ドクター42
くちゅん、と小さなくしゃみが廃ビルの一室に響く
くしゃみを発した少女を囲む犬達が、心配そうに顔を上げる
「だいじょうぶ、です。さむい、なれる、います」
少女にとってはそれよりも、犬達を家に帰せない事、家主である総統に心配を掛けているだろう事が辛かった
「くろいひと、あきらめる、まだ、です……ながい、いる、けが、しぬ、よくない、です」
彼女の能力が発動している間は、建物は迷宮となる他にゾンビやゴーストが徘徊するようになる
ある程度戦えればそこいらのホラーゲームよりは楽な相手ではあるものの、ゲームと違い長く居れば肉体的にも精神的にも疲労していくだろう
「でんわ、どこ、ある、れんらく、できる、です。かえる、おもう、はなす、ねがう、です」
建物の中に電話があれば、それを介して話す事もできる
だが既に設備の大半が取り払われた廃ビルの中には、使えそうな電話は設置されていなかった
くしゃみを発した少女を囲む犬達が、心配そうに顔を上げる
「だいじょうぶ、です。さむい、なれる、います」
少女にとってはそれよりも、犬達を家に帰せない事、家主である総統に心配を掛けているだろう事が辛かった
「くろいひと、あきらめる、まだ、です……ながい、いる、けが、しぬ、よくない、です」
彼女の能力が発動している間は、建物は迷宮となる他にゾンビやゴーストが徘徊するようになる
ある程度戦えればそこいらのホラーゲームよりは楽な相手ではあるものの、ゲームと違い長く居れば肉体的にも精神的にも疲労していくだろう
「でんわ、どこ、ある、れんらく、できる、です。かえる、おもう、はなす、ねがう、です」
建物の中に電話があれば、それを介して話す事もできる
だが既に設備の大半が取り払われた廃ビルの中には、使えそうな電話は設置されていなかった
―――
「まずいな」
「ああ、まずいな」
特にこれといった特殊能力の無いただの黒服である二人は、幸いにして光線銃を所持していたためにゾンビやゴーストに対抗する事ができていた
「これは犬を操る能力とは関係無いな」
「多重契約者か、それとも仲間がいたか」
背中合わせに座り込んで休憩していた二人には、互いの表情は見えない
「……もしかして関係無い奴だったとか」
「だとしたら何で俺達は閉じ込められてるんだ」
「追い掛けられてびっくりしたからとか」
「……んなわきゃないだろ」
「そうだな、楽観視し過ぎた」
「とりあえず増援を頼むか」
「携帯は通じそうか?」
「電波妨害は無いな」
黒服の片割れは取り出した携帯電話を確認し、信頼できそうな人物を選んで電話を掛ける、が
《こちらは『組織』留守番電話サービスです。お掛けになった対象の黒服は現在電波の届かないところにいるか、携帯電話の電源を――》
「Dさん繋がらねぇ」
「あの人は忙しそうだから仕方ない」
気を取り直して次の番号に
《こちらは『組織』留守番電話サービスです。お掛けになった対象の黒服は現在睡眠中です。別の手段で連絡するか直接叩き起こしに――》
「Yさんもダメだ」
「まあ割といつもの事だな」
溜息混じりにまた違う番号に
《こちらは『組織』留守番電話サービスです。お掛けになった対象の黒服は男性からの着信を拒否しています。女体化ガスなどを吸引の上改めて――》
「ダメだ、Hさんは色んな意味でダメだ」
「どうする、Kさんは嫌だぞ流石に」
「あの人アメリカに飛ばされてる、安心しろ」
「更に上に増援要請をするのは色々まずいな」
「派閥争いでゴタゴタしてるしな、いつもの事だが」
「……マジでどうしようか、この状況」
二人は携帯の電話帳一覧を見ながら頭を抱えていた
「ああ、まずいな」
特にこれといった特殊能力の無いただの黒服である二人は、幸いにして光線銃を所持していたためにゾンビやゴーストに対抗する事ができていた
「これは犬を操る能力とは関係無いな」
「多重契約者か、それとも仲間がいたか」
背中合わせに座り込んで休憩していた二人には、互いの表情は見えない
「……もしかして関係無い奴だったとか」
「だとしたら何で俺達は閉じ込められてるんだ」
「追い掛けられてびっくりしたからとか」
「……んなわきゃないだろ」
「そうだな、楽観視し過ぎた」
「とりあえず増援を頼むか」
「携帯は通じそうか?」
「電波妨害は無いな」
黒服の片割れは取り出した携帯電話を確認し、信頼できそうな人物を選んで電話を掛ける、が
《こちらは『組織』留守番電話サービスです。お掛けになった対象の黒服は現在電波の届かないところにいるか、携帯電話の電源を――》
「Dさん繋がらねぇ」
「あの人は忙しそうだから仕方ない」
気を取り直して次の番号に
《こちらは『組織』留守番電話サービスです。お掛けになった対象の黒服は現在睡眠中です。別の手段で連絡するか直接叩き起こしに――》
「Yさんもダメだ」
「まあ割といつもの事だな」
溜息混じりにまた違う番号に
《こちらは『組織』留守番電話サービスです。お掛けになった対象の黒服は男性からの着信を拒否しています。女体化ガスなどを吸引の上改めて――》
「ダメだ、Hさんは色んな意味でダメだ」
「どうする、Kさんは嫌だぞ流石に」
「あの人アメリカに飛ばされてる、安心しろ」
