しばらく目覚めないと思います。…すみませんが、あとはお願いします。」
「既に報告は受けている。ご苦労だった。」
「既に報告は受けている。ご苦労だった。」
少年は黒服たちに一礼し、よろよろと歩きながら空き地を後にする。
少年は気づかない。遥か後方から聞こえる、犬の群れが駆けてくる音に。
その後、空き地で起こった出来事も、このときの少年は知るよしもなかった。
その後、空き地で起こった出来事も、このときの少年は知るよしもなかった。
【ケモノツキ_01 _三月の夜と昼のあわいに】 終