「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-43

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ドクター43


「毎度ー、宅配便でーす」
「はいはーい」
元気の良い青年の声に、看護婦姿のバイトちゃんがぱたぱたと玄関へと向かう
「去年の暮れから荷物多いですねー。あ、サインか判子、ここにお願いします」
「診療所も開設したばっかりの頃から比べて色々と落ち着きましたからね。ドクターの趣味なんですよ、本とか機材集めるの」
「あー、本ですか。道理で重たいと思った。気ぃ付けて下さいね」
「大丈夫ですよ、力仕事は慣れてるんで。それじゃどうもご苦労様でした」
「いえいえ、それじゃ失礼しまーす」
ぺこりと頭を下げてトラックに乗り込む青年
フロントガラスのところに寝そべるように乗っている少女は『あの世送りのカーナビ』
にこにこと笑いながら手を振ってきたので、青年には気付かれないように手を振り返してあげる
ここに診療所を開いてから、よく彼が荷物の配達に訪れる事から、どうやら仲良くやっている存在のようだ
「さてと、それじゃ患者さんの邪魔になる前に運んでおくか」
一抱えもあるダンボール箱は、どうやら本がみっしりと詰まっているようで
一瞬、昨年の騒動で見た魔女の少女が頭に浮かんだような気がした後に、バイトちゃんは箱を持ち上げようと屈んだ姿勢のままメアリーに発見されるまで動けなくなっていた

―――

「男の時の体格と筋量の感覚で動いちゃダメだってあれほど言ったじゃないですか」
「……面目ない」
ベッドにうつ伏せになり、メアリーに腰に湿布を貼り付けられているバイトちゃん
その傍らの椅子では、開いた本を抱えたままうたた寝をしているドクターの姿があった
「ここしばらく、休憩時間によく寝てますね」
「夜寝てませんからね、ドクター」
「……休憩時間、二時間ぐらいじゃないですか」
「身体を壊すからちゃんと寝て下さいって言ってるんですけどね」
本当に困ったように苦笑いするメアリー
「私と契約してなければ、薬で無理矢理でも眠らせたりするんですけど」
「メアリーと契約してなくても、それやったら絶対怒ると思うよー」
がちゃがちゃと謎の機材を整理しながら、ミツキが溜息を吐く
「貰ったデータに報いるために、出来るだけ早く成果を上げたいんだってさ」
「ああ、小官がパスワードを解読したやつでありますか?」
「中身は見せて貰えませんでしたけどね」
お茶菓子をつまんでいたエニグマ姉妹が、思い出したように顔を見合わせる
「それにしても、最近は錬金術の分野に特化してきましたね、ドクター。南米支部に居た頃に、あちらの総統が集めていたものがちらほら見受けられます」
「錬金術、か」
「無茶な成果を要求する上で、ボクの知識や技術、経験を一番活かせると判断したからな」
何時の間に目を覚ましたのか、椅子の上でぐうっと伸びをしながら語るドクター
「錬丹術もかじってみたが、あちらは外丹よりも内丹や房中術の資料ばかりでな。ボク好みだが処置をするには向いていない」
開いていた本に栞を挟み、机の上に置いて椅子から立ち上がるドクター
「まあとりあえずは検体がいるマッドガッサーの女体化ガスの除去薬は近日中に出来る予定だ」
「マジですか! やっ、た、あたたたた……」
喜びの余りに跳ね起きようとして、腰の痛みに再びベッドに沈み込むバイトちゃん
「ついでにマッドガッサーの女体化ガスと同じ効果の女体化薬も精製してみた」
「何余計なもんまで作ってんですかあんたは!?」
「解毒の為に毒を知るのは当然の事だろう」
不思議そうに首を傾げるドクターに、バイトちゃんは溜息を漏らす
「女体化の事は調べ終わったんですし、元に戻ったら改めて女になったりするのは御免ですからね?」
「まあ君も身体は充分に役に立ってくれた、これ以上求めるのは無体というものだな……ちっ」
「今舌打ちしましたよね!?」
「冗談だ冗談。しかし一つ一つの事案に詳細な研究をしていては時間も手数も足りない事極まりない。最終目標のために……これを足掛かりに目指すは――賢者の石であり万能薬エリクシールだな」
「目指すのはいいですが、ちゃんと休みながらやって下さいね」
「まあまずは先に君がきちんと休みたまえ。腰が治ったら女体化解除薬の臨床実験だぞ。さてメアリー、ミツキ、午後の診療だ。エニグマの二人はその弱腰者の世話を頼む」
「了解であります! 小官、一命を賭して任務に臨む気概であります!」
「お姉、気合を入れ過ぎるのも彼に迷惑ですからね」

―――

昇る昇る
高みへ昇る
人の領域を越えて遥かなる高みへ
与えられるもの以上を望む彼女の末路は
崩れ落ちるバベルの塔か
翼の溶け落ちたイカロスか
それとも、もっと別の何か、か


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