「更に上に増援要請をするのは色々まずいな」
「派閥争いでゴタゴタしてるしな、いつもの事だが」
「……マジでどうしようか、この状況」
二人は携帯の電話帳一覧を見ながら頭を抱えていた
―――
しばらく電話の類を探してうろうろしていた少女だが、日も落ちて暗くなった状態では探索も捗らない
なんとか見つけたのは、インクの切れかけたボールペンと砂埃で汚れたメモ帳だけだった
会話こそ単語のぶつ切りでたどたどしく成立する程にはできる少女だが、日本語の書き取りに関しては全く自信がない
実は黒服達には英語は通じるのだが、そこまで頭は回らなかった
「たたかう、きもち、ない、おしえる、です。ちから、とめる、めも、はこぶ、おねがい、できる、ですか?」
その言葉に、群れの中で一番足の速い犬が喉を鳴らして少女に擦り寄る
「それじゃ、がんばる」
少女は月明かりを頼りにメモ用紙にペンを走らせた
なんとか見つけたのは、インクの切れかけたボールペンと砂埃で汚れたメモ帳だけだった
会話こそ単語のぶつ切りでたどたどしく成立する程にはできる少女だが、日本語の書き取りに関しては全く自信がない
実は黒服達には英語は通じるのだが、そこまで頭は回らなかった
「たたかう、きもち、ない、おしえる、です。ちから、とめる、めも、はこぶ、おねがい、できる、ですか?」
その言葉に、群れの中で一番足の速い犬が喉を鳴らして少女に擦り寄る
「それじゃ、がんばる」
少女は月明かりを頼りにメモ用紙にペンを走らせた
―――
「……どうした?」
「雰囲気が変わった。迷宮化が解除されたっぽい」
二人は変化を察知して警戒態勢を取る
爪がタイルに当たる音から、犬が近付いてきてると判断する
「あの少女か」
「わからん、警戒は怠るな」
そんな二人の警戒をよそに、犬は咥えていたメモを落として走り去る
「罠か」
「わからん、確認する」
やや涎で濡れたメモ用紙は、特に異常も無く黒服の一人の手に渡り
《わるいことはしてないです こわかったのでまよわせてしまいました ごめんなさい》
そう書いてあったはずなのだが、少女の字が下手で判読が難しい上に折り畳まれたメモ用紙が涎で滲んで一部読めなくなってしまっていた
《わるいこ は わかったので しまいました なさい》
「悪い子は……判ったので……しまいました?」
「しまっちゃうおじさんか!?」
「厄介なものと契約を……どうする、このままでは俺達は外に出られないぞ」
「最後の『なさい』は何なんだ」
「わからん」
「能力が解除されてるとして……すぐ後ろの扉、入ってきたところじゃないか?」
「マジか」
「どうする、能力が解除されてるなら奥にも行けるかもしれんが」
何か色々と追い詰められていた二人の黒服
二人は顔を見合わせて頷き合い
「上の判断を仰ぐ為に一時撤退しよう」
「懸命な判断だ」
この辺り、個性の強い黒服達に毒されてるのかもしれない
感情の無いような本来の黒服らしい様子は欠片も見せず、すたこらさっさと撤退していってしまった
「雰囲気が変わった。迷宮化が解除されたっぽい」
二人は変化を察知して警戒態勢を取る
爪がタイルに当たる音から、犬が近付いてきてると判断する
「あの少女か」
「わからん、警戒は怠るな」
そんな二人の警戒をよそに、犬は咥えていたメモを落として走り去る
「罠か」
「わからん、確認する」
やや涎で濡れたメモ用紙は、特に異常も無く黒服の一人の手に渡り
《わるいことはしてないです こわかったのでまよわせてしまいました ごめんなさい》
そう書いてあったはずなのだが、少女の字が下手で判読が難しい上に折り畳まれたメモ用紙が涎で滲んで一部読めなくなってしまっていた
《わるいこ は わかったので しまいました なさい》
「悪い子は……判ったので……しまいました?」
「しまっちゃうおじさんか!?」
「厄介なものと契約を……どうする、このままでは俺達は外に出られないぞ」
「最後の『なさい』は何なんだ」
「わからん」
「能力が解除されてるとして……すぐ後ろの扉、入ってきたところじゃないか?」
「マジか」
「どうする、能力が解除されてるなら奥にも行けるかもしれんが」
何か色々と追い詰められていた二人の黒服
二人は顔を見合わせて頷き合い
「上の判断を仰ぐ為に一時撤退しよう」
「懸命な判断だ」
この辺り、個性の強い黒服達に毒されてるのかもしれない
感情の無いような本来の黒服らしい様子は欠片も見せず、すたこらさっさと撤退していってしまった
―――
その様子をガラスの割れた窓からこっそりと覗いていた少女は、はふうと溜息を吐く
「よかった、かえる、する、でした」
安堵でくたりと座り込む少女の顔を、犬達がぺろぺろと舐め回してくる
「あはは、くすぐる、だめー」
楽しそうにじゃれあう少女と犬達
一方その頃、彼女が帰ってこない事を心配した総統の野良犬ネットワークが町を微妙に騒がせたそうだがそれはまた別の話である
「よかった、かえる、する、でした」
安堵でくたりと座り込む少女の顔を、犬達がぺろぺろと舐め回してくる
「あはは、くすぐる、だめー」
楽しそうにじゃれあう少女と犬達
一方その頃、彼女が帰ってこない事を心配した総統の野良犬ネットワークが町を微妙に騒がせたそうだがそれはまた別の話である